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ハンドレッド――《紅き髪の異邦人》

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【ハンドレッド――《ヴァリアント覚醒》】
  【プロローグ】

 
前書き
新連載っす 

 
 世界は無数に枝分かれしている。

 誰かが右足で一歩踏み出す――だが、その誰かが仮に左足で一歩を踏み出したらどうなるだろうか?

 一人一人の行動の違いによって無数に生み出される――それらは平行世界と呼ばれている。

 だがその存在に今気付いてる人が居るとしたら――その人は、幾多の平行世界を渡り歩く異邦人だと言えるだろう……。

 その世界は未曾有の危機に直面していた。

 宇宙より飛来した巨大な隕石、それが南極大陸に落下――同時に現れたのは後に【サベージ】と呼称される異種生命体。

 異形の異種生命体、それらは国連が結成した連合軍及び民間軍事会社の協力によって殲滅された――筈だった。

 その世界では第一次遭遇《ファーストアタック》と呼ばれた出来事から三年――とある街の外れに、時空の歪みが現れる。

 最初は小さな歪みだったが、それが人が潜り抜けられる程のサイズになると中から真っ赤な髪の青年が姿を現す。

 軽快に地面へと降り立つ――現れた時空の歪みはその役目を終えたかのように虚空へと消えていった。


「あぎゃ……。どうやら五体満足な様だな、俺様の身体は」


 赤い髪の青年は獰猛な笑みを浮かべた、自身が以前知り合ったボスから聞いた時空の歪みを利用した平行世界への移動。

 だがその移動はリスクもある――何より、知り合いがいない上に世界情勢も紙幣も全く違う世界もあるのだから。

 周囲を確認する青年――遠くに見える近代的高層ビルを見る限り、自分が居た世界と技術的差異はなさそうに見えた。


「あぎゃぎゃ。さて……あまりに技術の低い世界ならどうしようかとも思ったが、これぐらいの世界なら身分証明の偽造なりなんなりは難しくなさそうだな」


 誰もいない街の外れで呟く赤髪の青年が白い歯を見せた時だった――直上から放たれた目映い光、全身を畏怖させる威圧的な爆発音が轟く。

 幾度も放たれた光と共に、爆音が鳴り響く。

 平和だった街並みは一瞬にして地獄へと変貌してしまった。


「転移していきなりこれかよ! ……だが、そうじゃねぇとな! あぎゃぎゃ!!」


 自身に襲い掛かる瓦礫をはね除け、高笑いする声が木霊した。

 街の中心部の被害は甚大で、大半の建物は骨組みだけが辛うじて建っている。

 原型など無く、元がどんな建物なのかもわからない――立ち込める土埃、積み上がった瓦礫、阿鼻叫喚――パニックに陥った一般人は逃げ惑っていた。

 そこにまた爆音が鳴り響き、巻き起こった風によって人々の身体が宙を舞う――子供の姿もあった。

 爆音と突風を発生させた原因――周囲に立ち込める土埃から姿を現したのは黒い皮膚に黄色く輝く模様を持つ巨大な怪物。

 サベージと呼ばれる異種生命体だった――この街を一瞬にして壊滅させたのは。

 無数に現れたサベージが街を破壊する中、それらを遠目で目撃していた赤髪の青年はまたも獰猛な笑みを浮かべた。


「あぎゃ、あぎゃぎゃ! 最高じゃねぇか! 混沌とする世界に異形の生命体! クックックッ……だから、生きる事を辞められねぇんだよな!!」


 間近で確認しようと青年は走り抜ける――街の中心部にある公園を抜けようとした時だった。


「あぎゃ? こんな事態に眠ってる餓鬼が居やがる……」


 小さく寝息をたてる少女、何処かのお嬢様なのかフリルのついた可愛らしいドレスを身に纏い、美しい銀髪が陽光で輝きを放つ。


「……チッ! このままじゃ死んでしまうぞ、お前!」


 大人が死ぬことには何も思わない青年も、流石に子供が死ぬのは目覚めが悪い。

 起こそうと身体に触れようとした時だった。


「その子に触るな!」

「あぎゃ?」


 起こそうとした手が止まる――振り向くと、土埃でみすぼらしい姿になった男の少年が居た。

 少年の目に青年がどう映ってるかは定かではない。

 息を切らしてるのか、肩で呼吸をする少年に、青年は見下ろすように立ち上がる。


「……小さな女の餓鬼に興味はねぇよ。あの化け物が現れてる中暢気に寝てる餓鬼を起こして逃がそうとしてただけだ」

「……そうだった! サベージが来てるんだった! 起きて!」


 青年を押しどけ、少女の身体を揺する少年――青年は少年の口から出たサベージという言葉と異形の生命体を見てピンと来た。


「……あぎゃ、サベージって言うのか……あれは」


 街を破壊する異形の生命体を見た青年――後ろでは少女が起きたのか二人の問答が聞こえてきた刹那――空から現れた新たなサベージが青年達の前に着地した。

 その衝撃に地面は揺れ、近くの池から水が溢れ出る。

 咄嗟に腰に手を回した青年は拳銃を引き抜くと叫んだ。


「餓鬼供! 俺様がこの化け物を引き付けてやるからその隙に逃げやがれ!」


 返事を待たずに発砲――放たれた弾丸は皮膚に弾かれたが化け物の注意を向けさせることに成功した。

 巨体な体躯――約四メートルの化け物相手に対峙した青年はギラギラとした目付きで睨み返した。


「あぎゃ! てめえの相手は俺様だ!」


 逃げ惑う人々が見たら皆が思う――狂気の沙汰だと。

 巨体から繰り出される攻撃を避け、拳銃で弱点に思える場所へと弾を撃ち込む青年。

 軽やかな身のこなしで腕の鋏による一撃をよける――僅かに掠めたのか、腕に切り傷が出来、鮮血が滴るが青年は気にも止めなかった。

 遠くで轟く轟音――戦車の砲撃音だ。


「軍隊か? 戦車が何れ程効果があるのか――」


 一瞬見せた隙だった、衝撃に身体が吹き飛ばされ、青年は背中から地上に落ちていく。

 サベージが放った一撃が諸に青年の身体に当たったのだ――だが、元来身体の作りが丈夫だったからか貫かれることはなかったものの、あばら骨が何本か折れた様な痛みが走る。


「チ……ッ! 油断……したぜ……!」


 鈍痛の様な痛み――そして青年は腕の傷も見ると浅黒く変色しているのに気付いた。

 未知の細菌に感染したのか――そんな事が脳裏に過る中、急に目の前がぼんやりとし始め、青年の瞳が金色へと変貌を遂げた。

 後に軍隊が公園に到着した時にあったのは一体のサベージの無惨な姿だった。

 その死骸は、誰がどうやって倒したのかすらわからない位だった。

 このサベージの襲撃が後に第二次遭遇《セカンドアタック》と呼ばれ、無惨なサベージの死骸が誰によってもたらされたものなのかは永遠の謎となってしまった。

 それから三年後――再び赤髪の青年は姿を現す。

 三年間の内に世界情勢、サベージの事――それらサベージを討伐する拠点《海上学園都市艦リトルガーデン》の存在、そしてサベージと戦う武芸者《スレイヤー》と呼ばれる者を育成する機関がリトルガーデンということを――。 
 

 
後書き
まだプロローグしか書けてないっす

 
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