| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

【第644話】

 
前書き
おひさな更新 

 
 修学旅行二日目、白騎士暴走事件の傷痕が比較的浅い観光地及び、観光街には疎らながらも観光客が見える。

 観光街のある一画、舞妓体験等が行える場所が比較的人気であり、自由行動中のIS学園生徒も――。

 店舗前には既に着替え終えたヒルトが其処に居た――腰に鞘を差し、侍の出で立ちでその場で待っていた。

 そしてSNSで聞き付けたのか、疎らな観光客が一目IS学園生徒を見ようと集まっていた。


「……凄い人数だな、皆学園生徒を見たいか?」


 一人ごちるヒルト、学園生徒目当ては主に男性が多く、女性の目的はやはり織斑一夏の存在だろう――だがこの場に一夏は居なかった。


「うーん、この景色もいいな」


 そんな事を言いながら景色をカメラに納めているのは離れた場所を歩いている一夏だった。

 本来なら勝手な行動をした一夏には重い処罰を課せなければならない――だがそうなると、楽しい修学旅行も全体的に暗くなる可能性もあったため修学旅行後の自習室での反省文及び、土日の休日返上で事は済みそうだった。

 とはいえ、この事実が頭から抜けている一夏が知るのは修学旅行後なのである。

 都合の良い記憶改変も後で知れば地獄になる。

 それを知らない今だからこそ暢気に過ごせるのだ。

 場所は戻る――着替えを終えたヒルトが時間をもて余しているとガラッと戸が開く音が聞こえてきた。

 きらびやかな衣装に肌は白塗り、髪を結ったカツラを被った舞妓さん達が続々と出てくる。

 身長は比較的皆小柄――尚且つ皆が舞妓さんという事もあってかヒルトはおろか見学していた観光客ですら誰が学園生徒で誰が舞妓体験の観光客かがわからなかった。

 というか寧ろ一人侍の格好をしてるヒルトが目立っている。

 侍の格好とはいえちょんまげを結えないヒルトは青みがかった銀髪で、日本人とはいえやはり異彩を放っている。


「ふふん、ヒルト。 あたしの舞妓姿はどう?」


 きらり八重歯が光る少女――カツラを被っていて一瞬誰かわからなかったが、声と八重歯で鈴音だとわかると――。


「ん? ……馬子にも衣装って感じだな」

「なっ!? ムキーッ! 少しは褒めなさいよ!」


 ブンブン振り回す拳をかわしながらヒルトは小さく笑っていると――。


「うふふ、ではわたくしはどうかしら?」


 そう言ってヒルトの前に現れたのはセシリアだ――金髪はカツラで隠れていて結った黒髪のカツラでイメージが完全に消えていた。


「セシリアか? ……金髪のイメージが強いからな。 何て言うか……綺麗なのは綺麗だがコレジャナイ感が半端じゃないな」

「そ、そうですか……。 ……ですが、綺麗なのは綺麗なのですね……♪」


 綺麗と言われて上機嫌になるセシリアを他所に鈴音は頬を膨らませてむくれていた。


「ふんだ。 どうせあたしには馬子にも衣装よ! バカヒルト!」


 ゲシゲシと足を踏んでくる鈴音、完全に機嫌を損ねたのを見てヒルトは――。


「ははっ、嘘だよ嘘。 だから機嫌直せって鈴音」

「フンッ!」


 そっぽを向く鈴音、ヒルトは不意討ちといわんばかりにチュッと鈴音の露になっていた耳に口付けを落とす。


「な……なぁっ!? こ、公衆の前で何てことすんのよ!?」

「はははっ、機嫌直すかなって思ってな」

「こ、こここんな事で機嫌なんか直んないわよバカァ♪」


 言葉とは裏腹にLEDライトの様な真っ赤な笑顔を見せた。

 ただそれを面白く思わないのはセシリアと他の舞妓姿をしたクラスメイト――静寐や夜竹さゆか等ヒルトの行為を目撃した子達だった。


「……狡いですわ、鈴さんばかり……」

「ヒルトくん……」

「羨ましい……」


 嫉妬全開の視線がヒルトに突き刺さる、冷や汗が出るなか観光客からは――。


「あれ、あの有坂ヒルトってやつ。 モテてる?」

「カァーッ! やっぱ落ちこぼれって言われても華の園IS学園に行きゃあモテるんだな!」

「え? でも最近落ちこぼれって訳でも無いんじゃない? この間のニュースで有坂ヒルト君、学園代表候補生になったって」

「そうそう。 流れたニュースじゃ一年生専用機持ち相手に獅子奮迅の活躍だって」

「え? じゃあ一夏君より強いの?」

「まさか! 織斑一夏は俺達男の希望の星! あいつより遥かに強いって! ワハハハハッ!」

「何よそれ? 希望の星だからってあんた達男は奴隷に変わりはないんだからね!」


 そんなやり取りが聞こえてくるも、ヒルトは特に気にせず、とりあえず嫉妬全開の視線を向けた三人に――。


「ははっ、視線が怖いぞ三人とも」


 女子が苦手とは一体何だったのか――ラウラに唇を奪われ、一部女子と一線を越えたからかヒルトは少し余裕を見せていた。

 本来なら誰か一人に絞らなければならないのだが――そうしても好意を寄せる子達は納得できないだろう。

 彼方たてれば此方はたたず――水面下で進んでいるIS男子操縦者の一夫多妻制度が実施されるのもそう遠い未来ではないのかもしれない。

 少しだけ時間は遡る、地球の軌道上周囲に浮かぶ衛星の一つ――外観は他の打ち上げ型衛星とは違いはないものの、性能は段違いな衛星が漆黒の宇宙の先にある異変を感知する。

 その衛星はイルミナーティが秘密理に打ち上げた無数の衛星の内の一基だった。

 僅かに感じられたエネルギー――その情報は本部に居たシルバーの耳に知らされる事になる。


「シルバー様、衛星の一基が宇宙でエネルギーを感知しました」

「エネルギーの感知? どういう事かしら?」

「く、詳しいことは今調査中です」

「……不明瞭な情報は混乱を招くわよ? まあ良いわ、エネルギー波長のデータは貰えるかしら?」

「は、はい! では、失礼します!」


 イルミナーティ構成員の一人が敬礼してその場を去る――書面に描かれたエネルギー波長は見たことも無いものだった。


「……どういう事かしら。 ……何か、宇宙で起きてるのかしら……? ……ともかく、兄さんに報告しないと」


 直ぐ様チャネル通信を繋げたシルバー――場所は京都、ウィステリア・ミストがシルバーから報告を受ける少し前の出来事。

 匿名で京都の被害総額の一部を寄付したウィステリアは傷付いた町並みを歩いていた。


「……これだけで済んだのが不幸中の幸いなのだろうか。 ……いや、それでも亡くなった者もいる。 ……これから起こる未来の為の対価だと思えば――否、やはりそれでも浮かばれないだろうな……」


 ウィステリアは瞼を閉じる――鮮明に浮かぶ映像は瓦礫で溢れ返った町並み、異臭放つ死体の数々、とどまることのない戦禍――誰がこうなることを予想しただろうか?

 第三次世界大戦――各国群雄割拠犇めき、世界各地領土の奪い合いと共に行われたのはオリジナルコアを要するIS。

 小さく頭を振ったウィステリア――その時だった、シルバーからチャネル通信が届いたのは。


『どうした、シルバー?』

『兄さ――ボス、先程報告に上がったのですがどうやら宇宙で謎のエネルギー波長を感知したと』

『エネルギー波長? データを直ぐに私に送ってもらえるだろうか?』

『ええ』


 そこから少ししてからウィステリアの投影端末にデータが届く。

 投影ディスプレイを展開し、キーボードを叩くと映し出された映像には異常なエネルギー波長を示すグラフが――。


「……何だこの波長は? 一瞬とはいえ俺が知る限りこんな異常なエネルギー反応は無かった筈だ。 ……因果率の変化か? もしそうだとするなら……いや、まだ断定は出来ないな」


 ウィステリアはそう呟きながら投影ディスプレイを消す――宇宙で何かが起きている、過る一抹の不安は後に現実になろうとはこの時のウィステリア・ミストには予想は出来なかった。

 彼が体験した世界とは違う世界線を描き始めたこの世界――世界は変革の時を迎えていたのかもしれない。

 中国、IS開発機関では甲龍の量産型モデルの一機がロールアウトを迎えようとしていた。

 名前は【甲龍・紫煙】――開発者は満足げに頷きながら国家代表である【劉孔翊(りゅう・こうよく)】を見る。


「如何ですかな、甲龍の量産型モデル一号機である紫煙は!」

「ふん……所詮は量産型だ。 我が魂である【煌龍(ファンロン)】には勝てぬな!」


 甲龍のプロトタイプをカスタマイズした中国国家代表のIS煌龍――甲龍の様な肩に衝撃砲を浮かばせるのではなく拳にその機構を取り入れ格闘戦に特化した機体。

 部分展開した腕部に握られるのは偃月刀――かの商売の神、古の武将である関羽の武器を模した武装を開発者の首筋に当てた。


「り、量産型とはいえ甲龍の後継機です。 その性能は――」

「ふん、我には煌龍がある。 量産型等我が属国である台湾にくれてやればいい」

「な!? そ、そんな勝手は――」

「勝手だと? 我を誰だと思っているのだ? 国家代表劉孔翊だ!」


 偃月刀を豪快に振り回すその姿は女傑と称されても大半は納得するだろう――だからといってロールアウト間近の量産型とはいえ台湾に紫煙を譲渡するのはとも思う開発者。


「ふん、我が乗るよりも適任者はいるだろう? ……まだ年端もいかない小娘だが、適性は高い上に実力も他の候補生の上を行く。 必要なら飛び級で進学させればいい」

「……わ、わかりました……」


 映し出された無数の中国代表候補生――その中の一人がピックアップされる。

 その名前は――【凰乱音】。

 変革の兆しを見せる世界――限られたコアを専用機として開発する各国、フランスでは新たにコスモスが――それとは別に新たな機体達が産まれようとしていた。

 シェア第三位のデュノア社の影に隠れたスカーレット社――スカーレットの名の如く、紅く彩られたその機体は美しさを全面に現していた。


「こ、この機体なら我がスカーレット社もIS開発のシェア拡大を狙える筈だ!」

「へぇ、やっと完成したんだ。 父さん?」

「あぁ……」


 感慨深いのか涙するスカーレット社社長――それに付き従う赤髪の青年は髪を掻き分けた。


「でもどうするんだい? この機体は誰を乗せることを想定しているんだい?」

「ふっ……無論我が愛しの娘に決まってるだろう、馬鹿者が!」

「成る程ね。 ……とりあえず僕が触ってもいいかい? もしかしたら僕に反応するかもしれないし」

「馬鹿者。 そう簡単に男の操縦者が生まれたらデュノア社の様な狡い真似をする輩が生まれんわい!」


 青年は紅く彩られた機体に触れる――勿論反応はない、残念に思う反面当たり前かとも納得している自分も居た。


「父さん、この機体の名前は決まっているのかい?」

「無論だ。 この機体名は――【スカーレット・シュヴァリエ】!!」

 少し離れたブルターニュ地方のとある田舎町――。


「漸く完成です」


 一人の少女が感慨深く息を吐く、美しい白銀の髪に露出度の高い服――まるでフランス人形の様な美しさを見せた少女。


「へぇ、漸く完成したんだな。 オイラも植物達も見守ってきた甲斐があったってもんだよ!」

「オスカー、貴方は見守っていただけで何もしなかったじゃないの」

「何だよモニカ、オイラと植物達が見守っていたからこそ新しいISも完成したんじゃないか!」

「見守るだけじゃ意味ないわよ! プラフタもそう思うでしょ?」


 開発者である少女を他所に言い争いを続ける金髪のロングヘアーの少女とふくよかな少年。

 そんな二人を見ながらクスッと小さく笑みを溢した銀髪の少女は呟く。


「ふふ、そうですね」

「何だよプラフタまで……。 まあいいさ、完成したんだし、早速これを学園に送るんだろ?」

「慌てないでください。 専用機を作ったとしても、まだソフィーはフランス代表候補生じゃないのですよ?」


 少女の口から出た名前はソフィーだった――代表候補生じゃない彼女が専用機を持つのは難しい。

 とはいえ、フランス政府の候補生候補として既に名前が上がっている。

 きっかけさえあれば――少女はそう考えるも何も思い浮かばない。

 淡い黄色の装甲が輝きを放つ生まれたばかりのその機体の名は【ブリズ・プランタニエール】。

 フランス語で《春風》――。


 何かに惹き付けられるかの様に完成していく専用機達――何かとは何か?

 太陽系の外では刻一刻と隕石が何かに惹き付けられるように地球へ向かっていた――。 
 

 
後書き
最初修学旅行、中盤イルミナーティが異変に気付く、後半は専用機云々

あ、因みにわかる方はわかるかと思いますがソフィー近辺の元ネタキャラはまんまっす

クロスオーバーになるのか……?

まああれだったら元ネタも記載します

キャラ考えるのが面倒とかじゃなく久々にどストライクなキャラだったから

後、凰乱音に関しては中国代表候補生で……台湾代表で凰って名字に違和感

自由国籍権ならわからなくはないが飛び級だし 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧