IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第422話】
前書き
模擬戦――と見せかけたその前の話
五時限目、場所はIS学園グラウンド。
昼食を食べ終え、五時限目が始まる前からこの場に居るのだがさっきからずっとざわざわと周りがざわめきたっていた。
――というのも、漆黒のフルスキン型のISらしき物が直立不動の状態で立っているのだから……。
ひそひそとクラスメイト達が話す声の内容は「新型……?」だの「ちょっとでかすぎない……?」だの「おー? カッコいいー」だのの声が聞こえてくる――最後のは玲の声だが。
因みにだが、俺はこの機体を知ってる――というか、何故この場に居るのか問い詰めたくなる。
PPS第一号機【黒夜叉】、ツインアイに光はまだ点らず、暗い眼差しはただただ一点、虚空を見据えていた。
「……ヒルトさん、あれって――」
「言うなセシリア、正直……俺だって何で居るのか問い詰めたい」
近くに居たセシリアがこっそり耳打ちしてくる、包帯はまだ巻いてるものの、既に痛みは引いてるらしく、今日から全快で動けるとか――これも活性化治療、医療技術の向上のお陰だろう。
セシリアが全快したことは喜ばしい事だが、それよりも何よりも何故親父がそこに居て、直立不動で立ってるのか――というか、黒夜叉が動いてるのかが疑問だ……。
――と、山田先生がラファール・リヴァイヴを纏い、何時かの様に空から舞い降りてくる。
織斑先生も、いつものスーツをビシッと決めてグラウンドに姿を現した。
秋風がグラウンドを駆け抜け、女子の髪が靡く――甘い香りが鼻孔を擽る中、織斑先生が――。
「それではこれより、五時限目の授業を始める。 ――だがその前に諸君に特別講師を紹介したい。 名前は匿名希望の為伏せるが、学園が用意した新型で今回の模擬戦の相手を勤めて下さる――取り敢えず、仮名としてこの機体名である【黒夜叉】と呼ぶように。 ……では、挨拶をお願いします」
織斑先生の言葉に呼応するように、ツインアイに光が点る――そして、両手に粒子形成させると何故か画用紙と黒いマジックペンが握られ、サラサラサラっと画用紙に書いて俺達全員に見せつけた。
【どうも、今ご紹介に与りました黒夜叉です。 自分は恥ずかしがり屋ゆえに筆談になることをお許し願いたい】。
ポカンとしたまま、俺はそれを眺めている――と、今度はシャルが耳打ちしてきた。
「……ヒルトのお父さんが特別講師なの? ……ヒルト、何か訊いてない……?」
「……昨日織斑先生がここの警備が何とかって話しか訊いてない……」
そんな話を他所に、筆談を続けていく親父。
【今回は模擬戦という事もあり、私としても若い子達の成長を直に感じれる機会を得れてとても嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします】。
一通り筆談を終える親父、そして自然と巻き起こる拍手の波がグラウンドに響き渡る。
「そういう訳ですので、今日の五時限目は特別講師の黒夜叉先生と、専用機持ちの模擬戦を見てもらいたいと思います。 見るだけでも動きの模範にもなりますので、皆さんの勉強になると思いますよ♪」
にっこり笑顔で山田先生がそう告げる――まあ確かにその通りだが、親父とまともに模擬戦出来るのかな……と思っていると再度シャルが耳打ちしてきた。
「……ヒルト、お父さんの実力ってどうなの? ……僕達、最初の福音戦で出撃してないから、お父さんの実力がわからないんだけど……」
「……多分めちゃくちゃ強いかと。 ……ていうか、実際対峙してみないとわからないからな……」
「そっかぁ……。 教えてくれてありがとうね、ヒルト」
ニコッと笑顔で応えるシャル、耳打ちは吐息がかかってくすぐったいのだが嫌な気分ではない。
――と、織斑先生が早速口を開く。
「では早速だが模擬戦を行ってもらう、誰か志願者は居ないか? 無論専用機持ちでだ、居ないのならば私が選定して――」
スッと手を挙げる生徒が一人、その場にいた生徒全員の視線が手を挙げた生徒に集中した。
「私が志願します」
篠ノ之だ、昨日の模擬戦で自信をつけたのか凛とした佇まいで手を挙げていた。
「ならば篠ノ之、前へ出ろ。 因みにだがレギュレーションは――」
「いえ、レギュレーションを決められれば紅椿の真の力を開放する足枷にしかなりません。 レギュレーションは特に決めないで下さい」
篠ノ之の言葉にため息を漏らす織斑先生、紅椿の真の力と言ってるが、多分単一仕様の禁止を避けるためだろう。
禁止されたら、確実に負ける――篠ノ之は認めないだろうが。
普通なら篠ノ之を咎めたりするのだろうが、織斑先生は親父に近付くといつか見せた軍用手話で何かを話始めると、親父はそれがわかったのか頷いた。
「良いだろう、今回はレギュレーション無しだ。 篠ノ之、前に出てISを展開しろ。 山田先生はいつも通り埋設型シールドバリアー発生器の準備を」
「わかりました、じゃあ篠ノ之さんは展開したら規定位置で待機してくださいね?」
「わかりました」
頷くと前へと出てから篠ノ之の身体に光の粒子が集まり始め、それが収束すると紅椿を身に纏い、腰から二振りの刀を抜き取ると共に一気に急上昇、規定位置にて待機した。
その間、埋設型シールドバリアー発生器の設置を終えた山田先生はそれを起動させると共に空中投影ディスプレイを出し、リアル中継も開始した。
一方の親父はと謂うと、腕部装甲から飛び出したナイフの柄を握る――刃が形成され、発光するのを確認すると篠ノ之に遅れて空へと躍り出た。
そんな中、地上ではクラスメイト達がどちらが勝つかを話し合っていた。
「あの特別講師と篠ノ之さん、どっちが勝つかな?」
「私は特別講師、やっぱり織斑先生のお墨付きなら実力は相当なものだと思うもん、それに、フルスキンだけどあれって学園が独自に開発した新型でしょ? なら期待も出来そうだし」
「確かにそうだけど、篠ノ之さんの機体って確か第四世代じゃん? 性能差的に見ても篠ノ之さんが有利だし、確か単一仕様自由に使えるって話じゃん。 シールドエネルギーが何度も回復するやつ」
「あ、そういう意味でも篠ノ之さん有利だね。 ……てかさ、逆にいうと、それ頼りだよね……篠ノ之さん」
「……ぅん。 昨日の模擬戦、少しちら見してたんだけどさぁ……何回も単一仕様使ってたんだよねぇ……。 一応試合には勝ったけど、勝負には負けたって感じに見えるよ」
「……ぁーぁ、私も贔屓で専用機欲しいなぁ……」
――途中から専用機欲しい話に変わる女子一同。
ひそひそ話なのは一夏に聞こえない様にするための配慮だろうか――と、そんな当人である一夏が。
「……あそこの女子、さっきから何をひそひそと話してんだ?」
「世の中知らない方が良いこともある、無闇に耳を傾けなくていいと思うぞ一夏」
「……そうか? でも、何か気になるじゃん」
「気になっても知らない方が良いんだよ」
それだけを伝えると、軽く首を傾げた一夏は空中投影ディスプレイを眺めた。
シグナルが点灯し、三つ目の緑のシグナルに光が点ると模擬戦が開始された。
後書き
何と、親父対箒戦(・ω<)テヘペロッ
それはそうと、先日呟いたが宇宙の戦士という昔の小説を図書館から借りたがページ数が中々多い
返却期間までに読みきれなかったら延長かな
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