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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第648話】

 京都二日目の深夜、ヒルトが眠る部屋にはシャイニィことにゃん次郎と今日出会ったいぬきちがヒルトと一緒に布団の中で眠っていた。

 寒空の下で眠っていたいぬきちにとっては久しぶりの暖かな寝床に満足し、寝息をたてている。

 にゃん次郎の方も種族の違いがあるとはいえ直ぐに馴染んだ辺りはいぬきちと何処か波長があったのかもしれない。

 ヒルトの足元で眠る二匹――今日はいぬきちやにゃん次郎、ヒルトや他の生徒の夢の中の話。

 いぬきちの夢の中――。


「お肉わんっ! 美味しいわんっ!」


 がつがつと必死にお肉にかじりつくいぬきち、こんな夢を見るのも久しぶりに満腹になったからなのかもしれない。


「美味しいわんっ! お肉最強わんっ! がつがつわんっ!」


 自身の眼前に広がる無数の骨付き肉、夢とはいえいぬきちにとっては至福の時なのは間違いないだろう。

 一方でにゃん次郎の夢はというと――。


「遂に私も空を飛べる様になったわ! このNS(ニャンコフィット・ストラトス)のお陰で!!」


 勿論現実には存在しないNSだが、自由に空を飛べる快感にシャイニィことにゃん次郎は大変満足だった。

 アーリィの側にいたにゃん次郎にとって、飛べるというのがある意味憧れなのかもしれない。

 二匹の夢の邪魔はこれ迄にして、他の生徒の夢の中を覗いてみる――先ずは織斑一夏、彼が夢見る内容とは――。


「ぅぉぉおおおっ!! 俺の勝ちだぁぁぁあああッ!!!!」

「ぐわぁぁあああああっ!!!!」


 これまで対峙してきた全てのISが複合化した様な機体を切り裂く一撃、裂かれた全身装甲から現れたのは誰とも似ていない架空の人間――。


「ぐ、ぉぉぉ……バカな、この私が破れるだと……!?」

「俺がいる限り、千冬姉も学園も……世界も、俺が守る!!」


 鈍い音と共に崩れ去る人物――巻き起こる称賛の声。


「キャーッ! 一夏様ー!」

「学園だけじゃなくあたしも守ってー!」


 周りに詰め掛ける女の子達、男よりも女の子に称賛されるのは普段から囲まれた結果が夢に干渉したのだろう。

 何時ものように握手に応じ、サインをし、写真を撮られ――と。


「やっぱり、俺じゃ一夏には敵いそうにないな、これが」

「ん? よぉヒルト」


 夢の中で新たに現れたのは有坂ヒルトだった、夢の中とはいえヒルトの顔がへのへのもへじで表されてるのは夢ゆえでの事だからだろう……多分。


「ヒルトだって俺ぐらい努力すれば強くなれるぜ?」

「ははっ、俺は努力とか似合わないからな。 才能もないし」

「そっか」


 才能もない――この夢の中のヒルトはもしかしたら一夏の深層心理で描いてるヒルトのイメージなのかもしれない。

 次は別の者の夢を覗く――まだ起きている子もいるが寝息をたてている子も居るのは事実だ。

 疲れたからか既に眠りについていたシャルロット・デュノアの夢を覗いてみる。


 星が瞬く空の下、肌を重ね合わせる二つの影――。


「やんっ! ひ、ヒルトぉっ……は、激しすぎだよ――あぁんっ!!」

「何言ってるんだよ、これぐらい激しい方が好きだろ、シャル?」

「そ、そうだけど……やぁんっ! ヒルトの……奥まで入って来ちゃってる……!!」


 夢の中で交わるヒルトとシャル、実はシャルロットの夢の大半はヒルトとの床の内容だったりする。

 ヒルトと初めてキスをしたあの日以来からシャルは夢でいつも淫夢を見るのが嬉しくもあり、悩みでもある。

 ――というのも、朝起きたら自身のショーツが色々まずい事態になっている。

 故にあの頃からずっと朝にシャワーを浴びるのが日課になっている事実、ルームメイトのラウラからすればいつもの事なので気にしてはいないが――。

 シャルロット自身、いつも夢でのヒルトとの逢瀬で起きる度赤面しつつ、内心えっちなのは僕なのかなぁという悩みもあったりする。

 シャルロット・デュノアの夢の続きを見たい人には残念なお知らせなのだが、他の子の夢も覗かないといけないので彼女の夢はこれ迄とする。

 次は有坂美冬の夢を覗いてみる――。


「お兄ちゃん! 美冬お菓子食べたい!」

「お菓子? 適当に何かないのか?」

「無いから言ってるの! せっかくだからお兄ちゃん、ポテチ買ってきて!」


 ここぞと謂わんばかりに夢でヒルトをこき使う美冬、心なしか彼女が三頭身の干物妹に見えなくもない。

 無論本心で兄をこう扱いたいとは思ってはいない美冬だが、彼女もヒルトの急なモテッぷりにストレスを感じてるのかも知れなかった。

 次は別の者の夢へ向かう――ソフィー・ヴォルナート、静かに寝息をたてている彼女の夢の中は――。

「でっきたー♪」


 大釜の中をぐるぐる棒でかき回し、中から完成して現れたのは何やら布袋から棘が飛び出している見るからに危なそうな物だった。


「あら? 今度は何を作ってるの、ソフィー?」

「あ、モニカ。 じゃじゃーん! うに袋だよ!」


 そう言って見せたうに袋なる物を見てモニカは小さく首を傾げる。


「これって、袋の中にうにを詰めただけに見えるんだけど?」

「そうだよ? でも、こうやって釜の中でうにを上手く袋に詰めるのって結構大変なんだからね?」

「あはは……」


 夢の中とはいえソフィーは不可思議な事をしている――とはいえ、不思議と出来そうな気がしなくもなく、久しぶりに夢の中で会えた幼なじみに満足そうな笑顔を見せたソフィー。

 この子の夢はここまで……次の子の夢を覗き見る。

 布仏本音ことのほほんさん、普段ならまだ起きてる時間帯なのだが珍しく寝息をたてている彼女の夢の中が此方。


「ほわぁ……。 にしし、ひーくんひーくん~、あっちに休憩スペースあるよー」

「あぁ、じゃあちょっと休憩していくかな。 ……の前に本音、アイス食べるか?」

「うん。 じゃあじゃあー、ストロベリーバニラのミックスお願い~」

「オッケー」


 たたっと駆けていくヒルト、ヒルトとデートする夢を見ているのほほんさんはニッコリ笑顔でアイスを待つ。

 何時ものようなゆったりした服装だが、スカートはわりと短めのフレアスカートを穿いてる辺り夢とはいえ気合いが入ってるようだった。


「はいよ、ストロベリーバニラのミックス」

「にひひ、ありがとーひーくん♪ ちゅっ♪」


 アイスを渡すために屈んだヒルトの不意をつく頬に口付け、大胆な行いに夢とはいえ頬を真っ赤に染め上げるのほほんさんだった。

 まだ他の者も眠っているのだが、一度戻ってヒルトの夢の中を覗いてみるとする。


「ぬ……補習テストとかヤバい……」


 学園の一室、カリカリとペンを走らせて解答に記入していくヒルト――夢の中で補習という辺り、どこかで危機感を感じているのかもしれない。


「ぬぁあ……書いても書いても何で用紙が増えていくんだよー!! 終わらねぇじゃねえか、これが!! しかも何か頭重いし、ベトベトするし!」


 魘されるヒルト、頭が重いのもいぬきちの頭がヒルトの頭に――更にヨダレがヒルトの顔にだらだら流れてる始末。

 修学旅行最終日の夜、夜這いは無いもののヒルトにとっては悪夢でしかなかった。


「わふっ(お肉わんっ)」 
 

 
後書き
そろそろ京都終わらせて笹川成樹転入編かな 
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