北愛の受難
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第一話 少女誘拐
暗闇の公園の中を、赤いポニーテールを靡かせて、
一人の女性が駆け抜けていく。
刻は既に午前2時。
もし他に通行人がいたとしたら、少々奇妙な光景に見えたかも知れない。
なぜなら彼女は、年齢16才、服装は、赤いゴスロリ。
どう見ても、こんな姿で若い女性が、
真夜中の公園を走っていくのは、普通ありえない光景であろう。
しかし、その女性自身は必死で走っている。
どうやら、どこからか逃げ出してきたらしい。
やがて、街灯の全くない木陰に向かって、滑り込んでいった。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
その女性は、息も絶え絶えという感じで立ち止まると、
木にもたれ掛かった。
彼女の名は岐阜。令制国でいえば美濃国だ。
美濃の呼吸が落ち着いてきた時だった。
「そこを動くなっ!」
突然、美濃のすぐそばから男性の太い声が響いた。
驚いた美濃はすぐに声の方に振り返った。
その途端に、美濃の腕が何者かに取り押さえられた。
その男は頭の上から爪先まで全身を漆黒の服で覆い尽くしており、
姿が良く分からない。
「こんな所に隠れて、無事に逃げられたと思ったんですか?甘いなぁ」
美濃は恐怖の余り、叫び声を上げようと口を開いたものの、
口を何か布のような物で覆い尽くされてしまい、声が出ない。
「あまり騒がないで下さいよ。面倒なことにしたくなければね・・・」
男はニヤリと笑った。
布には何かの薬品が染みこませてあるらしく、
強烈な刺激臭があり、美濃はそのまま気を失ってしまった。
男はそのまま美濃を抱き上げると、その場を後にして、
闇の中へ姿を消していった。
実はこの男は、暴力団の一員であり、
数時間前この公園の陰で、関係者に拳銃の密売を行っていたところ、
近くを美濃が通りかかってしまい、逃げ出した美濃をここまで追い掛けてきたのであった。
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