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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第649話】

 
前書き
新年明けましておめでとうございます

京都修学旅行編は一応あれで終わりで新章です( ´艸`) 

 
 京都修学旅行が終わり、週明けの月曜日。

 ここIS学園には様々な報道機関の人々が正門前ゲートに集まっていた。


「三人目の操縦者、今日の報道はずっとこれだな!」

「そうね。 でも立て続けに日本人三人も現れるなら私の国でも……」

「そうだな、また国家規模でやるなら今度は俺も触ってみるかな!」


 日本のメディアだけではなく海外のメディア――IS加盟国非加盟国問わず様々な人種がごった返している。

 何故これだけの人が集まってるのか――三人目である男の操縦者である笹川成樹を映像に残すためである。

 そしてあわよくば軽いインタビューの受け答えもあればと思わずにいられないのがマスメディアだろう。


「かぁーっ、人多すぎだろこりゃ」


 有坂陽人が一人ごちる、傍らには先日ヒルトが拾ってきたいぬきちが舌を出して多種多様な人種を見ていた。

「わわんっ(人間いっぱいわんっ)」

「ん? いぬきち、吠えてどうした?」

「わふっ、わんわん(人間多いわんっ。 誰かお肉くれそうわんっ)」

「そうか、人が多くてちょい緊張してるんだな。 よしよし」

「わんっ(撫でられたわん)」


 言葉は通じないものの、陽人は小さなビーグル犬の頭を優しく撫でる――と、通信端末に連絡が届き、確認する陽人。


「……成る程。 マスメディアの方々は骨折り損のくたびれ儲けって訳か」


 開かれた端末に届いたメッセージには笹川成樹が無事IS学園入りしたという内容が書かれていた。

 場所は移り学園近くの港、物資搬入の為の港なのだが――。


「ごめんねぇ、成樹君。 本当ならちゃんとした方法で学園入りしてほしかったんだけどねぇ~」

「い、いえ。 まさかあれほど人がいるとは僕も思わなかったので」


 通信端末を開いていたのは有坂真理亜だった、間延びしたふわふわとした口調、栗色のロングヘアーに年不相応の幼い容姿に子供を二人も生んだとは思えないスタイル。

 その隣の笹川成樹も白のIS学園制服に身を包んでいた。


「にゃう(今日はやけに騒がしいな)」


 たまたま港にいたにゃん太郎は怪訝に見つめていた、傍らには自身の子供である子猫も側にいる。


「みゃー(ママー)」
「にゃにゃ(お魚いないー)」

「みゃぅ(何か向こうが騒がしいよー)」


 港に揚がった魚目当てのにゃん太郎家族だが、まだ魚が卸されていないらしく子猫は小さくお腹がなる。

 そんなにゃん太郎家族は一度置いておき、話は戻す。

 笹川成樹と有坂真理亜は一路学園へと歩き始めた。

 今日から始まる新生活に成樹は緊張の面持ちで歩いていると――。


「緊張しなくていいわよぉ? ヒルトもいるんだし、ね?」

「は、はい……。 ヒルト……」


 真理亜の優しい微笑みは人によってはその名の通り聖母マリアに見えるだろう。

 緊張した面持ちの成樹だったが幾分表情が和らいでいくのを自身でも感じ取っていた。

 IS委員会専用航空機内、広々としたその空間、椅子に座り投影ディスプレイに映し出された今日の予定をチェックするのはレイアート・シェフィールド。


「結構強硬スケジュールね。 これだと学園滞在は一時間も無いわね」


 委員会として後手に回ってるのは自身の手腕の低さが物語っている、学園後は京都の被害状況確認と亡国機業への対策。

 その後は各国完成し始めてる専用機の確認の為に様々な国へと訪問しなければならなかった。


「一時間も無いんじゃ、笹川成樹君の事でいっぱいいっぱいかな。 織斑一夏君のIS無断使用に関してもやりたいけど……」


 完全にオーバーワークな会長だが、時間は待ってはくれない。

 軽く軽食をとりながら改めて予定の確認を行ったレイアートだった。

 修学旅行後の織斑一夏に行われた制裁はそれほど重たいものではなかった。

 学園上層部としても表立って大きな問題にしたくないのが理由だろう、とはいえ何も課せないとそれはそれで問題になるため、反省文の提出と修学旅行後の土日の休日返上による自習を課した。

 それでも一夏は不満げな表情だったのは自身が間違ったことをしてないと思っているからだろう。


「何で俺だけ……」


 書き上げた反省文を纏めた一夏は不満の言葉を漏らす、自習室は監視されてはいるが声紋はとられていないのが幸いした。

 朝の生徒会長更識楯無による全体朝礼後の一組教室、全百二十人弱居る教室は賑わっていた。


「今日から新しい男子がくるんだよね!」

「しかも有坂くんの友人の笹川成樹くん!」

「学園祭の時に見たけど、彼スッゴくカッコいいの! やん……イケメン勢揃いじゃん!」


 賑わう女子たち、ヒルトは頬杖つき、瞼を閉じていた。

 端から見たら完全に居眠りしてるように見えるものの、ヒルトはあくまでも瞼を閉じて予鈴が鳴るのを待っているだけだった。


「お兄ちゃん、寝てる?」

「ん~、寝てるっぽく見えるけどただ目を閉じてるだけなのかも」


 美冬、未来の二人は遠目からヒルトを見てそう呟く――その時、学園全体に予鈴が鳴り響き、通路に出ていた生徒や立ち話していた子も皆が一組教室へと入る。

 喧騒が続く教室――だが、教室のスライドドアの圧縮空気が抜ける音が響き渡り、織斑千冬、山田真耶の二人が入ってくると一瞬にして静まりかえった。

 ヒルトは瞼を開く――それと同時に織斑千冬は口を開いた。


「おはよう諸君。 お前たちも当然知っているだろうが今日から新たに転入生がやって来る」


 その言葉に小さくざわつく教室、勿論報道されている上に朝の全体朝礼の時にも聞いていたのだから本来はざわつく必要はない。

 だけど人間というのはやはり転入生というのに敏感なのだ、それが男子ともなれば期待は膨らむ一方だろう。

 一方で廊下では緊張で表情が再度硬くなった成樹は、何度か呼吸を整えるために深呼吸をし始める。

 手首の黒のブレスレットが鈍い輝きを放っている――ブレスレット中央には紅玉があしらわれていて、陽の光を浴びて紅く燃えていた。


「では山田先生」

「はい。 それでは……笹川くん、入って来ていいですよー」


 その声に一部からきゃあっという黄色い声が上がる、スライドドアが開かれて成樹は教壇の前へと歩む。

 整った顔たちは中性的だが、すらりと高い背丈と白の新調された学園制服がとても似合っていた。

 視聴覚室内の投影ディスプレイに成樹の名前と簡易プロフィールが映し出された。


「笹川くん、自己紹介お願いしますね♪」


 胸の前で手を合わせて笑顔でそう告げる山田先生、成樹は頷くと真っ直ぐとクラス全員に向けて自己紹介を始めた。


「ご存知の方も多々いらっしゃると思います。 僕の名前は笹川成樹です、実家は喫茶店で紅茶や珈琲、軽食メインでやっています。 えと……後は……僕と有坂ヒルト君や美冬ちゃん、未来ちゃんとは旧知の仲といっても良いくらいかな? ……う、上手く自己紹介出来なくてすみません、迷惑は多々かけるかもしれませんが、皆様……よろしくお願いします」


 色々いっぱいいっぱいだった成樹は、深々と頭を下げる。

 そして――今年三度目、否……四度目の歓声が教室全体を包み込む。


「キャァーッ! 笹川くーん!」

「日本から三人目の男子操縦者! しかも超イケメンだし! 生で見たらスッゴくイケメン! ヤバい!」


 何度も連呼されるイケメンという単語に、成樹も苦笑を溢す。

 それと同時にヒルトと視線が交差する――ヒルトは小さく笑みを浮かべると軽く手をあげて成樹に挨拶した。

 ざわつく教室内に、織斑千冬は腕組みしながら口を開く。


「静かにしろ馬鹿者共。 笹川、席だが空いてる席は窓側の後ろから二番目だ。 つい最近一年全てのクラスが合併したのでな。 授業等は他の高校とはやり方が違う。 周りの者に聞くといい」

「わ、わかりました。 えと、改めて皆様よろしくお願いします」


 折り目正しく一礼する成樹に、また黄色い声援があがり、千冬はこめかみを指で押さえて小さく頭を振った。

 十一月も終わりが近づく最終週、騒ぎが落ち着く日が来るのか頭が痛くなる思いだった。 
 

 
後書き
多分それほど長くはならないかも、多分ね 
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