詩織を使って、昭和のテレビCMを再現してみた。
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全裸より恥ずかしい格好で
前書き
懐かCM。当時の週刊誌の記事をもとに、ほとんど誇張がないように書いてます。
・
冷凍実験番組に出演したぐらいで、コネができたとは思えないが、テレビ局からまたオファーが来た。
――――――――――
コマーシャルだ。
ヌードだけど、お色気じゃないらしい。
ちなみに、今流れているお色気CMといえば、
・完全ヌードの女性がバスタブではしゃぐ。
・スカートが風に吹き上がった瞬間をカメラで連写する。
・ミニスカートの女性が鉄棒でクルンと回る。
あと、あまり必然性のないレオタードやテニスウエアの女性を使っているものも多い。
きれいな裸ぐらいで、話題になるのかな。
――――――――――
スポンサーが依頼した広告代理店で説明を受けた。
コンセプトは、処女の花嫁が、美しい初夜のために、商品の石鹸で身を清めるというもの。
裸のからだ一つに、石鹸だけで嫁入りする――よくわからない設定だ。
絵コンテを見せられた。
両腕でさりげなく胸を隠して、石鹸を両手でささげ持つ、上半身裸の女性。
まあ、いいんじゃない。この程度なら。
――――――――――
ういういしい表情が出せますか? と訊かれた。
このCMは、公募に応じた素人を――実際に脱がせて、5バージョンぐらい作るのだという。
私も、表面上は公募から選ばれた、初脱ぎの19歳女性というわけで、さらに処女だという建前なのだ。
初めて裸を見せる花嫁の、恥ずかしくも嬉しい(嬉しくも恥ずかしい?)表情がいるのだという。
あら、話が違う。
何人も公募してたなんて聞いてない。
――――――――――
いわば、私はサクラ。
集まった素人の乙女たちは想定以上の恥ずかしいオーディションや撮影を経験することになる。
だから、慣れたヌードモデルが率先して脱いでみせることで、乙女たちの抵抗を減らそうというモクロミなのだ。
まるで、マラソンのペースメーカーだ。
下手したら、私の裸はボツになるんじゃ?
▼▼
書類選考を通過した15名(私を含む)が会議室に集められた。
普段着ばかりだが、みんな清楚な印象だった。
私の番は6番。1~5番は最初からいない。私が無審査だということのカモフラージュだ。
合図があり、トップバッターの私が立つ。
OL風のスーツだ。
さらに合図。
公開脱衣だ。
スーツの下は青いビキニの水着をつけていた。
乙女たちも同じ。あらかじめ更衣室で着替えている。
ビキニの水着かシンプルな下着で審査に望むのだが――
靴も脱いで裸足になる。
くるりと回ったりはしない。バックは撮らないから関係ない。
ただし――
そろそろいいですか?
という進行役の言葉に応じ、
私は上の水着を外した。
――――――――――
恥ずかしいですか?
と質問され、
はい、と小さく答えた。
そして、緊張します、とつけ加えた。
正直な気持ち?
うーん、平気じゃなかったのは確か。
事前に指示されたとおり、恥ずかしがる演技をしているうちに、本当に恥ずかしくなってきた、みたいな?
絵コンテ通り、石鹸を渡され、ポーズし、はにかむ。
後ろの乙女たちは、半裸の私に何を感じるだろう。
ポーズを解き、乳首が再び現れた瞬間が一番恥ずかしかった。
――――――――――
私を含め、7人が合格した。
半裸オーディションは予告してあったから、あっけないほど、みんな冷静だったのだ。(口では、恥ずかしいと言ってても)
こういう感覚、男性にはわからないのだろうな。
下着姿を平気でさらしたのが3名。
最初から水着の上をつけていなかったのが2名。
全裸でもかまいません、と言ったのも2名だった。
“恥ずかしがる処女の花嫁”の実態がこれなのだ。
――――――――――
撮影の日がきた。
7人全員がテレビ局のスタジオに集められた。動画の撮影だから、テレビ局が便利なのだろう。
撮影本番まで一時間――7人とも、すごい格好にされていた。
白いショーツ一枚にガウンを着ているのだが、問題はそのショーツだ。
極端に小さい。
恥毛こそカバーしているが、お尻のほとんどは隠れていない。
プロのヌードモデルとしては、全裸のほうがマシというシロモノだ。
撮影しないはずの下半身まで“衣装”が用意されていることについて、
羞恥心を最大にしたいからと、プロデューサーがあっさり手の内を明かした。
さすがだな、と思った。
全裸のほうがかえって恥ずかしくない、という女性心理を知り尽くしている。
希望者にはニプレスが配られ、全員がガウンを脱いだ。
リハーサルが始まった。
――――――――――
カメラの切り替えはなし。
ショーツ一枚で石鹸だけを持って歩きだし、低い台に立って正面を向き、はにかむ――までをカメラが水平に追うのだ。
リハーサルは動きと表情の確認だから1,2回で済んだが、
本番は、乳首かニプレス、もしくはショーツが写り込んだらNGである。
臍(へそ)までアングルに入れるので、極小ショーツは無意味ではなかったのだ。
――――――――――
意外と本番もスムーズにいった。
裸に順応するかしないかの、ギリギリの心理状態がうまく作用したのかもしれない。
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私は、NGを出した。
むき出しの乳首ではなく、ショーツが写ったという。
それなら、と、
私はショーツを脱いだ。
▼
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ON-AIR用の画像をVHSカセットにダビングしたものが、後日郵送されてきた。
7人全員のバージョンが入っていた。
彼を部屋に呼んで、一緒に見た。
この子が一番美少女とか、この子の表情がソソるとか、
私を嫉妬させるようなコメントを彼は言った。
現場ではみんな完全ヌードだったんだよ、と私が言うと、
嘘だろう、と彼は言った。
そう、嘘。これ穿いてた、と、
枕の下に隠しておいた撮影用ショーツを取り出して、見せた。
穿いてるとこ見たい、と彼は言った。
言われなくても、そうするつもり。
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