| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?

作者:笠福京世
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第25話 ニイタカヤマノボレ八八九四六四 ターン27,28

 
前書き
感想欄で紹介されたダメ主人公総合スレまとめ「東郷毅」が面白過ぎた。
今後の東郷毅像に影響されても仕方ない。 

 

――――軍令部総長室――――

「エイリス貴族の四国総督が亡命希望か。
 本名はピスター・ダーウィン、声は一番可愛い、怪獣研究が天職……」

「提督としての能力もあるみたいですが?」

「野郎だし東郷長官はいらないって思ったから回して来たんでしょ?
 本人の希望もあるし平賀技術中将の下に付けて
 四国の新高山にある宇宙怪獣研究所に送ろう。行政参謀から連絡入れといて」

「はいっ!」

「伏見総長、災害対策艦隊司令の山本大将から連絡です。
 第二艦隊、特設艦隊、海援艦隊、潜水艦隊により災害駆除に成功。
 星域への被害はあるが治安は問題なし、
 バリア艦により艦隊の損害も無しとのことです」

「流石だ。山本大将が後ろに控えてくれているから、
 太平洋艦隊も印度洋艦隊も安心して前を向いて戦える」

「しかし、損害はありませんが弾薬と燃料の消耗が……
 東郷長官の真珠湾計画に影響が出るのでは?」

「後方参謀の懸念も分かるけど、
 軍需の備蓄については猫平内閣の閣僚が頑張ってくれてるから許容の範囲だ」

「それより作戦参謀としてはハワイ制圧作戦の前に防衛艦の実戦運用と、
 陸軍海援隊との連携強化が図れたのが大きいですね」

「そうですね。星域住民の方々かも沢山感謝されたみたいですし」

「ま、帝ちゃんも喜んでたし、
 災害対策に関わった将兵には一週間の特別休暇も貰えた。万々歳でしょ」

「伏見総長は休暇はどうされます?」

「う~ん。消化できてない有給が溜まって来たから、
 思い切って欧州星海域にバカンスにでも行こうかな?
 アプフェルザフト(林檎ジュース)の在庫も残り少ないし」

「相変わらず冗談が下手ですね。んっ、緊急通信です。確認します」

「…………どうした?」

「はい、ベトナムの第三艦隊から連絡です」

「エイリス軍の侵攻準備の兆候を捉えたか?」

「はい、それと第三帝国から小型Uボートで亡命軍人が……
 大ローマで敗れたロンメル元帥から伏見総長への連絡を預かってるそうです」

「分かった。直接通信するので繋いでくれ――」

「はい。量子通信回線開きます――」



――――印度洋艦隊司令部――――

「ハワイからマイクロネシアに侵攻してきたガメリカ偵察艦隊は、
 第四艦隊、第六艦隊で撃退か。第七艦隊は東郷長官の命令で後詰待機。
 こうなると南雲中将による、田中少将の教育訓練って感じだな」

「インドカレーからのエイリス侵略艦隊も第三艦隊と海兵艦隊で撃退。
 しかも後詰の潜水艦隊の到着前に。日頃の図上演習も随分とお盛んな様子で(昨夜はお愉しみでしたね)

「えーやん、ベトナムにいるのは遠藤中佐と利古里ちゃんの二人だけやし」

ま、東郷長官のように何週間も順番待ちじゃないってだけマシでしょうか?(幕間を望んでる読者もいますよ?)

「最近なんだか上官の扱い酷くなってない?」

「はい。揶揄うの楽しいです」

「……酷い」(´・ω・`)しょぼん

「(最近の総長は夜の性生活に満足されてるのか、キレることもないし、カワイイ……かも)」

「潜水艦隊のデーニッツです。入ります」

「ふぁい」

「……伏見? 話があると聞いてやってきたんだが?」

「ごめん。先に確認だけどレーティア総統からの通信は?」

「総統からの連絡は……まだ、ないです」

「……そうか。近々、デーニッツ提督にも連絡があると思う」

「伏見に、先に総統から連絡があったんですかっ!? なんでっ!! ……ヤハリカアクマコロスゾ」

「落ち着いてくれ、デーニッツ提督。何か怨念(心の声)まで漏れてるし。
 軍令部にもレーティア総統からの連絡はない。届いたのはロンメル先輩からだ」

「ロンメル元帥から?
 しかしロンメル元帥は大ローマでエイリス軍を相手に……」

「大ローマ星域はエイリス軍に占領された。
 ロンメル先輩の“狐”艦隊は全滅したそうだ。
 退艦する者もおらず全員が最後まで戦ったと……」

原作ゲームではロンメル先輩は、
ドクツ滅亡ルートでも生きてた記憶があったんだけど……情報が不確かだ。

「そんな……マインシュタイン元帥に続いて……」

「スエズで通商破壊に任務についていた小型Uボート艦が亡命してきた。
 ロンメル先輩からの遺言を預かってね」

「ロンメル元帥は何と?」

――親愛なる異国の後輩へ

療養から復帰した総統閣下から最後の電文を頂いた

『今まで倒れててごめん。随分と迷惑をかけた――
 ――艦隊ごと降伏してくれていい――本当にすまなかった――ベルリンで待ってる』

君主とは思えぬ謙虚さ。ますます惚れる文面だ。伏見だってそう思うだろ?

しかし俺もマインシュタイン元帥と同じで降伏という選択肢を選ぶことができない。
最後まで祖国ドクツを、総統を守護(まも)るために、あがくつもりだ。

だから俺とは違った選択肢を選ぶことができるだろう後輩に、
先輩として最初で最後のお願いする。

このままでは第三帝国は滅びるだろう……
総統閣下は捕虜になれば、戦争責任者として裁かれ生贄として殺されるだろう。
だから同盟国の日本に亡命できるよう取り計らって欲しい。

報酬は俺の部屋にあるドクツのワインコレクションだ。オマエの好きだった甘い白もある。
アプフェルザフトも無くなって困ってるんだろ? ついでにドクツまで取りに来い――

「……ロンメル提督……総統っ……うっ……ぅぅぅ」

「レーティア総統は療養からは復帰されているが、
 日本に連絡がないということは、それどころではないのだろう」

「軍令部というか僕の予想だが、レーティア総統が復帰されても
 現状からドクツが勝利を手繰り寄せる確率は一割も無いだろう」

「……そんなっ……ウソです……悪魔は……いつも恐ろしいことを平然と告げてくる」

「提督だって両元帥を失ったドクツ軍の損害の大きさは分かってるはずだ」

「わかってます……けど……総統閣下が……」

「デーニッツ提督にレーティア総統から連絡があれば日本に亡命するように説得して欲しい。
 受け入れは僕が何とでもしてみせる。軍令部に連絡があれば僕の方からも説得するつもりだ」

「VTVN提督のいる惑星パリが陥落すれば、ベルリン星域は三方から攻められてチェックメイトだ。
 それまでに亡命艦隊の受け入れ、救出艦隊の派遣などを考えて準備もしとく」

「……わかりました」

「あと、あんまり暗い顔をするな。
 気持ちは分かるけど、たぶんレーティア総統だって不安さ。
 第三帝国の運命を一人で背負ってるんだ。
 デーニッツ提督が不安な顔をしてたら、総統閣下だって心配になる」

「……はいっ、そうですね……そうですよね……わかりました……ダンケシェーン(どうもありがとう)……伏見」



――――軍令部総長室――――

「伏見総長、太平洋艦隊の東郷長官より秘匿通信。
 ニイタカヤマノボレ八八九四六四――です」

「ついにハワイ侵攻作戦が始まったか」

ハワイ侵攻作戦は制圧までを含めて真珠湾計画として準備が進められてきた。
惑星ハワイにはガメリカ共和国の最大規模の軍事基地、真珠湾(パール)基地がある。

ある軍事専門家が「世界中で最も美しい最良の宇宙基地である」と言って真珠(パール)の名を付けた。
名前に相応しく宇宙地政学的にも最良といえる位置にあり、
最高に防御され、最大級の補給支援を行うことのできる基地は、他のどこにもないだろう。
日米開戦以来、この真珠湾基地の攻略に軍令部も海軍司令部も頭を悩ませ続けて来た。
第三世代艦の開発と配備が進んでようやく目途が立った。

現在、大日本帝国海軍で実戦配備されている全戦力は

戦艦:15隻 (長門、三笠、犬御殿を含む)、巡洋艦:4隻、駆逐艦:9隻、
防衛艦:8隻、索敵艦:5隻、補助艦:6隻、空母1隻(試作空母、若宮)、潜水艦:3隻、記念艦2隻だ。

1年以上かけて開発、造船、慣熟訓練を行ってきた。
第一世代艦が六割ほど、第二・三世代艦が四割だ。
支配星域の数に比べて未だ国力(物量)でエイリス・ガメリカ・ソビエトに、
大きく劣っているのが分かるだろう。

しかし大バリア、大防空機能を備えた防衛艦の運用をドクトリンの中心に採用している国はない。
防衛艦の登場により、宇宙艦隊の戦いは大きく様変わりするだろう。
これまで以上に事前の偵察および情報戦、敵戦力の分析が侵攻作戦の勝敗を分ける。

「太平洋艦隊は大丈夫でしょうか?」

「第三艦隊を除く残り七つ正規艦隊が参戦、
 非正規艦隊からは特設艦隊、遊撃艦隊、海援艦隊の三個艦隊が参加します。
 大日本帝国海軍の総力を挙げた一大会戦です」

「東郷長官を信じましょう」

「第三艦隊、海兵艦隊はエイリス軍の動きに注力。
 マニラ2000の潜水艦隊はいつでも対応できるように連絡」

「本土防衛の零号艦隊を経由した秘匿通信が来ました―トラトラトラです」

「トラブルなく、図上演習通りに各戦域に艦隊が集結か」

「第七艦隊は戦域に参加せず後詰のようです」

「東郷長官は九個艦隊を三つに分けて敵を殲滅するつもりだ」

「第一戦域は捨てましたか」

「偵察艦隊だけだ。戦況に影響がない。謎の惑星の調査は諦めたそうだ」

こちらで出来ることは何もないが、戦況が気になるのだろう。
時折り送られてくる情報を分析しながら幕僚たちが騒ぎ始める。

「最近は軍令部総長が第三艦隊兼任で前線にいるから、
 後方待機が少なかったけど、大会戦の結果を待つだけってのは逆に不安だな」

「惑星の時間と、亜光速で移動してる宇宙艦隊の戦闘時間はズレがあるからな」

「どちらにせよ、量子通信での報告を待つだけさ。無事を祈ってろよ」

「伏見総長はいつも落ち着てますね……」

「そうね(かわかっこいい……)」

「新任の太平洋艦隊司令官キャロル・キリングの力量は未知数だが、
 ま、東郷長官の大戦術家としての力量に疑いはないさ」

「イーグル・ダグラスは大統領選挙に負けたんだっけ?」

「負けたのは党の候補者指名選挙じゃなかった?」

「ガメリアの大統領選挙は予備選やら本選挙とか複雑だからな」

「キャロル・キリングはキリング財閥の令嬢だろ。まともに戦えるのか?」

「下が優秀であれば司令官は判断力や決断力、理解力さえあれば良いんだ。
 あそこは軍需・兵器産業の総本山だ。そりゃ優秀な幕僚スタッフも抱えてるだろうさ」

「世の中には優秀な幕僚スタッフを使いこなせない上官も多いけどな」

「エイリスの貴族提督とか?」

「あの国は騎士に叙任されてる提督と、
 貴族の地位だけで上に立っている提督との差が大きいな」

「僕に言わせたら東郷長官以前の旧海軍も酷かったと思うけどね。
 敵を侮るより、敵の振り見て我が振り直せだよ」

「はっ、すいません。伏見総長」

「そうだよ(便乗)」

「ま、トラトラトラは図上演習では勝率99.9%。
 最小損害は小破1と中破1、最大損害は三艦隊で中破2の大破1のケースだ。
 この条件で東郷長官を相手に勝てるとしたら、お手上げだよ」

「伏見総長でも無理ですね」

「無理だね。もしも真珠湾計画が失敗したら御前会議では降伏に一票入れるかな?」

「縁起でもないこと言うのは止めて下さい」

「そうだよ(便乗)」

「この戦いが終われば結婚したい……とかよりマシじゃない?」

「婚約中の伏見総長が言うとシャレになりません!!」

「あっ、第一艦隊より、第七艦隊経由で秘匿量子通信が入ってます」

「やったか?!」

「おいやめろ」 
 

 
後書き
ハワイ侵攻、ドクツの命運、レーティアの亡命はどうなるか……
物語の序盤は終わり、中盤へと差し掛かり、情勢の変化が加速していきます。

史実の新高山は台湾の玉山のことです。富士より高い、新しい日本最高峰の山の意味でした。
えろかみ大帝国では四国星域にありアボリ人の聖地とされているという設定です。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧