王道を走れば:幻想にて
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プロローグ:雪化粧の修道院 ※エロ注意
前書き
前書き
本作品を御閲覧いただきまして、誠に有難う御座います。
本作におきましては、一部の方々はお気付きかと思われますが改めてご説明すると、過去に『小説家になろう』様にて投稿させていただいた拙作、『骸灯戦士』の世界観をベースとした作品となっております(尚、この小説におきましては、既に削除されております)。
当該小説を過去に読んでいらした方々、『骸灯戦士』におきましては長らくの御閲覧、誠に有難う御座いました。そして誠に恐縮ではありますが、今一度作者の卑小なる小説に御付き合いいただきたく、心よりお願い申し上げます。
新たにこの小説を読んでいただく方々、御閲覧いただきまして有難う御座います。今後とも、この半端なる作者の遅筆に御付き合いいただきたく、お願い申し上げます。
一面の雪景色。さらさらと灰色の雲間から純白の粉雪が降り頻る。朝焼けと共に降り始めた雪は日が昇り始めると同時に一段とその勢いを増し、今では街道に指先ほどの厚みを積んでいた。道横に聳える樫の木に雪が降り注ぎ、層となって重なった重みで枝が沈み込んで雪を払い落とす。水飛沫の様に小雪が空を舞った。
風が疎らに地を撫でて地に注いだ降雪を滑らせる。天地の寒さはいよいよ冷え込むといったところか。街を外れた街道の付近には野生の鹿がふわふわと生えた体毛に雪を背負い、暢気に雪空の下を歩いている。口から漏れ出す白い息は当に冬の景色。ぼーっとそれを視続けているならば、きっと此方も風邪のように寒さを移されてしまうであろう。自然にそう思えるほどのありふれた冬が天地を覆っていた。
其の中、純白に染まり込んだ道を歩く者達が居た。「ジャリ、ジャリ」と、雪を踏みしめる音が静かに鳴る。防寒用に厚手の黒のロープに身を包み込んだ者達は一様に若く、寒さで口をかすかに震わせていた。手にひしと握られたのは黒染めの質素な見た目の杖である。くるりと輪を描くように杖の先端が湾曲し、まるでフックのような形をしている。その輪の中、十字に交わされた型の中できらきらと輝く宝玉が収まり、複雑な形をした文字の羅列を放っていた。等しく大地に生きる者、王国に生きる者であれば、それが高等魔術師の呪印である事が直ぐに分かったであろう。
そんな彼らの視界に、一つの建物が見えてきた。白面の小さな湖を挟むように位置するその建物は雪景色の中でひっそりと、世俗のしがらみから身を置くように佇んでいる。街並みから外れた一つの建造物、修道院だ。石造りのそれに覆い被さるように降雪が舞い降り、今し方雪庇(せっぴ)の欠片が大地に引かれて地に落ちた。純白の雪空を王冠のように被ったそれは荘厳で、言葉に言い表せぬほど美麗であった。
その建物の中、大き目の部屋の中で十人を少し越えた数の少年少女らが真剣な眼差しをして己が両手に集中していた。皆一様に幼さを引き立たせる白のローブを着込み、其の上から飾り気のない青色のマントを纏っている。そして室内では、奇妙にも星空のような煌きが立ち込めており、ぼろぼろのカーテンが光を外に漏れ出さぬよう情け程度に窓を隠している。
「ケイさん、ここ、ここの術式はこれで大丈夫ですか?」
「...うん。見た所問題は無さそうだ。後は込められる集中力と魔力次第だ。君なら落ち着いてやれば出きるよ」
「はいっ」
声を掛けられた子供、まだあどけなさが残る可憐な少女、は身体から伝わって放たれる魔力の糸を裁たせないようにより一層意気を燃やした。手から紡がれる糸は幾十もの細糸に別れて神秘的な光を放ち、複雑で難儀な術式を編み込んだ小さな魔方陣を描いている。
少女に声を掛けた者、この場で居る中で最高齢だがそれでも十八にも及んでいない、は神秘的な魔力の光を浴びて輝いている目を室内に走らせる。王道を走る黒髪のショーットカットをした男は動き易いように見繕った革作りの脚絆と漆黒の布の衣服を着ており、其の上には細微まできめ細かに繕われた純白のマントを纏っていた。背中には葡萄の様に垂下して揺れる黄色の樫の花の紋章が描かれている。
樫の花は王国では勇気と名誉の象徴。その紋章をつけたマントを羽織る事は、偏に名誉を重んじる騎士や勇敢さを取り違えぬ戦士らにとって、最高峰の誉れである。そのマントを自然体に靡かせる男は、街を練り歩けば男らの羨望と尊敬の瞳を、女性らの親愛と恋慕の瞳を一身に受ける事であろう。
男は余裕綽々といった様子で高慢な笑みを浮かべた少年に目をつける。彼の手から放たれる魔力の光は優雅な円を描いているが、所々で火花のような閃光が走る。魔力を詰め込み過ぎている証左だ。
「ジャレド、注意しろ。魔力過多で魔方陣が解けそうになっているぞ。手加減をしておけ」
「先生、ご心配には及びませんよ...!不肖ジャレド=サンドウィッチ、魔術の名門生まれの一男子として恥ずべき事を起こしたりはしません。この陣の解けは、私の余りある実力に魔方陣が恐れ戦いたためであります!心配の必要など万に一つもありません!!」
「ようは魔方陣の構築が未熟って事だろうが...そんなんだから先日、教室内のカーテンを全部燃やす羽目になったんだろう?念には念を入れて、余った魔力で魔法陣の修繕をしておけ」
ぼろぼろとなったカーテンがこれ唯の糸切れになる日など来ないで欲しい。そう一抹の希望を抱きつつ、男は室内を巡って若く未熟な魔道士の卵に声を掛けていく。
そんな中、部屋の扉を開け放ち、ローブ姿の一人の男が顔を覗かせた。ざっくばらんに赤髪が切られている。歳は二十と半ばを越えていようか、紳士服が似合いそうな精悍な顔立ちと逞しい体躯の持ち主であり、うら若い少女の一人が彼を見て頬を赤く染めた。
「慧卓、ちょっといいかよ?」
「ん、ジェスロか。イルミナティ|(見習い魔術士)諸君、少しばかり席を外すが、確りと術式を編み込んでおくように」
『はーい!』
慧卓とよばれた男は室内を出でてジェスロについていく。部屋の光が扉で隔絶され、扉の隙間からささやかに毀れる程度となった。通路に出て教室から少し距離を開けると、慧卓は尋ねた。
「用ってなんだ?」
「高院の若い先生方だよ。またお前の勧誘に来てるぜ。応接間で待たせているけど、どうするよ?」
「はぁ...あの人達も結構執心だよな。ちょっと行ってくる」
溜息混じりに慧卓は通路の奥へと歩き去っていく。一人残された形のジョゼは通路の壁に寄り掛かると、慧卓が向かった側とは反対側、通路の奥に調理室から鼻孔を刺激する芳しい臭いが漂ってきた。ジェスロは鼻をすんすんと鳴らす。漂うそれには食欲を湧かす香辛料の臭いがふんだんに混ざっていた。
「......ンー、我らは女神は今日はカレーを作っているのかな?林檎が入っていると嬉しいんだけどよ」
そう独り言を零していると、通路を靴で鳴らす音が響いてきた。頸を其方へ向けると、諦観の色を滲ませた表情で慧卓が戻ってくる。
「お帰りさん。その様子じゃまだ居るようだな?」
「まぁな。でもあいつらも分かっているのさ、俺は梃子でも学院に入らないってな。俺の勧誘ってのは建前で、本音は寒い中を我慢して歩いて美味しい昼飯を喰らいに来たって所だろ」
「ハハ、王立高等魔術学院の一級魔道士も、腹を満たす絶品の料理には勝てないってよ」
「違いないな。其の上、それを作るのが彼女なら尚更さ」
「清廉な修道女にして王国でも指折りの可憐な少女だからな。いやぁ、流石は我が妹だよ!これで変な虫が付かなきゃ文句ないんだけどよ!」
「なら、虫が付く前に俺がもらおうか?」
「寝言は寝て言えよ」
一つ軽口を叩き合うと、ジェスロは腕組みをして慧卓を見遣る。語尾に『よ』を何かとつける口調を伴って話しかけた。
「それはそうとだ、もう一年半だぜ」
「ん?」
「お前がこっちに来るようになってからよ」
「へぇ...もうそんなにか。時が経つのは早いもんだな」
「言い振りがおっさん臭い」
「放っとけ」
僅かに不貞腐れるような口振りにジェスロが笑みを零し、何処か遠くを見詰めるような瞳をして虚空を見詰めた。
「でも、本当に速いな。何か特別な事をしたってわけでも無いのにな」
「だからこそだろ?ありふれた日常こそ、俺達が自覚していないだけで一番の至福の日々。誰もそれを自覚しないまま過ごしているって事だ」
「フーン、そういうもんかよ?至福の日々ってのは、もっとこう、壮大で、刺激的な日々の事だと思うんだがよ」
ジェスロがそう熱を帯びた言葉を口にした瞬間、二人が立ち去った部屋で大きな爆発音が鳴り渡り、部屋の扉が噴出する光の勢いに吹き飛ばされて通路に倒れ込んだ。
『ちょっとジャレド、またなの!?!?』
『ハハハハハ!この軟弱な魔方陣め、また爆発しおって!ハハハハハ!』
『ハハハじゃないでしょ!?そんなんだから何時までたってもこの教室がボロいまんまなのよぉぉ!ちょっとは自制して!!』
『あっちっっ、あっちっ、マントに火が!!!』
阿鼻叫喚が室内で生じる。甲高い悲鳴が木霊する中、ジャレド少年の高らかで投げ遣りな哄笑が響き渡った。
「...壮大で刺激的な日々って、こういうの?」
「ぜんぜん違います」
冷静に即答するジェスロの顔に冷や汗が流れ、同時に慧卓の頬にも冷たいものが流れた。
今の騒ぎ、間違いなく先生方にも聞かれた。そして同じく、調理場で昼食を料理している我らが修道院の女神も聞いている筈。ジャレド共々、冷たい笑みで醒めた口調で説教される事は確実だ。冬の冷たい廊下で正座する苦痛はもうこりごりなのに。
情けない笑みを浮かべながら、慧卓は騒ぎが収まらぬ室内へと駆け込んだ。それを追ってジェスロも駆け込む。修道院に一つの賑やかさが現れてきた。
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「ほんと、何時も何時も困りますよ、ケイタク様...」
夜の帳が降り、街外れの修道院に静謐の闇が立ち込める。朝方より降り始めた雪は勢いを弱めて今も尚降り頻っており、部屋の窓から外を見れば雪化粧に身を純白に染めた風景が見える。小雪がはらはらと漆黒の天から注ぎ、幾重にも積み重なった純白の絨毯に己をそっと添えた。
此処まで降り頻れば夜の冷え込みが増すことは必然といえた。常の冬の夜よりも寒さが増し、肌がいつも以上に寒さを敏感に感じ取って震えを来した。故に今夜は修道院では毛布一枚を追加して寝ることにしている。子供達が風邪を引かれては大変だ。医学や薬学の技術水準が現代のそれよりも格段に劣っている以上、一度引くと場合によっては命に関わる大事となる。日頃から気をつけて生活しなければならない。
だがそれは心身、そして何より魔術に関する能力がが未発達な子供の話である。大人まで成長すれば一般的な人間は、魔術的能力に恵まれぬ者は除いて、このように冷え込んだ夜に普通は『ヒーティング(暖房)』の魔術を使えば良い話。効果時間を調整すれば、朝方まで快適な睡眠を貪る事が出来る。それで一切合切解決だ。
修道院でもそれが行われていた。慧卓が眠る部屋では『ヒーティング』が充分に機能し、さながら現代の暖房器具の如く快適な空間を顕現していた。肌に伝わる温かみは心地良く、眠りに集中すれば瞬く間に快眠を約束するであろう。だが慧卓はそうはしない。己に言葉を紡ぐ女性がためだ。
「幼く未熟な若人達を導くは、んんっ、我ら大人の大事な勤めでありませんか。んむっ、ちゅる!特にジャレドは優秀ですけど油断しがち男の子ですから、あんっ...目を離しては大変です」
「あぁ、すまない...っ、なぁ、キーラ」
「ジュル、あむ...なんですか?」
慧卓の腰元に頭を埋めるようにしていた女性、キーラが顔を挙げた。水色の長髪は汗が光る背中に踊り、解れるように扇を描いている。二重のはっきりとした瞼の内から、翠の輝きを放つ瞳が慧卓を見詰めるている。熱に浮かされたそれには潤みが宿り、言葉に言い尽くせぬ情念が込められている。知性と理性が感じられる眉は緩み、頬は紅潮し、深奥に隠されていた熱い本能が如実に見て取れた。口から毀れ出す舌先はちろちろと動き、彼女の隠しきれぬ淫蕩さを体現している。
その美貌もさることながら、彼女の体躯は一段と目に付いた。窓からの淡い光を浴びて照りを放つうなじ。色めかしく汗を湛えた鎖骨。健康に欲情の色を仄めかせるきめ細かな掌。劣情を催したように色めき、手に僅かに余るほどの膨らみを誇る豊胸。その頂点で否応なく淫らに立つ乳首。引き締まってくびれが強調された腰。張りの良く、男の心を惹きつける臀部。すらりと伸びた足。その全てが慧卓、ただ一人のためだけにすけすけのネグリジェ越しであるが顕となっていた。
白く潤いを帯びた肌、女性らしさを強調したその張り。当に美の女神に微笑まれた体躯である。男の欲情と女性の羨望を集めるそれは普段は地味な修道服に隠されているが、今では手触りの良いネグリジェ一枚で覆われているだけだ。そのネグリジェですらと薄く、彼女の素晴らしい体躯が透けて見えてしまうという代物。慧卓の欲情を引き出そうとするかのようで、彼の心を掴んで離さない。
その女性、キーラは寝台に寝転がった慧卓の足元に乗りかかり、その美しい容貌を躊躇なく、全裸になって顕となった慧卓の引き締まった肉体、その下部にある彼の隆起した一物に近づけている。ちろちろと舌先を動かして亀頭の先を舐め、流れ出す先走りの汁を咥内に集め、嚥下する。其の度に彼女の心は更に熱を帯び、慧卓の心を焦らしてしく。
「今日は、うっ、随分と強くないかっ?」
「当たり前です...むふっ、んん、駄目な人を矯正して、じゅぷっ、正しく清き道へ進ませるのが、修道女の、役割ですからぁ、時には強い手段も、必要ですっ!」
そういうなり、彼女は慧卓の股座にびんと張り詰めた陰茎を口に含んだ。咥内で圧倒的に存在感を増す男の象徴を丁寧に、真心を込めてキーラは愛撫していく。頭を上下させて亀頭を刺激すれば慧卓は恍惚とした息を漏らし、その快感を感受していく。キーラは息を吐く為に一度肉槍を口から放す。彼女の美麗な双眸と鼻の先で、固く屹立して血管を浮き立たせた一物がぴくりと揺れた。キーラが指を伸ばしそれに触ると、更なる快楽を求めて直情的となった肉槍の熱を、彼女は感じ取った。
「ああっ、すごぃ固い...あむっ、じゅる、はあっ、んむっ」
「っっ!キーラ、上手だよ...裏筋に舌を這わせるように」
「んっ、何時もやっているでしょう?あむぅ、チロ、ちゅっ」
甘露を味わうように彼女は舌先を一物の裏筋に這わせる。つつと這い上がる舌はカリの段差に入り込み、其処に潤いを満たした先走りの汁を舐め捕っていく。その舌技、清廉な修道女が持つものにしては罪深いまでに淫蕩に過ぎていた。そして陰茎に走る心地良さ、修道女の奉仕という倒錯的な光景を見る慧卓の心に、心地良さと征服感が広がった。
「俺達がこんな関係になってるってジョゼが知ったら、どんな顔するんだか」
「ちゅっ、ん...きっと卒倒しちゃいますね。それで悲しいやら嬉しいやらの反動で、街で罪無き女性を引っ掛けるでしょう...これだから兄は不埒なんです...」
「あいぃぃい!?痛い痛い、強く握らないでっ!」
「あら、御免なさい」
思わず強く握り締めた一物からキーラは手を離し、慰めるように亀頭を咥え込む。咥内で快楽に震える亀頭から雄の欲情の臭いが放たれるのがたまらない。奉仕の舌を動かす度に慧卓は恍惚として口を開き、屹立とした陰茎は射精を求めるように震えた。
(んふっ、こんなにビクビクしちゃって、かわいい...そろそろですかね?)
キーラの愛撫がより丁寧に、淫らに変容していく。カリと裏筋、そして尿道の口を狙い定めて舌を蠢かせ、忙しなく肉槍を咥え込んだ己の頭を上下させ、間断無く性的な刺激を与え続ける。先走りの汁がより一層味を深めて亀頭の割れ目から毀れ出し、快感に耐えられないといわんばかりに陰茎の反応が激しくなるのをキーラは感じ取った。
「あむっ、ぢゅるっ...ふう...」
「あっ...キーラ?」
堰を切るが如き絶頂の其の寸前、キーラは名残惜しげに一物から口を離して笑みを浮かべる。嗜虐的な光を込めた瞳は、戸惑いを浮かべた慧卓をゆるりと見下していた。
「ふふ...そんな切なげに見ても駄目ですよ...?言ったじゃないですか...時には強い手段も、必要だって...」
「な、なぁ?俺が悪かったから、今度からしっかり彼らを見るからさ、その、手に持った物を...」
「なんですか?」
「...その紐を、捨ててくれないか?」
何時の間にか彼女の手が握っていた紐を見て慧卓は願いを口にする。紐は通常のそれよりは太いものであるが、まるで何かを縛るための出来たような形をしていた。嫌な予感が慧卓の背筋に流れた。
「うふふふ...いやですよ、愛しの旦那様...これは私の愛の糸です。貴方と私の繋がりを深める、素敵な糸です...捨ててなるものですか」
「キーラ、素敵なのは分かったから、なんでそれを俺のソコにぃ!?」
「愛のためです」
キーラは嬉々として勃起した慧卓の陰茎を紐で縛っていく。尿道を遮断し精液の奔騰を押さえ込むように、それでいてこれからの劣情の行為の邪魔にならぬよう控え目に縛る。
「さぁ、ケイタク様。授業本番と、いきますね?」
彼女は言葉とともに己の汗を吸って服の用を成さなくなったネグリジェを脱ぎ捨てる。隠し切れぬ欲情の赤味を帯びた、傾国の美女をも惹き付けてしまうような黄金率の美の裸体が其処に現れた。扇情的に震える大きな胸の頂点で桜色に突起が立っている。そして下腹部より更に下に目を移せば、不毛の丘陵を越えて愛液を迸らせる艶治な女陰が存在していた。クリトリスは完全に勃起し、穢れを知らぬ桃色の膣肉はひだと共に収縮の動きを見せている。まるで陰茎を早く出迎え、咽び泣きたいとせがむよう。
僅かに腕を開いて仰向けに寝転がった慧卓の上に覆い被さると、キーラはぎんぎんに勃起した肉槍の上に跨り、ゆっくりとその存在を己の膣の中へと迎えていった。口腔での奉仕までに散々に慧卓の手により彼女の身体は咽び、絶頂の高みへと昇っている。不十分な濡れによる妨げなど存在する余地も無かった。
「んひぃ、ああっ、おっきいよぉぉ...ひだに引っ掛かって...熱いのぉ...」
「うぐぅっ...き、きっつい...」
言葉にもならぬ情念と、肉ヒダの卑猥な蠢きでで陰茎が猛り狂う。絶頂を寸前で止められた彼の亀頭がひくひくと泣いて果敢に自己主張する。その震えが挿入を続けるキーラの膣を襲い、彼女の心を更に性欲で掻き立てた。
固く屹立した一物の挿入が終わる。クリトリスが男性器の竿に擦れて更に勃ち、己の膣の中を占有する男根の存在が膣内で欲情する肉とヒダを熱くし、愛液の毀れを催す。その肉ヒダが男を責めるように幾重もの劣情の糸を以って締め付けていく。膣の入り口、肉ヒダが蠢く膣の中、そして子宮近くの最後の一線。三段締めの膣により慧卓の絶頂への道が急速に開けていった。
「はぁ...はぁ...じゃぁ、動きますから、ケイタク様は、そのまま寝てて下さいね?動いたら、抜きますから」
念を押すように冷徹な声を装ってキーラは言い、思うが侭に己の腰を振った。途端、愛液で迸った恥丘より淫らな水音が弾け、豊胸がふるふると振るえて慧卓の視界の中で踊った。
「あああっ、ああああん、あはっ!!すごい、すごいぃ、固くて気持ちいっ!」
我武者羅にキーラが腰を振る度に、屹立した陰茎が自然と己の膣を縦横無尽に抉っていく。膣肉が無理矢理に奥へと押し付けられ、肉層を蕩けさせるようだ。歯を食いしばって慧卓は己の陰部に走る麻薬のような快楽に耐える。此処で己が耐えられずに腰を動かせば言葉通りにキーラは性交を止めてしまうであろう。この快感を更に長く感じていたいという思いが、一分一秒でも愛する者と繋がっていたいという思いが、彼の胸を締め付けて生殖本能を抑制する。
その思いを締め潰すようにキーラの膣が収縮をして陰茎に刺激を送った。キーラは前後左右の腰の振りから、既に腰と腰を打ち付ける性交へと移行していた。膣全体に満遍なく快楽を伝えようと腰を下ろす場所を前後に移すキーラ。劣情に身を焦がした動きにより、桜色に染まった乳首が胸の頂点で上下に踊り、竿を締め付けた紐の先端が揺れて慧卓の肌を擦った。
「はっ、ああああっ、いいいいよぉおおお!!あああっ、ああ、亀頭で引っ掛かれるのぉぉ、好きぃ!!」
ぱんぱんと、互いの肉と肉がぶつかり合い、二人の思いをより焦がしていく。想いのままに吐き出される嬌声は高らかであり、室内に『サイレント|(静寂)』の魔術を事前に張らなければ修道院中の子供達を揺り起こし、欲情を伝播させていた事であろう。男性器が女陰の中へと遠慮なく侵入し、その花園の中に潜む獣性を煽るように、肉ヒダを掠めながら奥へと入り込む。勃起した男根の先、亀頭の先端が淫靡な子宮の口に接吻を交わす。その滑らかな感触を諸に感じるキーラはいよいよもって欲に駆られた喘ぎを激しくし、淫蕩とした笑みを零して陰部の挿入を見下ろした。
「駄目っ、こんなすごいのぉ、覚えたら、もう生きられないぃぃぃ!!もうこれなしじゃ生きられないよぉっ!!」
その言葉は慧卓にとって同じ事である。キーラが腰を下ろせば、肉ヒダが蠢きあい竿を締め付けると同時にカリを刺激し、下ろしきったと同時に収縮が強くなって陰茎全体に快楽を伝える。キーラが腰を上げれば、膣肉が更なる進撃を求めるように一層の収縮をし、膣口から外れる一歩手前で亀頭を全方位から締め付けるのだ。仮に慧卓のそれが女殺しの名器なれば、キーラのそれは男殺しの、それも英傑殺しの名器と成り得るであろう。竿を縛る紐が無ければ、既に精の奔騰が起こっていた事は間違いない。今この瞬間だけ、慧卓は己の欲情を縛る忌々しき紐の存在を有難く思った。
そして彼女は慧卓の視覚を愉しませる事を忘れない。太腿は厚く広がり、彼女の欲情の存在を主張するように筋肉が躍動する。桃色に染まった美麗な肌の上を瑞々しい汗が伝い、可憐な形を保った臍の上を、扇情的に鎖骨の上を流れて振るい落とされる。触れば掌の全ての感覚を奪う双丘は、更に男の目を奪うようにふるふると揺れる。キーラの項に大粒の汗が垂れ、艶やかにそこを輝かせた。上下に揺れるたびに艶を光らせた水色の長髪が愉しげに踊る。
だが何より男の目を奪ったのはキーラのその表情であった。快感に堪えるように瞳を閉じられているが、一方で口は開けられ高らかな嬌声を止め処なく漏らしている。頬が真っ赤に染まり、彼女の愛らしく聡明な表情を淫蕩なものに変貌させる。何ともいじらしく、可憐な姿であろう。慧卓が耐えるように呻きを漏らす。
「キーラは、キーラは幸せですっ!!旦那様の、お、おちんぽでぇぇっ、お腹ゴリゴリされるの好きで、幸せですぅ、ああああん!!」
その言葉は反則だ、愛しさが抑えられなくなる。慧卓はそう言う時間すら惜しいとばかりに彼女の太腿に手を置いて腰を振ろうとした。既に我慢の一線など疾うに越えている。絶頂を求めてひくひくと痙攣する一物を慰めるために、彼は無遠慮に、そして乱暴にキーラの心身を愛するであろう。
当に男の本能が解き放たれようとした瞬間、慧卓の手をキーラの手が上から握り締めた。
「駄目ぇっ、動いちゃ駄目っ!!お仕置きだから、じっとぉじててくださいぃ!!」
「で、でもキーラっ...!!」
「イキますからぁ!!私がイク時に紐を外しますからぁぁっ、我慢して下さいっ、あっはぁあああああ!!!」
軽い絶頂を覚えたのであろうか、キーラが一つ震えを来して大きな声を上げ、同時に膣の収縮が一段ときつくなる。慧卓の肉槍があらゆる方向から色情の侭に締め付けを甘受していく。
だが慧卓の心が満たされる事は無い。己は気侭に腰を振れず、加えて竿を縛られ苦痛にも等しき快楽を押し付けられるだけ。自由に愛液を漏らして絶頂に至れるは淫靡に声を上げるキーラだけ。最早これ以上の性の乾きは理性を燃やし尽くすが如きものである。慧卓が瞳に涙すら浮かべて懇願しようとした時、キーラの嬌声が彼を押し留める。
「あひっ、子宮がぁっ!子宮がイきそうぅっっ、イクっ、イきます!!キーラのお腹の中に、いっぱい愛を注いで下さいぃぃ!!!」
言うなり彼女は竿の紐を解く。己の一物が待ちに待った解放に伴い一層に隆起したと慧卓は本能で感じ、理性を彼方へと捨て去り、キーラのそれに合わせるように腰を血気盛んに振る。一段と強く肉が打ち付けられ、膣肉を擦る勢いが更に増した。亀頭が更なる一線を越え、子宮口に深い口付けをするように己を押し付けた。
途端、キーラはぎゅっと瞳を瞑って声にもならぬ絶叫を漏らす。それと同時に彼女の体躯が痙攣し、膣肉の蠢きが激しさの頂点に達する。紛う事なき、絶頂だ。慧卓も同時に己の獣性を解放する。尿道を疾駆が如き勢いで熱い精液が駆け上り、子宮に押し付けられた亀頭の割れ目から迸った。膣を介さずに放たれた精液は真っ直ぐに子宮の中へと飛び入り、肉壁の内側、子宮体部を満遍なく白く染め上げていく。キーラがその熱と圧倒的な存在感を感じ取り、また一つ絶頂の波に攫われた。
「あっはぁ...またいく...凄い熱いよぉ...」
「はぁ、はぁ...」
射精の勢いは未だ衰えず、律動する陰茎に合わせて精液が放たれる。其の量、押さえつけられて幾本もの我慢の線を乗り越えたのか、通常のそれよりも夥しきものであり、子宮の中に入りきれなかった精液が膣内へと逆流し、陰部内を埋め尽くす陰茎との隙間を縫って体外へと毀れ出した。粘着質な熱を帯びたそれは挿入口から毀れて無遠慮に寝台のシーツに降り立つ。朝になればかぴかぴとなって洗濯の労を増すであろうが、絶頂の波に震えて愛を貪る今の二人にとっては歯牙にもかからぬ問題であった
キーラは己の中で打ち震える肉槍の存在を、そして子宮の中を襲う精液の奔騰を感じて笑みを零す。愛する者との一層の繋がりを感じさせるこの行為の絶頂は、他の何よりも彼女の心を満たすものであり、そして彼女の淫乱さをより掻き立てるものであった。ほっと安堵の色が混ぜった息をキーラが零す。だがその息は慧卓にとってみれば、行為の心地良さに満たされた雌の吐息と同じ事であった。
漸く長い絶頂を終えた肉槍は駄目押しとばかりに小さく震え、尿道内に残った精子を放出せんと気張っている。息を大いに乱しながら、キーラは力を振り絞るように陰茎を抜き取る。精液と愛液でぐちゃぐちゃに濡れた男根が夜光を受けて照らされ、その上に体内から毀れ出した精液の汁が注いでいく。キーラは崩れるように身体を倒し、慧卓の上に愛しげに寄り掛かった。
「はぁ、はぁ、授業はぁ、これでお終い、ですぅ...ケイタク様、これからはもっとちゃんとして下さいね?」
「あぁ、ちゃんとするさ。...さて、これで、『俺への』授業は終わりだな」
「えっ...」
言葉の尻を言い終わると共に慧卓はキーラを抱いて寝台の上で反転した。キーラが寝台を背にする形。詰まる所、更なる愛を求める形。心成しか、慧卓の光が爛々としている。
「あ、あの、ケイタク様?目が怖い...」
「あんなに焦らされて、好きに動かせたのが出す直前だけ...燃焼不足だ」
「っ、あぅ、凄い硬い...」
腹の上に押し付けられた陰茎は膣内にあった其の時よりも更に猛っているのではないか。ぐりぐりとキーラが快感に靡くように肉槍が彼女の下腹部を圧迫する。
「今度は、『君への』愛の授業を叩き込む番だ」
「...はい、分かりました....でもケイタク様、其の前に...」
妄(みだ)りがましい色を瞳から打ち消し、純粋に恋路を走る少女のように瞳を潤ませて、キーラは慧卓の瞳を見詰めた。彗星のように輝く碧眼が慧卓の心を掴んだ。
「キス、して下さい...」
惚けたように慧卓は彼女を見詰め、そしてゆっくりと彼女の口元に己のそれを近づけていく。キーラの可憐な口元から興奮の荒く、艶やかな息が漏れだし、その息遣いが慧卓の耳に段々と明瞭に入っていく。そして二人の瞼が下ろされた時、瑞々しい熱を帯びた唇が重なり合う。
「んっ...あむっ...」
唇に伝わる潤いは、妖精が住まう泉の清水の如き瑞々しさを誇り、身体と精神を支配する性欲の熱をゆっくりと冷まし、愛する者への愛情を喚起していく。キーラが夢心地で何度も慧卓の唇を啄ばんだ。親鳥に餌をねだる小鳥のように甘え、愛を欲さんと接吻を交わす。ふと舞い降りた静寂の中、二人が口付けを交わす愛らしい音だけが響き渡った。
一分も経ったであろうか、慧卓は名残惜しげにキーラから唇を離し、その濡れそぼった陰唇に己の一物を添えた。隆起したそれは夥しい精子を吐き出して尚、まだ出し足りぬとばかりに血管を浮かせていた。
「いくよ?」
「...きて、ケイタク」
瞳を交し合う両者。其処に最早装った敬語が存在する余地などない。思いのままに言葉を紡ぎ、体躯を揺らすだけだ。慧卓はキーラの瞳の中に、熱帯びた性欲と焦がれた親愛の情を見て取り、一息に腰を突き入れて挿入を敢行する。一気に侵入した肉槍を。そして亀頭の先端が子宮にまで達して彼女の深奥を大きく揺さぶった。
「ううううっ、凄いっっ、さっきよりおちんぽ固くてぇぇ!!!」
「っっっっっ、君も、さっきより締め付けが凄い!」
「あああっ、いっ、いきなり激しいよぉぉおおっ!!!」
膣肉が快感に悶えて愛液の捻出を怠らず、それに加えて収縮の動きを一層激しくさせた。竿にかかる劣情の負荷が増し、鈴口に伝達する刺激が電撃のように強くなった。陰茎に向かって加わる奔放な性の蠢動が彼の理性をぐらぐらと揺さぶり、腰の動きを自然と早めていった。キーラの口から毀れだす喘ぎ声が一段と色を増し、激しい水音を溢れ出させる陰茎と陰唇の間から精液と愛液が混ざり合った汁が毀れ、ひくひくと開閉する菊座へと伝っていった。
「あああん、あひぃぃ、あむっ、じゅるる!じゅぷっ!んんむぅぅ!!!!」
ただ膣を掘られるだけでは物足りず、キーラは慧卓の頸の後ろに手を回して熱烈な接吻をせがんだ。舌を卑猥に露出して慧卓のそれを絡め取るように貪る其の様は、清廉なる修道女が忌み嫌う淫魔の姿其の物である。而してキーラは己の永劫に続く信仰心を、一時に心身に蔓延る絶大なる快楽と愛の念で蕩けさせており、挿入の激しさを求めるように腰を振り、舌を動かして深い口付けを求める。慧卓に覆い被された事により圧された豊胸、其の頂点の乳首が凛々しい彼の胸板に潰され、性の刺激に敏感と成ったキーラの心を更に乱していく。
「んふぅぅううっ、じゅるっ、ああああっ、ちくびがぁぁ、ちつのなかが、あついぃぃ!!!!」
何度も突かれて精液を吐き出され、そしてまた本能のままに穿たれる膣には熱が篭り、迸る愛液が膣に残った精子と絡み合って挿入を更に滑らかなものとしていく。慧卓の引き締まった肉が、キーラの滑らかで柔らかな肉にぶつかって拍手のような音を鳴らす。キーラの体躯には幾度も淫奔で小さな震えが走り、彼女は瞳を閉じてその波に耐える。思いを弾けさせた彼女は、膣から脳にかけて立続けに小さな性の絶頂の波に襲われ続けていたのだ。思うが侭に愛の喘ぎを零すと、口元から唾液が毀れ出して、汗と性液でびっしょりと濡れたシーツを更に濡らした。
「駄目、駄目ぇぇ、もういきそうなのぉぉ!!!おちんぽでいっぱい突かれてぇぇ、私っ、もういっちゃうぅううう!!!」
「ならいっちゃえよ!何回も、何度も抱いてやるからさっ!」
「ひぃぃいいい、あひぃ、イクっ、いっちゃうう!!」
がくがくと絶頂に震えるキーラ。いつ何時ぷつりと意識を落すか分からぬほど彼女は心を劣情に乱し、込み上げる淫乱の性に体力を奪われていた。だが慧卓は彼女に一時の休みを入れる事よりも、何度も何度も陰茎を前後させて絶え間なく絶頂の波に溺れさせる事を選んだ。膣肉の強い締め付けと愛液の潤いに耐えて、獣性を伴って膣を進んで戻る陰茎は慧卓の強靭な意志により射精を押し留めている。まだ放出する時ではないと慧卓は思い、自分もまた快楽の波と戦い続ける。其の時にこそ、自分は本当の絶頂に至れると思って。
二人の行為は盛んに熱を増していく。両者の口から毀れる息で、身体から発せられる熱で靄が生まれてしまうのではないか。そう錯覚してしまうほどに二人の行為は乱れ、淫らに踊っている。
「好きぃ、大好きぃ、ケイタク好きぃ!信徒よりぃぃ、神様よりもぉ、ずっと大好き!!!」
「あぁ、俺も、キーラが好きだ!大好きだ!愛している!!」
「あああっ、嬉しいよぉぉぉ、お腹もぉぉ、心の中も熱くなっちゃうぅぅ!!!」
感極まったとばかりにキーラは慧卓を抱く手の力を強め、挿入をより深めんと彼の足を蟹のように挟みこむ。互いの距離が一段と縮まり、必然的に男根の膣への挿入が深くなり、亀頭が子宮の口を割って更に中へと己を愛液に犯させる。亀頭を通じて慧卓は子宮の中の様子を垣間見た。淫猥に発熱し、精液を搾り取らんと、赤子を宿さんと悶える様を垣間見る。その激しく純粋な雌の本能を陰茎より感じ、慧卓の心の中で雄の獣性が雄叫びを上げて腰の躍動を強め、抽送の妨げを消すように更に先走りの汁を流れ出させる。体内に伝わる精子の熱さ、そして肉槍の穿ちにキーラは淫らに乱れ切り、最早叫びにも似た嬌声をあげるより他なかった。そして慧卓は精嚢の内より込み上げる熱さを感じ取る。我慢に忍耐を加えて本能を抑えてきたが、精液の奔騰はその障壁をいとも容易く打ち崩し、尿道の中をじわりじわりと捩り上っていく。それを触発するようにキーラが一段と大きな絶頂の波に身を揉まれたのか、一際高く淫靡な声を上げた。
「いくぅ、またいっちゃう!!!いひぃっ!ね、ねぇ、ケイタクぅ!!中に、中にきてええええ!!!」
「ああ、出すぞっ、いっぱい注ぐぞ!!!」
「あひぃっ、きてえええ!いっぱい来てぇぇっ!!ケイタクの熱いのきてぇ!!!」
キーラは手足にひしと力を込めて、体躯に滾る淫靡のままに慧卓を強く引き寄せた。ゼロ距離を越えて二人の肉が潰れあい、否応なく乱れきった体温を、岩清水の如く肌から生まれる汗の湿りを、早鐘を打つ心臓の音をお互いに伝え合う。それが契機となったのか、慧卓が激しい躍動の中で一段と強く子宮の奥を叩き、行為の中で最大の絶頂を迎えたキーラの膣がびくびくと痙攣して竿を締め付ける。精嚢より駆け抜けた精子の濁流が鈴口より、一度目の射精で潤った子宮の中へ溢れ出していく。陰茎の律動が僅かな間隔を置かずして起こり、其の度に濃厚で雄の本能を詰め込んだ精液が膣の中を充満し、獣の生殖行為の臭いを立ち込めさせた。
慧卓の視覚の中、キーラが顔を性の色で染め上げて息を荒げ、欲情に染まった彼女の瞳は力無く虚空を見つめている。その聴覚において、射精の勢いに震える陰茎によりびちゃびちゃと混濁した性液が混ざり合う音がし、さり気と無くお互いの心臓の鼓動が聞こえていた。性行為の強烈で淫猥な臭いが一気に襲い掛かり、彼の感覚を麻痺させるかのようだ。咥内に至っては、散々に絡み合った舌と舌により唾液の粘着質な無味しかしない。そして全身に伝わる柔らかな触感。胸板に圧された二房の果実のふくよかな抱き心地、その頂点で勃起している乳首の尖り、頚部に回された腕の冷ややかさ、下腹部の温かさ、そして何より陰茎を覆う膣の複雑で淫らな感触。慧卓の五感が全て、激烈な性行為の中で研ぎ澄まされ、その頂点で極められた。
「ああ......いっぱいだぁぁ...ケイタクでいっぱいだぁ...」
「はぁ、はぁ、よっと...」
「あっ...」
先程までの激しさの割には余りにも呆気なく、慧卓は膣から男根を抜き去った。途端に溢れかえった精液が膣口から流れ出す。流れ出す精液の滴を呆然としてキーラが見詰めていた。最早彼らの下部にあるシーツは穢れに穢れ、元の純白に淫らな染みを色濃く残してしまっている。
慧卓はキーラの横に身体を倒す。行為の時の激動が消え去ったお陰で、二人は静謐を湛えて互いを見詰める事が出来た。
「ちょっと、休憩な...」
「うん、分かった。ちゅっ、ちゅっ。でも、休んだらまた...ね?」
「あぁ、いっぱい、しような」
「うん。えへへ...」
合間に可愛らしく口付けを挟みつつ、キーラは可憐にはにかんだ。普段の清廉で生真面目な修道女の笑みではなく、一人の恋するうら若き少女としての朗らかで邪気の無い笑みを浮かべる。其処に一分の信仰心も無ければ、一分の淫蕩さも無い。唯、胸を安らげる安心と純真な愛情だけが存在していた。
次の性交までの束の間の休息、天使の如き笑みがあればその効果は幾倍にもなるであろう。確信めいた思いを胸に抱きつつ、慧卓は安らかな笑みを浮かべてキーラを抱き寄せ、その頭を優しく撫でる。表情を更に崩してキーラが慧卓に抱きついた。
修道院の夜は更け、其処に住まう者の夜もまた更けていく。朝方になれば大人達は身体を叩き起こして朝の支度をし、子供達はうんうんと唸りながらも修行に励むために気を張る事であろう。ありふれた日常は世界の中でひっそりと身を潜めている。だからこそ大切であり、愛おしい。明日もまた、世界のどこかで愛の囀りが聞こえる事であろう。それを壊す非日常をひっそりと傍らに置いて。
青年、御条慧卓は愛するものを腕に抱いて夢心地となりつつ、この世界への来訪と、此処に至るまでの激動たる生の流れに思いを馳せていった。
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