KANON 終わらない悪夢
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129背乗り
舞の悲鳴と共に、現在の太陽系を包んでいる書き割りのセット、4次元的な背景が破れ、その後ろにある本来の空間である、別の宇宙が見えた。
何度か天孫も降臨させ、この世の理を書き換えて、天使の人形が扱いやすい時空にして包んでいた殻が割れた。
7年前の空間までは自由にできる場所、それでも7年以上前の世界には手も触れられない場所。
正十二面体で、端まで行くと逆方向から戻ってこれる空間。4次元球で構成され、反射すると角度が変わって戻るので人類には反射を認識できない。
プラネタリウムのように、外側の空間を偽装していた、背景のセットを舞が壊してしまった。
(イヤアアアアアアアアッ!)
この世に半身を置いている舞も、あの世に置いている半身を暴れさせ、手の届く範囲のセットを破壊した。
弟で運命の少年に拒否された、世界自体が間違っているので、全て終わりにしようとしたのかも知れない。
三次元的に表現すると、ゴムの薄い膜の上に重量がある球体を並べて、重力で垂れ下がるように空間が曲がっている部分。
その膜が破れてしまったので、太陽の重量でもっと裂けて、ゴロンと落ちてしまえば、この世界から太陽が消える。
(あ~あ、セットの背景壊しちゃったよ、いつも酷いことをする姉さんだ。世界中凍らせるつもりかい?)
何度かこのタイプの破滅も味わい、ビッグリップで太陽系ごと消滅した世界。
ここでの実験に失敗すると、7年前まで戻って固定してある空間に行ってやり直しは効くが、新しく実験世界を構築するには、サーバーPC最初から組んで、OS入れ直してアプリケーションやメールの設定まで全部やるより、多少多めの労力がいる。
(普通の人間なんかゴミなんだろ? じゃあ、その力であゆちゃんを生き返らせてよ、あの時出来なかった魔法も、今なら使えるだろ?)
(いやあっ、いやあああっ)
あゆも、その母も妖狐の血を継いでいる化け物の一族で、月宮姓まで名乗れる直系。
お側に仕えて、祐一様のご学友や嫁候補に選ばれるぐらいの術者なので、ゴミである人類のように、適当に体をつなぎ合わせるだけでは復活しない。
栞や香里のように、現世で命のロウソクだけ継ぎ足して、無理やり生かすことも出来ないし、あの世や虚数空間に繋がっている部分は、天使の人形でも手出しができない。
そして、あゆ本体はまだ舞に呪われていた。
あゆの復活には、舞の死亡、除去、破滅などの処理が必要なのも学習している。
舞には姉弟の縁もあり、グラウンドゼロで会わない、助けを求めないという選択肢が存在しないので、必ずあの場所で出会って縁を深め、あゆの命も繋ぐ。
しかし約束を果たして魔物の力を使って遊んでしまうと、もうその縁は誰よりも強力になってしまい、胴体以外を全員殺す、全人格を殺す、佐祐理と一緒に破滅させて犠牲に捧げて、あゆを復活させるような選択肢しかない。
運命の少年で半分血が繋がった弟を、あゆに奪われて連れ去られる、という選択肢は、舞の中にも存在しない。
弟の「生きていてさえいればそれで良い」と言う願いも、舞は受け入れない。
あゆが生き返ったりすると、すぐに呪いを掛けて殺す。それが舞という存在。
名雪のように日が当たる場所で育って、この世のケガレなど何一つとして見ずに育ったのとは違い、人間の汚れた部分や汚らしい側面だけ見て育てられた、蠱毒の壺の中にいる魔物。
別の魔物が壺に入って来れば迷わず殺す。
椿の間
窓から差し込む太陽光が激減し、夕方から即座に日没した世界。
裂け目から太陽は転げ落ちなかったが、セットの隙間から巨大な天使の人形が見えたり、天孫さんが割れた所を合わせたり、縫い目を作って裂けた部分を引き寄せるのが、天文台などで観測された、らしい。
委員長一族のように、一部の頭が良い物分りも良さそうな人物は、この世界が現在どういった状況なのかも把握し始めた。
騒ぎの後、神前結婚?が終わり、変なグルグルが入った宗教衣装を着替えに行った真琴とチョロインさん。
周囲の術者も不動金縛りなどを解かれて退場した。
(さて、また騒ぎを起こしそうだから、姉さんは佐祐理お姉ちゃんに預かってて貰おうかな?)
「ええ、佐祐理は構いませんけど」
佐祐理に最強の魔物を抑えられるかどうかは分からないが、体内に入れてしまえば、佐祐理を殺して体を裂いてまで出てこない舞の魔物達。
同居したり改装される特典として、多少頭が良くなったり、草木や粘菌とのネットワークに接続できたり、接続先で分体を操作できたりするかもしれない。
だが、佐祐理なら最大の特典「栗が巨大化して男性化したり、自分の受精卵を他人に托卵できる」のが追加される。
佐祐理的には男になりたい訳ではないが、女の子の中に出たり入ったり、中をかき混ぜたり、自分の受精卵を托卵(祐一の精子は必要)出来ると、双頭ディルドーとか電マだけに頼らないでも、女の子を満足させるのも可能になる。
舞の胴体の魔物だけで不足すれば、祐一の中に佐祐理の胴体の霊体を移動させて、股間をゴッシゴッシ擦り立てると、栗が鍛えられて、舞みたいに巨大化もする。
「まあ、そんな特典が(///)」
一応佐祐理的には願ったり叶ったりする案件らしく、顔を赤らめて喜んだ。
毎回舞と合体するのも、アクエリオン的に「気持ち良いっ」らしく、弟に嫌われて打ちひしがれている舞にチューして、胴体の嫉妬の魔物も吸い出した。
「さあ、舞の胴体さん、佐祐理の中に来て」
「うん……」
この二人は中身を入れ替えてイチャイチャ、ラブラブするのは普通の行為になったので、衆人環視の中で公然と中身が入れ替わった。
祐一も今度は着たきりではなく、白いタキシードに着替えさせられるので、一旦退場。
「それでは、ご来場の皆様、先々代ご当主のお嬢様と、若教主様の再度ご入場ですっ」
若教主様は、お召し替えが終わると何故か上機嫌だった。
「フフンフンフ~~ン♪」
歩き方もガサツでふらふらして真っ直ぐ歩かず、視線もキョロキョロして、いつもの落ち着きがない。
ハイヒールなんか慣れてないのか歩けないのか、踵が低い白い靴で来て、それでもいつもの中学生みたいなチンチクリンじゃなくて、さっきより少し背が高くて、鼻歌まで歌っていて超ゴキゲン。
さっきまで一緒にいた、警護役の月宮の術者とかも行方不明。
ちっこい方の真琴の衣装では、服のサイズが合わなかったのか、似たようなサイズのチョロインさんも行方不明。
(ま、まさか……)
祐一キュンは最悪の状態を予測してブルった。膝までガックガク笑い始めて、普通に立っていられなくなった。
「ニャウ~~」
いつものお付きの陰獣にも挨拶されてしまった祐一きゅん。月宮真琴さんは猫なんか連れていない。
現在、妖狐マコピーが使用できる能力一覧。ゴージャスさゆりんと同じ支配系の術、キチェサージャリアンな歌声。舞の転移系の術、母親を治す回復系の魔法。美汐が使った自分の姿や声を美汐にする術、電術、拘束術、目を盗む系統の消える術、鎧武者の操縦。栞のポケットからなんでも盗み出す4次元技、縮地、氷のブレス、アナザーディメンション。名雪の記憶消去系の術、平時でも100メートル7秒台の俊足。秋子の集団催眠、転移、千里眼、波紋疾走。天使の人形が使った影縫い、不動金縛り、幽霊をカズヤのアニキとして分体を入れてみたり、自分の分体を魔物や精霊として使役する魔法。ぴろを猫形状で具現化して、アルターとかスタンドとしてオラオラする能力(大きさ制限なし)があった。
とりあえず一回見た術や魔法は、北斗新影斬?とか鑢七実さんの見稽古で見切ったマコピー。
もし舞が居なくなっても、マコピーさえいれば、あゆの体でもなんでも完全修復。
信者の祈りでもかき集めればオッケーな状態なので、あえて言うなら舞が居ると復活の邪魔になる。
この場所に来ようと思えば、近所のSSのエスパー少女琴音ちゃんのように「藤田浩之さんがいる場所」と願うだけで、現在位置不明でも平気でテレポートしてくる、悪質なテレポーターだった。
黄金聖闘士とかモーターヘッド、ゴシックメイドみたいに光速移動もオッケー。
まず結婚式会場に乗り込んでも、栞や美汐や舞のような怪獣大騒ぎもせず、若教主様の取り巻きなど一瞬で黙らせて不動金縛り、本家の当主でも術者でもワンパンも入れないで瞬殺。
「その女(沢渡真琴)と、ぜひ入れ替わりたい」
などと7年間も思い詰めていた、化け物で悪鬼羅刹で荒ぶる神なら、偽マコピーで若教主など、ゴミ以下の術とか使ってきても全部無効。
指一本で一瞬で血祭りに上げて、周囲の人物全員の記憶から消せるぐらいの処理を済ませられる。
ちっこい方のドレスと中身が血まみれになってしまって、自分と似たサイズのウェディングドレス着ていた女とか、名前も知らなくても服だけ残して一瞬で消滅させられる力がある。
まあ、色々あっても主役の花嫁の席に立って、ご機嫌になったマコピーは、祐一の隣に並んで鼻歌なんか歌っていた。
引きずってるヴェールとかも、前の安物と違って絹製で、ドレスもギラギラの反射する舞台衣装じゃなくて、ガチの100万以上する本物。
「あの、前の沢渡真琴さん、いえ、月宮真琴さんとチョロインさんは、どちらにいらっしゃいましたか?」
もうヴェールとかめくる必要もなく、自分の隣に立ったのが本物のマコピーだと知った祐一きゅんは、聞いてはいけない問をした。
「え? あの二人? 屋上のプールで泳いでるよ」
「あ……」
とりあえず「浮かんでる」「沈んでる」「石の中にいる」ような、死んでいる系統ではなく、自分の力で「泳いでいる」ので一応生きていて、口を開いたマコピーの歯にも、血は着いていなかったので腰を抜かして安心した祐一。
「い、生きてるんですよね? ね? ね?」
「ええ? 秋子さんが殺したり食べちゃ駄目って言うから、食べなかったよ」
「は、そうでしたか、ありがとうございます」
もう完全にマコピーには敬語で土下座、逆らった瞬間に美汐とか姉からの制裁程度では済まない、厳しい災厄が与えられる。
「もう、花婿が土下座なんかしないで」
祐一は心の中で「秋子さんありがとうございました」を100回繰り返して唱え、目の前の悪鬼羅刹には絶対に逆らってはいけないのを学習した。
現在、祐一が逆らってはいけない相手は、佐祐理、マコピー、多分秋子さんも。
姉とプレデターと最終兵器彼女は、惚れた弱みで弱体化しているので、天使の人形が合体して起床時には逆らえる。
「あの、若教主様と、ご本家からの巫女さん、屋上のプールに放り込まれたそうですので、誰か助けに行って上げて下さい」
もう泣きながら巫女二人の安否を、式場の係員で信者に伝える。
既に教主とか猊下とか月宮当主はマコピーの術中に有り、娘で姪とチョロインさんがここに居ないのに気付いていない。
「それと、コチラの方は純血の妖狐で、沢渡真琴様でいらっしゃいますので、失礼のないようにお願いします」
「「「ええっ?」」」
教主とか猊下とか月宮当主は、ここに立っているのがマコピーで、現人神様が一人増えたのに気付いて腰を抜かした。
マコピー様御行幸、栞様に続いて、徒歩とか飛行とか空間転移でいらっしゃいました。
ここでも狐に化かされた人数が多数増えた。
屋上
「「あんぎゃあああああっ!!」」
半年以上使用されていない屋外プール。それも一回ペギラが来て冷凍され、半分凍った水の中に叩き込まれた二人。
下着姿でどうにか這い上がっても、仄の暗い水の中から這い出たので全身緑色。
ちっこい方のウェディングドレスは、サイズが合わなかったので捨てられ、サイズが大きい方が奪われ、邪魔なので死なない程度に屋上プールに叩き込まれた。
温水プールもあって、温泉施設も有るのに、わざわざ藻が繁殖した屋上の冷凍プールに叩き込んだ鬼。
「ゲホッ、な、何で私達プールで泳いでるの?」
「あ、あの…… 私の前に真琴ちゃん、いえ、純血の妖狐の真琴様が来て、「アタシにもドレス出せ」って言って、それから、それから…… イヤアアアアアッ!」
存在ごと消されたり、指一本で秘孔でも突かれて爆散したりしなかったが、妖狐の本来の居場所、祐一の隣で本妻として結婚式をする、と言う目的を果たしてご満悦のマコピー。
02(オニ)が本性現して15(イチゴ)さん睨んだみたいに、真っ黒な顔で目だけ赤く光っているのを見せられ、もし15さんみたいにぶん殴ったり頬引っ叩いていたら、肉の塊とかアルコールのような揮発成分に錬金され、蒸気になっていた若教主様。
祐一きゅんの花嫁の位置に最も近かった、佐祐理とか偽マコピーで若教主様は、その場所を乗っ取って入れ替わられた。
昨日の佐祐理は、ガチレズなので本気の挙式ではなく、偽装結婚だと獣の本能で気付いていたのでマジ破壊しなかったが、今日の元沢渡真琴さんはガチ勢だと知っていたので入れ替わった。
もし秋子ちゃんに注意されていなければ、マジ入れ替わりされていて、脳みそ食われて記憶も奪われ、戸籍も身分も何もかも背乗りされていた。
前ナントカ言う政党の党首さんみたいに、お父さん鉄道自殺したのに鉄道マニア。
北の訛でネイティブハングルの発音で演説まで出来て、外国人献金疑惑もオモニと呼んでいる実の母からずっと献金を受けていて、北に行くと現地妻か接待用の女性政治局員がついている人物でも、日本の国会議員になれるぐらいの巧妙な背乗りをされていた。
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