| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?

作者:笠福京世
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第16話 傷心の陸軍長官を慰めるつもりが…… Ev05

 
前書き
幕間の導入部を書こうとしたら長くなったのでイベント扱いにした。 

 

先日、南方艦隊の司令部に支配下星域に正体不明の偵察艦隊が接敵してきたとの報告があった。

この時期に接近してくる敵国はエイリスだけだと分かっていたし、
外交戦も始まっており相手の出方を見守るために様子見することにした。

ところが陸軍の不祥事を知り、少しでも汚名を晴らそうとした山下長官が、
「海軍は手出し無用だ」と言い切って陸軍艦隊単独での迎撃に向かう。

いくら陸軍長官と言えども南方艦隊の管轄宙域での独断専行は大問題だ。
諭そうとしたが何を言っても無駄といった感じで……止めることができなかった。

陸軍艦隊は偵察艦隊の殲滅に成功したものの予想以上の損害を負ってしまった。
後日、独断専行による損害からの復旧で陸海軍制統合改革の進捗計画が遅れることになったことを謝罪に来た。
誰よりも本人が短慮な行動を悔いて、自らを責めているのが分かるので、その時は何も言わなかった。

東郷長官であれば「落ち込んでる女の子の心の隙間に入り込んで口説くのは趣味じゃない」とか
カッコイイこと言うんだろうけど、エロ主である僕はイベントのチャンスがあれば逃さないという姿勢だ。

この世界を作り出した神様(ALICE SOFT)は優しくないのだ。
エロゲー主人公だからと甘えていると、いつの間にか熟女ヒロインが、
他の男に寝取られたりするゲームを作ったりするのが神様の本性(ALICE SOFT)だ。
戦国ランスの織田香姫の喪心イベントの衝撃は未だに忘れられない。忘れない、絶対にだ。

エロを我慢して軍令部総長の仕事を真面目に行っているのだって……
油断すると日本滅亡とか人類滅亡とか軍人辞めると回避不能なバッドエンドがありうる恐ろしい世界なのだ。
神様転生ってイージーモードかと思ってたのには実際はハードモードだったでござる。
転生特典でノーマルモードくらいにはなってるし、ルナティックじゃないだけマシだと思おう。

それに何より東郷長官が主人公属性を保有したままなのだ。原作ゲーム経験者はご存知だろうが、
東郷毅はナンパという挨拶から始まって最初は拒否されるが、巧みなスキンシップにより近づき……
気が付けば女性キャラが惹かれて→いつの間にか素敵!抱いて!感じちゃう!大好き!みたいな流れになる
不思議な魅力を持った存在なのだ。何それマジ怖い。恋愛関係のライバルには絶対なりたくない相手だ。
一話完結で、出会い→恋→エッチまで描かれる少女漫画のような展開がリアルであるのだ。※ただしイケメンに限る
気を抜けば僕が狙っていた女性が寝取られてしまっても不思議ではない。

エロ主だって楽ではないのだ。ヒリヒリとした緊張感の中で生を感じている。

それに利古里ちゃんは婚約者。なんとかしないと――。


――――軍令部会議室前――――

「……ん?」

陸海統合軍制改革の定例会議が始まる前だが険悪な雰囲気が漂っていることに気付く。
少し離れた場所で陸軍の提督たちが利古里ちゃんを取り囲み口論している姿が見えた。

「独断専行した挙句に我が陸軍に多大な被害を与える。呆れたものだ……」

「まったくだ。どれだけ海軍に遅れを取れば気が済む。やる気があるのか?」

「我が陸軍が情けなく見られているのも全て貴様のせいだ」

「これ以上、山下元帥の顔に泥を塗るつもりなら、長官などやめてしまえ!」

日本海軍では「階級が一つ違えば神様と奴隷」だと昔は言われていたが陸軍は違うのだろうか?
まあ最近知ったんだが利古里ちゃんは陸軍中将なんだよね。

これにも原作ゲームで描写されなかった深いわけがある。
四大長官は先代までは推薦によって選ばれた人物を帝が選任するだけであったが、
現在の帝となってからは推薦は完全に無視され、殆どの長官は帝の一存で選ばれている。
猫平内務長官と宇垣外務長官は帝国議会からの推薦という形式をとっているが、
東郷海軍長官、山下陸軍長官は帝が殆ど独断で選んだ人選なのだ。

利古里ちゃんが陸軍長官に選ばれた時の階級は陸軍少将。
そうなると中将・大将の反発が強いのは当たり前で、
祖父である山下元帥も突き上げをくらって禊として年齢を理由に軍から身を引くことになった。

周囲が敵ばかりの環境の中で少しでも実績を上げようと無理を重ねて頑張っていたのだと知ったときは、
今までの海軍に対する普段の厳しい言葉遣いと、
お見合いしたときの差に感じていた違和感の謎が解けて妙に納得した。

「な、なんだ? 文句あるのか?」

敬愛する祖父の名を持ち出されて険しく眼孔を光らせた利古里ちゃんに陸軍士官がうろたえる。
親の七光りを嫌ってはいるが、利古里ちゃんは祖父に憧れて陸軍に入ったのだと知っている。家族思いなのだ。

「……いえ。先輩方の仰る通りです。返す言葉もありません。
 ですから、今の私にできることは戦場で戦果を上げ陸軍の汚名を晴らすのみです」

う~~ん。軍長官に求められるものって戦場での働き“だけ”じゃないんだけどな……。
この日本帝国で陸海の長官職は軍令と軍政の両方を担う存在だ。

軍政は軍の全体を掌握してコントロールできる機関のことで、よく制服組とか言われてる組織。
軍令の方が、より現場に近い機関というか、軍政で定められた目標を達成するための計画を立て指揮する組織。

海軍は軍令部で戦争の方向性を決めているような印象を受けるかもしれないけど、
それは軍令部総長の僕が特例で政治的意思決定の場である御前会議に参加しているからだ。

本来であれば海軍長官が指示した方針に疑問など持たずに作戦を計画し遂行する組織だ。
東郷長官は自身が海軍随一の大戦術家でベテラン指揮官の人材不足もあって、
宇宙艦隊総司令官として前線に出ているが、
本来であれば決戦以外は後方でのんびりと指示を出していればいい立場なのだ。

つまり軍政家としての資質を持つ軍令部総長の僕に海軍長官の仕事の一部を丸投げして遊んでるのだ。
マジうらやましい。たぶん原作ゲームの裏では秋山総参謀の他に泣いてる軍人が大勢いたはずだ。
その代わりに艦隊総司令官としての仕事に全振りして戦場での戦果を上げ続けているのというわけだ。

利古里ちゃんは言葉では言い訳せず、毅然とした態度で男たちの前から去る。

「ふん……態度だけは一人前だな」

「お疲れ様です。会議前の打ち合わせですか? 統合軍制改革にご協力をお願いしますね」

何も聞いてなかった振りをして何食わぬ顔で陸軍の提督たちに近づく。

「おお……伏見総長ではありませんか」

「いやあ。うちの長官が統合軍制改革の件で何度も軍令部総長にご迷惑をおかけしてすいませんね」

露骨に態度を変えてヘコヘコと媚びを売ってくる。

自分たちで何も知らない陸軍長官を統合軍制改革の反対派に押し上げて、
軍令部に直訴させたくせに調子のいいことを……。

「仕事とプライベートは別だと、生意気な山下を叱責して追い返されたとか? ご立派ですな」

伏見空と山下利古里は婚約関係だが、陸海統合軍制改革では激しく対立しているという……
間違ってもないが、正しくもない噂が広まっているが、都合が良いので放置してる。

「組織の長として部下や国民の命を帝より預かってるわけですから線引きをしないと」

特に否定せず、当たり障りのない回答を行うと噂を事実だと思い込み。
次々と利古里ちゃんの悪口を言い始める。(#^ω^)ピキピキ キレても良いかな?

「それに比べて山下の無能と言ったら……」

「やはり女が陸軍長官など荷が重すぎる」

「長官にも関わらず戦果にのみ囚われるとは匹夫の勇ですな」

「軍政家として見事な手腕を発揮されている伏見軍令部総長を見習って欲しいですな……ははは」

よく言うよ。陸軍長官を軍政の場で孤立させお飾りにして遠ざけたのはお前らだろ?
陸軍長官に自分たち汚職や腐敗を悟らせないよう軍令に専念させ戦地へと遠ざけた。

「伏見さんから帝に言ってもらえませんか?
 婚約されてるなら結婚して家庭に入ってもらうのはどうでしょうか?」

「どうです? 伏見総長のお力で山下をクビにして別の者を陸軍長官にしてもらえるなら……」

「……陸軍としましても伏見総長の陸海統合改革案を全力で支援しますが?」

「それに山下は堅物女ですが、身体つきは素晴らしいですからな。わはははは」

「いやぁ、陸軍長官としては無能ですが、抱き心地は有能でしょうなあ。伏見総長が羨ましい」

「ああいう口うるさい女は一度抱いて立場を分からせてやればいいんですよ」

「もし山下で満足できないようでしたら、他にも陸軍の女性士官を融通しますよ?」

「はっはっはっはっはっ……それはいい……もうブチ切れていいよな?」

「「……は?」」

「黙れクソ野郎ども!! てめーら、いい歳して童貞か?」

「うが!?」「ぐふっ!?」「がふっ!!」

陸軍の汚職や腐敗は、猫平内務長官から陸海統合軍制改革を利用して少しずつ処分すると言われていた。
軍令部総長の立場の僕が主導で行うと海軍が陸軍に手を入れたかたちになるので動かないで欲しいと……

もうそんなの関係ないよね?

将来の嫁に此処まで喧嘩を売られて黙ってるヤツはいない。よく我慢したものだ。

まだ100%キレてるわけじゃないよ?職場だしね。ほら、斬ってない、冷静だよ?

けどオレを此処までキレさせた奴らは久しぶりだな……どんな地獄を魅せてやろうか。

…………

……………………

…………………………………………

この日の陸海統合軍制改革の会議で、
陸軍士官達は、伏見によって悪行が晒され大勢の前で吊るしあげられる。

話のキッカケを聞いた東郷長官も「女性を軽視し、蔑む人間は気に食わない」と言って伏見総長を庇う。

伏見による公開処刑は、

想像以上の陸軍の腐敗と汚職の悪行を聞き、半ば放心状態だった山下利古里が、

伏見が会議の場でブチ切れして暴走した結果

「いいか、利古里ちゃんは素晴らしい女性だ!」

「家族思いだし、努力家でもある、絶対に良い嫁になる!!」

「それも分からず、貴様らは言いたい放題、言いやがって!」

など恥ずかしいことを公言し始めたのを物理的に止めるまで続いた。

…………

……………………

…………………………………………

後は猫平長官が頑張って処理してくれました。ごめんね。


これにより陸軍の反対派は一層され、統合軍制改革が大きく進むことになった。
この出来事は、会議が軍令部の五一五会議室で行われたことから「五一五事件」として軍に伝わることとなる。

デーニッツはこの話を聞き、ドイツ海軍大学で暴れた“悪魔”を思い出して独り怯えるのだった。

山下利古里→☆☆☆
 
 

 
後書き
人気投票13位の山下利古里はメインヒロインじゃないけどメイン嫁だよ。正妻ポジションだよ。
原作の性格がキツイ感じだから、理由を捻りだしてエロ主の伏見に対する性格は改変させるよ。

史実の日本陸軍における複雑怪奇な派閥争いの凄まじさを物語に取り入れるのは不可能。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧