| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

【第296話】

 翌日。


「それでは、皆さん中間テストを頑張ってくださいね」


 そんな山田先生の声に、項垂れ、机に突っ伏す俺。

 ……中間テストとか気分が萎える。

 四時限目の一般科目が終わるや、教室内はいつも通り女子の声で騒々しくなる。

 因みに今日は一時限目からずっと一般科目というIS学園では珍しい構成で、午後はいつも通りのIS授業――。

 後、一般科目に関しては日本人と外国人に分かれる為、基本クラスには黒髪の子が多い。

 俺なんか一人銀髪だからやたら目立つ――理央も赤いメッシュが入ってるとはいえ、基本黒髪。

 ……まあ別に困る訳じゃないからいいんだが。

 項垂れつつ、教科書を直してると――。


「織斑くん、学食行こうよ」

「たまには私たちと食べようよー」

「そうそう。 篠ノ之さんばかり独占はずるい」

「な、何を言うか! これは幼なじみとしての当然の権利だ! 故に、正当だ! 行くぞ、一夏」

「「「ずるいーッ!!」」」


 そんな喧しい声と共に篠ノ之に連れ去られる一夏。

 それを追う女子一同を眺めつつ、クラスにはポツポツと一夏に興味の無い子が残っていた。


「……昼は何食べるかな……」


 何を食べるかを空想していると――。


「お兄ちゃん♪」

「ヒルト、お腹空いたね」


 美冬と未来がやって来た。

 何やら後ろに物を隠してるような――?


「あぁ、だから何を食べようか空想――」

「ふふっ。 空想だけじゃお腹は膨れないよ?」

「そうそう。 だ・か・ら♪ はい、お兄ちゃん♪」


 そう言って二人して出したのは包まれていたお弁当箱だった。

 しかもサイズが大きめ――と。


「よ、よぉヒルト。 美冬も未来も、授業お疲れ」

「おー! 私も疲れたぞー」


 理央&玲が二人してやって来た。

 しかも、美冬や未来と同じように後ろに何かを隠しながら――。


「理央、玲、二人もお疲れ様」

「うん。 ……二人はお兄ちゃんに何か用が……?」


 美冬が首を傾けながら訊くと、軽く咳払いしがら――。


「お、おぅ。 ……今日はたまたま早起きしてな。 ち、ちょっと弁当を作ってみたんだよ、なあ玲?」

「おー。 早起きしたー。 気合い入れて作ったー! だからヒルトー、これ食べろー」


 そう言って二人もまた弁当を俺に渡してくる。

 美冬も未来も唖然としてると今度は――。


「ヒルト君。 皆も授業お疲れ様」

「やっほー。 ひーくんお疲れ~。 お腹空いたね~」


 今度は鷹月さんとのほほんさんがやって来た。

 それも、のほほんさんは弁当を掲げているため丸見えに――鷹月さんも、それに苦笑しながら――。


「ヒルト君、良かったらお弁当食べてくれるかな? ほ、ほら……この間のお礼にって思って……」


 はにかむような笑顔を見せ、弁当を手渡す鷹月さん。


「えへへ~。 のほほんさんもちょぉちょぉちょぉ早起きして、お姉ちゃんに手伝ってもらったんだよぉ~」


 そう言ってのほほんさんも掲げていた弁当を手渡してくる――これで弁当六つ……。


「……お兄ちゃん、モテモテだね~」

「……ヒルト。 気のせいかな? もしかしてライバル増えてる?」


 二人してジト目で俺を見てくると――。


「べ、別に俺はそんなつもりじゃないって! ひ、ヒルトには日頃世話になってるからな、なあ玲?」

「おー? 確かに世話になったー」


 慌てた様子で否定する理央に、マイペースを貫く玲。


「わ、私はヒルト君にはいつも重たいものを持ってもらってるし……」

「ひーくんにはこの前ケーキをもらったからそのお返し~」


 手を前で組み、指を弄ぶ鷹月さん。

 のほほんさんは、万歳しながら咲き誇る様な笑顔を見せていた――と。


「ヒルトさん、まだ教室にいらしたのですわね?」

「ふふん。 まだ教室に居るなんて殊勝な心構えじゃない?」

「あはは……。 で、でもここに居たなら無駄にならなくて済んだね、ラウラ?」

「うむ。 せっかく早起きして作ったのだ。 無駄にされては堪らん」


 ――と、別の教室で受けていた代表候補生の四人がやって来た。

 それも、まさかの全員が弁当箱手渡し――合計十個の弁当……。


「……随分とヒルトさんの机にはお弁当箱が並んでらっしゃいますが……」

「わぁっ……凄い数だね……」

「……何故こうも弁当があるのだ、ヒルト?」

「……もしかして、これあんたたちが?」


 鈴音の指摘に、一様に頷く美冬たち六人――と、教室内に響き渡る声。


「お邪魔します」


 声の主は楯無さんで、その手には何やら重箱五段の様な包みに更には上に焼きそばパンが乗っていた。


「たまには私も教室で食べようと思ってね♪ ヒルト君、織斑君の姿が見えないけど――」

「あいつなら篠ノ之にさらわれましたよ」

「そう。 焼きそばパンが無駄になっちゃうかな?」


 言いながら机に重箱を乗せ、周囲一帯にある机を重ね合わせ、その場に居た人数分の椅子をてきぱきと用意した。


「わあ……楯無さん手際良い……」

「うふふ、美冬ちゃんに褒められちゃうとお姉さん、悪い気がしないな♪ 本音ちゃん、包みを開いてくれるかしら?」

「はーい~。 てひひ……いい香り~」


 重箱の包みを取り、お弁当を広げていくと――。


「す、凄い……」

「むぅ……」

「こ、これ超豪華じゃん……。 ……俺の弁当、霞むじゃん……」


 シャル、ラウラ、理央と次々に声をあげるほど、楯無さんの弁当は豪華な中身となっていた。

 ……伊勢海老にホタテ貝、厚焼き玉子等々材料自体も立派な物を――。


「……わ、わたくしだって負けませんわッ!」


 そう言ってセシリアは自身が作った弁当を開くと――真っ白なご飯の上に、米と海苔でかかれていた弁当を出した。

 ……いや、まあ当初の弁当よりかは見た目は地味だが、彼女も努力してるのは知ってるので――。


「ふふん。 アタシはもちろんこれよッ!」


 まるで効果音がなったかのように取りだし、開けた中身は酢豚が入ってる――。

 ……鈴音って、何だか酢豚ばかり作ってる印象があるな。

 肉じゃがも作ってたが。


「ぼ、僕も作ったんだよ? ヒルト、ほらっ」


 シャルも負けじと弁当を開く――中身はシンプルで、ご飯にタコさんウインナーにウサギリンゴと動物オンパレードだった。


「ふむ。 私はこのような物を作ってみたぞ」


 そう言ったラウラの弁当には、何と漫画みたいに焼かれたお肉が――。

 ……どうすればそんな漫画みたいな肉を焼けるのだろうか。


「ヒルト。 私のはこれだよ」


 少し大きめの弁当を開くと、中には色とりどりの野菜や焼き魚等がバランスよく入っていた。

 ご飯に関しては十六穀米だ。


「お兄ちゃん、私も頑張って作ったよ♪」


 笑顔で弁当を開くと、中は焼き飯にコロッケ、白身魚のフライにポテトサラダが入っている。


「お、俺はこれだ!」


 勢いよく開かれた弁当――というか、中身がどんぶり物みたいな内容だった。

 因みに親子丼だ。

 玉子には刻み海苔がかけられていて、妙に食欲をそそる。


「おー? 私も作ったー」


 開いた二段重ねの弁当の下はご飯で、上はまさかのすき焼きという仕様――ある意味凄い。


「わ、私はこれです」


 ゆっくりと包みを開くと、中にはチーズハンバーグと刻まれた野菜にドレッシングをかけた――店で出しても遜色のない弁当の中身だった。


「皆ちょぉ美味しそう~。 のほほんさんのはこれ~」


 開いた中身はチキン竜田っぽいおかずに、大根おろしがかけられていた。


「……皆、なかなかやるじゃない? ヒルト君は幸せ者ね~、綺麗な子達にこんなに作ってもらって」

「あ、あはははは……」


 乾いた笑いが出る――と、シャルが――。


「……何で栗原さんや宇崎さん、鷹月さんに布仏さんまでヒルトに弁当を?」


 まるで牽制するかのような言葉に聞こえるのは気のせいだろうか……?


「せ、世話になったお礼だって! た、他意何かねぇよッ!」

「おー。 シャルロットー、ヤキモチかー?」

「べ、別に僕はヤキモチ何か……」


 玲に指摘され、慌てて視線を逸らし、俺をジト目で見てくるシャルの視線が語るのは――ライバル、増えてない?――という風に訴えかけてる眼差しだった。


「わ、私もヒルト君にはいつもお世話になってるから……。 す、好きとかじゃないよ?」

「てひひ~。 のほほんさんはひーくんの優しいところ好き~」

「「「……!?」」」


 好きという言葉に、いやに反応する一同――と、まるでプレッシャーを与えてくるような突き刺さる複数の視線に、背中には冷や汗が流れ出る。


「うふふ。 ヒルト君ってば、すみにおけないわね♪」


 そんな俺の様子を楽しげに見る楯無さん――だが、俺の心中は穏やかではない。


「と、とにかく早く食べないか? も、もう腹が減って背中と腹がくっつきそうだよ……」

「それもそうですわね。 ……では、頂きます」


 セシリアがそう言うと、一同全員が頂きますと声を合わせ、自分の弁当を取り出した。


「ヒルト君。 ちょっとこっち向いてくれるかしら?」

「はい? ――んぐっ?」


 開いた口に詰め込まれたのは箸で摘まんだご飯で――。

 冷めてはいたものの、ご飯自体は美味しく、そのまま飲み込む――と、それを見ていた一同が――。


「……お兄ちゃん、美冬も食べさせてあげるね? ほら、楯無さんだけズルいし――ねぇ、皆?」


 そう美冬が言うや、一同全員の瞳がキランッと光るのを見逃さなかった。


「そうですわ! ……ちゃんと、わたくしのも食べてもらわないと!」


 そう言ってセシリアは箸でご飯を摘まみ、口元へと運んでくる。


「あ! セシリア抜け駆けズルいわよ! ……ほ、ほらっ、口を開けなさいよッ!」


 手で受け皿をつくり、酢豚を口元に運ぶ鈴音。


「そういう鈴だって……! ……も、もちろん、僕のも食べてよね? ヒルトの為に頑張って作ったんだから……」


 シャルも同じく受け皿を作り、タコさんウインナーを箸で摘まみ、俺の口元へ――。


「ヒルト、私のも食べてもらうぞ」


 そう言ってアルミホイルで巻かれた部分を手掴みで取り、まるごと口元に運ぶラウラ――流石にこれを一口は無理だろう。


「じゃあ私は――これかな? はい、あーんして?」


 未来はきんぴらごぼうを摘まみ、俺の口元へと運んでくる。


「じゃあじゃあ……。 はい、お兄ちゃん♪」


 嬉しそうな表情を浮かべ、切り分けたコロッケを箸で摘まむ美冬も、皆と同じように口元へと運んでくる。


「……し、仕方ないから俺も食べさせてやるよ。 ……は、恥ずかしいんだからなっ、バカ……」


 照れてるのか、顔を赤くしながら親子丼を箸で摘まむ理央。


「おー? なら私も食べさせてやるー。 ヒルト食えー」


 すき焼きを箸で摘まみ、唇に押し当ててくる玲――冷めてるが、何気に出汁は美味いな。


「じ、じゃあ私も……。 はい、ヒルト君♪」


 箸でハンバーグを切り分け、少し照れながら口元に運んできた鷹月さん。


「のほほんさんも食べさせてあげるね~。 ひーくん~、どうぞ~」


 最後にのほほんさんがチキン竜田を摘まみ、運んできた――。

 ……これだけ一斉に来られると変な威圧感しか感じない……。


「うふふ。 ヒルト君ってば、モテモテの人気者ね♪」


 他人事の様に言う楯無さんに呪詛の言葉を吐きつつ、どうしたものかと悩むランチタイムの一時だった……。 
 

 
後書き
聞こえる聞こえる

ヒルト爆発しろとの声が

爆発はしないッ

さて、もう知ってる方も居るかもですが、改めて4月25日にIS九巻の発売が決定だとか

あらすじは全く進むことのないエンドレスイズルシステムっぽく、巨星、堕つという含みのあるサブタイトルだが何が落ちるのやら┐('~`;)┌

仮に織斑千冬が死ぬにしても、あの作者がそんな内容をかけるか微妙ですし

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧