IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第389話】
最初のデモンストレーションのレースを終え、織斑先生が二度手を叩き、全員を注目させると口を開いた。
「いいか。 今年は異例の一年生参加だ。 だが参加する以上は各自結果を残すように。 キャノンボール・ファストでの経験は、これから代表候補を目指すもの、整備への道を進むもの、または別の道に進むもの全員にとっての貴重な経験が出来、必ず何処かで生きてくるだろう。 それでは訓練機組の選出を行うので、各自割り振られた機体に乗り込め。 ボヤボヤするな。 開始!」
毎年の恒例行事であるキャノンボール・ファストは本来なら整備課が登場する二年生からのイベントらしい。
……本来、整備課を設立するなら一年の時から1クラスぐらいは作ってそれ専門に授業をするのが普通だと思うのだが、ここIS学園は二年生から整備課がある。
理由はわからないが、多分一年生のうちにある程度のどちらかの才能を見極める為なのかもしれない。
それはともかく、今年一年生が参加する理由は俺と一夏、後異様に集中して集まった専用機持ちが原因だろう。
……色んな意味でイレギュラーが多い年なんだろう……襲撃や事件が多発してるのも、何かしらの因果があるのかもしれない。
とりあえず難しい話はその辺りに置いておき、訓練機部門は完全なクラス対抗戦になるため、例によって景品が出るとか。
「よーし、勝つぞ~」
「お姉様に良いとこ見せなきゃ!」
「勝ったらデザート無料券! これは本気にならざるを得ないわねー」
各々が其々の理由で燃え上がる女子一同、それに触発されてか、各クラスの教師一同も指導に余念がなく、訓練機部門は気合いを入れて教えてるらしい。
一組は山田先生が気合いを入れて指導をしてる――ISスーツはいつもの胸元が開いたタイプなのが目の毒もとい、目の保養になる。
一度あの巨乳に顔を埋めてみたいものだ――昨日セシリアの胸を揉んでおいてあれだが、やはり一度はそういう願望というものは出るものだ。
そう思って視線を山田先生に向けていると、それに気づいた山田先生が俺の元へとやって来た。
「有坂君、さっきの実演素晴らしかったですよ。 中央タワー折り返しの急旋回何か、先生感動しました! バイザー使うのが初めてとはいえ、よくコースアウトの恐怖にのまれる事なく機体の操縦が出来たことはすごいです!」
「い、いえ。 結局ビリでしたからね……」
「まだまだ訓練は始まったばかりですから、ビリという結果に落ち込まないでくださいね?」
にこりと微笑む山田先生を、俺は見上げる。
――というのも、山田先生は現在ラファール・リヴァイヴを纏っている関係上、俺は目線を上げなければいけない。
もちろんその光景は絶景であり、山田先生の容姿の良さもあってか正直教師で無ければデートにでもお誘いしたいぐらい。
――って誰かに言えば不味いので言わないが……しかし、山田先生が一人身というのは非常に勿体無い気がした。
「有坂君? どうし――あっ……」
流石に俺の視線に気付いた山田先生は、恥ずかしそうに腕で自分の胸を隠すように組むと、身体を横に向け、顔は俺の方へと向けると口を開く。
「あ、あの、私……ISスーツ新調した方がいいんでしょうか?」
「え? ……そうですね、胸元がキツいのでしたら新しくした方が良いのでは?」
正直、目の保養にはなるものの、はち切れそうなぐらいの巨乳が、ISスーツに苦しそうに納まってるのを見ると新調した方が懸命かもしれない。
だが……胸元を強調する今のISスーツは、他に男子がいれば絶対絶賛するだろう――。
一夏?
一夏はホモの可能性が真実味を帯びてきたので、絶対興味がないだろう。
「や、やっぱりそうですよね……。 あ、有坂君も授業に集中出来ないようですし……」
「い、いえ。 自分としては眼福ですので大丈夫ですが」
「はぅっ!? あ、あまり見ないでください……。 せ、先生は恥ずかしいです……」
そう言って更に腕を組んで隠す仕草をするが、更に強調されるその谷間が素晴らしい……。
――と、後ろから殺気みたいなのを感じる。
「有坂」
「はい?」
振り向くと、織斑先生が立っていてその刹那、無慈悲なチョップが俺を狙う――だが、それを仰け反って避けてみせた。
「チッ! 避けるな馬鹿者」
「わははははっ。 ――ではなく、いきなり何なんですか!」
「教師をそんな目で見る有坂が不謹慎なのが悪い」
う……正論過ぎて反撃も出来ない。
とはいえ、あの見事な乳房に目がいくのは健全なる男子ならば当たり前の事だと思う。
特にたっくんや信二なら見るはず。
勝手にそう結論つけていると、織斑先生がため息を溢しつつ――。
「有坂、他の専用機持ち達とも話してこい。 今回のキャノンボールでの経験、お前にとっても悪いものにはならないはずだ。 訊いて回るのはお前の好きな順で良いだろうしな。 では山田先生、他の生徒の指導に向かいましょう」
「は、はい。 では有坂君、もし何かわからないことがあれば先生か織斑先生に訊いてくださいね」
そう言っても山田先生は浮遊して訓練機を扱う女子の元へ、織斑先生も腕組みしながら向かっていった。
さて、まずは誰から――あ、目についた篠ノ之&一夏で良いだろう。
そう思い、ISを展開したまま二人に近付くと、機体に備わっている空中投影ディスプレイを見ながら二人でエネルギー分配を話していた。
「おっす、二人でエネルギー分配の相談か?」
そう言って声をかけると、篠ノ之は怪訝な表情を浮かべ、一夏は――。
「おぅ。 今箒と二人で相談してた所なんだ。 まあまず箒の紅椿のエネルギー分配を見ていたんだが――ヒルトも見てくれるか?」
「い、一夏!? な、何故こんな奴に意見を求めるのだ!? わ、私はお前の意見が訊けたらそれで――」
「まあまあ。 意見をもらうなら色んな人からもらう方がいいだろ? それに、ヒルトって案外細かいところに気づくんだし、俺はヒルトに訊くのも悪くねぇって思ってんだが……」
一夏がそう言うと、篠ノ之は迷いながらも――。
「い、一夏が……そう言うのであれば……。 有坂! 今回だけだ! 特別に見せてやる!」
そう言ってディスプレイを見せてくる篠ノ之、展開装甲機動時のエネルギー配分が足りないのは素人目から見てもわかるほどだった。
何故足りないのか――それは、展開装甲がオートになっており、常に紅椿のコアからのエネルギー供給を受けている状況だからだ。
「篠ノ之、とりあえず俺が言えるのは展開装甲の起動をマニュアル化、背部と脚部はそのままでいいが、他は無駄すぎる。 これじゃあエネルギー分配されなくても仕方がない。 もし単一仕様を前提に考えての仕様ならやめた方がいい。 一夏もだが、お前たち二人は何処か単一仕様に拘ってるしな」
ディスプレイを元に戻す――と、一夏がまず口を開いた。
「でも、白式は零落白夜ありきじゃねぇと性能が発揮出来ねぇんだよ。 だから白式のエネルギー足りないのに頭を抱えるし、追加装備考えても白式自体が拒むんだからしょうがねぇじゃん」
「なら一夏自身の零落白夜の使用を限定的にすればいい。 例えば鈴音と戦うとき、霞衣で防御しながら突撃してるが、下手したら一撃食らうよりもエネルギー食ってるぞ? まあ、結局は一夏の判断だから任せるが……篠ノ之」
「……何だ?」
相も変わらず怪訝な表情を浮かべる篠ノ之。
「とりあえず言えるのは、絢爛舞踏は今は忘れる事だな。 それに拘ってエネルギー分配に悩んでるんじゃ、本末転倒――」
「う、煩いッ! 紅椿の事、何もわからない癖に偉そうに私に説教するなッ! はっきり言って迷惑だ! 早く私の視界から消えろ!」
「……はいはい。 小さな親切大きなお世話って事だな。 ……なら他の誰かに相談求めろよ」
そう言って手をひらひらと振り、俺は二人の側から離れ、別の専用機持ちを探す。
「ヒルト、こっちこっち♪」
「お兄ちゃんっ」
「ヒルトー、集合ーっ」
そう言って声をかけたのは我が妹達&幼なじみだ。
ふわりと飛翔しながら三人の元へと降り立つと――。
「お兄ちゃん、さっき篠ノ之さんと言い争いしてたみたいだけど、何かあったの?」
首を傾げてそう訊く美冬は、村雲を纏い、背部にはPPS用のフライヤー・ユニットをパッケージとして装着していた。
両肩からにあるガトリングが、また村雲の火力をあげるだろう。
「まあちょっとした大きなお世話しただけだよ。 気にすることはないさ」
「そっか……。 お兄ちゃん、お兄ちゃんはキャノンボールどうするの? 更に機体にスラスターを増設するのか、又は――」
「私達やセシリア、鈴みたいにパッケージ一式装着する?」
未来の方へ向くと、彼女の天照からは純白の翼が生えていた――ラファール・リヴァイヴ用のパッケージ、【ブランシュ・エール】だ。
天照は殆どのパッケージを最大二つまで付けられる【デュアルパッケージ】という拡張性の高いハードポイントシステムがある。
まあパッケージの内容によっては、装着出来ない箇所もあるのでその場合は一部装着みたいな形だが、ブランシュ・エールは背部のみなので他にも装着可能だろう――とはいえ、下手すると重くなるだけなのでそこは見極めが必要だろう。
「そうなんだよな。 パッケージにするかかなり悩む」
「でもさ、キャノンボールってバトルレースだから今のままでも妨害内容によったら、ヒルトは十分一位を狙えると思うよ?」
そう言ったのは美春で、俺の前の専用機、村雲・弐式を纏っている。
フラグメント・マップの構築にも支障が無く(村雲・弐式自体が美春だから当たり前だが)、フォルム・チェンジ機能も問題なく使えるとのこと。
まだ残り二形態のチェンジが可能らしいが、まだ発現出来ていない――とはいえ、現状でも正直性能は第三世代でもトップクラスなので問題はないだろう。
……というか、俺が使いこなせてなかっただけだが。
そんな村雲だが、見慣れないパッケージを装着していた。
「美春、そのパッケージって何だ?」
「あ、うん。 これはお母さんが試作で作った展開装甲の機能を防御に一極化したパッケージだよ。 キャノンボールには関係無いけど、データ収拾をお願いされてたから」
「……てか、そんなパッケージ使って大丈夫か? 何か篠ノ之辺りが本気で怒りそうだが」
そんな俺の指摘に、未来が答える。
「大丈夫。 展開装甲自体、特許申請されてない状況だしね。 まあパクったって言っても、有坂先生は外見から見てその機構を独自に解析してやったんだもん。 ……お母さんが言ってたけど、各国の第三世代が漸く試験段階になったのにいきなり第四世代登場で自分達の技術が無駄、だからもうこの機体は開発せずに新たな第四世代ってならない為の処置だって。 ……パッケージ装備で第二世代、第三世代の機体の延命措置も考えないと、国家予算も馬鹿にはならないし、会社としても注ぎ込んだお金が無駄になっちゃうもん。 ――まあ、有坂先生は実際は技術向上で便利にしたいらしいからね」
有坂先生とお母さんの使い分けは、多少混乱するものの言ってる意味はわかる。
実際第四世代の紅椿の登場で、各国が注ぎ込んできた予算が無駄になったと嘆いている国もあるぐらいだし。
とはいえ、争いの火種になりかねないから多分母さんはこの技術も……まあわからないが。
「……まあ何にしても、母さんが一番謎だな……。 正直、時期が時期なら母さんが有名になってたんじゃないか? まあ白騎士事件みたいな内容が無いと、一蹴されるが」
改めて村雲・弐式を見ると、腕部と脚部、そして肩部にパッケージが装着されている。
とはいえ、傍目から見ると追加装甲を装着したようにしか見えないから起動自体が防御だけなら新型の防御システムぐらいにしか思わないかもしれない。
「俺はどうするかな……美冬みたいにPPS用フライヤー・ユニット背負ってもいいが、カスタムし過ぎてフライヤー・ユニットのウィング、折り畳まなきゃ使えないし」
「うん。 まあでもまだまだ時間はあるんだし……実際のレースは妨害ありだから、単純にプロペラント・タンクの増設だけでもいいかも」
「だな。 まあゆっくり考えるさ」
そう答えると、訓練機組が練習を始めていて、光のビーコンのラインからコースアウトしないように中央タワー外周を飛翔していった。
「さて、次は増設スラスターのシャル達に訊いてくるかな」
「了解。 私達は次辺りに三人で飛ぶからね? 美春ちゃんのパッケージデータ収拾も兼ねて、本格的にやるからヒルトも良かったら見ていてね?」
「あぁ、わかったよ未来。 じゃあまたな」
そう言って手を振り、その場を離れて俺はシャルとラウラの二人に会いに、浮遊して向かった。
後書き
パッケージは……あくまでデータ収拾用だったりする( ´艸`)
さて、実際問題ISの世代交代の速さが異常なのは作者が大して何も考えてないからだと思ってます
更にいえば、原作だと世代差間での性能差が微塵も感じない辺り、第四世代(笑)状態ですからな
昔の機体の延命措置は、戦闘機等でも結構行われてますし、こういった世代統制させる技術もありかなという言い訳をさせていただきます(ぇ
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