『外伝:青』崩壊した世界に来たけど僕はここでもお栄ちゃんにいじめられる
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お兄様は妹を助けたい話
前書き
こんにちは、クソ作者です。
ゴッホちゃん編、このお話で終了となります。
と、思いましたが終われませんでした。
書けるだけ書ききったところまさかの10000文字を超えるという予期せぬ出来事が起こり2つにわけざるを得なくなりました(いつもの)(しってた)
ごめんね。
「あっあああ♡♡♡♡だめだめだめだめえっ♡♡」
あれから数時間後。
とうに朝日は昇って時刻はお昼前くらいだろうか?
正確には分からない。
なにせ拘束された僕はお栄ちゃんに描かれた淫紋の効果によって絶頂を禁止され、嘘をつく度に快楽が倍になっていく身体にされている。
今何時だとかそれどころじゃないんだ。
お栄ちゃんがゴッホちゃんの絵を見せ、「こいつは誰だ?」と問い、僕は「知らない」とシラを切る。
そのたびに快楽は倍増。
2倍、4倍、8倍…もう512倍辺りになってから計算するのはやめた。
「中々ねばるじゃないか。」
「確かに。今日の舞さんは強情ね。こんなの初めてかも。」
ユゥユゥと一緒に亀頭を筆でいじくり回しながらアビーは呆れながら答えた。
「うーん、どうしよっか…。」
「いっそのことまた触手達の苗床にしましょう?自白するまで舞さんに出産させるの!」
「しゅ、出産!?触手を!?産んだことあるの!?」
怖気が走る。
当時は気持ちよくて仕方がなかったけど、僕はあの時とんでもなくおぞましい事をさせられてたんだ。
1年間触手の苗床になって、子供を孕ませ続けられる。
それはさすがにごめんだ。二度とやりたくない。
けど、
「そんな人…しらない…っ!」
僕はそれでもシラを切り続けた。
「……。」
心配そうな目で見るユゥユゥ、
呆れてものも言えないアビー、
そして、
「…本気で、言ってんのかい?」
腕を組み、冷たい視線でこちらを見下ろすお栄ちゃん。
「こいつとは大層仲良くしたそうじゃないか。夢の中で色んな場所に出かけて、一緒に飯も食って、楽しく絵を描いた。」
「……。」
「その上〝お兄様〟なんて呼ばれて慕われてるってのに、名前も知らないっていうのは少し無理があるナァ?」
お栄ちゃんの手が、僕の顎を優しく掴んでくいと持ち上げる。
その目が、双眸が僕をじっと見つめて映す。
頑なに口を閉じて、キッと睨む僕の顔を。
「なぁ、マイ。」
「…。」
「怪しいとは、思わないのかい?」
「……。」
お栄ちゃんの口調が柔らかくなる。
「突然お前さんを尋ねて来て、素性も教えたがらない、なのにやたらと仲良くしたがる…まるで誑かして何か嵌めようとしてるみたいじゃないか。。」
「ゴ…ゴッホちゃんはそんなんじゃない!悪いことなんて企んだりしてるわけなんか…!」
「ホー、〝ごっほ〟って言うのかい。」
しまった。
ついうっかり彼女の名前を出してしまった。
「マイも薄々気付いてるだろ。その〝ごっほ〟とやらが、まともなさあばんとじゃないってこと。」
「……」
「…ナァ?」
お栄ちゃんの手が、僕の頬に触れる。
違う。ゴッホちゃんは悪いサーヴァントじゃない。
でも分かってる。あの子は僕に対して隠し事をしてる。
不審な態度、絵を描けない理由、どこで生まれどこから来たのか
「お前さんの為に言ってる。そのうちとんでもない事になっちまうヨ?もしあいつが…財団の手先、それこそ〝あいつ〟のさあばんとだったら」
「違う!!ゴッホちゃんはそんな奴のサーヴァントなんかじゃない!!」
お栄ちゃんの意見を、真っ向から否定する。
でも、分かってる。否定しても無駄なくらい証拠はある。
決定的なのは…サーヴァントはマスターの奴隷という思想、そして絵を描くことしか出来ない自分は罰を受けて当然という思想も、
やつの顔が、どうにもチラつく。
彼女は悪いサーヴァントじゃないと言った。
でも…あの子は……
あの子は……!
「じゃあ会って確かめて来い。」
そう言うとお栄ちゃんは僕の下腹部にそっと触れる。
「えーと…三万二千七百六十八倍分の絶頂サ。意識失うのには丁度いいだろ?」
「え…?」
それと同時に、全身を駆け巡るのは味わったことの無い凄まじい快楽。
さっきお栄ちゃんが触った下腹部を見てみれば、そこに刻まれていた淫紋は消えていた。
つまりは解除されたのだが今の僕にそんなことを考えてる理由は無い。
「あっああああっ!?ま、待って!!3万倍なんてそんなの無…!」
止めようのない絶頂は、僕の待ってくれなんて聞いてくれない。
「――――――っ!!!!――――――――――――♡♡♡♡♡♡」
声にならない声を上げ、堰き止められていたものが溢れるようにどくどくと射精し、僕はお栄ちゃんの言った通り意識が飛ぶくらいの絶頂を味わった。
「…。」
「…いったナ。」
がくん、と手足の力が無くなり僕の意識が無くなったことを確認し、お栄ちゃんは立ち上がる。
「あびい、楊貴妃殿。」
2人の名前を呼ぶと、それに合わせて彼女達も立ち上がる。
「夢の世界には入れないのかい?」
「うーん…燃やしたりとか色々試してみたけど、やっぱり無理っぽいかも。」
と、ユゥユゥが困ったように答える。
「おそらくそのゴッホさんが結界を張った…いいえ、描いたかもしれないわ。」
「描く…?」
アビーの言ったことに、お栄ちゃんが反応した。
「描くってなんだい?文字通り絵を描くように描いたってことかい?」
「ええ…そうみたい。」
「……。」
それを聞くとお栄ちゃんは少し考えてから、なにか閃いてニヤつき、パチンと指を鳴らした。
「…ならイける。」
「えっ?」
「〝張った〟んじゃなく〝描いた〟のなら問題はねぇヨ。まぁ細かい話は後だ。どうにも嫌な予感がして仕方がねェ。」
そうしてお栄ちゃんは急ぐように、僕の夢の世界へと入り込んでいく。
胸に一抹の不安を抱えて。
そしてその不安は、見事に的中することになる。
⚫
「う…あ…。」
約3万倍の絶頂を受けた僕は、顔を顰めながら夢の中で目を覚ました。
いや、夢で目を覚ますというのも変な話だけど、本当にそんな感じだ。
上半身を起こして辺りを見回せばそこは見慣れたひまわり畑。
反対側にはもちろん、あの黄色い小さな家。
僕とゴッホちゃんが色んなことをして過ごした、思い出の場所……
でもゴッホちゃんはもう来てくれない。
あの背中の傷を見てしまって、彼女はどこかへ行ってしまった
「あ、あの……。」
「!!」
かに思えた
「ゴッホちゃん…?」
「お兄様…お久しぶり…です。数時間前ですが…。」
引きつった笑みを見せながら、彼女はそう答える。
ぎこちない仕草、しかし僕はそんなゴッホちゃんのある場所の異変に気付いた
「ゴッホちゃん!!」
慌てて起き上がり、駆け寄る。
彼女の手を持ち、僕は絶句した。
「えへへ…指を、詰められてしまいました。」
「…!!」
指がない。
両手揃えて十本の指が、そこには一本も存在しなかったのだ。
「なんで…なんで!!」
「ゴッホらしく耳も削ぎ落とされました。使命も何も全うできない中途半端なゴッホにはお似合いですね。」
「……。」
「あと、ごめんなさい。ゴッホはお兄様に嘘をついてました。私には、マスターがいます。」
何も言えなかったけど、
分かってはいた。
「どうして…どうしてゴッホちゃん…。」
「騙すつもりはなかった…と言うとずるいですね。私はマスターからお兄様…いえ、舞様暗殺の命を受け偶然を装いこうしてやってきま…」
「騙すとか騙されたとかそう言う話じゃない!!」
違う。
僕が聞きたいのは君の謝罪じゃない。
「辛いって、逃げたいって…どうして僕に言ってくれなかったの…?」
「……。」
いつまでも聞かないでいた僕も悪いだろう。
でも、辛くて辛くて、全身に痛ましい傷をつけられ、さらには指すら切り落とされ、そんなに辛いのなら、
〝助けて〟と、ただそれだけ言って欲しかった。
「舞様は…仮初ではありますが確かにゴッホのお兄様でした。ですが…私はサーヴァント。お兄様よりもまず、前提としてマスターの命令を聞かなければならないのです。」
「……。」
「その様子だともうお分かりですね。はい。ゴッホのマスターは、あなたのお兄様…葛城 恋様です。」
分かっていた。
わかっていたけど、否定し続けた。
お栄ちゃんに言われても、僕は違うって否定した。
でも、否定し続けて目の前のことから目を逸らし続けたツケが帰ってきた。
「ゴッホちゃん…!」
「はい、なんでしょうか。」
「ごめん…ごめん…っ!!君の苦しい思いを…見て見ぬふりしてたんだ…!!」
彼女を抱きしめる。
痛ましいほどに細くて、不安な程に軽い身体。
これ以上したら折れてしまうのでは?と思うくらいに強く抱き締めていた。
「舞様…痛いです。」
「僕を…殺しに来たんだよね?じゃないと、ゴッホちゃんはもっと酷い目にあうんだよね?」
「はい、そうです。でも…。」
そう言うとゴッホちゃんはトン、と僕を突き放した。
「今回来たのは舞様を殺すためではありません。お別れを、言いに来ました。」
「お別れ…?」
それは、つまりどういうことなんだ。
「殺すことに失敗した。もう舞様の夢の世界には行けなくなったと嘘をつきます。」
「それって…!!」
そんなことを言ったら、ゴッホちゃんはどうなる?
葛城財団の人達は受けた任務を果たせず帰ると皆問答無用で殺されると聞いたことがある。
任務に失敗したらゴッホちゃんは…!
「殺されてしまう…ということは無いと思います。こんなんでもゴッホは貴重なフォーリナーですし。元々は舞様がフォーリナーを複数所持していることにマスター様が嫉妬して生み出された存在ですので。」
「でも…!」
「でもも何もありません。ゴッホのこれからは、舞様が気にすることでは無いのですから。」
そういうとゴッホはこちらに背を向け、とぼとぼと歩いていく。
「それではさようなら。短い間でしたがお兄様からは〝暖かさ〟というものを教わりました。こんなゴッホに優しくしてくれて、ありがとうございました。」
とても寂しそうな背中。
弱々しくて、誰かが守らないとどうにかなってしまいそうな存在。
じゃあ、
「行かないで!!」
お兄様として今手を伸ばさないで、いつ伸ばす?
「はうっ!?」
ゴッホちゃんの手を掴む。
驚いたゴッホちゃんはブンブン振って離そうとするも、そんなこと許さない。
「舞様!!離してください!!」
「辛いなら辛いって言って!!逃げたいなら逃げたいって言ってよ!!僕は、ゴッホちゃんのお兄様なんだ!!どうにも出来ないなら頼ってよ!!」
「ゴッホは……ゴッホは、わたしは…」
口をわなわなと動かすも、言葉が出ないゴッホちゃん。
手を離さず、目をじっと見つめるも彼女は目を泳がせて逸らし続ける。
「ゴッホは、サーヴァント、マスター様の、奴隷です。そもそもサーヴァントと兄妹関係を築こうなんてそんなの周りから見たら笑われちゃ…」
「関係ない。」
ぴしゃりとゴッホちゃんの意見を遮る。
あいつのサーヴァントだからなんだ。
サーヴァントは奴隷なんかじゃない。
とても親密で、誰よりも近くて信頼し合える理想のパートナーだ。
「あの時約束したでしょ。僕達兄妹だって。」
「で、ですが…。」
「ゴッホちゃんがもう僕をお兄様だなんて思ってなくても、僕はずっとゴッホちゃんを可愛い妹だと思ってる。」
「……。」
瞳が揺れている。
唇が震えている。
そうして、押し殺してた色んなものが、ドッと溢れ出てきた。
「ゴッホは…ゴッホは…!!つらいです!」
「…。」
「つらくてつらくて…!にげだしたくてぇ…っ!!」
それは涙になってどんどん溢れてくる。
僕はそれに何を言うでもなく、無言で抱き締めて背中をとんとんと優しくさすってあげた。
「もうこんなのいやだ…なんのためにゴッホはうまれたんだろうって、たくさん…たくさん悩みました!!」
「うん。そっか。」
「舞様…お願いが…あります。」
しばらく僕の胸に顔を埋めて泣きじゃくり、ゴッホちゃんは顔を上げる。
そして、答える。
「たすけてください。ゴッホを、地獄から救いあげてください。」
それが、聞きたかった。
それに対して僕がとる方法はただ1つ。
「うん。わかっ」
「何裏切ってんだ?クソバカの穀潰しがよ」
「っ!?」
頷こうとした瞬間、何者かによって言葉を遮られ、その後背後から衝撃をくらって倒れてしまう。
「…!!」
ゴッホちゃんに覆い被さるように倒れた僕は、慌てて後ろを見る。
忘れるはずなんかない。
この声は…!
「なんでお前がここに…!!」
「おいおい、俺は兄だぞ?人にお兄様呼ばわり強制しといて俺様にお前呼ばわりは失礼だろ?えぇ?」
後ろにいたのは、僕を蹴り飛ばしたのはあの葛城恋。
僕の、兄だった人。
正真正銘血の繋がった本物の兄弟だ。
「マ、マスター様!?ど、どうして!?」
「こいつの夢までの道のりはお前が残してくれた跡を追ったからな。ここまで来るのにさほど苦労はしなかったぜ。」
「…!!」
咄嗟に手が動く。
ペンを持ち、即座にこいつを殺せる武器を描こうとする。
が、
「おっと。」
奴が手のひらをかざすと、僕の右手が腐り落ちた。
「!?」
「てめぇらがやっすい兄妹ごっこしてる間にこの夢の支配権を強奪してやった。だからもうお前の夢は、俺様のものだ。」
迂闊だった。
以前、ユゥユゥに夢の世界の支配権を奪われたことを思い出す。
僕の自由は全て奪われ、何をし、ここをどう帰るかは全て支配権を持つ者に左右される。
そして、
「こんなしょうもねぇ世界、俺様色に変えてやるよ。」
パチン、と指を鳴らすと辺り一面にあった向日葵達が一斉に枯れ始める。
広大な黄色の絨毯は一瞬にして荒れた大地となり、さらには黄色い家も腐るように崩れ去った。
あたりの景色が、一瞬にして変わる。
薄暗い世界。
晴れ渡っていた空が分厚い雲が覆う曇天の空へと変わる。
周囲を飾るのは向日葵ではなく枯れた草木。
僕らの思い出の場所は、あっという間に蹂躙された。
「お前なんかにゴッホちゃんは…!」
腐った右腕はとうに落ち、いつの間にか集まってきた虫が食らっている。
僕は起き上がるとやつを睨みつけ、左手でペンを取った。
が、
「だから、昔から言ってるだろ?」
すとん、と身体が落ちる。
膝を着いた覚えは無いのにと下を見れば、僕の両足は腐敗し無くなっていた。
「弟が兄に勝てる道理があるか?ねぇんだよ。」
とどめに左手も腐り落ち、四肢を失った僕は動くことが出来なくなった。
さらに、
「おっとぉ、〝それ〟も没収だ。」
睨み付ける僕に向かって手をかざす。
すると身体から何かが抜け、とてつもない脱力感に襲われた。
これはなんだ?それと同時に心に何かぽっかり穴が空いたような感覚。
あいつにむかって流れる風を感じて、僕はハッとなった。
「『黄衣の王』、だったか?ともかくそれはお前には相応しくねぇ。真の黄衣の王は俺様、葛城 恋だ。」
盗られた。
黄衣の王との繋がりを、取られてしまった。
四肢を腐り落とされ、力も盗られた。
これで正真正銘本当に、僕は戦う術を失った。
「さぁて、今までお前がしてきた事のツケ、ここでたっぷり払ってもらうからなァ。」
目の前に移るのは、
動けない僕を前に舌なめずりをし、いつの間にか手にしていた釘バットを思い切り振り上げたやつの姿だった。
後書き
つづくよ
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