IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第658話】
前書き
お出かけ
日曜日、場所はレゾナンス駅前ロータリー。
冬の装いのヒルト、寒そうに手を擦り合わせていた。
「さ、流石にもう冬だな……。 コートは着てるけど、手袋ぐらいすればよかった……」
行き交う人々を眺めながらヒルトは聞こえないようにごちた。
服装は黒のモッズコートをカジュアルに着こなし、頭にはアルファベットがお洒落にデザインされたニット帽。
インナーにはグレーのタートルネック、そしてパンツは細めかつ色合いが黒のジーンズ。
カジュアルだが何処かシックな大人の男をイメージした出で立ちだった、因みにこれらをコーディネートしたのは妹の美冬である。
彼女の好みが色濃く反映されているが、可能な限りはヒルトの好きな色合いで整えている辺り、美冬のヒルト大好き加減が伺える。
これは補足だが、あくまでも今日着るのに美冬の意見を聞いたわけではなく、以前コーディネートしてもらった時の服をヒルトが覚えていただけである。
端からは特に目立つ要素もないヒルトだったが――。
「あ、あの……。 お一人ですか?」
「え? いえ、ちょっと友達と待ち合わせしてるので一人じゃないですね」
「そ、そうですか。 失礼しましたっ」
生徒会メンバーを待つこと二十分、駅前ロータリーで立ってるだけで三人の女性に声を掛けられ、これで四人目。
ヒルトはこれ迄声を掛けられた事はなく、何で声を掛けてくるのかもよくわかってなかった。
女尊男卑の昨今、もしかしたらただの荷物持ち要員にヒルトを確保したかっただけなのかもしれないが、真相は誰にもわからない。
「あ、やっほーひーくん~。 やっと見つけた~」
「ん? おっす。 もしかして探してたのか?」
現れたのほほんさん、服装は冬の装いでグレーのポンチョに下は白のフレアスカート、珍しく黒のストッキングを履いて耳にはふわふわモコモコの白いイヤーマフを着けていた。
普段着ぐるみみたいな服装の彼女だが、明らかに気合いの入れようが違っていた。
「探したよ~。 ひーくんニット帽被ってるから全然わからなかったよー。 にひひ、ひーくんカッコいいねー」
「そうか? 普通だろ?」
「えー? ふつうじゃないよー? ちなみにおりむーは制服で街に出掛けるって前に言ってたよー。 街歩くだけでサインねだられたり写真撮られたりで大変だーって、言ってたけどー。 そもそもIS学園の制服で出掛けなきゃいいのにねー」
「はは、何だかんだでちやほやされたいんだろ、一夏って」
「そだねー。 いっっっつも『俺ってそんなに有名なのか』って言ってるけどー。 ぜっっっったい、意識してるとわたしは思うなー」
端から見た一夏の印象はこうなんだろう、とはいえ未だに特集されるのは一夏で、確か今日も海外からのオファー受けたとか何とか。
「はは、まあ良いじゃん。 有名になりたいってならもう有名何だし、サイン書く機会欲しいなら路上で突発的サイン会でも開くだろ」
「うんー。 あ、そだそだ。 ひーくん、せっかくだからわたしがひーくんの服見立ててもいい~? うん、みたてちゃおー」
提案したのほほんさんに、ヒルトは――。
「え? 買い出しだから楯無さんと簪二人を待たないとまずいんじゃ?」
「わたしがメールしておくよ~。 ほら、いこいこー」
ヒルトの背中を押すのほほんさんに、苦笑を漏らしたヒルト。
端から見ても仲の良さげなカップルに見える――無論それが問題であり、遅れた楯無と簪の二人は陰から様子を見ていて危機感を募らせていた。
「これは、まずいわね。 まずいわよ? 簪ちゃん……」
「うん……。 まずいね、お姉ちゃん……」
遅れた二人はヒルトとのほほんさんの仲の良さげなカップル姿に危機感を抱く。
レゾナンス内メンズショップ、中は暖房が効いていてヒルトはニット帽を外すとその特徴的な白銀の髪が晒された。
「うんうん~。 やっぱひーくんはそうじゃないとー」
「ん? いや、寒いからニット帽ぐらいは被らないと」
「あはは、寒がりさんだねー」
メンズショップでのほほんさんが物色、色々な服をヒルトにあてがっていた。
「ひーくん、このダッフルコートはどうかなー」
のほほんさんがあてがったのは白のダッフルコートだった、対比的な意味合いでも白は無かったのでヒルトは頷くと――。
「そうだな、いい感じだし……。 買ってくるよ、のほほんさん」
「うんうん~。 じゃあわたしはここで待ってるよ~」
レジに向かうヒルト、のほほんさんは携帯を取り出すと早速楯無と簪の二人に居場所をメールする。
二人を見失っていた更識姉妹には渡りに船だが、のほほんさん的にちょっとだけでも二人っきりでデートしたかった為に連絡を遅らせた。
暫くすると――。
「あ、ここに居たのね。 探したわよー」
「あっ、やっほー、簪ちゃんに楯無ちゃん~。 今ねー、ひーくんに似合う服をみたててたのー。 今は会計中~」
楽しげに伝えるのほほんさんに対して、二人の姉妹は何とか二人っきりのデートという事態を防げた事に安堵する。
――と、会計を終えたヒルトはダッフルコートが入った紙袋とは別に小さな包みを持って戻ってきた。
「のほほんさん、コート選んでくれてありがとう。 それとこれはお礼を兼ねて――って、楯無さんに簪? いつの間に合流してたんだ?」
疑問を口にするヒルトに、二人の姉妹はジト目でヒルトが持ってきた包みを見ていた。
「あらー、ヒルトくん。 本音ちゃんにだけプレゼントだなんて」
「ヒルト、ズルい……」
「あ、いや……。 コート選んでくれたからそのお礼って事だし……」
たじろぐヒルトに、愉快そうに微笑んだ楯無は――。
「あらー、私達だって君に似合う服を選んであげるから。 私達にも何か買ってよ。 ねえ?」
「うん……。 何か、ほしいな……」
「ぐぉ……。 わ、わかりましたよ……」
会計を終えたばかりのヒルトだったが、またUターンして二点小物を購入。
暫くして会計を終えたヒルトは新たに二つの包みを持ってきた。
「はい、此方が楯無さんで此方が簪。 本音はこれだな」
包みを受け取った三人、のほほんさんは表情を綻ばせていたが二人は――。
「あ……ありがとう。 ……ヒルトくん、我が儘言っちゃってごめんなさい」
「うん……。 ごめんなさい、ヒルト……。 ありがとう……」
申し訳なさそうに二人は告げる中、のほほんさんは――。
「ひーくん~。 これ、開けてもいい? いい?」
「ん? 構わないよ。 ほら、楯無さんも簪も開けていいよ。 大した物じゃなくて悪いけど」
ヒルトは一言そう告げる、好み云々調べずに三人に渡したプレゼント故に、気に入るかどうか怪しかった。
「わあ! ネックレスだ~! にひひ、ひーくんありがとう~! 大事にするね~!!」
「あ……これってイヤリングかしら? うふふ、ハートのイヤリングって可愛いわね」
「ブローチ……。 ……どう、しよう。 にやけちゃう……」
三者三様、とはいえ三人共々喜んでくれたことにホッとしつつ、軽くなった財布に少し涙するヒルトだった。
後書き
まだ序盤っす
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