エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?
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第35話 エイリス式紅茶会とトランプ外交 Ev15
前書き
7000文字over。未熟な表現ですが拙いながらも何とか書き上げることができました。
二度目の記載になりますがルビは発音や読み方ではなく、
心の声やニュアンスや考えるな感じろといったモノを表現しております。
――――エイリス首都ロンドン、グリンガム宮殿 停戦交渉開始ⅩⅩ日目――――
かつては栄華を誇り世界の半分を支配下に置いた大帝国エイリス。
彼らが惑星ロンドンを離れ、大航海による版図を広げられたのは――
飯が不味かったからだとも言われている。
地元の飯が不味いから、航海先の未知の料理に舌鼓を打つことができたと、
自国の料理に自信のあるオフランス人が皮肉っていた。
そんなエイリスの朝めしにも随分と馴染んだ。むしろエイリス式の朝食は中々に好みだし、美味だと思う。
一日三食が朝めしで構わないとまでは言わないが、一日二食が朝めしでも問題はない。
食事で慣れないのが、塩やスパイスによる味付けだ。エイリス人は自分好みで行う。
ある程度味付けがされている料理を普段から食べている日本人からすると全般的に味が薄く感じる。
というより素材そのままで味がついていないような料理が多い。
塩やスパイスの扱いに慣れてないと、かけすぎたり、逆に少なすぎたり……加減が難しいのだ。
そんなことを考えながら昼食を食べ終えると、メイドから声がかかる。
「伏見卿、よろしければ今日はお茶会でもいかがでしょうか?」
エイリス式紅茶会はエイリス上流階級文化の精髄の一つだ。
紅茶と共に単に軽食やお菓子を楽しむだけのものではなく社交の場として使われている。
つまり非公式の談話のお誘いである。断ることなどありえない。
「モントゴメリー卿から、アフタヌーン・ティー(夕食)の前に
二人で紅茶を飲みながら、ゲームでも楽しまないかと言付かっております。
伏見卿にチェスとカード(トランプ)どちらを嗜まれるか聞いて欲しいと――」
「光栄なことですね。
チェスは駒の動きは分かりますが、序盤定跡や短手数局も勉強不足で――
私の実力ではIGMに当たるモントゴメリー卿に失礼になるでしょう。指導いただくにしても時間が惜しい。
カード(トランプ)なら絵柄も少々知識が――とお伝え下さい」
「わかりました。お伝えします」
社交界(外交の場)では礼儀作法はもちろん、
絵画などの室内装飾、家具調度、使用されている食器や飾られている花、
会話内容など広範な分野のセンスや知識・教養が要求される。
合理主義者のレーティアは苦手そうだと思ったがゲッベルスに聞くと、
彼女は師匠である芸術発明家VTVNの影響もあって絵画などの造形も深く、
持ち前の記憶力もあって身に着けた知識はそれなりのものだという。
ドクツ総統になってからの付け焼刃にしては十分だと言っていた。
僕も戸塚軍医の調合した“頭のよくなる薬”の力を借りている。
ガメリカなんかでは栄養補助食品やサプリメントの感覚で日常的に用いられている向知性薬だ。
戸塚軍医は〝ヤバクナール〟などの前科があるので〝スグオボエール〟も副作用が怖い。
御前会議の印象だけでは、かなりダメな感じがする宇垣さくら外務長官だが、
外交的教養でいえば正規艦隊の提督の中に彼の代わりになれる人材は見当たらない。
一時期は山下陸軍長官のように外務長官と兼任で提督として
現場に復帰するという話もあったが、外務長官の仕事に専念して欲しいと断りを入れた。
チェスやカードにしてもゲームを通じて公では口に出せない情報を交換しようという意味だ。
チェスであれば序盤定跡や短手数局などの知識がなければ、
そこに含まれている意味や意図を見抜くことができない。IGMはチェス王者に与えられる称号だ。
カード(トランプ)もの知識も似たようなものだが、
知識不足であるが絵柄の意味くらいであれば分かると含ませた。
あとはモントゴメリー卿の方でうまく取り計らってくれることだろう。
――――グリンガム宮殿、女王執務室――――
「ロレンス、報告を……」
エイリス女王セーラ・ブリテンが守護騎士ジョン・ロレンスから報告を受け取る。
内容はベルリン星域から戻って来たモントゴメリー騎士提督から提出された資料をまとめたものだ。
帰国早々クルード・モンゴメリーは先代女王エリザ・ブリテンのお相手をさせられている。
「惑星ベルリンで、占領当初にソビエト軍が行っていた略奪行為は静まりました。
彼らは戦争責任者であるアドルフ総統とドクツ第三帝国幹部および、
残されたアドルフの遺産の捜索だったと言っておりますが――」
「……欧州全域に配信されたコンサートの映像は届いていたでしょうに……愚かな行為です」
最終防衛ラインを突破したソビエト軍はエイリス軍より先に惑星ベルリンの制宙権を確保。
伏見空が危惧していたように惑星ベルリンを占拠したソビエト軍は、
戦時国際法のルールを無視した接収作業を行った。
逸脱した進駐軍の行為に対して、ドクツ国防軍が抵抗し市街戦が発生。惑星上が戦場と化した。
民間人にも多くの死傷者が出てたことが救援活動団体、人道支援団体から報告されている。
ドクツと日本の大使館は亡命ビザを大量に発行しドクツ民をベルリンから避難させた。
オフランスとドイツのワープゲート国境である西部戦域線には、大量の避難民を乗せた宇宙船が集まった。
モントゴメリー騎士提督は、旗下のコンパス提督の艦隊を護衛につけ惑星パリまで避難民を誘導。
本人は惑星ベルリンに王宮騎士艦隊を急行させて、ジュザン・ジューコフ元帥と粘り強い交渉に当たる。
現在ベルリン星域ではソビエト軍が占領した惑星ベルリンを挟んで、
ドクツの東西の戦域に分かれてエイリス艦隊とソビエト艦隊が睨み合っている状態だ。
ソビエトは惑星ベルリンの占有権を主張して、エイリスに星域から撤退するよう要求。
エイリスも第三帝国の降伏を受け入れたのは自国だと主張して交渉は平行線を辿っていた。
そこに共有主義の拡大を望まないガメリカがエイリスに肩入れし連合国の調停役として、
大西洋艦隊司令のドゥービル・ドワイトを代表者として欧州星海域に派遣する。
居酒屋のヤルタで三国代表の会談の場がもたれて、
米英の二国を敵に回すことを嫌ったジェーコフ元帥が折れ、戦時国際法の順守を誓ったところだ。
エイリス、ガメリカが監視団を送り、現在はルールに沿った接収作業、治安回復が行われている。
「戦死者は軍・民間人を合わせてドクツ民だけで30万人を超えるようです。
負傷者は約20万人、ソビエトによると捕虜は約15万人ほどいるそうです」
「……そうですか」
セーラは心を痛めた。この大戦によって各地で多くの命が失われているが、
ベルリンのそれはドクツのパリ占領時とエイリスのパリ解放時に失われた命よりずっと多いのだ。
ヤルタ会談の内容からしてもソビエトに戦時国際法を尊重する気がないのは明らかだ。
「交渉に携わったジェーコフ元帥が。本国に更迭され、新たな司令官に代わるという噂もあります」
「ソビエトは先の大戦の惨劇から何も学んでないのでしょうか?」
大戦を始めたドクツに対する怒りは勿論あったが、
ドクツは少なくとも国際戦時法のルールは守って戦争を行っていたのだ。
産業革命による宇宙技術革新によって人類が得た力は、
前世界大戦で惑星上の生態系、文明を先史時代まで崩壊させるものだと証明された。
「情報部が亡命者から“アドルフの遺産”に関する情報を集めましたが、
たしかな情報は得られませんでした。ソビエトも何も掴んでいない様子です。
やはりフシミ提督もしくはゲッペルス総統代理に訊ねるより無いのでしょう」
「伏見卿にこれ以上の“借り”を作る訳にもいきません。
アドルフの遺産に関しては、ゲッベルス総統代理との個別交渉の際に、
王室がレーティア・アドルフの亡命を認める代わりにバーター取引を」
「貴族議会の連中もそうですが、
大衆からもアドルフの身柄引き渡しの声は大きいですが?」
「解散コンサートの映像を見ました。
もしアドルフがドクツ民の為に自ら望んでエイリスに身を差し出したとしても――
ドクツ民は決死の覚悟で立ち上がり最後まで抵抗を続けるでしょう」
「……はい」
セーラも女王としてエイリス民の為に命を投げ出す覚悟があるだろう。
もしもエイリスが敗戦となれば国民を守るために身を差し出すつもりもあるかもしれない。
しかし自ら先陣を切って戦う女王騎士は人々から絶大な支持と称賛を集めていた。
ロレンスも女王に忠誠を誓った誇り高き王宮騎士の一人だ。
敵国が女王の身柄を奪おうとするのであれば、命を賭して最後まで女王の盾となる覚悟がある。
だからこそ、たった一人の女の子を守ろうとするドクツ民に騎士としての姿を見た
偶像を讃える彼らを見て自らの騎士道精神が奮い立つのを感じたのだ。
「では、そのようにチャーチル卿に伝えて下さい。
女王セーラはアドルフの亡命を容認すると――」
「御意。ただちに手配いたします」
――――グリンガム宮殿、エイリス式庭園――――
王宮騎士で艦隊指揮官の権限を与えられた者を騎士提督という。
その中で「The Four Horsemen」(四騎士)と呼ばれる特別な存在がいる。
女王の守護騎士“親衛隊騎士提督”ジョン・ロレンス
静かなる猛将“東洋征伐艦隊司令官”ヴィクトリー・ネルソン
先代女王から仕える“欧州奪還艦隊司令官”クルード・モントゴメリー
不沈空母“エイリス帝国宰相” ヒュー・キャズウェル・チャーチル
日英停戦交渉のエイリス側の代表者はチャーチル卿だ。
原作ゲームには登場しない人物だが、猫平宰相並みの傑物だろう。
知英派の戸塚軍医も“遅漏”だと警告していた。
外交交渉はボクシングにも似ている。
交渉中に、うっかり機密を漏らしてしまったでは済まされないのだ。
ナイーブなメンタルの持ち主には務まらない。
どちかといえば僕はトリッキーなアウトボクサーだろう。
チャーチル卿はガッチガチのインファイターだ。
壮絶な打ち合いとなれば、先に音をあげるのはこちらだ。
エイリス帝国は宇宙史的なお国柄として外交政策に強いだけはある。
公式の交渉はインファイターのチャーチル卿が担当。
非公式の会談は技巧派アウトボクサーと、リングに送る選手を使い分けている。
オフランス式庭園に対して自然の景観美を追求したエイリス式庭園の風景は、
同じく自然美の景観を大切する日本人の美意識に近く心が自然と落ち着く。
「伝統的なスタイルでは堅苦しいと思い、このような場を設けましたが如何でしたか?」
「お気遣いありがとうございます。モンゴメリー卿」
皿に用意されているお菓子もエレガントな小ぶりのものだ。
お茶の葉も優雅でエレガントな華やかな香りや風味を強調するものではなく、
飲みやすいものが選ばれている。インドカレー星域の名産品セイロン紅茶だろうか?
日本の茶道でいえば茶室ではなく野点だろうか。細かい作法は必要ないという気配りだ。
おもてなしの精神は各国の文化の中にそれぞれ違った形で存在している。
和やかな会談を交わしながらモントゴメリーがトランプのカードを取り出した時。
「は~い、モンティ~♪ 私も見学させてもらっても良いかしら?」
場違いなほど明るい声でテーブルに加わって来たのは、
先代女王であり、女王セーラの母でもあるエリザ・ブリテンだった。
原作ゲームでは濡れ場は描かれていなかった気がするが、
10代後半の娘がいるとは思えないほど若々しく熟女趣味ではない僕でも十分に守備範囲だ。
「伏見卿よろしいかな?」
「ええ、しかし美しい女性に側で見られていると思うと、
手札を持つ手が震えてしまうかもしれませんね……」
「あらあら、なかなかお上手ねぇ。ねぇ、アキティって呼んでいいかしら?」
イヤだけど僕はNOとは言えない日本人だ。古今東西の押しの強いマダムには滅法弱い。
立場のある二人の雑談が、周囲から密談と受け取られないように第三者を交えるのは問題ない。
今までの非公式の場も一対一の会談は一度もなかった。
ロンドンに来て女王セーラ・ブリテンとは謁見の間で一度だけ挨拶を交わしただけだ。
今回の日英停戦交渉は国家間の秘密交渉に近い。
公の場で無条件降伏を打診した総統代理のゲッペルスと違い。大日本帝国は表には出てないのだ。
にも拘らず情報を漏らした馬鹿が日本にはいるが……。
そういう状況で先代女王エリザとは大物が出て来たと言える。
交渉期日も迫り相手も踏み込んだ内容の情報を交わしたいのだろう。
手が震えるというのはお世辞ではない。実際に緊張しているのだから――。
「でも、アキティなら、このゲームも、きっと上手に出来ます。私が保障してあげます」
「エリザ様……」
童女のような自由奔放な顔と、凛々しくも威厳に満ちた顔を巧みに使い分けて答える。
「いえいえ、所詮は(私など)クラブのジャック<♠J>に過ぎません」
とりあえずカード知識の確認の為に謙遜する。
ジェックの絵柄は総督、貴族、国によっては歩兵を意味する最も弱い絵札だ。
「伏見卿、我々は(貴方を)スペードのエース<♠A>だと思っているのですが?」
「大日本帝国のスペードのエース<♠A>は東郷毅海軍長官ですよ」
「なるほど。でしたら(貴方は)クラブのエース<♣A>ですか。持ち札にエースが二枚とは羨ましい」
「いえいえ、そちらはキングが四枚(=四騎士)揃っているのだから敵いませんよ」
遊んでいるのはポーカーに見立てた何か。
モンゴメリー卿の手札はダイヤのクィーン<♦Q>に、キングが四枚<♦♥♠♣K>が集う。
フォーカードだが伝えたいのは王室の意見は女王の元で統一されているということだろう。
こちらのカードはスペードのエース<♠A>とクラブのエース<♣A>が、
ダイヤのジャック<♦J>とクラブのジャック<♣J>と一緒にハートのクィーン<♥Q>を守っている。
個人的には<♣A>は猫平宰相に見立てて切ったのだが……さほど問題はないだろう。
フォーカードとツーペア、日英停戦交渉ではエイリス側が有利だ。
どちらにせよ戦争を止めるか否かの選択権はあちらが握っている。
「それにしてもハートのクィーン<♥Q>とダイヤのキング<♦K>の二枚を渡せとは、
さすがに要求がすぎるのでは?」
「ダイヤのクィーン<♦Q>は必要としていません。
ジェックのカードが手元にありますから。
なによりもクローバーのカードが二枚のキングを必要としているのです」
「クローバー? クローバーは四枚そろっての札ですか?」
「そうです。ジャックもクローバーがあってこそ力を発揮します」
「なるほど、クローバーを持っているは分かってましたが、
クィーンやキングでジャックを抑えることはできないのですか?」
「ジャックは絵札の中では最弱のランクのカードですが、ゲームによっては最強となります。
伏見卿もご存知ではありませんか?」
「確かに我が国でもハートのクィーン<♥Q>にダイヤのキング<♦K>ほどの力はありません」
「わが国のダイヤのクィーン<♦Q>も似たようなものです。ジャックの支持なしには成り立ちません。
伏見卿のお国でもジャックは一枚岩ではないでしょう?」
「お互いに勝負をするのであれば、弱いカードを取り除くことが先決だと?」
「そうなりますね」
「わかりました。それではジャックのカードはこちらで引き受けましょう」
「こちらから交換できる札はありますか?」
「数字は問いませんのでハートのカードを何枚か頂ければ充分です」
「うふふっ。ダイヤのキング<♦K>は良いのかしら?」
「ダイヤのキング<♦K>は、また別のゲームで必要になると思いますが?」
「アキティには婚約者がいると聞いたけど?」
「はい。日本におりますが何か?」
「それならダイヤは差し上げますわ。私からのお近づきの印よ。アキティのこと気に入ったの」
「よろしいので?」
「うふふっ、だって貴方は一か月以上も欧州で他の女性と遊んでいるですから、
ダイヤくらいプレゼントに持って帰ってご機嫌を取ってあげないと男が廃るわよ?
わたくしが同じ立場でしたら他のボーイフレンドの元にいってしまいますわ」
「困ったお方だ……貴女という方は……」
モンゴメリー卿がやれやれと呟いている。
ダイヤの引き渡しは女王エリザの独断かもしれないが、非公式の場とはいえ発言の意味は大きい。
夕食後にはチャーチル卿からアフターディナーテイーの誘いを受ける。
食後は男性はライブラリー(書斎)に、女性はドローイングルームへと分かれ、お茶やお酒と共に会話を楽しむ。
チャーチル卿に案内された書斎にはロレンス卿とモンゴメリー卿が待っていた。
公にできる書面と、公にできない書面の内容を確認し合ってサインを交わす。
こうして日英の外交交渉は一先ずの区切りを迎える。
互いにホッと息をつくと秘蔵のスコッチやブランデー、ボートワインに舌鼓を打ちながら……
ロンドンでの最後の夜が更けていった。
後書き
これにて欧州外交編は一先ず終了です。
いよいよ日本に戻れば「平良英知with愛国獅子団」との戦いが始まります。
原作ゲームでは瞬殺で終わるイベントなのですが……それなりに書こうと思ってます。
この作品ほど平良英知が大活躍する大帝国二次小説は無いと思います。
【お詫び】本来であれば間に「幕間15~18」を入れる予定でしたが書けませんでした。
エロ主が欧州にいる間は主にプロデューサーのゲッペルスが処理してくれてました。
救出艦隊派遣前後およびドイツ、エイリスでの幕間(エロ)は後ほど投稿できればと思っています。
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