IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第380話】
前書き
五反田蘭入
徐々に赤面していく彼女を、一夏は不思議に思ったのか首を軽く傾げていた。
一方の女の子の方は、見てて可哀想になるぐらい表情が真っ赤になり、背中に隠した縞パンツを直していた。
――ていうか、さっき一夏が店内に入った隙にそのまま別行動すれば良かったと思っても時既に遅く、今シャルを連れて店内を出てもどうせ呼び止められるだろう。
そんな考えをしていると、彼女はシャルを見て表情が一変、何故だか不安そうな表情を浮かべていた。
いつまでたっても自分の元に来ない彼女を、一夏は疑問符を浮かべ、来るのを待っていると、彼女自身が意を決したのか真っ直ぐと一夏の元へと足を進め、そして――。
「こんにちは、一夏さん」
笑みを浮かべて挨拶をする彼女、先程の赤面状態が嘘のようで、今はほんのり頬を桜色に染めていた。
顔を見る限り、やはり年下の様に思える――と。
「おっす。 今日は一人?」
そう声をかける一夏に、小さく頷くと口を開く。
「はい。 今日は少しぶらっと買い物に来ました」
言葉遣いが丁寧に感じる――何処か良い所の学校だろうか?
この辺りだと確か私立聖マリアンヌ女学園ぐらいしか思い付かないが……。
そんな考えを他所に、ランジェリーショップ店内で談笑を続ける一夏と彼女。
「そっか。 ――あ、この間の件、ごめんな。 学園祭、見たかったよな? 来年入学するんだし」
「そ、そうですね。 出来れば次からは優先的に私にチケットを譲っていただけると……」
そんな感じで楽しそうに談笑を続ける二人。
もう一夏を置いて、そのまま店内を出て別行動しようと思い、俺は――。
「一夏、その子お前の知り合いか?」
とりあえずそう言って声を掛けると、一夏は――。
「ああ! わりい! ヒルトにもシャルにも紹介しなきゃな」
いや、別に紹介は――と言葉に出かけるが、ぐっと堪える。
とりあえず談笑を切り上げ、一夏は――。
「蘭、こいつは俺の友達でクラス代表の有坂ヒルト。 ニュースで知ってるだろ?」
「はい! 確か世界初のIS男子操縦者で、一夏さんより成績が悪いってニュースで言ってました。 あれ? 一夏さんがクラス代表じゃないんですか?」
そう首を傾げて一夏に聞く彼女――多分、悪気は無いのだろう……そう思いたい。
――というか、一夏に友達と紹介されて微妙な心境な俺……友達なのだろうか?
それはさておき、やはり、外での評価というのを聞くと、色々メディア情報を真に受けている辺りは一般的な子かなという印象を俺に与えた。
「俺はクラス代表じゃないんだよ。 転入した日にヒルトに決まっていたからな」
「そ、そうなんですか……」
そんな二人のやり取りを見つつ、俺は合間を縫って挨拶をした。
「今ご紹介に与りました、有坂ヒルトと言います。 よろしくお願いします」
「あ、はい。 ……あれ? ニュースでは問題児って訊いていたんですけど……結構礼儀正しい……」
誰にも聞こえないように呟くその声も、俺の耳には届いていた――てか、外のニュースで俺はどんな形で取り上げられてるんだろう?
此方もニュースは入るが、基本食堂のテレビとかは女子が歌番組やらクイズ番組ばかりチャンネルを合わせる為、ニュースが全く見れない。
勿論空中小型投影ディスプレイを買えば良いのだが、あれは値段が恐ろしく高く、俺なんかが買える代物ではないのだ。
――と、今度は一夏がシャルの紹介をし始める。
「蘭。 こっちはシャル。 クラスメイトで、フランスの代表候補生」
そう言って説明する一夏に、シャルも礼儀正しく御辞儀をすると。
「シャルロット・デュノアです。 よろしくね」
そう言ってシャルは彼女に手を差し出し、握手を求める。
「ご、五反田蘭です。 よ、よろしくお願いします」
おずおずと差し伸べられた手を握り、握手をする五反田さん。
……流石にシャルの性別詐称から時が流れたためか、彼女は疑問に思わなかったようだ。
この辺り、少しホッとしていると一夏が口を開く。
「ほら、学園祭の時に俺の友達で弾って居ただろ? あいつの妹なんだよ」
一夏はそう説明するが、正直彼は確か一組に顔を出していなかった筈。
案の定シャルは首を傾げて思い出そうとするも、やはり無理だったらしく――。
「そうなんだ」
そう一言言い、ニコッと微笑む。
そんなシャルに負けじと五反田さんも――。
「そ、そうなんです」
そう言って笑顔を返す――彼女はシャルと張り合ってるのだろうか?
互いに握手を交わしあうと、その手が離れる――そして。
「で、来年IS学園受けるんだってさ。 つまり、俺達の後輩になる予定なんだよな、蘭?」
「は、はい! そうです! ぜひ一夏さんにはご教授の程、よろしくお願いします!」
そう言って一夏に折り目正しく、御辞儀をするとそのまま顔を上げて――。
「ニュースで見ました! 先日、学園祭を襲撃した謎のテロリスト、一夏さんが撃退したって!」
「「え?」」
俺とシャルは、互いに顔を合わせ、目を白黒させた。
――ニュース自体は確か一日だけ取り上げられたが、何処の局がそんな報道をしたのだろうか――確か情報規制が掛かってた筈だが。
そう思っていると、一夏は何を思ったのか――。
「あぁ、少し苦戦したけど何とか相手を撃退したぜ」
「「…………」」
――この子の期待を裏切らないために嘘をついてるのか、はたまた一夏の脳内では撃退したということになってるのか……。
……真実は話すわけにはいかないから、黙っておこう……言えば査問にかけられるし。
「あ、そうだ。 話はかわるけどさ、あのチケットまだいけたはず。 蘭、ケータイ持ってる?」
「は、はひっ!」
声が裏返る彼女は、スカートのポケットから携帯を取り出す。
それを見てから一夏も携帯を取り出すと操作し、ダイレクト接続に切り替えてデータの転送をした。
多分キャノンボール・ファストの特別指定席だろう――生徒一人につき、一枚の招待券のチケットデータが貰えているのだが……俺はどうするかな。
因みにシャルは学園に返した――送りたくても、友達はフランスに居るだろうし、帰国すれば拘束されるかもしれないし――代表候補生とはいえ、性別詐称していたのだから……。
デュノア社に関しては株価が下がってはいるが腐っても量産機シェア三位な上にISスーツ等の売り上げも良いらしく、何とか潰れずに済んでいるが……とはいえ、いつか天罰が下るだろう、主にシャル――実の娘を使ってハニートラップを仕掛けようとした罪で。
とはいえ、肝心のシャルが俺に向いてる辺りは誤算だったのかもしれないがな……。
腕組みしながら考え事をしてる間も、一夏と五反田さんの会話は続いていた。
「あの……これって?」
転送されたチケットデータを眺めながら聞く五反田さん。
「今月行われる『キャノンボール・ファスト』の特別指定席。 見たいだろ?」
「あっ、はい! ぜひぜひ!」
一夏のキザっぽい言い回しに頬を赤らめる五反田さん――この子も一夏が好きなのだと確信しつつ、夏みたいにまた下着の整理とか頼まれたりしないかと気をつけているが、どうやら今回はそんな女性は居ないらしい――。
とはいえ、早く出たいが二人が会話を続けていると切り出すタイミングが難しいので、俺はとりあえず待つことにした。
「でも、学園祭の時と同じで一人一枚なんだよなぁ。 招待券。 友達の分まであげれなくてゴメンな」
「い、いえ! 大丈夫です! 私の友達は皆、中継で満足するタイプですから!」
「へぇ、そうなんだ」
データ転送を終え、一夏は携帯をポケットに仕舞い、五反田さんはポケットではなく肩に下げた鞄の中に携帯を仕舞った。
漸く切り出すタイミングが出来たと思い、俺は口を開く――のだが、それよりも早く、五反田さんの口が開いた。
「あ、あの! 今日一緒にまわっても良いですか!?」
両手で拳を作り、力一杯声を出す五反田さん。
何とか勇気を出して声を出したのだろう、言葉は力強く感じたが語尾が何だか少し不安そうな印象を感じた。
「うん」
あっさりと返事をした一夏だが、いつの間にお前が仕切ってるんだとは思う。
だが、これで一夏は彼女に付き合うだろうからゆっくりシャルと二人で買い物に行けるだろうとも思った。
――と、あっさり返事が貰えて安心したのか、体勢を崩す五反田さんを、慌てて俺は支えた。
一瞬脳裏にセクハラや痴漢といった言葉が過るが、彼女は目をぱちくりさせて俺を見上げていた。
「大丈夫か? っと、ちゃんとたてるか?」
「は、はぃ……」
「うん。 まあでも立ち眩みとかだと心配だからな、折を見て何処かで休憩をとるといいかもな」
そう言って、確りとその場でたってるのを確認すると、俺は支えた手を離してシャルの元へ。
「……何気なくヒルトって、支えるの早いよね」
「……店内で倒れたら店の人にも周りの人にも迷惑かけるからな。 てかタイミングまた逃したな……」
呟くように言葉を吐きつつ、早くこの異空間から脱け出したいと思っていると後ろから五反田さんの小さな独り言が耳に届いた。
「……テレビや情報雑誌で言ってるイメージと違う……。 ……ぅぅん、でも、あの人は落ちこぼれの問題児だって人気コメンテーターの人も言ってたし。 ……うん、一夏さんの方がカッコいいし、強いし、優しいし、優秀だし、惑わされちゃダメだもん……!」
――丸聞こえという罠、だが俺は別に優しい訳じゃないからな……今のだって、店の人にも迷惑かけるし、倒れて怪我でもしたら彼女もせっかくの休みなのに気持ちが落ち込むだろうからな。
まあ問題児なのはそうだろうが……主にアリーナの使用時間を越えての訓練とか。
そう思っていると、一夏の暢気な声が聞こえてきた。
「じゃ、皆で色々見て回るかー」
「あ、悪いが俺とシャルはここで別行動とるよ。 五反田さんも、その方が良いんじゃないか?」
「え、えぇっ!?」
いきなりの別行動発言に、戸惑いを見せる五反田さんだが、反面これはチャンスだと思った筈だ。
彼女自身、好きな人と二人きりの方がいいだろうし、邪魔もなくなるから願ったり叶ったりのはず。
みるみる内に表情に輝きを見せ、返事をしようと口を開こうとしたその時、一夏が――。
「何でだ? 別行動とるより四人でまわる方が楽しいじゃん。 そうだろ、蘭?」
ニコッと眩しい笑顔で五反田さんへと笑いかける一夏。
そんな当の五反田さんはというと、とろんとした目で一夏を見、自分の意見を言った。
「そ、そうですね……。 四人でまわる方が楽しいです……♪」
「だろ?」
同意を得られて嬉しいのか、更に笑顔を見せた一夏――そして、五反田さんは……。
「か、カッコいい……」
「え? 何だって?」
「あわわっ!? な、何でもないです、一夏さんっ」
難聴発動しても、恋は盲目らしく何をしてもかっこよく見え、かっこよく聞こえるのだろう。
「……シャル」
「……仕方ないよ、ヒルト」
諦めた様に呟くシャル、多分二人で抜けても一夏は俺達を探しだそうとしそうだしな……。
「わかったよ。 んじゃ、四人で回ろう……」
「おぅ。 じゃあ行こうぜ?」
「は、はいっ♪」
「……うん」
五反田さんは嬉しそうに一夏の隣へと移動し、そのまま一緒にランジェリーショップを出る。
一方のシャルのテンションは右肩下がりで、既に一日使う体力の殆どを使い果たした様に見えた。
「シャル、行こう。 ……ほら」
そう言って俺はシャルの手を取り、繋ぐ。
もちろん恥ずかしいけど……少しでも元気になればと思い、キュッと優しく、俺の体温を分け与える様に繋ぐと――。
「……えへへ、ありがとうヒルト。 ヒルトの手……僕、好きだよ」
そう言って空いた手も繋いだ手の甲に重ねて嬉しそうに微笑むシャル。
そんな俺達の様子を、周りの人達が見てるのに気付いて全身の体温が急激に上昇するのを感じた。
「い、行こうぜ」
「そ、そうだね」
短く返事をすると、俺とシャルはランジェリーショップを後にする。
一夏と五反田さんの二人は、少し離れた所で待っていて、俺とシャルが手を繋いで出てきた所を見るとホッとした表情をしつつ、小さく独り言で――。
「……いいなぁ……。 ……私も、一夏さんと……」
「え?」
「な、何でもないですっ」
そんなやり取りを見ながら、ショッピングモールを歩いて散策した……。
後書き
はてさて、外ではどんな評価やら┐('~`;)┌
とりあえず一夏は原作をリスペクトした結果だぜ( ´艸`)
一夏ディスり過ぎと思う人は、原作を再度見てみると違和感が薄らいで来ますよ( ´艸`)
カッコいい一夏見たいなら、多分他の作品見る方が( ´艸`)
自分はあの一夏をリスペクト( ´艸`)
箒はヒロインにでもしない限りはリスペクトですな( ´艸`)
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