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KANON 終わらない悪夢

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131泡になって消える妖狐


 無敵のマコピーにも弱点はある、寿命がもう無い。
 余命一ヶ月の命を引き伸ばし、名雪からも祐一からも命のエネルギーを供出させているが、ゴミ以下の人間のように、他人の命で汚いロウソクを作り上げて継ぎ足し、無理に生かすことが出来ない。
 妖狐の血が濃い、舞、美汐には自分の命を賄うぐらいの生命力も魔術回路もあり、他人の命を食べさせておけば、雑食の人類なら、あゆも含め命の引き伸ばしは出来る。
 それでも妖狐真琴には、その程度の少量のエサでは命を繋げないし、伸ばせても微々たるもの。
 あの世とか虚数空間にしか存在しない、この世に一切両足を着けていない純血の妖狐では、この世に仮の肉体を出現させておける期間は約一ヶ月。
 名雪や祐一のように普通の人間として産まれ、日差しを受けて育ち、何の力もない人類として過ごし、力に目覚めるまでは終わりのタイマーが稼働しないのとは違い、真琴のような妖狐は、出現から即座に残り時間との戦いが開始される。
 祐一の母や秋子のように、子供を産み育てる期間があれば多少延長が効いて、1ヶ月以内に次の子に恵まれれば、力を失って行っても、すべての力を子供に託してしまうまで生き残れる。
 真琴も今すぐ妊娠させてしまい、汚れた人間の精でもを受けて、人間の半身に血を穢されながら腹の中で育て、人としての特性を受け取れば多少生きられる。
 しかし、妖狐真琴の相手は祐一だったので、人間のケガレには汚されず、寿命もそう伸びない。出産すればいつか泡になって消える。
 秋子も、ある意味名雪から人の穢れを授かり、生かして貰っているので力を失っていない。不足していた力は祐一から充填された。
 祐一の母と父は、全ての力を無くして人間になったので、普通の食事でも、他人の生命を喰らってでも生かすことも出来る。
 人格も穢れ果てるか、人間の血肉や命を喰らう悪鬼羅刹として変化し、力も失った妖狐として討伐されるか、天罰を恐れて妖狐を呼び出した者が心中して共に果てて、あの世や神域への案内をする。
 祐一の父は舞の母が共に死んで案内をすれば災厄は訪れないが、祐一の母と秋子には呼び出した者がいないので、力を失うまで災厄を振りまき、何かの切っ掛けで成仏するか、力を失ってから討伐され、呪いを残す。
 闇の王子様があの世へと案内すると、祐一の母も秋子も神域に帰るかもしれないが、特に母が息子の哀れな末路を望むとは考えられない。
 妖狐真琴を生かす手段の中に、数少ない方法として、天孫降臨の儀式の際、真琴をイザナミと指名して結ばれ、子を成して次世代の母で神として、人類を滅ぼして消し去る手順もあった。
 悪魔リリスの姉と、悪鬼羅刹でリリスと同等の秋子が残り、リリスの肋骨から作られた名雪も残ると、人の穢れと死のケガレを持たない妖狐の世界が訪れていたが、天使の人形は今回もその道は選べなかった。
 この世の名残に最期の望みで現世に降り立ち、祐一の元に嫁いできた真琴。
 もう願いは既に叶えたので、子を成さずに命を終えても、悔いは残らない。

 あゆの母も、誰かと入れ替わりたい願望を持つ、記録に残されていない妖狐が丘から降りてきて、あゆの母と術でも使って入れ替わり、元の人物の存在を全て消去して、記憶を奪って背乗り、愛する人と結ばれて子供でも産んで、寿命を使い切って死んだのかもしれない。
 秋子の結界を超えて祐一と知り合ったり「森の中の学校」と言う固有結界を開いたり、自分の死という現実さえ捻じ曲げ、現世に訪れて友人と再開して、生身がある人物のように振る舞う。
 それは天使の人形の助力を除いても、最低限美汐か舞と同等以上の術者、ハーフの妖狐である必要があり、そうでなければ説明が付かない事件が多すぎた。

 椿の間
「行くよ、美汐」
 友人として、美汐も誘う妖狐真琴。
 (えにし)が強い美汐とも同じ人物に嫁いで、子供を成したり育てる行為は、この友人に託して消える覚悟はできていた。
 自分という存在の元になった人物、沢渡真琴には多少我慢してもらっているが、この里では毎週のように結婚式ができて、信者、政治家、企業、里の者だけの内祝い、嫌になるほど披露宴ができるので、今回は譲ってもらった。
 大勢のジジイババア信者の前で見世物になって、大道具と合体したり、ワイヤーアクションで空を飛んだり、ある意味夢のような式だが、そちらは遠慮した。
「え? いいの?」
 月宮本家からの嫁、チョロインさん放置。今はマコピーが怖すぎるので接近してこない。
(あれ、真琴ちゃん?)
 最終兵器彼女も、怪獣パワーを出さず、明らかに今生の名残を楽しんでいるような妖狐を見て、邪魔をしようとはしなかった。

「それでは、お二人の初めての共同作業です」
 来客には月宮真琴さん見えている、花嫁とのケーキ入刀の儀式が行われた。
 中学以降、金には恵まれた真琴お嬢様なのだが、恋愛とか子作りとか、父親もいる一般的な幸せな家庭とか、普通の優しい母親も無かった。
 何か天啓を受けて非ぬことを叫ぶ母親とか、それ以降変な宗教にのめり込んだ生活をさせられ、修行漬けの毎日。
 家族にも環境にも何一つ恵まれず、金の使い道すら無かったお嬢様。
 本日も華燭の宴を迎えられず、結構憂遇(うぐう)な状況に追い込まれているので、幸運のパラメータは非常に低いと言わざるを得ない。

「はい、次、美汐ね」
「ええ…」
 美汐にも、栞のような野性的な動物の感は無いが、悲壮な決意とか覚悟が見て取れて、ゆうくん入刀を断念して、ケーキに入刀した。
 カメラには現実の姿が映るはずなのだが、女神的なアレとか、妖狐的なコレとか、色々な理由で教団カメラには月宮真琴さんとチョロインさんが写って、真実の姿は佐祐理カメラだけに収まった。
 今回もハブられた二人だが、また来週にでも、結婚式の告知が間に合わなかった別の客でも来場させて、同じ式が行えるのでキニシナイ。
 セットも使いまわしで、ホテル従業員は全員信者なので無給、給料とか時間外労働とか休日出勤が適応されない超ブラック企業の教団。
 宿房と食事代程度で済む、ロハでこき使っている奴隷?なので、そちらもキニシナイ。

「ゆういち、美汐、ありがとね、あたし、幸せだったよ」
 何か非常に満足した表情で、笑顔のまま泣いているマコピー。
 本当なら、カタコトの日本語で喋る偽神父でも立たせて、指輪の交換とか誓いのキスとかもやりたかったようだが、そちらは丘の上でお済ませになったのか、ケーキ入刀だけで満足して成仏しようとしていた。
「真琴っ!」
「ゆういち、元に戻しとくね、あの娘も怖がってたけど、その記憶消しとくから」
「何言ってんだ? まさか…」
 2ヶ月前に消えていたはずの妖狐。それがもう一度ゆういちと巡り合って肉まんでも食べる願いをして、現世に戻って楽しい時間を過ごした。
 祐一とも結ばれて、秋子と名雪とも再開、美汐ともまた会えて楽しんだ。
「二人共、あたしのことは忘れてね」
 天使の人形に連れられて見た、名雪の記憶消去系の魔法。「祐一クン、ボクの事忘れて下さい」を発動させようとする。
「やめろっ、忘れたくないっ」
 控室でPTSD発症してガッタガタ震えていた若教主様の震えが止まり、空間転移系の魔法に包まれる。
 次に周囲の人間や美汐の記憶から、自分を消そうとした。
「待ってっ、消えないでっ、真琴っ!」
 場内が光りに包まれ、真琴と真琴の入れ替わりが、もう一度行われようとして?

(いや、何で死亡フラグ立てまくりなんだよ? マコピー)
 まだ妖狐真琴を手放すつもりが無かった、出勤前の天使の人形に交代して、魔法の発動を止めた。
「アレ? 消えてない」
(当たり前だろ、秋子さんだって「真琴はまだ妊娠しちゃ駄目」って言ってただろ? 子供がいたら産むまで寿命が伸びて、育てる間ぐらいは生かしてくれるんだから、しんじゃうんなら即妊娠させてるよ。消えるの知ってて妊娠すんなって言うとか、秋子さんどんな悪魔キャラなんだよ?)
「え~~?」
 マコピーは願いが叶うと、泡になって消えるんだと信じ込んでいたので、結婚式をして指輪交換して幸せなキスをしたりケーキ入刀まですると、すぐに死ぬものだと勘違いしていた。
 フルパワーの妖狐(サーバルちゃん)だが、そんなに知能は高くない。
(ほら、名雪からもガッポリとパワー抜いて来てるから食べなよ)
「え~~~~~~?」
 無限エネルギー名雪エンジンから、大量に力をヌイて来ている天使の人形。
 イチゴジャムとかイチゴペーストが食べられなくなって、多少無限力(イデ)が減っているが、今までも天使の人形、一弥、あゆ、行方不明後のマコピーを養ってきて、寝るだけで回復してきたエネルギー源。
 ちょっと春先の目覚めと寝起きが極悪だったがキニシナイ。
 まあ、名雪でもマコピーでも、ゴミ以下の人類にして100万人とか1億人ぐらいぶっ殺して食べさせると、際限なく寿命を延ばせるのでキニシナイ。
 災厄の妖狐である秋子とその姉も、経済破綻させて1~10万人ぐらい殺しているので、そのぐらいの数を眷属として食ってしまい、殺しても死なない。

 現在は祐一本体から動力線を引いて受電している天使の人形分が減り、一弥は佐祐理のお腹の中に宿って受電。栞にパワーをヌキまくられたので姉を陥れないで大人しくしている。
 あゆも悪魔の体と接続したり、堕天の逆で天使に昇華した体から受電しているので、名雪の体力ならマコピー一人ぐらい養える。
 そうして置かないと、漲っている名雪さんは、すぐに100メートル7秒台の記録を出すので、ヌキまくっておかないと秋子が困る。
 どこかのクロエさんみたいに、イリヤとかミミとか美遊にチューして魔力吸収も出来るので、祐一の股間からサッキュバスみたいにチューチューしたり、美汐からもチューチューしたり、名雪をねこさ~んにしてチューチューしたり、秋子さんまでチューチューできるので、当分死ねないマコピーだった。
「うそ~~ん」
 色々と恥ずかしい事をして、勘違いもしていたが、鳥頭なのでそんなことは3歩歩けば忘れる。
 問題なのは、熱き血潮の姉妹たちの中で、まず最終兵器彼女が立ち上がって、阿頼耶識に目覚めてケーキナイフ奪取のために立ち上がったのと、復活した若教主様が、床に捨てられていた小さいドレス着込んで、荒木調になってデコ出しで光の速さでこちら方面に向かっているのと、8歳の舞ちゃんが佐祐理の手から離れて、山から雪解けの鉄砲水と雪崩とペギラとウーを呼んでいるのと、今度は美汐が目の下のクマと悪役線を復活させて「少し、頭冷やそうか?」とか言って、シュート!する準備をしているのが確認された。
 美汐は爪も生やしているので、石仮面が骨を出して押す位置に爪を立てられ、「あたしは人間を辞めるぞ~~」とか言う羽目になるかもしれないが、元から人間じゃないので、同じ夜の生き物の吸ケツ鬼に変えられる程度で済む。
 鑢七実さんみたいに、爪で拷問したり、敵の忍法を一瞬で見切って無重力技を使ったり、詩音さんみたいに生爪を剥がす機械を出して、ケジメ付けるよう勧めたりしないと思われる。
 屋外では鬼武者が4体ぐらい四股ふんじゃったり、ヤンキー共に「てめえら命が惜しかったらすっ込んでろっ」と叫ぶ声が聞こえたり、ブリッツクリーク再開して、もっかいホテル施設に突貫してきたり、ロシア娘が乗っている3体の守護闘神が、鬼武者に縋り付いて、世話になった教団施設を破壊しないよう止めていたりする程度の被害で済んだ。
 四天王の中では最弱でも、災害規模では結構大きい舞ちゃん。
 土石流が月宮の里を全部埋めて更地にして、深さ2,3メートルの泥の下にできる。
 佐祐理がマコピーの代わりに、ゴージャスさゆりんを展開してくれないと、プチ怪獣大決戦になる。
 
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