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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第288話】

 時は少し流れ、九月六日の放課後。

 俺と一夏は放課後、楯無さんの猛特訓に明け暮れている。

 基本、俺は別メニューなのだが――シューター・フローを失敗する度に、俺がお手本を見せないといけないため――。


「ヒルト君、またお願い出来る?」

「……了解です。 これで累計七十八回目ですね」


 壁に吹き飛ばされた一夏は、頭を擦りながら立ち上がる。

 代わりに俺がシューター・フローを行うが――先程言った通り、累計で七十八回目――どんどん俺の精度ばかりが上昇していく気がする。

 アリーナ中央に位置するバルーンへと視線を移し、その周囲を円軌道を描きながら徐々に、徐々にと加速していく。

 一定速度に達すると、楯無さんからの指示が飛んでくる――。


「ヒルト君、そこで瞬時加速よろしく。 後はいつも通りお願いね」

「了解です!」


 シューター・フローの円軌道から抜け出し、直線機動に切り替えるや浮遊タレットが粒子形成され、弾幕を張る。

 放たれる弾丸の雨を、細かい制御で避けつつ、バルーンへと肉薄――拳で地面へと叩きつけ、追い討ちをかけ、一気に上空へと蹴りあげる。

 まるで弾む様に急上昇したバルーンを、全スラスター点火させて急上昇――追い付くや、またも地面へ叩きつけるように蹴り落とし、事前にチャージしていた瞬時加速で追い付くと、疾風を呼び出し、バルーンが地上に到達する前に零距離による疾風の拡散粒子矢を浴びせた。

 浴びせられたバルーンは爆ぜ、大きな破裂音が鳴り響く――。

 と、同時に着地をすると楯無さんが――。


「お見事――と、言いたい所だけど……ヒルト君、勝手にアレンジしちゃったわね?」

「おぉぅ……。 ち、ちょっとだけですよ、あはははは……」


 スタスタと歩いてくる楯無さん。

 微笑は崩さずに此方に来るその姿は変な威圧感を感じ――。


「うふふ♪ ちゃんとお姉さんの言う通りにしなかったヒルト君へ、私からのお・し・お・き♪」


 そう言って見事に頸動脈を決める閉め技をしてきた楯無さん。


「ちょっ!? ぎ、ギブギブ!? 頸動脈決めないで……ッ!!」


 頭に伝わる胸の柔らかさよりも、頸動脈をきめられて徐々に呼吸が――。


「はい、お仕置き終了♪ ……アレンジ自体は悪いことじゃないわよ? でも、今は織斑君のお手本にならないとね?」

「ゲホッ……。 す、すみません……」


 頭を下げると何故か頭を撫でられた――何故に。


「うふふ。 君の髪はさらさらね。 ……ちゃんと手入れしてるんだ?」

「え? ま、まぁ……。 ……てか、今は関係無いんじゃ……」

「それもそうね。 じゃあ織斑君、またシューター・フローを行って?」


 軽く二度手を叩き、動くように促す楯無さん――だが一夏は。


「ちょ、ちょっと休ませてくれませんか……? 昨日もそうですが……今日も休みなしじゃ――」

「うふふ♪ ……だ・め・よ♪」


 ピシャリと言い放つ楯無さんに、一夏はがっくり項垂れる。


「おいおい。 一応言っとくが一夏、一昨日の美冬とシャルが行ったシューター・フローに比べたら難易度一ぐらいだぞ?」


 何故難易度一かというと、一夏は一人で行うためぶつかる危険性も無ければ相手からの射撃に晒される訳ではない。

 二人で行うとなると、息が合わないと難しい。

 因みに実践で綺麗な円軌道をとることは叶わない――相手も動き続けているのだから。

 そんな考えを他所に、一夏は項垂れつつもシューター・フローを行う――だが、制御を失敗、背中からアリーナの壁へと激突した一夏。


「はい、起きた起きた。 キミに休んでる時間なんて無いんだからね?」

「うげ……。 鬼だ……」


 そんな一夏の呟きが聞こえると、笑顔を絶やさない楯無さんは――。


「鬼で結構。 ……はい、動く動く! 口を動かす暇があるなら早く習得しなさい!」


 ピシャリと激が飛び、また指導が再開される。

 今日も俺は、自分用のメニューはあまり出来ないと思った――。 
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