IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第383話】
一夏の気持ち悪い言葉に、背筋に悪寒が走りながらも俺はその脳みそが大丈夫なのかを心配し――。
「お、おい一夏、大丈夫か? た、食べさせ合いって正気か?」
「な、何だよ……俺、変なこと言ったか? 食べさせ合いっこ、しないか?」
……ダメだ、俺には一夏の脳みその中身がよくわからない。
とにかく分かったことは、一夏の【食べさせ合いっこ】という言葉が気持ち悪いという事だけだ。
頭が痛くなり、俺は椅子に深く座り直すと今度は五反田さんが自身の頬をつねった。
「いたたたたたた!」
急に自分の頬をつねり、痛みが走り、声を出す五反田さん――一体どうしたんだ?
その俺の思いを代弁したのが、あろうことか一夏だった。
「ど、どうした!?」
「い、いえ! 何でも! 何でもないです!」
そう言って両手と顔を振り乱す五反田さん、周りに客が居ないからよかったが、居たら彼女の振り乱す髪が当たっていた可能性も無くない。
「じゃ、俺のバニラからな。 シャル、あーん」
そう言ってシャルの口元へと運ぶ一夏だが、シャルは――。
「……一夏? 僕、別に君に食べさせてほしいって言ってないよ? 僕の事はいいから、蘭ちゃんにあげなよ」
いつもの様な貴公子スマイルで一夏にそう伝えるシャル。
シャルとしても、五反田さんに変な勘繰りをされたくないのだろう。
だが一夏は、そんなシャルの考えなんか勿論わかるはずもなく――。
「ん? 何遠慮してんだよシャル。 バニラ嫌いか?」
いつも通りの鈍感で対応した――ここまでくると、わざとではないのかと疑いを持ってしまう。
「嫌いじゃないよ。 でも、僕は自分の決めた人以外からはしてほしいと思わないから」
きっぱりそう言って断るシャルに、一夏は首を傾げて呟く。
「……変なシャルだな。 じゃあ蘭」
そう言って五反田さんの口元へ運ぶ一夏。
【変な】と言われて、少しムッとした表情になるシャルだが、それを悟られないように一口チョコバニラを掬ってそれを頬張る。
「は、はいっ」
嬉しそうな声色と共に笑顔で応える五反田さんの表情は、まさに恋する女子といった表情だ。
……一夏はもしかすると、こういう事を平然と女子にして断られた事がないのだろう、事実、学園でも大半の子は断らないだろうし。
だから断る女の子に対して変な奴だなと、平然で言えるのだろう――物凄く失礼なのだが。
「あーん」
恥ずかしがる事もせず、行き交う人々の好奇な視線をものともせず、食べさせようとする一夏に応える五反田さんの小さな口が開く。
「あ、あーん……」
スプーンが口内に入ると、そのままそれを咥え、バニラの味を堪能する五反田さん。
……よく視線も気にならずに出来るものだ、俺には無理――という割には、学園では皆に食べさせてるのだが……断りきれずに……というか、何だか全員俺を断りにくくしてる気がする。
確証は無いため、何とも言えないが……。
「蘭」
「んん?」
スプーンを咥わえたまま、瞬きを二度、三度繰り返して一夏を見る彼女。
何故呼ばれたのかがわからないのだろう……そして。
「まだアイス残ってるか?」
その指摘に、徐々に徐々にと顔が真っ赤に染まっていき、そして――。
「……!? い、いえ! あの、ご馳走様でした!」
慌ててスプーンから口を離すと、手で顔を扇ぐ五反田さん。
一夏は、アイスを再度スプーンで掬うと――。
「ほら、ヒルト。 あーん」
一瞬何が起きたのかを、俺は理解することが出来なかった。
口元に運ばれたバニラアイスの乗ったスプーンと、手で作った受け皿。
そしてあーんという言葉が、何を物語っていたのかを徐々に徐々に理解し始めると俺は――。
「ば、バカじゃねぇのか!? 男に食べさせようとするやつがあるかッ!?」
ガタッと椅子から立ち上がる俺に、怪訝な表情をまたもや浮かべた一夏は――。
「何だよ、恥ずかしいのかヒルト? 別に恥ずかしい事じゃねぇだろ。 ほら、あーん」
「ば、馬鹿! 気持ち悪い奴だな! 男に食べさせられる場合は手が動かないときとか寝たきり限定だろ! いいから自分で食えよ!」
「何だよ、変な奴だな……お前。 弾は口を開けるのに」
――何ですと。
まさか男にも本気でやってあげたのだろうか?
不味い、俺が童貞を失うより先にこんな自体になりかねん――。
『恥ずかしがるなよヒルト。 ほら、口を開けろよ。 開けねぇなら、俺の雪片で逆に塞いじまうぜ』
『や、止めろよ……。 皆、見てるだろ……』
『何言ってんだよ。 見せつけてやろうぜ……ヒルト……』
『アーーーーッ!?』
……うげ、気持ち悪くなってきた……別に個人の恋愛に口は出さないが、俺はまだ女の子とそうなる方がいい。
というか、同性愛は考えられん。
どうせならシャルの口を俺の欲望の塊で塞ぎ――って、昼間からエロい妄想はダメだ。
払拭する様に俺はスプーンで抹茶アイスを掬い、口に頬張る。
だがやはり、俺は抹茶ではなく、バニラアイスが食べたいと思うがそれだとまたさっきのやり取りをせざるおえなくなる。
はぁっ、と何度目かの溜め息を吐くと、それを見たシャルが――。
「ヒルト、大丈夫? ……ほら、僕のチョコアイス、一口あげるよ♪」
そう言って掬い、シャルは口元へと運んでくる。
反射的にそれを頬張る所で、行き交う人々の視線に気付き、俺は全身の熱が上昇するのを感じた。
「……シャルのは食べるのに、何で俺のは食べねぇんだよ。 何か納得いかねぇなぁ……」
……当たり前だが、男に食べさせられるのは好きじゃない、熱が出てとかなら正直信頼してる成樹なら構わないが、一夏なら『アーーーーッ!?』な展開になりかねん……てか、ますます真実味を帯びてきている。
チョコアイスの美味しさを噛み締めつつ、俺は一気に抹茶アイスを平らげ、一夏と五反田さんの食べさせ合いを延々と見せつけられた。
……俺には、一夏という人間が全くわからなくなってしまった日曜日の昼時の時間だった。
後書き
これを書き終えたのは職業訓練という名のボランティアが終わってからだが、デイサービスの利用者のじいさんばあさんの我が儘が精神的に堪える('A`)
下手すると俺に老害認定されるぜ('A`)
とはいえ、気さくな人も居るには居るんだが……向かない仕事というのだけは再認識させられたぜ('A`)
それはさておき、アーーーーッ!?なネタが真実味を帯びてきているΣ(゜□゜;)
まあ原作の一夏がホモだから仕方ないな( ´艸`)
原作者も「お前がホモって思うならそうじゃねぇか?」的な事をブログで書いてた気がするし( ´艸`)(今は全消しされてわからん
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