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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第293話】

 
前書き
うーん

多少陳腐化した気がする 

 
――1025室内――


 とりあえず部屋へと入り、楯無さんが一夏の包みを取ると中からはいなり寿司が現れ、現在俺以外が食べてる最中――。


「ヒルト君? キミは食べないの?」

「……俺が食べると篠ノ之に睨まれますからね。 遠慮します」

「………………」


 そう俺が言うのを見ると、何かを言いたそうな篠ノ之の視線が気になり、俺も見るのだがふぃっと横に逸らされた。


「……美味いな。 何か昔を思い出す味だな。 なあ箒?」

「あ、あぁ……。 …………」

「……?」


 返事が曖昧な箒に疑問符を浮かべた一夏だが、気にする事なくいなり寿司を頬張る――と。


「さて、せっかく織斑君も箒ちゃんも居ることだし。 君たち二人にはちゃんと現実を知ってもらわなきゃ……ね?」


 絶やさない笑顔だが、言葉に威圧感を感じて萎縮する二人――。


「……まず、君たち二人は今は機体性能、及び単一仕様の能力に助けられてるって自覚はあるかな? ……っても、箒ちゃんは単一仕様、夏の臨海学校以降から発現しないんだったわね?」

「…………はぃ」


 小さな声と共に頷く篠ノ之――だが一夏は――。


「別に機体性能に助けられてる訳じゃ――」

「ん?」

「……何でもないです」


 有無を言わさない笑顔を向ける楯無さんに、押し黙る一夏――。


「話は戻すとして、発現しないのには幾つか理由の候補あると私は思ってます。 まず一つ目が貴女自身の増長――専用機を手にした事が嬉しいのはわかるわよ? ……でも、貴女にはまだその実力は備わっていない。 紅椿自身がそう感じてる説が一つ目の理由よ」

「…………ッ」


 口調は穏やかなものの、言葉には冷たさを感じる楯無さん。

 篠ノ之も自覚してるのか、ただ反論しても仕方ないのかは分からないが黙って聞いていた。


「二つ目の理由は――まあこれはその発現した時の気持ちを再現出来ないって事かな。 ……今は、君自身の増長に紅椿が応えてくれないと、私は思う」

「…………」


 厳しい言葉だが、正直篠ノ之にはいい薬になるだろうと俺は思う。


「……まあ、箒ちゃんが増長したのには織斑君、キミが箒ちゃんを甘やかせたのにも原因があるのよ?」

「な、何で俺にも原因があるのですかッ!?」


 一夏自身が気付いてないのか、真っ先に反論するが――。


「簡単よ? キミが箒ちゃんばかりに構ってるからよ? ――勿論、幼なじみとして彼女が気になるのは分かります。 だけど……そうしてキミ自身が箒ちゃんにばかり構うことになった結果、箒ちゃんは貴方に甘え、尚且つ貴方自身も紅椿受領を認めた結果がこうなったと報告を受けています」


 ……報告って、まさかのほほんさんからかな?

 ……ていうか、のほほんさんしか思い当たらないが。


「だ、だけど箒は俺が――」

「その結果、キミ自身が一人の女の子の気持ちを変えさせたのよ。 ……心当たり、あるでしょ? ないって言うなら馬鹿確定。 知っていてそれを行っていたとしたら馬鹿丸出し……ね」


 楯無さんが言ってるのってもしかして――。


「……別に、誰の気持ちも変化させてないと思いますが?」


 まるで心当たりが無いといった感じに答える一夏に、楯無さんは可哀想な目で一夏を一瞥――。


「気付いてない以上、馬鹿確定ね。 ……多分、近々その子から何か言われると思うから、キミ自身覚悟はしてなさい」

「……はぁ」


 本当に誰の事かが分かって無いように見受けられる一夏。

 ……てか、楯無さんの情報網の凄さにビビるな。

 ……楯無さんが言ってるあの子って、多分――。


「ともかく、キミはあまり箒ちゃんを甘やかさない事。 箒ちゃんも、織斑君に依存しすぎない様に、良いわね? 良くなくても、そうしてもらわないとあなた達がダメになるだけです」


 何をどう明確にダメになるかを言わない辺りは、意図として自分達に気づいてもらいたいっていう楯無さんなりの気遣いだと思う。

 勿論、これは俺自身の勝手な見解であって、楯無さん自身の考えは俺には分からない。


「……とりあえず、この話はここまでとして箒ちゃん? 貴女自身の技術向上の為にも、ヒルト君と織斑君の二人とは別々だけど私がコーチを引き受けようと思うのだけどどうかしら?」

「わ、たし……は……」


 言葉を濁す篠ノ之に、瞼を閉じてゆっくり口を開く楯無さん。


「その気があるなら、明日第三アリーナに午後の四時までに来なさい。 お姉さん、待ってるから」

「…………」


 返事は無いが、言いたい事を言った楯無さんは次に一夏へと視線を移す。


「織斑君。 訓練が厳しいのは分かります。 ……だけど、それはキミ自身がこれまでの訓練に甘えてきた結果です。 ……現に、ヒルト君は根をあげなかったでしょ?」

「で、でもヒルトは四月からやってて慣れて――」

「えぇ。 それは当初からヒルト君が自分で決めた選択。 楽なオート操作を選べた筈なのに、選ばなかったのはヒルト君の意思の強さよ」


 ……端から聞くと、何ともこそばゆい感覚に襲われるな……。


「楯無さん。 俺の話は良いですからとりあえず進めましょう?」

「……もぅ。 キミは謙遜し過ぎ。 ……まあ良いわ。 ……ともかく、これから先はもっと厳しくなります。 ……お姉さんに弱いと言われたこと、覚えてるかしら?」

「…………ッ」


 流石に二日前の事だからか、覚えていた一夏は奥歯を噛み締めていた。


「……言われて腹が立つ思いをしたでしょ? ……少しはお姉さんを見返そう、もう弱いと言わせないと思うのなら根を上げずに着いてきなさい。 ……でも、貴方がキツいと思ったならもう来なくても構わないわよ? ……貴方が休み時間欲しいと言えば、それだけ遅れますしヒルト君の訓練も滞るし」

「……俺は……」

「……明日一日考えなさいな。 また明後日から訓練再開します。 ……さて、難しい話はここまでにして、いなり寿司をいただきましょうか♪」


 さっきまでの張り詰めた様な空気は一瞬にして変わる。

 そんな楯無さんはいなり寿司をパクパクと頬張り、その数をどんどん減らしていった。

 多少苦笑を溢しながらも、俺はそんな彼女の食べる姿を眺めていた――。 
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