メスデカ
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狩人と獲物
プルルー__
部屋の電話が鳴る
「はい……えっ? 居るって言ったのかい? しょうがないねぇ」
(よくここが分かったね)
ここはシネが滞在しているホテルの1室、刑事が来たとフロントからの知らせだ。
コンコン__
来たようだ。
ガチャ__
ドアを開けると女と男が立っていた、女は手帳をこちらに見せながら
「警視庁捜査0課の姫川です」
(これはこれは絶品じゃないか)
動画では見ていたが生で見ると想像以上の逸材だと思った。
ソファーに裕子と西島が並んで座る、向かいにシネだ。
「くつろいで居るところを申し訳ありません」
そう言って裕子が頭を下げる。
「今日はどういったご用件ですか刑事さん」
「シネさんは数多くのビデオ撮影をしていますが韓国でも撮られてますよね?」
「もちろん韓国がメインだからねぇ」
シネが足を組む。
「韓国で日本人女性を撮影したことがありますよね?」
「……さぁ……どうだか……」
「侍のコスプレ好きの日本人女性です、撮影しましたよね?」
「……覚えてないねぇ」
撮影したのならそう言えば良いのだがシラを切る、このことでシネの事件の関与が裕子の中で疑惑から確信へと変わる。
「では日本の剣道には興味がありますか?」
「剣道? ああ、あるよ、ただ、剣道は韓国起源だけどね」
裕子は(韓国起源?)と思ったが同時に(食い付いて来た)とも思った。
「撮影をしたことはありますか?」
「剣道のビデオを? まだないよ、予定はあるけどね」
「予定?」
「達人だよ、剣道のね、虐めて、あ・げ・る」
シネは裕子を見ながらそう言った。
裕子はキョトンとするが気を取り直す。
「いつ頃になりそうですか?」
「さあねぇ……なるべく早くに、できればすぐにでも」
「達人と仰いましたが具体的には? そのぉ、名前とか」
シネは笑いをこらえているようだ、裕子は質問を変える。
「最後に警視庁捜査1課の水谷とあってますよね」
「ああ、会ったよ、私が日本に来たその日にね、まるでレポーターのような男だったよ」
「どんな話を?」
「覚えてないよ」
「今レポーターのようなって仰いましたが!」
「覚えてないんだよ、そろそろ帰ってくれるかい」
シネが裕子を睨む、裕子もシネを睨む、シネは座った目だ、裕子は睨んだ顔も可愛かった。
「どうもありがとうございました」
裕子は再び頭を下げた。
2人が出ていった。
(絶品だねぇ、絶品だ、早くヒィヒィ言わせたいよ)
シネは裕子をどう料理するかを考えるのだった。
裕子と西島がホテルから出る。
「どう思います?」
西島が聞く。
「間違いなく事件に関与してるわ」
「どうします?」
西島に顔を向けて
「しょっぴくわ!」
____
「できない? どうしてです?」
本署で裕子が木村に詰め寄る。
「コスプレ好きの女の撮影を認めてないんでしょ?」
「認めてはいませんが撮影してます」
「どうして分かるの?」
「裏を取っています」
宮迫が裏を取っているのだ。
「裏と言っても証言だけでしょ? 物証がないわ」
「それはそうですが、絶対に撮影してます」
「どうして言い切れるの?」
「勘です!」
「勘?」
「直感です!」
木村は裕子の目をキツく見ながら
「あなたの勘で任意聴取はできないわ、下がりなさい!」
裕子は髪の毛を掻きむしりながら自分の席に戻る。
宮迫が戻ってくる。
「クーを調べましたがこれと言った物はでませんでした」
「そうなの、お疲れさん」
裕子がねぎらいの言葉をかける。
丸山も戻って来た。
「鈴木を洗いましたが過去に売春の仲人をしてたようです、知人のアパートに女を住まわせて管理してたようです、今は足を洗っています」
「テッペイ良くやった!」
裕子が丸山を褒める。
「任意で引っぱるわ! 係長、良いですよね?」
「ちょっと待って、売春は他の課の仕事よ、私たちは10年前の未解決事件を捜査するのよ」
「えっ? 係長……これは別件ですが、そこから連続殺人につなげます」
別件で呼んで本命を引き出すのは良くあることなのだ。
「駄目よ、許可しません、物証もないのに引っぱれないわ」
「別件から本命の物証を引き出します!」
「駄目と言ったら駄目、これは命令よ!」
木村は踵を返して出ていった。
「係長!」
裕子は納得が行かない。
(係長……どうして……)
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