KANON 終わらない悪夢
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126あ、今回、流石にムリ
委員長を許せない女は他にもいた。
美汐、栞といった、ゆうくんだいしゅき、祐一さんだいしゅきのガチ勢である。
美汐の方は勿論、7年前からの怨念を煮しめたような呪いで、忘れたり別れたりするのが可能な恋愛などとは桁違いの恋慕で渇望、ゆうくんが一緒に居ないと心も体も半身を失って死んでしまう存在。
実際7年間死んでいたのを、物理法則すら捻じ曲げる呪いで、生贄や対価を積み上げて、術や呪縛の研鑽の果てに、ついに1ヶ月間の縁しか存在しない、人間と妖狐の恋愛や関係を、今生の間続けられる物にまで変革した少女。
舞ほどの凄まじい自傷と自殺願望で支払った血の代償ではなかったが、死なせる方が難しい妖狐とのクォーターを、何度も破滅させて死の寸前まで追いやり、縁が切れて関係が終わり、この世のシステムによって「心も体も魂まで呼び合う相手」を回収されたにも関わらず、システムの特例とか盲点、命の管理システム自体をハッキングしてでも取り返す手段を見つけて、記録を書き換えて改ざんして、「ゆうくんは死んでません」に入れ替えてしまった化け物。
丘から降りて来た少年ではなく、存在自体を書き換え、純血の妖狐として現世に顕現した魔物だとして、この世のシステムと物理法則まで書き換えた怨念。
それには凄まじい血の代償が要求された。
案外、あゆの復活を頼んで生き返らせ、友達や親として見守るだけなら、美汐に全てを託したり、霊体や前世の記憶まで揃えて復活させるなら、美汐の子として再誕させるのが良かったのかも知れない。
死に戻りの人でもやらなかった「青鬼のレムタソと一回人生を共にして、剣技とか魔法を極めて勇者パーテーの一員になれるぐらいの人生を数回死んで、孫に見送られながら寿命でも死んで、レベル上げまくった状態で若い体で復活。決闘した騎士とか、剣聖の旦那でも子供扱いで倒せる」ぐらいの経験を積んだ天使の人形も、美汐、秋子、舞、栞、マコピー、ついでに名雪の子供は、あゆでは無い存在として産まれたのは記憶している。
命の管理システムの複雑さや、不寛容さを知り尽くしている美汐にすら、あゆの再誕は不可能だった。
ましてや破滅の力しか持っていない秋子には無理な相談で、不死身の肉体を欲した栞には可能性すらなく、祐一との再開を願って最期の一ヶ月を望んだマコピーにも無理、何のしがらみもない名雪にも、土下座しようがどうしようが、不可能なものは不可能だった。
それでも、この無理ゲーの制作側の心理をプロファイリングしてしまった変態には、有り得ない解法でも読み取るのが可能になった。
命の容量やエネルギーの足し算引き算、掛け算割り算すら可能な知能の前に、ようやく復活の兆しを見せた友達。
天使の人形の、あゆへの思いは恋愛感情ではない。
復活さえすれば、自分の呪いから開放してやって、以後は自由に生きる権利がある。別の男と結ばれるのさえ自由。
目の前で友達を失ってしまった、悲しみやトラウマからの解放を願って泣いているだけの子供。
過去の術者のように、自分の子供や妻を失って、無理に命のロウソクを集めて復活させる悪行も行い、現在も他の娘には、その悪魔の所業を行って生かしている。
それすら減点の対象になって、アクセス拒否、特例の不認可、復活の拒否につながるとまで教えられ、天使の人形から委員長への思いは、恋愛を超えて信仰に達した。
「ボクと契約してお母さんになってよ!」
その願いは、舞と美汐と栞を激怒させた。
控室
午後の部を終えていつもの集金活動になり、舞台を捌けた一同は祐一くんを睨んでいた。
美汐プレデターさんの場合。
(あたし、いつでもゆうくんのおかあさんになれるよ? ゆうくんがおなかのなかにはいってくれたらだいじょうぶだから、ゆうくんだけじゃなくて、ほかのおともだちもいっしょでいいよ?)
などと思いながら、いつもの目の下に力が入りまくって、黒いクマも定住して、悪役線も入っている、凄まじく怨念が篭った目で見ていた。
ぼそぼそと呪詛の言葉も唱えているが、心の声で言ったので、愛しいゆうくんにガチで伝わった。
ゴン太君方式で翻訳すると自分も呪われたり、怖すぎて夜のトイレにいけなくなるので翻訳しなかった。
(委員長が美汐に殺される…)
息子がアイマスの課金兵になってしまい、親のカードを盗んで数百万単位で課金してしまって、家も家計も破滅寸前でも、ここまで怖い形相にはならない。
幼児退行もして当時の人格に戻り、左手に新しいリスカ傷を刻みながら、いつもの祈りを捧げる美汐さん。
(ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす)
(怖えぇ~~)
何かエンドロフィンの欠乏状態なのか、血糖値の減少状態なのか、病み切った目でガクガク震えながら、呪詛の言葉を唱え、委員長を呪殺中のプレデター。
(ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす、ゆうくんをあのおんなからとりかえす(無限ループ))
陰キャの自分を虐めようとした同級生とかも、術を行使して笑顔でガラ抑えて「こんな奴最初からクラスにも存在しなかった」と親や教師の記憶まで書き換え、『お前の足は、自分の意志に反して後ろに下がり続ける』と言い渡して、生贄に捧げて飛び降り自殺させたり、何度かイジメを受けていたクラスメイトを救った悪魔。
栞もそのお陰で数回救われていた。
幼いょぅじょをハイエースしてレイプして惨殺、山に埋めるような魔物は人間じゃないので平然と呪殺した化け物。
わざわざ一人で人気のない場所を歩いて隙きを作り、ワンボックス車の乗員全員に術を掛けて、どっかのロリコン作家の漫画のラストのように、数十人排ガス自殺させた悪鬼羅刹。
あゆや他の少女に使用する、汚いロウソクを回収して、天使の人形に使わせた元凶。
目の前の何の能力も持ってなさそうな女なら、一瞬で消せる術者だが、相手は仮のイザナミで、この世のシステムによって守られてしまっている。
舞のように自傷自殺だけで対価を払い、物理法則を捻じ曲げて約束の少年を取り戻したのとは違い、過剰防衛によって身を守り、魔物を憑依させられる前から魔物だった少女。
過去の術者と同じく、最愛の人物を失ってから使い魔を放ち、夜の使い魔まで作成して命を集め、何度か一族に討伐された美汐。
今回の美汐は舞の魔物を憑依させるまで、秋子や名雪の記憶消去で暗示も与え、綺麗なままにしてあるが、レベル1妖狐だった天使の人形に、殺人技や術の全てを教えたのも美汐。
「みーちゃんのゆめのなか」で、あゆの命を繋ぐ術、命のロウソクを他人から盗んででも
繋ぐ術を教えたのも美汐である。
怪獣栞の場合。
(ユウイチサン。イエ、天使クン、コノ女ノ子供ニウマレタイッテナンデスカ? ワタシデモ、オネエチャンデモ、マイオネエサマデモナインデスネ?)
魔物化して怪獣言語で考えている栞。
心の声を防ぐような能力は持っていないので、もちろん祐一くんにもダダ漏れ。
天使の人形クンご執心の女を、スリーピングコフィンで凍結させて、音速パンチを入れて粉砕、アナザーディメンションに叩き込んで、天使の人形でも救出不可能な場所に放り込んで、超新星爆発している現場かブラックホールに叩き込み、原子まで破壊して素粒子に戻せば、この世のシステムとやらでも守れない。
現在の美汐にも舞にも委員長は破壊できなかったが、栞になら可能。
流石に2ヶ月間改造しまくっただけの事はあり、4次元技のパワーも桁違い。
このまま次元跳躍能力や、7年前以上の過去に転移する能力を持たせることができれば、あゆが落下する前の時空へ辿り着ける。
一応天使の人形も、独自ルートで解決する道は探り続けている。
名雪にも舞にもマコピーにも、究極ポケモン進化すれば、災厄を解決する結末は有る。
(やめてよ栞ちゃん、僕から委員長への思いも、あゆちゃんと同じで恋愛じゃないよ)
「アレ? そうなの?」
(ああ、この世と言うクソゲーをクリアできてしまう才能への憧れだよ、君にも、舞にも解けなかった答えを導き出した子だ。もし僕の願いを叶えてくれたなら、どんなお礼でもするよ、でもそれはラブじゃない)
一応現世に帰還して、怪獣言語で思考するのを止めた栞だが、他の二人は戻って来なかった。
天使の人形の本体まで、委員長のお腹の中に宿って、その中から語りかけている状況は、自分でなければならない姉と新妻?
現在の委員長を始末すると、天使の人形も始末することになるので、栞も手出しできない。
(マヌケな祐一の脳では絶対に思いつかなかった答え。委員長と同じ知性と知能が是非欲しい。それは一度委員長の子供として生まれれば得られる。僕が答えを見つけてから時間を巻き戻して、新しいルートを開拓してやり直しても良いぐらいだ)
「エ? うん」
栞の脳では、時間を巻き戻すなどの術も、何一つとして理解できなかったが、天使の人形の思いは恋心ではなく遺伝や知能が欲しいのだと納得した。
1ターンの行動制限を考え、ここまでのルートはミッシリと予定を決めて、それ以外を見ようとすると破滅させられる。
祐一の予測能力も用いて入るが、レベル1妖狐で時間も巻き戻せない祐一には何の能力もない。
せいぜい、有り余る妖力とか霊力を、他の女に注入する程度の能力しか無い。
天使の人形も、委員長への傾倒は恋愛ではないと言ったが、それでも残りのガチ勢には通用しなかった。
委員長の腹の中に天使の人形がいるのがまず許せなくて「「こんの泥棒ネコがああっ!」」状態で睨んでいる。
二人とも、歌姫様の声とか田村ゆかりさんの声で「聖母たちのララバイ」を3番まで絶唱しそうな勢いなので「ゆうくんのおかあさんはあたし」「祐一のママになるのは私しか居ない」と思っている凄まじいヤンデレなので、その立場は自分だけのものだと思っていた。
「あ、今回、流石にムリ」
結構ガチ勢な若教主様も、「私が貴方のママになって育ててあげる~」とか「真琴ちゃん、ボクのお母さんになってよ」とか、究極キモ過ぎる妄想は持ってないので、ドン引きして義理の姉と、天野直系の化け物を見た。
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