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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第416話】

 夕食時、今日は昨日のキャノンボール襲撃もあったという事もあり訓練を休みにして夕方は各々で楽しい一時を過ごした。

 俺は部屋で携帯に届いていたメールの一斉返信――昨日のキャノンボールの事に関して、成樹達から色々心配のメールが入っていた。

 チケット代等は返還されたらしいのだが、楽しみにしていたキャノンボールが中止になった辺りは皆は残念に思ってるのかもしれない。

 ――それはさておき、そんな一時も終わってただいま夕食にありついてる最中、久々にカツカレー超大盛りを注文し、それを食べていると。


「有坂ッ! 貴様……一夏に怪我を負わせたそうだな!」

「んぐ?」


 いきなり、いきなりである――怒濤の剣幕で押し寄せてくる篠ノ之に胸ぐらを掴まれ、無理矢理立たされてしまった。

 その一連の行動に、食堂に居た全員の目線が俺に集中する――因みに、一人で今食べていたのだが他の専用機持ちは現在並んで食事が出てくるのを待ってる状態だった。

 とりあえず口の中にあるカツを咀嚼し、飲み込むと俺は――。


「夕食時に何だよ、別に俺、一夏に怪我を負わせてないぞ?」

「嘘をつくな! さっき一夏から訊いたのだ! 昨日襲われたとな! それも、貴様にだ!」

「はあっ!?」


 耳を疑う言葉――何で俺が一夏を襲わなければいけないんだよ。

 襲ってきたのは別の奴なのに――と、寮の食堂に慌てて入ってくる一夏は、俺と篠ノ之の間に割って入る。


「ほ、箒! 何やってんだよ! 話の途中で急に出ていったと思えば寮の食堂に来てヒルトの胸ぐらを掴んで!」

「一夏! 割って入るな! 今日こそこの男に天誅を!」


 部分展開された腕部装甲――手に握られた空裂が紅く発光し、食堂内が騒然となる。


「お、落ち着けって箒! 襲ってきたのはヒルトじゃねぇって!!」

「な、何?」

「俺はヒルトとヒルトの親父さん、それとラウラに助けてもらったんだから。 そりゃ、ヒルトの助け方が悪かったから顔面を外壁に強打はしちまったけどさ……。 とにかく箒! それ仕舞えよ! 幾らなんでもこんな所を千冬姉に見られたら――」

「残念だが、既に目撃してるぞ……織斑、篠ノ之」


 一夏と篠ノ之の後ろから現れた織斑先生は、篠ノ之の頭を鷲掴みした。

 それに顔が青ざめる篠ノ之はゆっくりと織斑先生の方へと振り返った――。


「……篠ノ之、部分展開とはいえISの無断使用、これからグラウンドを十周してこい、それと反省文を明日の放課後までに提出、それが出来ない時は暫くISの使用を禁止する」

「そ、そんな――」

「黙れ。 これだけで済んだことに感謝するんだな。 さっさと行け、食事の邪魔だ」

「わかり、ました……」


 流石に織斑先生に言われると篠ノ之も堪えた様で、部分展開を解除すると共に一礼して食堂を後にした。


「……千冬姉、幾らなんでも箒に厳しすぎるんじゃ――」

「織斑先生だ。 いい加減貴様も学習しろ、ここでは私は教師、お前は一生徒だ」


 そう言い切る織斑先生――公私混同せず、分け隔て無く接してるのだろう。


「わ、わかった」

「【わかった】ではない、【わかりました】――だ。 ……後、お前はもう少しちゃんと篠ノ之に対して説明しろ。 今回の事態も、織斑の説明不足が招いた結果ともいえる。 ……連帯責任という事でお前も明日の放課後までに反省文を提出しろ、拒否は許さん」


 静かに、威圧感のある言葉で告げる織斑先生に、一夏も――。


「わ、わかりました、織斑先生」

「うむ。 では諸君、食事を続けろ。 いつまでも見せ物ではないのだからな」


 両手を一度叩くと、甲高い音が食堂内に響き渡った――と同時に、また喧騒で賑わい始める。


「……お前さ、本当にどんな説明したんだよ」

「ん? ……あぁ、昨日顔を腫らして帰ってきた事をさっき問い詰められてな。 本当なら昨日の誕生日会で聞くつもりだったらしいけど、楽しい気分に水をさしたくなかったんだってさ。 んで、さっき俺の部屋に訪ねて来て説明したって訳。 説明途中で急に怒って走り出して今に至るって訳だな。 災難だったな、ヒルト」


 ……ちゃんとお前が説明するか、はたまた隠し通せば良かっただけの事では無いのだろうか……。

 怒りたいものの、楽しい食事時にそんな真似をしたくはない俺はぐっと堪えて言葉を呑むと、カレーを食べ始めた。


「……俺も飯にするかな。 ヒルト、一緒に食お――」

「織斑くーん、此方で一緒に食べなーい? 篠ノ之さん居ないんだし、良いよね? 良いよねッ!?」

「ちょ、ちょっと――」


 一夏の有無の確認すらなく連行、そして、キャバクラの様な接待を受け始める一夏。

 キャノンボールでの最下位争いで少し学園での人気に陰りが見えたものの、未だに織斑千冬の弟というアドバンテージが失われていないため、義理の妹になりたいのだろう……多分。

 篠ノ之に関してはよくわからない……とりあえず前とあまり変わり無く見えるが……女心は秋の空っていうし、内心はどう思ってるのやら。

 カレーを食べつつ、向こう側の一夏を見ていると自身の頼んだ料理を持ってきた専用機持ち達が続々と俺の居る机に集結する。


「ヒルト、篠ノ之箒に何か因縁つけられてたけど……何かあったの、昨日?」


 ……結局心配させないように言わないでおこうと思った配慮が全て無に帰した。

 美冬とラウラは知っているものの、他の面々は何があったのかが気になっいるようで俺を注視している。

 観念して周囲のテーブルに居る子には聞こえないように昨日の出来事を話始めた――もちろん、襲撃のみをだが。


「一夏が襲われた!?」

「……彼が無事なのはヒルトとお父さん、ラウラのお陰って事なのかな?」


 鈴音が大声をあげるも、周りの喧騒にかき消されたのか他の生徒が此方を見ることは無かった。

 未来は特に声を上げることもなく、女子生徒から接待を受けてる一夏へと視線を一瞬移してから俺へと戻る。


「あぁ、親父が何処から得たのか知らないが、一夏の命が狙われてるって事で陰ながら見ていたら俺が来て、俺も手伝ったって訳だ、これがな」


 ラウラは前以て親父に頼まれたと付け加えて――襲撃者の名前や容姿等も今は伏せておく、余計な混乱を招くだけだし、ラウラ自身もそう思ってる。

 だが、一夏の命を狙った要因があの【容姿】にあるのなら、織斑家には過去に何かしらあったという事だろう……何かはわからないが。

 ともかく、他人である俺達では事情もわからず、だからといってこの話題を一夏にふるのは明らかに頭がおかしいとしか思えないので俺はこの話を止めることにした。


「何にしてもこの話は終わり、考えてもわからないから」

「……まあ正直一夏が襲われたってのはビックリしたけどさぁ。 あんたは大丈夫だったの? てかさ、そういう時はアタシにも声を掛けなさいよ! あのまんま普通にアタシ帰っちゃったじゃん!」


 そう指摘する鈴音に、ごもっともだと内心思う――しかも、正面に座ってるため、鈴音はテーブルの下で足を小突いてきた。


「とりあえず無事なんだし、それでいいだろ?」

「良くないよッ! ヒルトが死んじゃったら、皆悲しむんだからね? ……無茶しないでよ……これなら僕も行けば良かったよ……」


 心配のあまり語気がキツくなるシャル、だがそれも束の間の事で声色から窺うに今は無事な事に安堵していた様だ。


「そうですわよ、少なくともここに居るわたくしたち皆、貴方が死ぬような事になったらと思うと……」


 言いながらハンカチを取り出し、涙を拭うセシリア――右腕はまだ包帯が巻かれていて、今日の模擬戦でも右腕は全く使わなかったのだがそれでもセシリアは四回絢爛舞踏を発動させたのだから代表候補生の底力を垣間見た気がした。

 それはそうと、彼女は片手で食べられる軽食メインで選んでいる――てっきり俺は食べさせるのかと思ったのだが、杞憂に終わった。


「……涙流すなよ、無事だったんだし……な?」

「そ、そうですわね……。 ……フフッ、わたくしに涙を流させたのですから、また後日責任をとってくださいまし」

「な、何の責任をとるんだよ……」

「うふふ、それは当日のお楽しみ……ですわよ♪」


 左手人差し指を唇の前に立て、茶目っ気たっぷりにウインクしながら答えるセシリア――ドキッと心臓が高鳴る――と。


「あんた……セシリアに見とれてるんじゃないわよ!」


 足を更に小突かれ、鈴音を見ると物凄く不機嫌な表情を浮かべていた。


「……ヤキモチ、妬かないもん」


 言葉とは裏腹に、僅かに頬を膨らませるシャルはジト目で見てきた。


「……お兄ちゃんのバカ……でも、これから……」


 フォークでパスタを食べながら一人ごちる美冬の言葉、喧騒の中でも聞こえるのは双子だからだろうか――そして、茹で蛸の様に赤く染まる。


「……私も負けてられないな……。 ぅん、もう少し積極的に行こうかな……」


 未来のそんな言葉も耳に届く――今思うと、未来って前にちょっとだけツンが入ってたのかもしれない。

 ――と、隣の美春が腕をつねって来る。

 痛みが全身に駆け抜け、何事かと思い美春を見ると笑顔のまま――。


「ヒルト、でれでれしないのッ!」

「わ、わかったからつねるな! 鈴音も足で小突くなって!」


 そう俺が返す中、ラウラは魚を切り分けながら――。


「ふふっ。 あまりヒルトを困らせるのはダメだぞ、皆」


 余裕の笑みを溢すラウラに、鈴音が――。


「何か今日のラウラは余裕たっぷりよねぇ……。 ヒルトが誰かに見とれても平気なの?」

「ふむ、確かにそれは由々しき問題なのかもしれない。 ……だが、夫婦の絆というのはそんな物で容易く壊れる物では無いのでな」


 切り分けた魚を食べるラウラを他所に、美冬が小さく呟く――。


「……一人で二歩三歩先に行ってたら余裕だもんね……。 美冬だって、今日で並ぶからいいけど……」


 誰にも聞こえないような呟き、そして横目で俺を見るとニコッと微笑む美冬に、本気なんだと思ってしまった。

 ……兄妹で本当にしても良いのかとも思いつつ、俺はカレーを一気に平らげた――。 
 

 
後書き
モッピー知ってるよ。
懲罰はご褒美って事。

    _/⌒⌒ヽ_
   /ヘ>―<ヘヽ
   ((/ ̄ ̄ ̄\))
   /    ) \
  /  | | //ヽ ヘ
  |  ハ | /イ | |
  レ |/ レ| N\|||
  /| |≧ ヽ|≦ |||
 / ヽ|゙    ゙|/ /
 \_(ヽ  ̄ /⌒)ヽ
  / | T ̄ ̄| ヽ |
 / /ヽノ   \_ノ|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


思ったより箒の改心を期待してる人が多い

あのままのが多分これから先を見据えるとやり易い気がしたのだが……考えるかな 
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