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エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?

作者:笠福京世
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第14話 ドクツ海軍大学校時代 Ev04


――――ドクツ第三帝国――――

「ロンメル提督、少しだけよろしいかしら?」

「ヤー、なんでしょう? ゲッベルス宣伝相」

「日本のアキ・フシミについて教えてくれないかしら?」

「ああ。彼は古きブシドーガイストを持った男さ」

「ブシドーガイスト?」

「ブシとは日本の古の誇り高き騎士ことだ。

 体格や容姿も全くと言って良いほど正反対だが、
 マインシュタイン元帥のような高潔な武人肌の男さ」

「なら、ちょっぴり不真面目なロンメル提督とは反対の性格ですね」

「ああ。出会いは最悪だったな。
 軍大学に迷い込んだ女の子かと思って声をかけたら激怒されて決闘になったよ。
 ま、お陰で互いを知ることになって、後は腐れ縁だ」

「あらあら、それはそれは……。
 (レーティアが話してたフシミは知的な人物だという印象だったけど)
 ……学識の方はどうだったのかしら?」

「俺の恩師であるグデーリアン教授の下で電撃戦を学んでいたが、
 あらゆるドクトリンに対応する為に
 空母艦隊を主軸とした打撃群艦隊という構想を考えていた」

「良く分からないけど潜水戦が専門のデーニッツ提督のように
 航空戦の専門家ってこと?」

「技術や運用を含めて潜水艦一筋のデーニッツ少将とは違うな。
 今後の技術革新により艦隊の世代が進めば、
 空母やバリア艦、潜水艦などの登場により戦争は形を変えると言って……
 空母を軸に様々な戦艦、巡洋艦、駆逐艦などを組み合わせたのが打撃群艦隊だ」

「どうも軍事のことは分かりにくいわね。結局はどういうこと?」

「フシミが提案したドクトリン“ファーストルック、ファーストキル”を極論でいえば、
 索敵を強化し、先に敵を発見し、敵より早く攻撃を叩きこめば戦争には勝てる」

「当たり前の真理ね。けど現実として可能なの?」

「もちろん大勢の人間からから指摘されたさ。けどフシミが言ったんだ。

 『今、我々の扱う宇宙船が世界大戦前の物と同じであるか否か、それが全てです。
  ドクツ軍人は10年前、20年前の兵器で10年後、20年後の戦争を行うのですか?』

 さらに総統閣下の師であり当時ドクツ最高の天才と呼ばれていた
 芸術発明家のVTVNが彼の論文にある技術革新はいずれは現実となると断言したんだ。

 そうなると誰もぐうの音も出なかった」

「……確かに今や第三世代以降の艦艇を実戦配備するに至った先進国では、
 ガメリカの空母、エイリスのバリア艦、ドクツの潜水艦とそれぞれが活躍してるわね。
 後進国日本の留学生にしては、随分と先見の明のある人物だったのね」

「当時の技術で実践できるかどうかは別として、
 彼の考案した戦術案は理論的には全く穴の無いものに仕上がっていたから、
 彼とのディベートになると勝てる論客は一人もいなかった。
 多数派を打ち負かすフシミについたあだ名が“悪魔の代弁者”さ」

「ああ。デーニッツがフシミのことをアクマと呼んでいたのはそういう……こと?
 デーニッツとは訳ありの犬猿の仲なのかと思ってたわ」

「討論でやりあったことはあっても、それ以上の関係はないだろうな。
 何しろフシミは頑なに純潔を守っているような古風な男でな。

 オフランスやイタリン人のような軽薄な奴らに、
 女みたいな奴は女と一緒に遊んでいろとか馬鹿にされてたんだ。
 だから猶更に女性を近くに寄せることは無かったしな」

「それならデーニッツ提督が一方的に苦手意識を持ってるってこと?」

「そうじゃないのか?
 討論では自分の理論を証明するために攻撃的になるときもあったそうだ。
 それにフシミがデーニッツの潜水戦の論文を随分と評価して口にしてた記憶もある」

「そうなの?」

「フシミは討論するにしても喧嘩を売ってこない限り馬鹿は相手にしない主義だ」

「議論に熱くなって攻撃的になったけど悪意はないってやつ? それって逆にタチが悪いわね」

「まあ。フシミも慣れぬ異国の地に来たばかりで余裕が無かったのか、
 鞘に納まってない抜き身の鋭利な刀みたいに殺気を放ってたから恐れられたんだろ?
 あいつを女みたいだとか馬鹿にしてた奴らは報復にあって口を噤むようになったが……」

「(理論家としての自信と自負もある……冷徹な合理主義者か……)
 たしかに職人肌で口下手なデーニッツ提督は苦手な相手でしょうね。……大丈夫かしら?」

「フシミには戦場に立ったら理論だけでは部下は従わないと口酸っぱく言ったからな、
 帰国してからは何度も前線で戦って部下と苦楽を共にしたと聞いてる。
 総長の立場にいるってことは大勢の部下の命を預かる立場になって変わったってことさ。問題ないだろう」

「(たしかにレーティアも上に立ってから変わった部分もある)それなら平気かしら?」

…………

……………………

…………………………………………

「とりあえず調査したけど日本には武士は食わねど高楊枝ということわざがあるみたいね。
 衣服や食事や遊び何かには一切お金をかけないストイックな人物。
 私と出会う前のレーティアに似てるのかしら? 理論家同士で気が合うのかしら?」

「けど女っ気がなく余裕がないのは童貞特有のアレね。
 レーティアは“本物”のアイドルだから純潔は当然のことだし仕方ないとしても……男の場合は……
 
 けど見たら容姿も(偶像-アイドル-として)悪くない。むしろ磨けばかなり光るタイプだわ。

 これなら女装させて売り出せば(ファンシズムの)選挙に当選するのは間違いないわね。
 いや別に無理に女装させなくてもプロデュース次第では女性ファンを対象に……
 最初は女装させて……後からカミングアウトさせて男性アイドルとして……ブツブツ」

「お~い、ゲッベルス?」

「……はっ、れ、レーティアいつの間に? 何か用事?」

「いや、今来たところだ。先ほど日本の軍令部から連絡があってな。伏見空と話してたところだ」

「え、アキ・フシミと?」

「ああ。デーニッツの報告書も事象の一面に過ぎないからな。
 情報は多角的に集めて分析する必要がある。久々に実のある意見交換が他人とできた」

「随分と楽しそうね?(互いに似た者同士だしシンパシーを感じるのかしら?)」

「ああ。やはり論文に表現された知性は嘘をつかないから良いな。
 論文と同じく実際に話してみても伏見は論理的であり、
 こちらから詳しく問いただしても緻密な答えが変えてくる。
 何よりも数値のデータだけでなく図解も交えて説明されて分かり易かった」

「(たしかに“天才”であるレーティアの話題についていける知性の持ち主は少ないのよね……)
 心配してたデーニッツのことは?」

「ああ。ちゃんと話をしたさ。職務に対しては全く心配してないがな。生活の様子も聞けた。 
 伏見もドクツ留学の際には慣れれぬ異国で淋しい想いをしたそうだから気を配ってくれてるそうだ。
 最初は食堂でポツンと一人で食事を取ってたそうだが、今は他の女性士官と一緒に食事をしてるそうだ」

「そう。それなら良かったわね」

「デーニッツの報告書には自分自身や伏見については何も書かれてなかったからな。
 海軍長官の東郷毅がイスパニア人のような女たらしで危険な人物だが、
 それ以外は男女ともに紳士的に接してきて話に熱心に耳を傾けてくれるとあるだけだったからな」

ゲナウ(そうそう)、そのことならロンメル提督から聞いたんだけど……(かくかくしかじか)」

「……なるほど。伏見も何故かデーニッツに避けられてるみたいでと言ってはいたが、そうだったのか」

「(やっぱり本人は自覚はなかったのね)……どうするのレーティア?」

「伏見に悪気はなかったんだろ? お互いに昔のことは水に流した方がいい。
 伏見にもデーニッツのことを伝えるし、デーニッツにも伏見のことを伝える。
 誤解したまま避け合うのは合理的ではなく不毛だからな」

「……レーティアらしいわね。レーティアからデーニッツに連絡をするなら問題はないでしょう」

ナチュアリッヒ!(当然だ!) それに伏見は想像してたよりずっと面白い人物だったよ。
 いつかはドクツに招待して私自ら街を案内するという話になった」

ヴィルクリッヒ!?(えっ、本当に!?) レーティアが男性を招待したいなんて初めてね」

「やっぱり駄目か? 伏見も私が日本に来るなら自ら案内すると言ってくれたが?」

「総統自らとなると難しいわね……いや同盟国なのだから国賓待遇なら可能かしら?
 ……アキ・フシミを(男の娘として)レーティアとペアで宣伝省から売り出せば……ぶつぶつ……」

「お、おい。ゲッベルス? 疲れるコンサートに出演とか伏見も嫌がると思うぞ」

「はっ! ごめんなさい。レーティア、ついつい自分の世界(プロデューサー)に」

「まあ男性にしては、見た目がかなりキュートな部類だからな。
 ゲッベルスが食いつきそうな人物だと思った」

「あ、いえ……そうですが……」

「どちらにせよアシカ作戦が成功してドクツ第三帝国がヨーロッパ星海域の全てを支配してからだな。
 そのときは頼むぞ、ゲッベルス。日本は期待以上に頑張っている。こちらも負けてはいられない」


レーティア・アドルフが立案し総統自ら陣頭指揮を取るエイリス侵攻作戦(アシカ(ゼーレーヴェ)作戦)は、
帝国の本星ロンドンを死守しようと抵抗するエイリスに対してドクツ軍が優位に立っていた。
エイリスの女王セーラ・ブリテンも最前線に立って士気を鼓舞したが味方の艦をかばい負傷してしまう。

ドクツ軍が戦域での勝利を掴みかけたが思わぬ報せが、
同盟国イタリンからムッチーニ総統のホットラインから送られてくる。
北アフリカ星域で数倍の兵力を持ってエイリス軍にあたるイタリンが全滅したというのだ。

もしイタリンが敗れてしまえば南から惑星ベルリンへ進攻する道ができてしまう。
レーティアはエイリス軍の挟撃を危惧し、ロンメル艦隊に反転して大ローマ星域に救援に向かうよう指示した。

アシカ作戦に参加する三分の一の戦力が離脱した隙をエイリス軍に突かれドクツ損害を受けて撤退。
これまで快進撃を続けて来たドクツ第三帝国の初めての敗戦であった。


レーティア・アドルフ→☆
 
 

 
後書き
皆な大好き人気投票第一位のレーティア・アドルフは、
メインヒロインじゃなくってメインアイドルです!!

テキトーにドイツ語っぽくカタカナを入れるのも限度がありますね。
相槌なので意味が分からなくても問題ないかと……。ルビは適当に振りました。

レーティアは伏見とお喋りして発音にも慣れフシミ→伏見と距離が近づいた。 
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