エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?
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第24話 ドクツ第三帝国、崩壊の序曲 Ev08
前書き
1話3000文字前後を目安で書いてるけど、最近は5000文字近くなる。
――――ドクツ第三帝国、ベルリン大学病院――――
「うーん……うーん……やーん」
アドルフの病室に隣接した簡易執務室で、
総統代理となったゲッベルスが大量の書類を手にして唸っていた。
各地の戦線から送られてくる悲鳴のような要請の数々。
補給、輸送、整備、情報と備蓄管理の計画書……。
(レーティア、今さらながら、あなたが本当の天才だと確信するわ。
そして……どうして、あなたがフシミを高く評価していたのかも……)
総統レーティア・アドルフの管轄は軍事のみならず、
公共事業、国内経済、治安維持、外交貿易とあらゆる分野に及ぶ。
加えてコンサートなどアイドルの活動も含まれていた。
「総統代理、今月の活動についてご指示を頂けますか?」
「あ、ああっ……うん。ゴホン……それでは軍需相」
軍需省は新設された省庁だ。省相は日本で言うと大臣に当たる立場だ。
軍事上必要とされることあらゆる物資を管轄する省で、
今までは兵器開発も含めてレーティアが一人で担っていた。
以前にレーティアが伏見に任せたいと語っていたように、
軍需省の構想だけはあった。
しかし省相を任せられるだけの人物がいなかったのだ。
「貴方は官僚たちと協力して、この書類を仕分けして、
各々の責任で活動を決定、行動しなさい。
必要なら食糧、労働、運輸、他の省相の力を借りてもいいわ」
総統代理と言ってもゲッベルスには軍事や経済のことは分からない。
レーティアが過労で倒れてから仕事を代行するために多くの省相が新たに任命された。
軍需相も兵器・弾薬を管理する部門の責任者を引っ張って来ただけだ。
「ええっ!! むっ、無理です、とてもアドルフ閣下のような仕事は我々には……」
「なにを甘えたことを言ってるのよっ!」 「うっ!」
「貴方だって以前から部門の責任者として閣下に仕事を任されていたのよ?
スペシャリストで、プロフェッショナルで、ファッハマンでしょうがっ!!」
「閣下と同じレベルを要求するわけじゃないの。
貴方のできる最高の仕事をしなさい!
軍需省だけでも2525人の官僚と334人の民間専門家を集めてるのよ。
総統の仕事の一部さえ、穴埋めできなくってどうするのっ!」
「わ、分かりました。各省庁と協力して進めます」
書類の山の一部を受け取り軍需相は去っていったが、
未だ文字通り多くの問題が山のように積み重なっている。
「はぁっ……どうしてフシミはドクツに残ってくれなかったのかしら?
それにこっちだって支援としてデーニッツ提督を送ってるんだから、
日本だってフシミの一人や二人、ドクツに支援要員として送ってくれれば助かるのにっ!」
ゲッベルスも無茶なことだとは分かっているが仕事の多さに文句も言いたくなる。
軍需相も本来であればアドルフが敬愛する師匠のVTVN提督にお願いするつもりだったが、
創造的・芸術的な仕事ではないと断られてしまった。
提督としての仕事でさえアシカ作戦の後にアドルフがお願いして何とか引き受けてくれたのだ。
これ以上の無理強いはゲッベルスには出来ない。
対エイリス戦線はロンメル提督とVTVT提督、
対ロシア戦線はマンシュタイン提督とシュテティン提督が何とか支えている。
(フシミがドイツに居てくれたら、レーティアが言ってたようにまずは軍需相。
今では東洋のビスマルクと呼ばれて、前線で外交の任もこなしてると聞くわ。
それなら外務省もお願いできるわね……
提督としての力量だって日本海軍のモルトケだってドクツで評されてる。
きっと元帥を任せても反対されないわよ。
そうしたらレーティアのスケジュールだって、かなり減らすことができるわね。
アイドル活動に割り当てる時間が増やせるじゃないっ!!)
「あーん……」
「ゲッベルス……?」
「えっ、れっ、レーティア!? ど、どうしたの? 病室で何かあったの?」
「今日は少し調子が良いんだ。……なにか仕事はないのか?」
「(嘘は駄目よ、レーティア。いつもと違って目が輝いてないもの……無理しないで)
ないわよ! 総統の分も頑張るんだって、みんなハッスルしてるわよ!
仕事だって、ぜーんぶなくなちゃったわ!」
「……そうなのか? マインシュタインやロンメルたちはどうなってる?」
「え? 順調よ! 順風満帆、疾風怒濤の快進撃よ!!」
「そっか、さすだな。なんだ、私がいなくても……
みんなしっかり出来てるじゃないか」
「ええ! だから今はゆっくり休んで!
みんなは貴女の元気な笑顔を早くみたいのだから!」
「うん……わかった。それじゃ、邪魔したな」
「グーテ ナハト、レーティア」
(はぁぁ……憂いのある顔も可愛いわね!! 後で疲れて寝てるときの写真も撮りましょう!
ついでにデーニッツに連絡する際にフシミをドイツに借りれないかダメ元で聞いてみましょう)
グルシア・ゲッベルス→☆
――――北アフリカ星域、ロンメル艦隊――――
「元帥、全艦隊の燃料が残り3割です。
備蓄も補給が滞り予定の半分にも満たず……」
「仕方ない、閣下が倒れてるんだ。……が、限界も近いな」
「ほとんどの戦力がソビエト攻略に回されてるなかで、
数倍のエイリス軍を相手に長期間戦線を維持、戦力差を考えれば大健闘です!」
「パリにいるVTVN提督がロンドン方面を抑えてくているお陰さ。
オットー少佐を起用して前線外交でエイリス本国とやりとりしてるらしい」
「オットー少佐ですか、ヨーロッパでもっとも(巨乳好きで)危険な男と呼ばれていますね」
「ああ、どう危険なのかは謎だが、中々に優秀な人物の様だな」
「北アフリカ方面はイタリン軍に任せて、遊撃戦に切り替えては?
今より弾薬の消費は軽減できるかと?」
「おいおい、高速航行での遊撃戦には、どれだけの燃料が必要か分かっているのか?」
「あっ……し、失礼しました」
「弾薬も燃料も無くなれば自慢の艦も鋼鉄の棺桶だ。
ドクツの軍事ドクトリン電撃戦の胆は兵站にこそありか……その通りだな」
「誰の言葉ですか?」
「戦場でアプフェルザフトを愛飲する変わった提督さ」
「林檎ジュースをですか? それはまた可愛いですね」
「副官、忠告しておくが……
もしも林檎ジュースを愛飲する提督に会う機会があっても、
その言葉だけは本人の目の前で言うなよ?」
「えっ?」
「下手すれば死ぬより後悔するかもしれんからな」
「あ、はい」
(伏見、北アフリカが落ちればアプフェルザフトも輸入できなくなるぞ。
少しでも先輩だと慕ってるならアラビアまで進軍してくれれば、こちらも助かるのだがな)
――――ジャイアン星域、マインシュタイン艦隊――――
「マインシュタイン閣下、ジャイアンへの兵力終結が完了しました」
「ご苦労。シュテティン提督はベルリン星域の最終防衛ラインを任せる
北欧に残っている戦力も全て最終防衛ラインまで下げろ」
「はっ! それにしても……本国はもう少し兵力を集められなかったのか」
「いうな。宣伝相も総統代行として出来る限りのことはやっている」
アドルフが倒れてからしばらく経った。
なんとかドクツ国内の体勢も固まり、本星ベルリンでは当初の混乱も収まって来ている。
お陰でアドルフがいない状態でも最低限度の軍事・経済が回るようになっていた。
しかし生産量は最盛期の半分に過ぎない。軍需に至っては40%を下回る。
ドクツの奇跡の復興は、やはり天才アドルフの力が大きかった。いや大きすぎたのだ。
「しかしソビエトの主力艦隊は現状で我々の三倍、
相手はシベリアから呼び戻されたジューコフ元帥と聞いてますが?」
「……勝つとも。
それともシュテティン提督は私がジューコフ殿に劣るとでも?」
「い、いえっ! 私は鋼鉄の灰熊こそ、世界最高の指揮官だと信じております!」
「ふっ、鉄の女と呼ばれる期待の若手戦術家に、昔気質な軍人がそう評されるとは光栄だ」
「あぅ、そんなっ……私は元帥を敬愛しておりますので……当然です」
「元気になられた総統閣下に赤化された雪原を見せるわけにはいかん」
「わかりました。できれば最終防衛ラインの戦力もそちらに回したいのですが」
「ならん。最終防衛ラインは本星ベルリンの最後の守りだ」
「しかし! ロシア平原の魔女、冬将軍スノーが目覚めたとも聞いております」
「今からでは、どのみち間に合わん。
よもや女帝ナポレオンの二の舞になるようなことがあれば……
このアイゼン・マインシュタイン。生きて会わせる顔がない」
「元帥……まさか……」
「……作戦準備に入る。悪いが通信を切らせてもらうぞ。
もしもの場合は宣伝相を助けてやってくれ。
足りないところもある方だが、総統閣下への曇りなき忠節は本物だ。
ドクツを、総統閣下を、守護って欲しい」
「元帥っ……!! ……ツーツーツーツー」
「副官、全艦隊に広域通信で連絡」
「はっ!」
「ドクツの兵士諸君、アイゼン・マインシュタインだ。
総統閣下が倒れられてから祖国ドクツ大帝国は苦境の危機にある……」
「最前線を支える兵士諸君には、
本国からの補給に不満を持つものもいるだろう」
「上級将校の一人として情けない話ではあるが……、
今まで軍の補給計画、兵器の生産計画、全てを
総統閣下が自ら立案して手配してくださっていたのだ」
「病院で療養しておられるアドルフ総統に責はない。
全ては総統閣下に頼り切っていた我々の力不足だ」
「ドクツは……我らが祖国は一次大戦の後、暗黒の中にあった。
皆が職を失い、誰もが将来の不安を抱えて、その日の生活を凌いでいた」
「新たな希望も、失った誇りも、未来へと示された栄光も、
全て……アドルフ総統が取り戻してくれたものだ!!」
「このマインシュタイン、閣下の理想の礎となれるなら本望である」
「これから始まる戦いは祖国ドクツの命運を決するものになるだろう」
「精鋭の兵士諸君、命尽きるその時まで、誇り高き第三帝国の軍人であることを望む……以上だ」
\\ ジーク・ハイル!! ハイル・アドルフ!! //
\\ 勝利か死か!! 全ては愛する祖国の為に! //
\\ ジーク・ハイル!! ハイル・アドルフ!! //
「……元帥、戦闘準備完了しました」
「全艦に連絡、進撃を開始せよ。目標、ソビエト艦隊。フォヴァッツ!(前進だ!)」
「ヤー!」
(ふっ、Sieg oder totか……閣下、どうか我らに祖国を守護る力を)
…………
……………………
…………………………………………
統一宇宙歴942年、ジャイアン平原で行われた両軍の攻防は、
ドクツ・ソビエトの死力を懸けた総力戦となる。
ソビエトの最高委員長カテーリンは国民を鼓舞するため、
女帝ナポレオンに勝利した祖国戦争に擬えて、この戦いを大祖国戦争と名付けた。
モスクワまで追い詰められ大怪獣ニガヨモギに助けられた不甲斐ない将校を更迭し、
ロシアン王国時代からの名将ジュザン・ジューコフをシベリアから呼び戻し元帥とする。
ジェーコフ元帥はドクツ軍がロシアン平原より撤退すると、
カテーリングラードの防衛ラインを整え、かつてない規模の艦隊をジャイアンに送り込む。
対するマインシュタイン元帥は不退転の決意で精鋭艦隊を率いて迎え撃つ。
ドクツ軍を悩ましたのが、ソビエト軍の焦土戦術とパルチザン(ゲリラ兵)の存在だ。
宇宙国際法を無視した宇宙空間からの惑星攻撃による生活インフラの破壊によって補給が寸断。
ただでさえ滞っていたドクツ軍の兵站は麻痺し、疲弊し身動きの取れなくなった艦隊は包囲される。
ジェーコフはカーテリンから命じられた役割を果たす。
「共有主義の素晴らしさを理解しない、ファンシズムどもを殲滅せよ」
後に欧州星域では史上最大の宇宙戦と呼ばれることになる大決戦を制したのはソビエトだった。
ドクツ主力艦隊は全滅――
マインシュタイン元帥は士官を脱出艇に乗せた後に火を噴く艦と共に宇宙の底へと沈む。
「アドルフ総統閣下と、ドクツ第三帝国に栄光あれ!!」
その最後は開戦前の演説と共に脱出した兵士から本国ベルリンへと伝わる。
報告を受けたエイリス、ガメリカ、大日本帝国、イタリン、亡命オフランスの軍首脳は、
欧州戦線の天秤が連合側に大きく傾いたことを知る。
芸術発明家提督のVTVNは、この報告を受けたときの心境を変奏曲「崩壊」の序曲として残した。
後書き
ドクツ勢は伏見ageです。ゲッベルスにも☆一つ付けときました。
マインシュタインやソビエトの動向は今はエロ主に直接的には絡みませんが、
ドクツ崩壊、レーティア救出の際に登場する人物を先に紹介しておきました。
本編が完結したらエロ主の経歴や性格を調整したドクツIFルートとか書いてみたい。
たぶん空軍元帥+軍需相+経済相なキャラになると思う。
オフランス、イスパニア、ガメリカ、ソビエトのキャラの幕間はドクツIFの方が書きやすいかも。
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