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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第284話(ブルー・ティアーズ編)】

 
前書き
ブルー・ティアーズ編です 

 
――第三アリーナピット内――


「ヒルトさん、お待たせいたしました。 機密情報等の閲覧制限、機体のパーソナライズ及びフィッティング機能を――」

「あぁ、手間をかけさせたなセシリア。 ……悪いな、大事な機体を借りて」


 そう言って頭を下げると、セシリアは慌てたように口を開く。


「あ、頭をあげてくださいなっ。 ……わたくしなら大丈夫ですわ、この程度の制限をかけること等、俗に言う朝飯前ですわよ? ……ヒルトさん、ブルー・ティアーズお預け致しますわね?」


 そう言って、ブルー・ティアーズから降りたセシリア。

 降りた際に、胸が弾むのが見え少しラッキーだなと思っていると――。


「……あの、ヒルトさん……少しよろしいかしら……?」

「う? あ、あぁ……どうした?」


 もしかしてこっそり胸を見たのがバレたのだろうか?

 等と内心ドキドキしていると――。


「……その、何故わたくしの【ブルー・ティアーズ】をお選びになったのかしら……? 相性で言えばシャルロットさんのラファール・リヴァイヴ、ラウラさんのシュヴァルツェア・レーゲン、鈴さんの甲龍とありますのに……」


 どうやら胸を見た事では無く、何故俺がブルー・ティアーズを選んだかが気になった様だ。


「……ん~、セシリアの敵討ちって訳じゃないぞ? てか、リベンジならセシリア自身がやる――そうだろ?」

「……そうですわね。 織斑さんへのリベンジ戦でしたら、わたくしが自分自身でやります。 だからこそ、ヒルトさんが何故選んだのかが気になりまして……」


 手を前で組み、両腕で強調される様にセシリアの胸の谷間が主張していた。

 ……真面目な話の最中なのに、ISスーツ越しとはいえ見事な谷間に少し目が行くも、軽く咳払いして――。


「こほん。 ……俺なりのブルー・ティアーズの使い方をセシリアに見せようと思ってさ、これが。 ……っても、偉そうに言えるような腕前でもないけどな、ははっ」


 実際、偉そうに言える俺ではない。

 ……というか、俺のBT適性の検査はされていない。

 ……まあ、日本にそんな類いの武器が無いので当たり前なのだが、役人が俺に対して言ったのは――「こんなISランクの低い奴のBT適性等税金の無駄だ! それならまだ道路を作った方がましだと言うものだ!」――というお金儲け大好きな役人さんの有難いお言葉ありがとうございます。

 まあそれはそれとして、再度セシリアを見ると――。


「……ふふっ。 適性などお気になさらず……。 ヒルトさんはヒルトさんなのですから。 貴方の思うがままにわたくしのブルー・ティアーズを駆ってくださいまし」


 口元を手で隠すように笑みを浮かべるセシリア。

 それを見て、俺も微笑を溢すとブルー・ティアーズに搭乗した。

 ――サイズ的にはちょうどよく、締め付け等も無いため違和感を感じることはなかった。


「……ブルー・ティアーズか……何だか操作が大変そうだ」

「そうですわね。 ですが、使いこなせばあらゆる距離に対応が可能ですわよ?」

「……まあ、確かにそうだがこのスターライトmkⅢの長さがな……」


 展開したスターライトを眺める――サイズが二メートル越えという長大なライフルは、やはり接近戦での取り回しは最悪だろう。

 更にアリーナの狭さもそれを加速させる――もう少し、サイズが小さかったら良いのだが粒子加速器の問題もあるのだろう。

 ……まあ、今更それを思っても仕方ないのだが。

 スターライトmkⅢを粒子化させ、収納すると今度はインターセプターを呼び出す。


「……近接用装備に関しましては、申し訳程度の武装しかありませんの。 ……ブルー・ティアーズは、基本的に中・遠距離型のISですので……」


 呼び出したインターセプターを見たセシリアが申し訳無さそうに言い――。


「コンセプト自体はわかってるからな。 基本遠距離から近付かれるまでに火線集中、撃破。 ……でも、制作者はアリーナでの使用はあまり想定してないって感じかな?」


 インターセプターを眺めつつ、武器欄にもう一本インターセプターがあるのを見つけ、呼び出すと左手に粒子が集まり、インターセプターが呼び出された。


「……インターセプター二本って、一応予備の近接武器?」

「えぇ。 普段はわたくしはあまり使いませんのでパススロットの無駄遣いにしか思いませんが……」

「成る程。 ……所でさ、このフィンアーマーって周囲に動かせるのか?」


 そう言って浮いている四枚のフィンアーマーに指を指すと、頷きつつセシリアは答えた。


「勿論ですわ。 初期位置は基本的に射撃の邪魔にならないように配置されてますが、機体周囲三メートル範囲なら自由に動かせますわよ?」

「ふむふむ。 なら後はブルー・ティアーズか……」


 そう言って四基射出するも、やはりコントロールが難しく精々二基が限界だと感じた。


「……しかし、こうやって使ってみて分かるがよく扱えるよな? ……尊敬するよ、本当に」

「え? ……あ、ありがとうございます……♪」


 素直な俺の言葉に驚きつつも、照れたセシリアは少し表情を見られないように横に背ける。


「誰だって思うさ。 あんな狭いアリーナで中・遠距離型のIS使って戦えるのだから。 ……勝敗は奮わなくても、代表候補生の中では美冬と同じA+だもんな、セシリア」

「え、えぇ……。 …………」


 勝ち数が多くないのを気にしたのか、少しセシリアの表情に陰りが落ちた。


「……セシリア。 もう落ち込んではないと思うがあまり気負うなよ? ……負けて初めて知る事もある。 常勝無敗の人間なんてそうそう居る訳じゃないんだ。 ……それに、俺の知るセシリア・オルコットはこの程度の壁で躓く人間じゃない。 そうだろ?」

「……ヒルト……さん」

「仮にセシリアが何度も躓いても、その時は俺が側で共に歩んでいくさ」


 ニッと笑顔でそう言うと、セシリアは頷き、満面の笑みで応える。


「えぇ! その時は、よろしくお願いいたしますわね、ヒルトさん♪」

「ああ。 ……じゃあ行ってくる。 参考になるかはわからないが、何かのきっかけにぐらいはなるようにするさ、これが」


 そうセシリアに言い、ピット口へ向かうと――。


「ご武運を……ヒルトさん」

「あぁ」


 背中で彼女の言葉を受け、腕を掲げて俺はピット口内へと移動した。

 ピット口内に入ると、不意に語りかけてくる声が聞こえてくる。


『初めましてヒルト様。 わたくしの名前はティアです。 今後とも、セシリア共々よろしくお願いいたします』


 そんな謎の声に疑問符を浮かべていたが、直ぐ様誰だかわかった。

 直接語りかけてくる様なこの感じはムラクモと同じで――。


『あぁ。 ブルー・ティアーズのコアだな。 ……ティアーズだからティア?』

『えぇ。 ふふっ、ムラクモ様には羨ましがられますわ、女の子らしい名前だと』

『……そういや、あいつの名前は女の子じゃないよな。 何か別の呼び名でも考えてやった方がいいかもしれない』

『そうですわね。 ……ヒルト様、今回の模擬戦、わたくしがお力を貸すことは出来ませんが、見守っていますので頑張ってくださいね? ……相手との相性は悪くても、貴方なら大丈夫だと思いますから……』


 そんな優しげな声が聞こえなくなると共に、カタパルトに脚部を接続する。

 ……俺なら出来るか……どんだけ期待背負わされるんだよ。

 苦笑しつつ、シグナルが点灯し、急加速後カタパルトから射出されて空へと躍り出る。

 武装はスターライトmkⅢを選択――粒子が集束し、両手で構えると一夏の元へと向かった。


――第三アリーナ中央――


「やっと来たな。 ……ブルー・ティアーズか。 選択を誤ったな、ヒルト。 昨日俺はセシリアに勝ってるんだぜ」


 飛翔し、規定位置に到着するとステータス画面を確認。

 楯無さんからは特に禁止にされた内容が無い――理由は簡単で、一夏に対してビーム兵器が有効打にならないのが一番だからだろう。

 それでも、パーソナライズorフィッティングは切れてるので従来の八割ぐらいの性能しか発揮出来ない。

 ……これは、やっぱり初っぱなから意外性にかけるかな。

 ごちゃごちゃと言う一夏を無視し、戦闘準備を整えていると、息を切らせながら観客席に入ってくる女子生徒――篠ノ之だ。

 ……何故だかわからないが、何となく篠ノ之の息を切らせて入ってくる姿を見るのがこれで四回目だと思うのは気のせいだろうか?

 ……気のせいだろう。

 そう思い、フィンアーマーの稼働を確かめているとシグナルが点灯。


「勝ちは貰うぜ、ヒルト! ヒルトに勝って、俺にはもう教えることは無いって、楯無さんに言ってやる!!」



 ……そんなこと、俺に言うなよ。

 ……どちらにせよ、負けるつもりが無いから一夏には楯無さんの教えを請わないといけないが。

 雪片を右手で持ち、左手は正面に翳した一夏。

 多分霞衣を展開しながらの接近戦主体で来るだろう――出鼻を挫くか。

 そう思い、スターライトmkⅢを構え直すとシグナル二つ目が点灯――それと共に、一夏がニヤリと笑うのを見逃さなかった。

 そして、三つ目のシグナルが点灯――ブザーがアリーナに響き渡ると共に一夏は――。


「うぉぉおおおッ!!」


 瞬時加速の体勢を取る一夏――だが、それよりも早くに前以てチャージを終わらせた俺の瞬時加速の方が速く、一夏に肉薄する。


「……ッ!?」


 フィンアーマー四枚を機体正面に重ねて展開し、瞬時加速そのままの勢いで体当たりをぶちかます。

 まさかいきなり体当たりを行うとも思わず、更に自分の瞬時加速よりも速くチャージを終えていた事に驚きの表情を隠せない一夏。

 シグナルが点灯した時点で、チャージ出来る物はチャージしても構わないと、かつて山田先生の授業で言っていた。

 ライフルのチャージ然り瞬時加速然り――溜めたまま、戦闘を行ってここぞという時に使用するも良し、または今回みたいにいきなり瞬時加速での体当たりに使うも良しと――。


 激しく当たり散らせた一夏は、大きく体勢を崩す。

 それと同時にブルー・ティアーズ四基射出――二基は肩付近に停止させ、固定砲台に――残り二基はコントロールを行いながら十字砲火が可能な位置に展開しつつ、スターライトmkⅢで狙う。

 マーカーが白式をロックオンすると同時に、出力を絞ったスターライトmkⅢによる三連射撃。

 粒子残光が尾を引き、白式に迫る――だが。


「無駄だぜッ!」


 体勢を整えた一夏は直ぐ様前面に霞衣を展開――ビーム三連射は、霞衣の膜に阻まれ、弾け跳ぶ。

 それでも構わず、出力を絞ったライフル射撃を続け、注意を俺へと向けさせる。


「俺にはビームは通用しないぜ! ハアァァアアッ!!」


 瞬時加速のチャージを終えた一夏は、前面に霞衣を張りつつ迫る。

 ――やるならここだと思い、アリーナに展開した二基のブルー・ティアーズに射撃命令を行う。

 命令を受信した二基の砲口が光を放ち、一夏の背後を狙うように射撃――腰と脚部に直撃を浴びせた。


「ぐあッ!? あんなところに……!」


 瞬時加速で迫っていた一夏は、急停止すると共に俺に背中を向けて月穿を一基のブルー・ティアーズ目掛けて射撃。

 その一基には、上昇の命令を送ると、俺は再度背中を見せた一夏に対して瞬時加速で肉薄――。


「……ッ! 接近戦は俺の方に分があるんだぜ、ヒルトッ!」


 月穿を放ち、肉薄した俺に気づくと雪羅をクローモードで起動する一夏。

 放たれた荷電粒子砲は、一基のブルー・ティアーズが【居た地点】に当たり、大きく砂塵を巻き上げるも既に回避行動を取っていたブルー・ティアーズは無傷で命令を待っていた。

 肉薄する俺を迎撃しようと、クローモードによる突きの一撃――それを潜り抜け、腹部にスターライトmkⅢの砲口を押し付けるとトリガーを引き続ける。

 零距離射撃なら、霞衣も意味を為さない――引かれ続けるトリガーに呼応する様に放たれるビーム射撃は、確実に一夏のシールドエネルギーを少量ずつ減らしていく。


「クッ……されるがままだと思うなよ、ヒルトッ!」


 構えた雪片で、直接スターライトmkⅢを破壊しようとするのを見て直ぐ様粒子化――光となって消えていく。

 空を斬り、隙を見せた一夏――だが、今から武装を呼び出すと時間が掛かるため格闘戦に切り替える。

 全身のスラスターを巧みに使ったサマーソルトが一夏の顎に直撃、視界が反転する中苦痛の表情を浮かべた一夏に腹部へと背部ブースター及びスラスターを噴かせた強烈な蹴りの一撃を食らわせる。

 加速した一撃は、見事にクリティカルヒットしたのかそのまま重力に引かれて地上へと墜落していく一夏。

 身体は跳ね、ゴロゴロと横に転がる一夏への追撃の一撃。

 腰部に備わったミサイル型のビットを射出――コントロールは行わず、まるでロケット砲の様に真っ直ぐと一夏の元へと突き進む。

 更に時間差攻撃で命令を待っていたブルー・ティアーズ二基に射撃命令――砲口が光を放つと直ぐ様ビーム射撃が行われた。

 まずは真っ直ぐと突き進んだミサイル二発の直撃――爆発に飲まれた所を追撃のビーム射撃が追い討ちをかける。

 轟音が鳴り響き、粉塵と爆煙が舞うアリーナ地表を上空から眺める俺は、スターライトmkⅢを呼び出していた。

 ダメージは負わせたが、まだブザーがならない所を見ると試合は終わっていない。

 上空から徐々に地上へと降りていく俺――すると、ハイパーセンサーが反応すると共に爆煙から白式が飛び抜けてくる。


「もらったぜ、ヒルトッ!!」


 光刃を纏った雪片の突き攻撃――迫る一夏に対して俺は。


「……ッ!!」


 フィンアーマー一枚を三メートル正面に展開――。

 一瞬一夏の視界を覆う事に成功し、構えたスターライトmkⅢの最大出力による射撃――。

 邪魔だと言わんばかりに手で押し退けたフィンアーマーは地上へと落下――だが、一夏の目の前に迫っていたのはスターライトmkⅢの最大出力まで高めたビーム射撃。

 霞衣を展開しようとしても時は既に遅く、直撃を浴びて更に大きくシールドエネルギーを減少させた一夏――。


「クッ!? ……セシリアと勝手が違う……ッ!」


 一人でごちり体勢を整えると霞衣を展開させ、接近する。

 スターライトmkⅢを手放し、粒子となって四散――両手には新たにインターセプターを二本、正面に構えて背部ブースターを点火、加速――。

 間合いが迫り、雪片の袈裟斬りを逆手に持った左手のインターセプターで受け止めると、もう一本のショートブレードで絶対防御を発動させる生身部分へと突き立てる。


「クッ……! やられるかよォォォッ!!」


 負けまいと叫ぶ一夏は、雪片に力を込めつつ、雪羅をブレードモードに切り替え、下から逆袈裟斬りを仕掛けてくる。

 肩に待機していた残ったブルー・ティアーズ二基に命令を送り、交差するように砲口から閃光が走る。

 雪片を握っていた手は、その衝撃で手放し、雪羅のブレードモードも、手を大きく弾かれてエネルギーが四散――一旦体当たりで一夏との距離を離すと同時に残ったフィンアーマーを巧みに使い、連続打撃が強襲する。

 周囲三メートルまで動かせるという事は、発想を変えればフィンアーマーでも打撃攻撃が行えるということ――。

 ダメージは小さくとも、質量によって体勢を崩させる事も可能だ。

 フィンアーマーの連続打撃による衝撃に耐えきれず、体勢を崩した一夏に、アリーナに待機させていた二基のブルー・ティアーズに再度命令を送る。

 命令を受信した二基は、再度砲口を光らせ、大気を焼き払いながら白式目掛けて突き進み、ウィング・スラスターに直撃、だが当たりどころはそれほど良く無く、小さく白煙をあげるだけにとどまった。


「クッ……忘れてた訳じゃなかったけど……!!」

「悪いな一夏。 これで終幕ってな、これがァァァッ!!」

「クッ……!?」


 再度ブレードモードで起動するも、光刃は形成された瞬間に四散――それは、一夏のエネルギー切れを示していた。

 接近し、腹部及び腕部装甲の隙間を狙い、二本のインターセプターを突き立て、絶対防御を発動させるとそこで試合終了の合図が鳴り響いた。


「くそっ……! 負けた……ッ!!」


 奥歯を噛み締めるような悔しそうな表情を見せる一夏。


「……お前、ちょっとセシリアに勝ったからって浮かれすぎ。 ……とりあえず、勝ったからな」

「………………」


 俯く一夏をその場に残し、俺はピットへと戻っていった。

 ……やっぱり、ブルー・ティアーズの操作は難しいな……。 
 

 
後書き
これで四通り終了です

疲れた

黒呪島が呼んでる気がする…… 
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