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エロゲー世界に神様転生って勝ち組じゃないのか?

作者:笠福京世
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第20話 憂国の大和撫子と軍令部総長の不安 Ev07

 
前書き
一話あたり過去最高の分量。
福原いずみちゃんのイベントフェイズに、
戦術フェイズの解説もぶち込んでしまった。 

 
――――軍令部総長室――――

「エイリス本国軍人の捕虜も増えて来たな……どうしたものか」

東郷長官からは捕虜となった人物に
提督候補がいたら情報を送って欲しいと頼まれている。
現地軍の提督だったフェム・ベコを推薦しておく。

「閣下、お茶はいかがですか?」

書類に埋もれていると穏やかな声が掛けられた。

「ありがとう。少し休憩するよ」

「はい、粗茶ですが」

丁寧な仕草で湯のみに入ったお茶と甘味が差し出される。

「やっぱり、和菓子には緑茶だね。
 とても落ち着くし、いつもより美味しく感じる」

「まあ、ありがとうございます。
 閣下のお気に召して光栄です」

「う~ん、閣下なんて他人行儀に呼ばなくても……
 昔みたいに気安い感じでいいよ?」

「いえ、そんな……。帝国軍人として、けじめですから。
 ご命令とあらば、その様にいたしますが……」

「昔はお転婆な女の子だった印象があるけど、
 マジメになったのは平良少将の影響?」

「……そうですね。士官候補生になった際に
 平良の実家で、伯父と叔母の世話になりまして……」

「なるほど。平良少将との縁はその頃からか」

「うふふ、軍人になることも随分と反対されてました」

「そうなの?」

「日本人女性は、主人が戦で留守の間に家を護る存在だというのが
 平良の家の考えですので……」

「それで大和撫子としての立ち振る舞いを教わったと?」

「はい。ですが……
 結局は女の身でありながら軍人という道まで
 ついて来てしまいましたから、
 やはり……私は、真面目でなく、お転婆かもしれません」

「ははは。今や陸軍長官も女性だし、
 海軍も正規艦隊の提督だけでなく女性の将官や佐官が大勢活躍してる。
 女性軍人が、お転婆なんて言ったら東郷長官に怒られるよ」

「うふふ、そうかもしれませんね。
 閣下はお転婆だった子供の頃の私の方がお好きでしたか?」

「う~ん、いや、子供の頃は妹分だとは思ってたけど、
 あまり女性としては意識してなかったから……
 会ってない間にお淑やかで綺麗な女性になって吃驚してる」

「あっ、そ、そんな……。
 私も閣下は昔から兄のような存在でしたから……
 そうです。兄としてお慕いして、側にいたいと」

福原いずみちゃんの真っ白い頬がほんのり赤くなり、
少しだけ落ち着きなくあわてる姿が、カワ(・∀・)イイ!!

「うんうん。昔より今の方が可愛いよ?」

「あ、もう、おからかいにならないでください」

照が残ったままの顔で、ちらりと上目遣いに見上げてくる。

「今、可愛いと仰いましたが……劣情を抱かれました?」

「平良少将が言っていた、君を好きにしろって件か」

「はい。わたしは閣下がお求めでしたら、いつでも……」

「……とても魅力的な提案だけど、一つ教えて欲しい。
 平良少将は、どうして東郷長官ではなく僕の方に君を?
 若い僕の方が御しやすいと思ったわけ?」

「……いえ、平良は最初は東郷長官に抱かれてこいと私に命令を」

「だろうね。僕は山下陸軍長官と婚約関係だ。
 そこに女性を送り込むってことは、下手すると山下家を敵に回すことになる。
 愛国獅子団は陸軍からも支援を受けてるはずだ。
 わざわざ波風立てる必要は無い」

「はい……閣下の仰る通りです」

「でも、福原中佐は自分の意志でこちらに来たと言ったね」

「そうです。私が平良を説得しました。
 初めてを捧げるのは、あき兄様と決めていましたので……」

「平良少将を裏切ることになるよ?」

「はい……覚悟しております」

「平良少将は東郷長官の取り込みは諦めたの?」

「いえ、愛国獅子団に所属する別の女性軍人を宛がうと……」

「彼は『異国の連中と睦み合うなど許されん』とか言いそうだもんね」

「はい。東郷閣下に近づき、子を産み正妻となり間違いを正すよう命令されました」

はあ……送り込んだ女性は東郷長官に取り込まれるだけだろうけどね。

「平良少将は東郷長官を随分と甘く見てるな」

「……閣下は東郷長官を高く評価されておりますね」

「評価というか……正直に言えば恐ろしいよ」

単に原作ゲームの主人公であるからって訳じゃない。
東郷毅の恐ろしさは原作ゲームをしているときには気づけなかった。
アレはゼッタイにヤバいヤツだ。物腰柔らかだが眼が一切笑ってない。

「恐ろしい……ですか?」

「そうだね……福原中佐は宇宙艦隊を率いる提督として、
 戦術家と言われるのに必要な能力は何だと思う?」

「そうですね。戦況に応じた戦術プログラムを使い分ける能力。
 知識は当然ですが……判断力や決断力でしょうか?」

「そうだね。今や宇宙艦隊の戦闘は無数の戦術プログラム群によって制御されている。
 そして提督によって得意とする戦術プログラム群がある。
 正規艦隊の提督でいえば、南雲中将は持久戦、小澤少将は情報戦、田中少将は雷撃戦の専門家だ」

「伏見閣下は航空戦の専門家として知られておりますね」

「そして宇宙戦闘の攻撃手段は、戦闘機による航空戦、レーザー兵器による艦砲戦、
 ミサイル兵器による導弾戦、鉄鋼弾による雷撃戦の四つだけだ。
 優秀な提督であれば艦隊の性能をカタログスペック以上に引き出すことができる」

「はい。東郷閣下が戸隠閣下、大原閣下らを正規艦隊の提督に指名しなかったのは、
 旧式艦に慣れた世代の提督の方々が、新しい戦術プログラム群に対応できず
 新世代艦の性能を引き出せなかった為と聞いております」

「まあ、山本中将なんかは艦砲戦、導弾戦、雷撃戦の三つを水準以上に指揮できるけどね。
 さて……戦術家として優れていると言われる提督は、
 これら無数の戦術プログラム群を使いこなして艦隊の全ての性能を引き上げることができる。
 平良少将も“この部分だけで言えば”東郷長官に比肩すると思うよ」

「東郷閣下は、それだけでないと?」

「そう。東郷長官と同じ戦域で戦った指揮下の味方艦隊は、
 実戦時には常にシミュレーション以上の働きをしている」

「図上演習のシステムやデータに誤りがあるのでは?」

「僕が軍令部総長になってからは、
 図上演習の結果を軽視しないよう通達し、システムやデータを見直してある」

史実ではミッドウエイ海戦の直前に行われた図上演習では、
MI作戦は損害が出て失敗する、という結果が予測された。
しかし日本海軍の将官や参謀たちは、机上の空論だと図上演習の予測を無視し作戦を慣行。
連合艦隊はシミュレーション通りの大損害を被り、大戦における主導権を失う。

戦争の基本は兵站と戦略だという某ココア提督の意見に異論はないけど、
事前の戦術シミュレーションの結果を軽視するのは論外だ。

図上演習で負けたと言う結論を嫌がって、
勝てるようデータやシステムを操作するようになれば本末転倒どころではない。
最初から「結論ありき」で物事を進めるようになったら組織はおしまいだ。

勝ち負けという結果には理由(過程)があるのに、
そこを論理的に詰めないで、机上の空論だとか感情的に排除しようとするアホがいる。
ついでにプロセスを軽視して、結果だけ求めるようになるバカも出てくるから頭が痛い。

宇宙船が星域間を移動する時代に、
認知バイアスによって間違いを犯す人間の脳内シミュレーション(妄想)よりも、
人工知能を活用した戦術シミュレーションの方が精度が高いのは明らかだ。

個人的には第二次世界大戦後には頭脳戦艦の時代が来ると思ってる。
擬似人工知能を搭載した頭脳戦艦「夕張」の開発は今のところ後回しにしているが、
平賀博士に性能の試算だけはしてもらったいる。
ぶっちゃけ凡百の提督が指揮するより、人工知能が指揮した方が統計的な勝率は高い。

「兵は詭道なりと『孫子』にあるけど、東郷長官の恐ろしさは心理戦にあるよ」

「詭道とは……人を欺くことですか?」

「そう。戦術レベルでは、敵や味方の心理を読むことで、
 状況に相応しい戦術プログラム群を用意する。
 そんなことができる戦術家は東郷長官くらいだ。

 そして戦略レベルでも小が大に勝つには、敵の意表をつくしかない。
 日米開戦時における二方面奇襲作戦。
 太平洋方面の正規艦隊を主攻と見せかけての南方作戦。

 戦術でも戦略でも心理戦を制して作戦を成功させてるんだ」

「……なるほど。しかし有事において軍事的な手腕の高い方が
 海軍長官を務めるのは頼もしいことなのではありませんか?
 軍政は伏見閣下が補佐されておりますし」

「東郷長官は軍政家としても超がつくほど有能だよ。僕以上にね」

「まさか、陸海統合軍制改革の推進者である伏見閣下以上ですか」

福原いずみちゃんが驚きと疑いの声をあげる。

「軍制の改革は僕がいなくても長官だけでできたよ」

実際に現在の統合軍制改革の半分は東郷長官の意向で動いている。
せいぜい軍令部総長としての僕の影響力は全体の四分の一程度。
残りの四分の一は猫平内務長官や陸軍の改革派の意見を汲み取っている。

「他にも海軍が財界から熱い支援を受けられるのは長官のお陰だ。
 東郷長官は凄いよ。僕なんかじゃ財界のマダムを手玉に取るなんて出来ない」

平良英知は愛国獅子団を支援する塔山財閥の令嬢と婚約するそうだ。
いわゆる政略結婚ってヤツだけど、身を差し出して財界から援助を引き出したともいえる。

東郷毅は政財界のマダムに媚びを売ってセックスしたりしてるわけじゃない。
まあ有閑マダムに手を出してたって驚かないけど、男性の財界人とトラブったという話もない。
別にセックスなんてしなくても財界のマダムたちは東郷毅にメロメロでゾッコン(死語)なのだ。

「閣下は昔っから人の多いところは苦手ですもんね」

「昔に比べればマシになったと思うけどね。人付き合いは」

「うふふ、そうですね。変わられたと思います」

僕も政財界のパーティーに呼ばれるけどマダムたちには玩具のように弄ばれている。

「ま、平良少将の考えは分かったよ。
 福原中佐のことだけど……お互い職場だと堅苦しいな。
 今晩空いてるなら、食事でもどう?」

「かしこまりました。
 ……お情けは頂けませんか?」

「僕は東郷長官と違って誰でも平等にってのは無理かな?」

今でも毅然と迫られたら手を出しちゃうと思うけどね(ノ・ω)ノ
すると福原いずみちゃんが翳った顔で訊ねてくる。

「やはり山下閣下の許可が必要ですか?」

「あ、いや、そりゃ、許可は……ないより、あった方が良いだろうけど、別に」

「それとも閣下は東郷長官の周囲にいるような積極的な女性が好みでしょうか?」」

「い、いや、僕としては控えめな恥じらいのある大和撫子ってめっちゃ好みだし!
 そういう意味では、平良の家の教育には感謝してるよ。ホントに」

「……私は、あき兄様に相応しい女性に育ちましたか?」

「今更だけど婚約する前だったら、いずみの想いに答えれたと思う。
 子供の頃に気持ちに気付けなくってごめん。
 お嫁さんにしたいって言えるくらい素敵な女性になったよ」

「は、はいっ。ありがとうございます!
 いえ、婚約のことは、もういいんです。
 私も離れてからは、拒絶されるかもしれないと思うと会うのが怖くて」

「拒絶なんかしないよ。焦ることはないよ」

「わかりました。あき兄のこと、信じてます。
 それでは、失礼します。また後ほど――」

声を弾ませて笑顔で答えると、彼女は丁寧に一礼し部屋を出ていった。


「駄目だなぁー。やっぱり東郷長官のようには無理だわー」

東郷毅が恐ろしいって話が流れたけど、もしアレと敵対するとなったら不安だらだけだ。

某紅茶提督を戦場の心理学者だと評した人もいたけど、東郷毅のその類だ。
しかも某紅茶提督と違って、某扇動政治家並み対人スキルの力量があり政財界に伝手を持ち、
某薔薇連隊の毒舌家隊長を超える女たらしスキルで陸海軍の隅々まで網を広げている。
しかも女性のことになると、姉に対するシスコン獅子帝ばりの熱意を発揮する……勝てるわけないだろ。

アレはエロゲの主人公補正があるといってもモテすぎだと思う。
催眠術でも使ってるんじゃねえかという疑惑も一部ではあったが、
むしろエロゲ的ではない、正しい意味での催眠術(≒心理テクニックの悪用)の使い手だろう。
恋愛心理学、恋愛工学、NLP、メンタリズムとか、そーいうのを総動員してる。

そういうテクニックを意識的にやってるのか、
無意識でやってるのかが分からんから怖い。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

女性を不幸にしたくないとか言いながら、
合意さえ得られれば、人妻でも恋人がいても遠慮なしにセックスするしな。
たぶん家庭崩壊しても恋人同士が別れても
女性が幸せ(東郷とのセックスライフが気持ちいい)ならOKって考えは、
普通にサイコパスだろ?

マジで( ノД`)怖いよ……

多くの女性を幸せにしたいので、多くの女性と付き合うというスタンスも理解できん。
そういえば原作ゲームではスカーレットエンド以外とは子づくりって考えもゼロだよな。
まあ海軍長官が戦争中に提督を孕ませたら大問題だろうから避妊に気を遣うのは分かるよ。

こっちは寿命が宣告されてるから
早く平和にしてエロいことしたいってのに!!怒(#`Д´)ノ。゚.o。㌦ァ。o.゚。


福原いずみ→☆ 
 

 
後書き
原作ゲームをプレイしながら東郷毅の目を見てるとマジで不安になってきた。

各提督の部隊能力(HP+20%とか全性能+10%とか)を戦術プログラム群で説明。
全性能-40%とかの提督は戦術プログラム群を要求水準で使いこなせない人ってことに。
HPは持久戦の能力で、索敵は情報戦の能力って扱い。

某銀河の英雄たちと比べても東郷毅のスペック高すぎィ! 
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