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王道を走れば:幻想にて

作者:Duegion
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第三章、その3の2:前に一歩 ※エロ注意

 
前書き
 18禁描写、前半部分に御座います。注意。

 プレイ一覧:熟女、後背位、膣内射精
 

 
 こつこつと、寝静まった邸宅にヒールの足音が響く。潜まった中に響くそれはいたく遅いリズムで奏でられ、家中の者を気を惹いてはならぬと一歩一歩確かめるように歩いているものでもあった。盗賊である筈もない。盗みに入る邸宅で態々ヒールを履くうつけが何処にいようか。
 足音が階段から戸口の方へと移ったその時、正に今し方降りたばかりの階段の方から声が掛けられた。

「お母様、朝からどちらへ行かれるのです?」

 戸を開けんとしていた者はびくりと背を震わせる。その者、ミント=ブランチャードは貴族としては稀な、粗野な茶褐色の外套を纏っていた。彼女は静かな笑みで己の美しき娘を視た。キーラは思わず息を呑む。母の笑みは穏やかでありながらも、まるで裁判官のような有無を言わせぬ圧力を有していたからだ。

「キーラ。約束して頂戴。決して私がどこへ向かったかお父様に言わないと。秘密を秘密のままにする事が出来ないほど、貴女は賢しくない女性ではない。いいわね?」
「えっ・・・でもお母様」
「いいわね?」
「・・・分かりました。私は、何も見ませんでした」

 一つ礼をしてキーラは己の寝室へと戻っていく。ミントは申し訳なさそうにその背を見送った。

(御免なさい、キーラ・・・そして、ミラー様)
 
 胸に秘めた覚悟が邸宅の戸をそっと開け放つ。夜明けの白々とした空は今はすっかりと青々としたものへ変じている。朝と昼の間、空気が澄み渡る時間である。ミントは外套のフードをさっと被り、人目のつかぬよう邸宅と邸宅の間にある小路を選んで歩んでいく。
 足取りに迷いは無い。彼女が向かう先がはっきりとしている。其処は今のブランチャード家の難事の解決に、明瞭な解決策を提示する場所でもあるのだ。代償としてとても大きなものを要求する点を除けば、実に良心的で頼り甲斐のある場所だ。酩酊状態の夫の独り言を聞かねばそもそもそのような場所など知る良しも無かった。
 歩を進めて十分余りの近き所にその建物はあった。丁度貴族の邸宅の林と軍施設の林の間の区域に位置している。三階建ての無骨で立派な石造りのそれは、それぞれの住民の行き来を管理する関所のような風合いであり、それに相応しき厳しい色合いの革鎧と纏った番人が立っていた。歳は三十後半あたりか。ミントが近寄ると彼は目敏く言う。

「どうしたんだ、お前?そんな風体しても銀食器みたいな気品が漂ってくるぜ」
「・・・貴方々の棟梁に、用があります。どうかお通し願えないでしょうか?」

 男は面白げにミントを嘗め回すように見下ろす。そしてにやりと口端を吊り上げて建物の戸を開いた。男に続いてミントが入る。
 入り口に構えられたその部屋は機能的にインテリアが置かれており、壁には剣や斧槍が掛かっている。ミントが戸を閉める。番人の男と二人きりとなった。
 男は武器を剣掛けに掛けて手のグリーヴを外し、にやけ面のままに言う。

「生憎、棟梁は結構な用心深さを持ってる人でね。下手なもん持ち込まれないか調べさせてもらうぜ」
「っ・・・」

 そういうなり男は遠慮なしにミントに密着し、その衣服に手を這わせ始めた。執拗に身体の起伏をなぞる手付きは明らかに反規律的で淫蕩な目的も絡んだ動きであった。

「ん~・・・ここが怪しいなぁ?」
「っっ・・・んっ・・・」

 男のがさつな手がミントの腹部から胸部へと駆け巡る。いやらしさを微塵も隠さずに露骨に胸の膨らみを撫で回し、衣服に隠されたその突起に指を押し付ける。ミントは愁眉をきつく顰めてその屈辱に耐える。此処で怒気を放って男に抵抗すればそれこそ思う壺。番人の公務執行を妨害しただの難癖をつけられて更なる暴虐の憂き目となるだけでなく、表沙汰にブランチャードの家名を貶めてしまう。それだけは何としてでも避けねばならなかった。
 男の手付きは執拗であり、相手を気遣おうという魂胆など感じられない。欲望のままにミントの熟れた身体に手を這わせ、欲塗れの息を顔に吹きかける。実に不快である。ミントがかくの如く思っていると、男の手がそろそろと身体を下りて、何の前触れも無くミントの肢体の間に押し付けられた。びくりと震える彼女に男は下品に言う。

「まだまだ怪しい部分があるなぁ・・・全部脱いでもらおうか」
「っっ・・・くっ・・・」

 憎しみすら篭っていそうな強い視線を男に送るも、嗜虐心を感じさせる侮蔑的な笑みを返されるだけ。ミントは口をわなわなと震わせて顔を赤らめながらも、意を決したか、己の衣服を脱ぎ始めた。
 無愛想な茶褐色の外套が床に落ちる。中に着用していたのは清楚な白いドレス。コルセットを着けているためか女性らしい豊満な身体の起伏が強調されている。ミントはそれを怒り顔でありながらも、羞恥の抜けぬぎこちない手付きで脱ぎ取った。其処に現れた裸体に男が口笛を吹く。
 年嵩が四十を僅かに超えたミントの体は、有体に且つ端的に言えば、雄の欲情を誘うための肉体であった。尻肉は垂れ気味でふっくらとしており、手で掴めばマシュマロのように歪むであろう。餅のような腹部を跨いで存在する大き目の胸は、散々な暴力的な愛撫に薄らと赤みを帯びており、茶の乳輪の頂点はぽっくりと尖っている。胴体や臀部は正にふくよかといった体格であるが、同時に妖艶さを醸し出す肉体である。吸い付くような二の腕や腿肉、そして赤みが差した頬でさえ蠱惑(こわく)の存在。

「どれどれ、調べさせてもらうぜぇ」
「んあっ!こっ、このっ・・・」

 男は改めてミントの身体に手を這わせた。見た目通りのふくよかな感触、実に愉悦である。臀部の肉は指に食いつくかのように形を変え、肌の間に挟まれては指の腹で伸ばされる。男のもう片方の手は既に手淫を行っている。陰部の突起を弾き、中の薄黒い膣肉を爪で引っかいたり、或いは指先でなぞったり。見た目の割には繊細な愛撫であり、ミントは望む筈の無い嬌声を漏らす。

「っっ、っぁっ、くっ・・・ぁぁぁ、あああっ・・・」

 ミントは左手で胸を隠し、右手で手淫を行う男の手を掴んでいる。ぐいと力が篭っているのは、男の手淫から逃れようとする理性と抵抗心のためだ。だが男は止めない。それどころか手淫だけで物足りず、荒れてがさがさとなっている唇をミントの首筋に落としたのだ。薄い皮肉を上下の唇で無理矢理挟み込み、粘液たっぷりの舌を這わす。

「じゅっ・・・ちゅぱっ!じゅるる・・・」
「っぁぁ!ぃっっ、あああ!ああっ・・・あっ!」

 生々しく唇で音を出す男に、ミントは強く反応してしまう。首筋が彼女の弱点であるようだ。男は気を良くして更に攻め手を強くする。ミントの身体をより己に密着させて胸にも刺激を与えつつ、下半身を律儀に淫蕩の味を与える手を止めず、首筋や鎖骨を狙って接吻を落とす。

「ぅぅ・・・ああっ、ああ・・・あっ、ああっ!!っぁ・・・くっ・・・」

 ミントの瞳に潤いが浮かんでいく。暴虐を受ける彼女の胸の中に芽生えた不条理に対する怒りと、己に対する無力感のためだ。何故自分がこのような仕打ちで悶えねばならないのか。何故この身体は鋼の意思とは裏腹に軽々しく反応してしまうのか。生理反応と言われたとて納得出来る筈が無い。易々と意思を辱めて高貴な身体を蹂躙する現実と、それに抗する事の出来ぬ地位だけは高い自分自身が恨めしく思えてきた。
 だがミントは決して夫を恨んだりはしたくはなかった。家の危機にこそ一致団結して困難を乗り越えなければならないのだ。不和の種を持ち込んではならない。気丈に振舞って淫蕩の蹂躙をやり過ごすのだ。

(これで良いのよ・・・。そうでなければ、キーラすら危うくなってしまうんだから)

 母親一人が身体を差し出せば娘は清らかなままで過ごせる。それだけがミントの救いであった。
 骨を蝕むような屈辱に耐え忍び、キーラは勝手に火照ってきた身体を男に押し付けて刺激に耐える。唇を噛み締めて忍耐を重ねるも、男は愛撫の手付きを一向に止める気配が無い。寧ろ愛液の潤滑が進むように蠢きをより卑猥に、そして激しくしているではないか。それが一体何を目的とするか、否応にも想像させられてしまう。指の間に愛液の糸を幾つも引くのを見て男は頷く。 

「うっし、そろそろいいかね」

 男は笑みを消し、己の脚絆を一気に降ろす。股間の一物は隆起して竿に血管を浮き立たせていた。左曲がりのそれは特段大きくこそないが形だけは良い。
 キーラは壁に手を付く。そして男に向かって臀部を差し出す格好となった。自らふくよかな臀部と濡れそぼった陰部を見せ付けたキーラの大胆さに男は気を良くして、喜び勇んでその陰部に亀頭を擦り合わせた。

「ああっ・・・うそ・・・硬いぃ」

 思わず毀れる言葉。男は背徳感を覚えつつキーラの蜜壷から滴る膣液を己の肉槍に、ローションのように塗りたくっていく。碌な愛撫もなく唯性交を望む獣欲が為せる行動である。そして男は気の赴くままに男根を女陰の中へと差し込んでいく。形だけは整ったそれを。

「っっっっっぁぁあああ!!」

 驚愕の一突きであった。性交にまで及ぶ男に対する怒りだとか、それに反応する自分への惨めさだとか、そのような思いが完全に飛ばされる。形容のし難い絶頂の刺激が身体全体を駆け巡るのだ。それは男にも同じ事、射精には及んでいないが、であった。

「うっそだろ・・・すげぇ、ぴったし・・・」
「あああ・・・ああ、なにこれぇ・・・こんなの、駄目・・・」

 身体の相性が抜群に良いのだ。在るべきものが元の鞘に収まり居心地の良さに息を吹くかのよう。男の陰茎がすっぽりと肉壷の中に納まり、男自身の快楽のためにひくひくと無意識に跳ねている。その先端は子宮にまで届かずとも、膣の奥にある急所にカリを届かせていた。
 
「ああ・・・凄い。こんなの駄目・・・うっ、動かないでぇっ、やぁっ・・・!」

 二人の性の交わりが勢いを増した。声が跳ね上がる、淫靡な方向へ。嫌がる素振りは既に児戯に等しく、男は肉槍を抽送する事に何の抵抗も無くなっていた。一突きするば鳥に攫われるかのような浮遊の快楽がミントを包み、更に一突きすれば羽毛に埋もれるかのような安堵感が男を包んだ。性器の相性の良さ、そして行為の相性の良さが二人に望外の悦びを与え、絶頂へと誘う。
 互いに熟れを覚える身体だけに行為に激しさを求めず、寧ろ心地良さや満足感を求める身体なのだ。ふわりと浮くような快感に包まれていたミントは自制も利かず、その挿入の充足感を感じていた。頬と首筋はすっかりと赤くなり、大きな胸を挿入の度に揺らしている。後背から突く男はそれには手を伸ばさず、体躯の豊満さの割にはすらりとした凄艶な腰に手を遣って己の陰部を打ち付けている。望外の悦びは急速な高まりを触発したのか、既に腰を振るペースが速い。

「っっあああっ、ああっ、駄目ぇ、こんなのぉっ!!なんでっ、ああっ、あああ・・・ああああ!」
(なんで感じるの!どうしてっ、どうしてっ!?)

 だが度合いで言えば流石に若人のそれや絶倫男子のそれと比較してやや劣る速度である。しかし完全に剣と鞘の役割を果たす二人の行為により、膣壁は陰茎により掘削されて快楽の波をミントに齎し、それを為す男の背筋にぞぞぞと込み上げる物を感じさせる。言うまでもあるまい。絶頂である。男は前のめりとなってミントの背に身体を乗せ、その豊胸をしっかりと両手で鷲掴みにした。

「でっ、出るぞっ!中にっ!!」
「あああっ、っぁあっ、ああっ!!!!!」

 短くも高々とした嬌声がミントから放たれ、男が呻き声を漏らして腰を震わせた。身体全体をびくりと痙攣させるミントの最奥に熱き津波が押し寄せる。一つの波が膣壁の堤防に浸透し、言葉にし難き法悦を一方的に与え続ける。
 数十秒の後、男が未だ隆起したままの男根をするりと抜く。糸を引いた男根を追うように愛液が膣口から溢れ、更に遅れて十数秒、白い液体が雨漏りのように見え始めた。一滴一滴が酷く粘着質に見えて、生理的な感想を抱かざるを得ない風貌をしている。肉の間から毀れる精液という、いたく気色が悪く、それが故に興奮を掻き立てる絵面であった。

「まだだ、まだやるぞ・・・後ニ回は出そうだ・・・」

 男はミントを抱え込むと、テーブルの上に彼女の背を押し付けた。そして再び膣口の中へ肉槍を、溢れている精液を巻き込むように突き入れた。最早ミントに抵抗は無い。諦観と望む筈の無い悦楽で潤んだ瞳は確りと、獣欲に唆されている男の必死な形相を見詰めていた。



 
 きんっ、きんっと、調子の良い金属音が快晴の宙に跳ね上がった。逆胴の一振りが疾風の如き一撃に弾き飛ばされて地を斬り付け、鉄刃が砂塵を舞わせた。瞠目する騎士の脛当てを、羆のような体躯をした巨漢が蹴りで払う。

「足捌きが甘いっ!!」
「ぬおっ!?」

 鉄と鉄がぶつかり合う高調子が鳴り響き、足を払われた男は情けなくも頭から地面に倒れ付す。全身を重装の鎧で覆っているために身体が異様に重く感じる。無論普段から訓練に訓練を積んでいるため随分と親しんだ重みであるが、相対する相手が吐き出す闘気がその重みをより重厚なものと変じさせているのだ。
 今し方男を打ち伏した剛勇、羆の異名を全身で現す熊美は周囲を取り巻く騎士達に向かい直る。何れも若く、未熟そうな顔立ちが覆い。熊美は啖呵を切った。

「次ぃ、来い!!」
「おおおおおっ!!!」

 一人の騎士が猛然として後背から攻めかかる。にやりと笑みを浮かべた熊美は疾駆して来る足音と闘志に振り向く事もなく、その機を逃さずに剣を背後に振るって上段からの一刀を打ち払った。そして振り向き様に相手の顔を視認し、それに向かって一刀を打ち落とす。最初の一撃が弾かれるのを予想していたのか相手の立ち直りは早く、直ぐに熊美の猛攻を防いでいく。
 迷いの無い足捌きに体幹はずれを来さず追従している。膂力の凄まじき一刀を猛威を振るうよりも前に打ち払い間一髪ながら肉体への損傷を防ぐ様は、成程、先の男よりも手練の良い騎士である。だが熊美の恐ろしき所は力技に比例して技巧を突き詰めている所だ。その鋭き視線は剣閃の片暇に、相手の腰が微細ながらも不自然にかくついているのを見逃さなかった。
 熊美は払いのフェイントを入れて相手のタイミングをずらし、其処から直ぐに突きへと移行する。剣の動きが急変した事に相手は戸惑い、足捌きを乱して眼前のそれを避けた。熊美は一気に詰め寄って相手の甲冑の襟元を掴み取ると、怒声を放ちながら重装のそれを背負った。

「腰に力を籠め過ぎだっ、馬鹿者!!」
「っっぁあいええええっ!?!?」

 間抜けな悲鳴を漏らしながら男は背中から地面に叩きつけられ、周囲の騎士達は歓声を漏らした。見事な一本背負いである。100キロを優に越えているであろう相手を簡単に投げ飛ばす芸当はこの者にしか出来ないだろう。

「おぉー、流石熊美さんだ。無双乱舞格好いいなぁ」
「やられる側としては堪ったもんじゃないですな」

 更に盛り上がる剣戟の光景を少し離れた所にある指揮台から見下ろすのは、両手に肉刺を作った慧卓と、暇を持て余した赤髪サイドポニーの近衛騎士、トニアである。王国軍の訓練広場で繰り広げられる猛烈な訓練風景を、二人は割と愉しんで見詰めていた。

「今熊美さんにボコられている聖鐘騎士団、前身が黒衛騎士団だけあって錬度は王国一なんですよね?」
「そうですとも。王国に存在する兵団の中では近衛騎士団と二分して臣民から信望を集め、その武の髄を極めている・・・筈です」
「・・・筈」
「だって目の前であんなの見せられればねー」

 からっとした投げ遣りな声が向かう先で、更に二人の騎士が続けざまに打ち倒された。一人は連撃を打ち込む最中に放たれた鉄拳の前に沈んで、もう一人は槍を使っているにも関わらずそれを踏ん付けられた挙句詰め寄られて敏捷なる大外狩りを極められる有様だ。此処までの訓練の間に熊美が負った傷は、頬の掠り傷一つだけである。

「どうしたっ!!臆する事は無いっ!!豪刃の羆だとか、武の化身だとか、そういう異名に恐れ戦く必要は無い!!お前達勇敢なる王国騎士が相対するはこのクマミ=ヤガシラ、唯一人の人間だ!!!その果敢ある武をもって我を支配してみせよ!!!」
『おおおおおおっっ!!!!!』

 つんざめく騎士達の咆哮は最早一種の犠牲心すら感じさせる無情な叫びであった。鎧ががしゃがしゃと鳴り響いて一点に向かって集中し、即座にそれを上回る速度で男達の悲鳴と熊美の雄叫びが木霊し合う。豪刃の羆の武は劣る事を知らないようだ。混沌とした広場の情景に慧卓は呆れの篭った息しか漏らせず、トニアもまた二又となっている眉の先を小さな八の字にしてしまう。

「知ってます?あれであの人五十代前半のオカマなんですよ」
「本当に?人って時々、老齢だろうが骸骨だろうがとてつもない力を発揮するのね・・・オカマでも。いや、オカマだからこそなのかな?全く、ある意味度し難いです」
「度し難いのはお前だ、トニア」
「あら、姉上」

 指揮台に向かって近寄ってきたのはジト目が似合う美麗な騎士、アリッサであった。白銀の甲冑姿が実に凛然として美しい。

「どうしたんです、姉上?」
「何か用ですか、姉上?」
「ケイタク殿も乗らないでくれ!はぁ・・・トニアよ。今日は私がケイタク殿と共に、王国に関わる王立の学院やギルド、それに研究機関についての講義をするといったよな?」
「そうでしたね。騎士なのに。侍従に任せればよかったのでは?」
「そ、そういう事は関係ない!トニア、なんで彼を騎士団の訓練にまで引っ張ってきたんだ?」
「・・・言ったら、きっと怒りますよ?」
「構わん」
「面白そうだったから」
「こいつめっ・・・!!」
「ほーらまた怒ったぁ。剣はだめですよ、姉上」

 赤髪をひらりと揺らす悠々として反省が欠片も感じられぬ言葉に気を削がれたか、アリッサは剣へと伸ばしかけていた手を引っ込める。押し時と心得たトニアは続ける。

「良いじゃないですか。三十年前の戦争で無双を誇ったクマ様の武ですよ?観ない方が損というか」
「損得の問題ではないのだ。騎士団の訓練は日常的にあり、王都への御帰還以降クマ様も時々参加して下さっている。これからもその心算だとあの方は仰っていた。時間さえあればいつだって見れるだろうが」
「そうですけどね、生憎ですがケイタク様にそれほど時間はありませんよ?」
「えっ、どういう事でしょう?」

 突然振られた会話の槍に慧卓は気の抜けた返事を返す。トニアは段々と悲鳴を治めていく広場を見遣りながら言う。

「先の賊軍討伐に功を奏した方々に対する論評会が、先日ありました。その結果、ハボック様や姉上は勿論の事、異界の方々にも酬(むく)いあるべしという意見に落ち着きました」
「酬い?」
「有体に言うと、宝剣や領地の授与とか、官位の格上げとか。ですがその前に一度、現在何の位にも就いていないケイタク様やクマミ様を王国に仕える騎士として迎えねばらないのです」
「・・・そうか。詰りあれですね・・・じ、叙任式!」
「その通りです。その叙任式の日程もまた会議にて決定致しました」
「何時です?」
「9日後、澄明の月が昇る日です」

 一つ考えて慧卓は理解する。即ち叙任式は満月が昇る日、今月の中旬頃に執り行う予定なのだ。欠けたる事の無い満月の下に行う儀式はさぞや神聖な意味合いを持っているに違いない。

「きっと、その日からてんやわんやの連続ですよ。それこそクマ様の力量や影響力を知らない内に何処かへ飛ばされるとか、そんな事も考えられますって。知っておくなら、この数日間しか無いんです」

 トニアはそう言葉を紡ぎながら、官位の授与の後に遠方へと飛ばされた友人を思い起こす。更なる栄達への一つの歩みとして定着しつつある遠方任務。普通は経験豊かで優秀なる人物がこれを従事するのだが、慧卓の場合は体力的にも知識的にも素人である。今の内に玄人の技や叡智を、それも超一級品のものを見てもらって自分の護りに役立てて欲しい。そういう願いも込めての訓練観察でもあった。
 アリッサも同じような答えに行き着いたのであろう、感心の篭った瞳でトニアを見詰めた。

「どうもお前に対する認識を改める必要があるようだ。お前は私の思っていた以上に賢く、そして気立ての良い女性だ。唯の騎士であるには惜しい」
「そんなに褒められては肢体の奥が熱くなってしまいますわ・・・。姉上、少し木陰に移動しません事?私を騎士としてではなく、女として、受け止めて下さい・・・」
「や、止めろ!!その妙に艶やかな瞳で私に迫るな!!」

 妖しき瞳を醸してすらりとした魅惑の身体を愛しき姉に押し付けるトニア。百合の花が咲き乱れる光景から慧卓は視線を離して広場を見遣る。最後の一人となった騎士は熊美に無謀にも鍔迫り合いを挑んでおり、今、熊美の膂力から逃れるように態勢を後ろに崩した。熊美は左腕を大きく横に広げ、その格好のまま突撃する。

「おおおおおおっっ!!」

 蛮声を吐きながら熊美は丸太のような腕を相手の顔面に叩き付け、騎士はバナナの皮を踏んづけたかのように呆気なく地に転んで意識を落とす。悠然と腕組をする熊美の周囲に、精鋭の誉れ高き聖鐘騎士団の骸の山が築かれていた。
 山の一角で、苦悶の声を漏らしながら中年の男が起き上がる。一足先に打ち倒されていた、騎士団の団長であった。 

「だらしないな、お前達。それでも武勇に誉れ高き聖鐘騎士団の一員か?」
「彼らにそんな無理を仰らないで下さい、クマ殿。精鋭といわれますが、今日の訓練に参加しているほとんどの者が新兵なのですから」
「新兵だからこそ、今の内に己の限界を超えて私に挑んで欲しいのだ。さすれば私が彼らの手を取り、壁を乗り越える手助けとなれるのだが」

 呻き声を放ちながら新兵の者達が起き上がりつつある。昏倒していた者達を仲間が頬を叩いたりして起こしあう。熊美は彼らに向かって銅鑼のような声で諭す。

「お前達全員っ、相手の剣一振り一振りを恐れ過ぎている!お前達の鎧は頑丈なものだ!貧弱な一刀は鎧に弾かれるし、強すぎる一刀は受け流すようにすれば鎧の強度に打ち勝てん!
 肝要なのは畏れぬ心だ!!お前達の剣は全ての雷を切り裂き、お前達の鎧は全ての風雨を弾き飛ばす力があるのだ!此処にお前達の勇気が加われば、この世に生ける全ての人間の中で、正真正銘、最強の力を備えた兵士となる!!それを理解して、更なる訓練に励め!いいな!?!?」
『りょ、了解!!!』
「声がっ!!小さぁあああいいい!!!!」
『了解!!!!!』

 命を絞るかのような怒声に熊美は満足の笑みを浮かべて首肯をする。実に暑苦しき光景に向かってトニアは冷静に言う。 

「加えて言いますと、騎士達の鎧は間接部分が簡単に曲るよう作られてますから、大した力を入れなくとも意外と鎧は言う事を聞いてくれるのです。ですが無理して力を籠め過ぎて動こうとすると、鎧全体の重みと、思った通りに自由の利かぬ身体に苛まされて、結果として余計な体力を消費するでしょう」
「えーと、つまりです。最小限の動きと疲労で敵を制圧できる力があるから、利用して戦え事ですか?」
「御賢察の通りです。目の前のあの者達は大半が出来ていないのが残念です」
「俺も無理よ、無理」

 慧卓はそう言って宙で手をひらひらとさせた。想像するも酷な話である。重装に身を包んで戦地を駆け抜けるなど。裏方でひっそりと頑張りたいのが本音である。

「では、そんな御聡明なケイタク様をお祝いして、一つ姉上がクマ様と剣による訓練を見せていただけるようですよ。クマ殿との一騎打ちだってやってくれるそうです」
「そうなんですか?」
「ちょちょ、ちょっと待て!アレと私が戦うのか!?何を勝手に決めているんだ、お前は!!」
「だって姉上、前から戦ってみたかったんでしょう?勇猛な古豪や、伝説の武人と」
「うぐっ・・・そ、それは騎士としての一縷の願いというか、叶わぬ夢を追い求める乙女の小さな心というか・・・」
(戦うのが大好きな乙女ってなんだよ?)

 而して突っ込むのも吝かである。妙にもじもじとしたアリッサの姿が可愛らしいからだ。トニアは外堀を埋めるように言葉を続ける。

「姉上、いや、アリッサ様。私が知っているアリッサ様は決して最後の最後、相手の剣が己の心臓を貫く其の時まで、諦めと絶望を知らぬ強靭な騎士の筈です。そんな騎士が勇壮なる敵を前にして、戦わずして逃げるという選択肢なんて思いつく筈も無い筈ですわ」
「うぐぐっ・・・」
「それにですね・・・」

 トニアは一気に詰め寄りアリッサの耳元に何事かを囁き始めた。にやけ面の彼女の言葉にアリッサは瞠目して慧卓を見遣る。そして如何した事か頬を火のように紅潮させてつかつかと慧卓に近寄って来た。

「ど、どうしました、アリッサさん?」
「ケイタク殿っ!!」
「はっ、はい?」
「よく見ておいてくれっ!!私の颯爽たる剣捌きをっ!!私の勇気の一歩をっ!!!」
「えっ・・・あ、もう行っちゃったよ・・・」

 言うなり彼女は慧卓に目もくれずに熊美の元へと爆走する。慧卓が困ったように目の下を掻いている中、アリッサは颯爽として騎士達の間を駆け抜け、中央に威風堂々たる姿を見せ付ける熊美に相対する。

「クマ殿、是非私にも御教授の程をお願いしたく!!!」
「その意気や良しっ!お前達、場を開けてくれ!!」

 多くの者達は助かったといわんばかりに脱兎の這いで場を開く。一部の者は悔恨と期待の篭った瞳でアリッサを見遣っていく。それを背中で受け取った彼女は益々に意気果敢となった様子であり、闘志に滾る心地良さを抱いていく。
 今まで見た事無いくらいにやる気となっているようだ。慧卓はにやにやとしたままのトニアに尋ねた。

「一体何吹き込んだんです?」
「乙女心の背中を押す、魔法の一言です。・・・御賢察を窺っても宜しいですかな?」

 慧卓は片眉を飄々と上げてみせて、両手でメガホンを作ってアリッサに大声を掛けた。

「アリッサさん!!!!!」

 アリッサは頸のみで振り向いて慧卓を見詰める。闘志に漲る深緑の瞳の中に、戦と血とは無縁の、炎のような想いが篭められているのを感じた。慧卓は晴れやかな笑みを浮かべて精一杯の大声を出す。 

「頑張って下さい!!!応援します!!!」
「ああっ!!私の勝利を祈ってくれ!!!」

 爽快感を絵に描いたような笑みを返し、アリッサは眼前の猛勇と再び眼の火花を散らし始める。自分が思っていた以上の声を張り上げた慧卓は頬を赤らめており、トニアがうんうんと満足げに首肯しながら声を掛けてきた。

「何をも勝る最高の返事ですよ、ケイタク殿」
「いい性格してるよ、本当にさ」
「おや、どちらの事ですかな?」
「どっちもだよ」

 慧卓はそう言うなり口を閉ざし、広場の中央に開けられた小さき戦場を注視し始めた。最早戦の境地に心を張り詰める二人においては語りは無用。唯一声と共に地を駆け出し、全力の仕合に臨むのみであった。煙を巻く一風が合図となる。
 彼らを囲む騎士等もまた自分達の訓練とは打って変わった、心身類稀なまでに鍛えられた騎士同士の極地と極地の睨み合い言葉を失くし、身動ぎ一つせず見守っている。悠然と佇む両者は片足を俄かに後ろに下げ、片手を剣にかけたまま動かない。10メートル近くの間合いだが、一瞬で詰め寄れる距離であろう。静寂の中にアリッサは、焦燥に駆られず、ましてや無謀に囚われず、秋風のような面持ちでその時を待ち続ける。
 風が吹いた。

「いざ、尋常にして!」
「勝負っ!!!」

 爆発する歓声に囲まれながら両者は疾駆する。一秒も数えぬ内に剣が届く距離となった。アリッサは抜き打ちに鞘から剣を払い、熊美との下段斬りと噛み合う。ぎぃんっと強烈な音が響き渡り、剣を握る腕に震動が波となって伝わってきた。だが耐えられないものではない。

(この勝負っ、勝つぞ!!!)

 アリッサは素早く剣を返して熊美に詰め寄る。対する熊美も戦士に相応しき豪快で、そして凄惨な笑みを零しながらそれを受けていった。
 



 
 建物の中、三階部分をかつかつと靴音が鳴っている。一つのリズムにもう一方がそろそろと重なるようだ。先を行くは三十後半近くの男であり、それに続くは顔を妙に汗ばませたミントである。外套を羽織りながら腰元に来る倦怠感と、そして肢体の奥に漂う精液の執拗さに眉を悩ませながら歩きを続けている。
 あれから更に三度交わり、全ての強き奔騰を中で受け入れた。行為の心地良さに理性がふわりと浮いてしまい、最後の辺りではミント自身から腰を振って強請っていたような気さえしてくるが、唯の錯覚であろう。接吻を交わしていない事だけが一応の救いである。
 男は奥から三番目の部屋に辿り着き、その戸を手でこんこんと鳴らした。

「親分、客人です」
『・・・なんだ、また客か。そう言ってこの前は玉を切り取られそうになったんだぞ・・・、後一個しかない玉をだ。客など信用できん』
「親分、相手は華奢で、しかも熟れた女です」
『・・・・・・』

 戸が内開きに開く。髪の毛が後退した小太りの男である。目つきだけは厭に攻撃的であり、宛ら屠殺作業中の養豚所に紛れ込んだ太った蛙である。

「親分っ?」
「お前は戻れ。警戒を続けていろ」
「り、了解です」

 男は敬礼をして、去り際にミントと視線を交し合って去っていく。その交し合いは紛れも無く、次の情事を匂わせるようなものであった。

「女、来い。余計な事を言うんじゃないぞ」

 男は豚のようなくぐもった声で言って、部屋から出る。ミントが驚くのを他所に男は迷い無く一番奥へと向かう。禿を散らかした頭を見詰めながらミントも付いて行った。

「入るぞ、ミルカ」

 男が声と共に乱暴に戸を開けた。テーブルに向かって書類を広げていた金髪碧眼の美少年、ミルカは忌々しげに男を見やった。

「・・・また貴方ですか。なんですかいきなり。こっちは書類が煮詰まって大変なんですよ。唯でさえ不快な蛙面を歪めてまで訪れないでくれます?」
「ふんっ、相変わらずいけ好かない餓鬼だ。だが働き者なのは感心だ。そう思って貴様に過ぎたる褒美をくれてやろうとしたのだが・・・」
「は?褒美?あ、あの、大丈夫ですか?頭ちゃんと回ってます?蛆虫に脳味噌食われたりとか、死霊術に傾倒したりとかしてませんよね?」
「・・・それは冗談なのか?本音なのか?」
「どっちにしたって貴方は嫌いです」
「ぷっ」

 男の背中でミントが噴出す。苛立って舌打ちしながら男は女を掴み、それをミルカの方へと差し出した。

「何ですか、それ」
「褒美だ」
「・・・人肉は食べた事無いから、ちょっとしたチャレンジですね」
「馬鹿犬め。そんな事をしたらいくら俺達でも宮廷には居られんぞ。よく見ろ、見た事があるだろう?」

 彼女の顎を指で掴んでミルカに無理矢理向かせた。気品のある顔付きは凛々しく、事後の臭いを感じさせない。ミルカはあっと声を出す。

「・・・思い出した。あのろくでなしの無駄飯喰らい、低俗な詩が大好きなミラーの奥様。お元気でしたか?」
「私の夫を侮辱するのは止めて下さいっ!見知らぬ方とて容赦は致しませぬ!主神にかけて、それを見過ごす事は出来ません!!」
「あら、覚えてないか?まぁその時は唯の馬の世話人だったからなぁ・・・。ミント夫人、厭なら死ねば如何です?此処に短刀あるから、頸を掻っ切れば宜しい。ほら、どうぞ」

 ミルカはテーブルの引き出しから鞘に収まった短刀を取り出してミントの方へと投げ出す。彼女の前に落ちた短刀の鞘には白い蛇を象った文様が刻まれており、ミントの瞳が俄かに見開いた。『コンスル=ナイト』の文様である。詰まりこの美しくも歪な少年は執政長官の精鋭なる臣下なのだ。

「序でに言っておきますが、ミラーが一番宮廷で詩っているのは愛の歌です。それも不倫とか、一夜の過ちとかを題材にした奴をね好んでね。もしかしたらそっちの願望があるかもしれません。御愁傷様」
「・・・冗談でしょう?」
「信じる信じないは貴女の勝手です。・・・で、何の御用で来られたのです、ミント夫人」
「・・・・・・幾許かの、財貨を融通していただきたく参りました」
「対価は?」

 ミントは息を呑み込んで外套をはらりと脱ぎ捨て、その下の妖艶にして淫靡な裸体を見せ付けた。肢体の間、寄せ合った太腿の間に情事の熱い液体が流れていく。一方は透明で、一方は白く粘着質だ。

「私の身体を、御自由にして下さい」
「・・・は?」

 下にドレスは着ていない。更に身体を貪られるであろうという予測から、衣服を身体の相性の良い番人の男に預けてしまったのだ。まさか行為の相手が少年になろうとは予測しても仕切れなかったが。

「ふん。精々頑張るのだな、女。あ奴は普段は掘る側では無い・・・。もしかしたら、主導権を握れるかもしれんぞ」
「でっ、出て行けっ、蛙野郎っ!!!」

 ミルカが声を怒り散らして小太りの男を睨む。歳相応の幼い迫力に男は優越感のある笑みを見せて、部屋から消えていく。戸がばたんと閉まるのを、足音が徐々に遠ざかっていったのを聞いてからミルカは額に手を突いて溜息を零した。

「はぁ・・・」
「・・・・・・あの」
「黙って下さい」

 一喝の前にミントは閉口する。部屋の中に沈黙が広まって、二人は言葉も交わさず、身動ぎもしない。膣口から太腿を伝っていく精液の温かみだけが妙に現実的な感覚を催す。

「・・・まぁ別にいいか。もやもやが取れるかもしれないし」
 
 少年のぼぉっとした声にミントの意識が戻る。彼はにたにたと卑猥で、そしてその若さに相応した淫蕩なにやけ面を浮かべて寝台に腰を置く。其処ではっきりと視認出来た、少年の股座に聳える大きな一物の姿が。その大きさは明らかに番人の男を越えている。膣を掘れば畢竟、ミントの子宮を突き上げるものであった。

「じゃぁ、いっぱい愉しみましょう。御主人が邸宅に戻るまで、ずっとね。・・・貴女も、もう随分と愉しまれたようですし」
「っ・・・」

 思わずミントは腰元に力を入れる。不意に、愛液が膣内から毀れるのを感じた。それが性の残滓を掃除し忘れたためか、或いはこれからの情事に期待してかは知らない。唯一つミントが理解出来るのは、この少年との情事は想像以上に強烈な刺激を与えてくれるという事だ。
 おずおずと進む一歩が、毎日の日常以上にリアルになっているのを感じつつミントは近付く。そして唐突に、正に意識と意識の間を縫うかというタイミングで少年がミントの後頭部に手を遣って引き寄せ、その潤んだ唇を奪い取った。その時初めて、自分は穢れてしまったという思いがミントの胸中に湧き上がり、その目端に落涙を生んだのであった。


 
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