IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第384話】
前書き
帰り道~オリジナル
午後三時半過ぎ、そろそろ五反田さんが帰るという事もあり、無理矢理一夏【だけ】で彼女を送らせ、現在シャルと二人きりでモノレールを待っていた。
まだ帰宅するには早い時間だが、シャル自身の買い物も終わったし、俺の方も腕時計の購入も終えたので満足だ。
シャルの着けているレディースウォッチのメンズ版もあるにはあったが、選ばなかったのはやはり他の子にも気を使っての事だ――というのは建前にしか過ぎず、俺自身が上手く皆に説明出来ないから。
決着つけないといけないとは思っていても、正直決めあぐねているのが現状だ。
……正直、皆可愛いし、良いところもあれば悪いところもある。
……結局先延ばしにして、俺はシャルだけじゃなく他の皆もわからないうちに多々傷付けている。
軽く溜め息を吐く俺に、直ぐ様シャルは声をかけてくれた。
「ヒルト、大丈夫? ……今日は疲れたもんね、朝は警察沙汰だし、その後は一夏着いてきちゃうし……」
俺の手の甲に、シャルは自身の手を重ねてくる。
シャルの白い手から、まるでシャル自身の体温が分け与えられるかの様に手の甲からポカポカと温かくなってきた。
「まあ、それもあるが……。 つくづく俺はシャルや皆を傷つけてるだけだなーって思ってさ」
「え……? どうして……?」
「……告白受けて、未だに返事すら返さず、その癖キスはしてるんだからな……」
呟くようにそう告げると、重ねた手を握り、俺の指に、自分の指を絡ませる様に手を繋いだ――所謂恋人繋ぎというやつだ。
「……ううん。 僕――ううん、僕達もヒルトに辛い選択させてごめんね……? でも、僕の想いは変わらないからね? それだけ……君が好きだもん」
好きという言葉に、ドキドキと胸が高鳴る。
……少なくとも、俺はシャルに好意を抱いてるのはわかる、だが……他の子にも言われると同じ気持ちになってしまう。
浮気みたいで正直自身の優柔不断な所に嫌悪してしまう。
そして、そんな好きと告白したシャルに、俺はいつも通りの言葉をかける。
「ありがとう……シャル」
そう言って、ニコッと微笑む――正直、愛想尽かされても仕方ないとすら思えるのだが、シャルは――。
「えへへ……♪」
いつもの様にはにかみ、笑顔を見せてくれる。
正直、俺は卑怯者だろう……もしかすると、心のどこかで、シャルや他の皆は俺を嫌いになるはずがないと思っているのかもしれない。
自分自身の事なのに、まるで深い霧に覆われた様な自分の心……そんな感じがした。
駅構内にモノレールがやって来る――IS学園行きのやつだ。
「シャル、学園に戻ろうか」
「ん。 そうだね」
そう言ってシャルは立ち上がると、購入した荷物を持とうとするが――。
「ん、俺が持つよ」
「あ……。 うん、ありがと、ヒルト」
遠慮することなく、シャルは俺に買った物が入った袋を手渡してきた――それだけ信用されてると思うと、内心では少し嬉しく思うとそのままモノレール内に入り、二人用の座席へと腰掛け、荷物は足の間に挟んだ。
「夕日、綺麗だよね……ヒルト」
「ん? そうだな……あれが沈めば、空には満天の星空が拝める。 IS学園は都会の方だが、空気が綺麗なのか山の山頂で見るぐらい星々が綺麗だからな。 この時期、早朝走ってると暗いけど、空は星の光で綺麗だから結構好きだな」
「そうなんだ? ……僕はその時間、眠ってるからヒルトと走れないよ」
少し寂しそうに笑うシャルの頭を、軽く優しく撫でて微笑む。
撫でる手が心地いいのか、頭を俺の肩に乗せて――。
「……少し寝ようかな? ……眠ってる時にキスはダメだよ? 僕が起きてる時に……ね?」
「ぅ……。 わ、わかってるって。 ……着いたら起こすから、寝ても構わないからな」
「……うん。 じゃあ少しだけ……」
そう言って身を預け、少しすると規則正しい寝息が聞こえてきた。
シャルも疲れたのだろう……今日の出来事だけじゃなく、いつも彼女は人に気を使うのだから。
――と、モノレールが動き始め、窓から覗く景色がゆっくりと動きだした。
規則正しい寝息を聞きつつ、俺は窓の外を眺める。
まだ街には人々が行き交い、車のテールランプが無数に見える。
こうやって窓の外を覗くだけで、視界にはそれだけ色んな人が居て、色んな人生があるのだろうと思うと少し感慨深くなる。
ただ……俺みたいにISを動かせる男は、そうそう居ないだろう。
――というか、何で俺が動かせる様になったのかがわからない……と、突如、雅から声を掛けられた。
『主君、その事だが……少し良いだろうか?』
『う……また訊かれてたか。 ……理由、知ってるのか?』
『……ぅむ。 主君が初めて纏ったISは私だからな。 ……まあ、実を言うと、あの時の私は男性の【誰が触っても】起動が出来るように設定されていたのだ』
そんな雅の言葉に、内心驚きを隠せずにいたが、表情はポーカーフェイスで決めたままだった。
『……じゃあ、俺じゃなくても他の奴にも起動が出来たって訳か?』
『う、ぅむ。 ……だが、その場合だと【また再度その様に調整】せねば男性には使えなかったのだが――その、実は主君は特別に……私が――……ううん、何でもない、主君』
途中で言葉を止め、やっぱり何でもないという雅。
追求されたくないのだろうと思うと俺は――。
『そっか……。 雅、来週からのキャノンボールの練習、サポートしてくれよ』
『了解した。 例え第二世代であろうと、カスタムして推力を強化したこの私なら大丈夫だぞ主君』
声に力強さを感じ、俺はそれに安心すると――。
『頼むぞ、目指せ優勝だ』
『うむ!』
力強い言葉で返事をした雅の声が聞こえなくなると、俺は隣のシャルの寝顔を見た。
規則正しく、さっきと同様に寝息を立てるシャル――更々の前髪を掻き分け、念のため周囲を見るも、モノレール内に人が居なく、それに安堵するとその額に口付けを落とした。
「……口じゃ、ないんだ?」
「う?」
寝息を立てていたシャルの眼差しが、真っ直ぐと俺を捉えていた。
また全身の体温が急上昇するのを感じ、目が泳いでいると――。
「フフッ……。 眠ってる時、キスはダメだよって言ったけど……して良いんだからね? 女の子の気持ちって、複雑なんだよ?」
「ぁ……ぅ……」
言葉にならない声が、口から漏れ出る、気づくと既に窓から海が見え、IS学園が近いことを意味していた。
「……誰も今はいないみたいだし、僕も今日は一夏にイヤな思いさせられちゃったし……。 キスで……忘れさせて? ……ん……」
そのまま身を預け、キスしやすいように上顎を上げるシャル。
さっきまで、あれほど嫌悪だの何なのと思っていたのに、こうして目の前でキスを待つ彼女に対して、その欲を抑えられない。
再度、モノレール内に誰も居ないことを確認し、そのまま欲を抑えられずに口付けを交わすと、そのままシャルは俺の両頬を包むように手を添え、何度か軽く、そして長めのキスを繰り返してから唇が離れていく。
「……えへへ。 モノレール内でキスしちゃった……♪」
「ぅ……ん」
急に恥ずかしさがやって来て、窓の外を眺めてしまうと、シャルは手を握りながら――。
「ヒルト、僕……また一度、ヒルトの家にお邪魔したいな」
「え? あ、あぁ、それは構わないけど」
「……ぅん。 ……そ、その時は……し、シャワー借りちゃう……かも。 なんて……あはは」
「…………!?」
多分、今の俺の顔は真っ赤に染まっているのかもしれない。
言ってる意味はわかる……だが、付き合っていない子とそうなっても良いのかという思いもある。
とはいえ、近いうちにラウラには……その、約束みたいな事をしてしまったし……一体どうなるんだろう、これから……。
自問自答しても誰も答えてくれない、そうこうしている間に、IS学園島へと入り、見慣れた景色が映るとそのまま駅へと到着した。
「ヒルト、降りよっか?」
「あ、あぁ。 ら、来週からキャノンボールだな。 ……わからないこと、いっぱいあるが……よろしくな?」
「もちろんだよ」
いつもの様に笑顔を見せ、頷くシャル。
足の間に挟んだシャルの荷物を持ち、一緒に降りると俺達はそのまま駅構内を出て、寮へと戻る道を辿っていった。
後書き
ヒルトキスし過ぎ('A`)
とはいえ、これぐらい良いかなと思ったりする時も( ´艸`)
原作では間接キスだけで一喜一憂するだけのキャラ(ほぼ全員だが)なのに此方は……んまぁ( ´艸`)
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