IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第496話】
前書き
4月初更新( ´艸`)
無人機襲撃事件の翌日の朝、あまりいい夢を見た感じがしない俺は洗面所で顔を洗い、鏡に写った自分の顔を見る。
いつもとかわりない、青みがかった白銀の髪に紅い眼の俺の顔が写っていた――夢の内容が断片的にしか思い出せないが、一夏と対峙していた気がする。
濡れた顔をタオルで拭うと俺はそのまま洗面所を出て、ベッドの上に放置された携帯を手にとった。
以前貰ったホテルの食事券、大会という事もあって誰と行くかを未だに決めていなかった俺。
いい評判はあまり聞かないホテルだが、貰って行かないのも失礼だと思い、おもむろに携帯に登録されていたアドレス帳を眺める。
男友達の連絡先が圧倒的多数の中、IS学園に入ってから徐々に増えてきてる女性の連絡先やアドレスを見――。
「……気付いたら、こんなに女の子と番号やアドレス交換してたんだな」
昔からは考えられない状況に、思わず苦笑を漏らす俺、左手でテレビのリモコンを操ると室内に備わっていた投影ディスプレイにニュース番組が映し出された。
昨日の襲撃事件がトップニュースだろうと視線を移すのだが、一向にIS学園襲撃事件のニュースが流されない。
芸能人の離婚話や、政治家の失態、海外情勢とIS関連企業のニュースを少しやっただけだった。
「……どういうことだ?」
その異様な感じが、俺に強烈な違和感を与えた――その時、手に握っていた携帯が鳴り始めてビクッと身震いしてしまう。
画面を覗きこむと、其処には未来と映し出されている。
考えるのは後にし、俺は電話をとると――。
『あ、ヒルト? 起こしちゃった……かな?』
「ん? もう起きてたから大丈夫だぞ? おはよう未来」
そう返事を返すと、未来の声色が明るくなる。
『良かった。 ……おはよう、ヒルト。 んとね、さっき山田先生が来たんだけどね、昨日の襲撃事件に関わった全員が今日取り調べしないといけないらしいから、早めにヒルトに連絡しようと思って』
「そっか、教えてくれてありがとうな、未来」
『ううん、お、幼なじみなんだし、これぐらいは……ね?』
若干口ごもる未来に、俺は僅かに微笑を溢すと前に貰った食事券の話をすることにした、未来から連絡があったのも何かの運命か必然的なものがあったのかもしれない。
「未来、今日の夜って暇か?」
『え? き、急にどうしたの? と、特に用事はないけど……さ』
「そっか、ならさ、以前取材で貰った食事券で一緒に食事しないか?」
そう告げると暫くの沈黙の後、未来は恐る恐る聞き返してきた。
『……私で、いい、の……?』
「ああ、未来さえ良ければだが」
『……うーん、ど、どうしよっかなぁ……?』
返事からすると肯定的だと思ったのだが、未来本人は決めあぐねているように感じた。
「無理なら無理で良いぞ?」
そう告げた矢先、未来の慌てた声が聞こえてきた。
『わぁあああっ! 行くっ! 行くからっ! ……うぅ、少しはヒルトも慌てなさいよ……バカ……』
「んじゃ、OKって事だな。 食事券は後で渡すよ、時間もそれに載ってるからもし先に着いたなら中で待ってて良いからな」
『う、うん。 ……楽しみにしてるね。 ……じ、じゃあまた後でね』
そう言い、未来は電話を切る――またおもむろに視線をディスプレイに移すのだが既にニュースは終わっていて旅番組が始まっていたのでリモコンで電源を切ると、投影ディスプレイも切れた。
トップニュースになると思っていた襲撃事件がニュースでやってない違和感――モヤモヤした気持ちが駆け巡る中、ドアをノックする音が響き渡る。
誰だろうと思いつつ、俺はその場から声をかけた。
「はーい、誰ですか?」
「はい、私です!」
返ってきた返答は【はい、私ですさん】というらしい――ってのは冗談で、声質から山田先生だということは明白だった。
ドアを開けると、案の定山田先生が立っていた――胸元の開いたいつもの服装、下手すると誘っているようにも感じるのでもう少し自重してもらいたいのだが、あまりつっこむのも野暮という事で放置する。
「有坂君、朝食一時間後から取り調べをします!」
さっき未来が言っていた事の様だ、取り敢えず今は山田先生の話に耳を傾ける。
「取り調べを行う場所についてですが、生徒指導室なので必ず来てくださいね? あ、勿論昨日の事での取り調べですからね! ヒルト君の素行とか調べる訳じゃないですからね!」
何かのフォローなのだろうか?
特に素行悪くしてるわけではないのでそれについては杞憂に過ぎない。
「わかってますよ山田先生、仮にそういった関係だと織斑先生が俺に言うはずですし」
「そ、それもそうですね。 ――では、朝食後ですから午前9時前には来てくださいね」
そう言い残すと、山田先生はスカートを翻し、小走りで走り去っていった。
その姿を見送る――と、何やら視線を感じるので振り向くと、一瞬視界に自販機の陰へと隠れる水色の髪の女性が映った気がした。
「……?」
気になった俺は、その自販機へと近付く――そこに居たのは狼狽した様子の簪だった。
「簪?」
「あ、あぅ……え、ぇと……えと……!」
更に狼狽する簪に、俺は首を傾げる、この時間帯に彼女が来る――というか、会いに来たこと自体が初めてだろう――まあ、俺に会いに来た訳じゃなかったら恥ずかしい勘違いになるが。
「す、少し、じ、時間、ある……!?」
「え? ……あぁ、大丈夫だぞ」
朝食も直ぐに食べ終えるし、俺自身も断る理由もなかったからそう答えると、安堵したのか簪は側にあるベンチに腰掛けた、手に持っていた紙袋を隣に置いて。
「ひ、ひ、ヒルト……っ。 か、体の方は大丈夫……?」
「体?」
昨日、戦闘が終わってから寝てる間に検査されたらしいが、体の何処にも切り傷はおろか青アザもなかったと聞かされた、レントゲンも撮って貰ったが骨にも異常はなかったとか。
「体は大丈夫だ、元々丈夫な方だしな。 簪はどうだ?」
「わ、わたしは、す、少し……痛い……かな? ……でも、へ、平気……っ」
「そうか。 今日は休みだし、取り調べ終わったらゆっくり休むんだぞ」
そう言うと此方を見て小さく頷いた簪、暫く俺と簪の間に沈黙が続く。
それに堪えきれない俺は、咄嗟に楯無さんの容体を聞いた。
「そういえば、楯無さんはどうだったんだ? 命に別状がないのは知ってるけど、詳しくは聞いてなかったからな」
「お、お姉ちゃんは……暫く、医療室で経過観察……」
経過観察ということは、まあ入院って事だろう、実際簪を庇ってかなりの深手を負っていたのだから。
一度様子を見に行こう――そうなると、何か差し入れを入れないとと思うのだが、彼女の趣味も知らなければ好きな果物も知らなかった。
「簪、楯無さんの趣味って何?」
「え? えっと……将棋、かな……」
「将棋か」
相手がいなくても出来るものなのだろうか、流石に出来なさそうなものを差し入れするのもダメな気がする。
そう考えていると、簪の大きな声が聞こえてきた。
「お、お姉ちゃんのことっ! き、気になるのっ?」
「え? 当たり前じゃん」
「ぁ……。 …………」
悲しそうに俯く簪に、首を傾げながら俺は言った。
「楯無さんの容体、気になるのは当たり前の事だし暫く入院するなら差し入れは当然だろ?」
「……え? 差し、入れ……?」
聞き返す簪に、小さく頷くと簪は安心したように胸を撫で下ろした。
一体何を勘違いしたのだろうか、疑問に思ってると簪は――。
「けん玉」
「ん? けん玉?」
「うん。 お姉ちゃん、けん玉を歌いながらずーっとやってるから……」
意外な楯無さんの趣味に面をくらいつつ、一つ気になった事を聞いてみた。
「じゃあ、逆に楯無さんに苦手なものってある? わりかしイメージ的には何でもこなしてるからさ、あの人」
「んと、編み物……かな?」
編み物――手先が器用そうなだけに、意外だった。
「一応私は……本、差し入れに持っていくから……」
「成る程、なら俺は今聞いた手芸セットを持っていこう」
ニヤリと表情を歪ませた俺に、簪は――。
「ヒルト……意地悪……」
「……ふふっ、別に意地悪じゃないさ。 苦手な事を克服するのも、人の成長には良いんだし。 まあそれでも苦手なものは苦手って人もいるがな、これが」
「ふふ……」
簪が笑みを溢す、それを見た俺もニッと笑って見せた。
「あ、ひ、ヒルト……、 こ、これ……」
そう言いながら隣に置いた紙袋を差し出してくる簪、紙袋には何処かのショップ名が書かれていた。
紙袋を受け取る俺に、簪は――。
「み、見て……中……」
「あぁ」
言われて紙袋を覗き込むと、其処には様々なアニメのDVDがあった。
「へえ、懐かしいのもあるんだな、これは確か昔見たことあるやつだよ」
「ど、どれ?」
そう言って立ち上がる簪の顔が近付いてくる、一瞬ドキッとした俺は――。
「か、簪、顔が近いんだが……」
「え……? ――~~~~~~~っ」
そう指摘するとぱちくりさせ何度か瞬きした後に、簪は顔を真っ赤にさせて飛び退く様に離れた。
「ご、ごめん……なさぃ、ヒルト……」
「いや、気にするなよ。 ちょっと顔が近くてドキッとしただけだからな、わははははっ」
笑って誤魔化す俺に、簪は小さく言葉を漏らす。
「私にも……まだ、チャンス……ぁる、かも……」
「……?」
何のチャンスだろう――そう考えながら、紙袋の中身が崩れていたので整理をし始める。
「簪って、好きなんだな?」
「えっ……」
何故か驚いた様な声をあげる簪、疑問に思うも中身を整理しながらチラチラ見ることしか出来なかった。
「う、うん……。 好き……、最近……き……づいた……」
「最近?」
そのわりには結構年期のあるアニメがある気がするが、まあ最近好きになり始めた作品もあるって事だろう。
そう思いながら、整理を終えた俺は簪を見ると、顔を真っ赤にして俯き、スカートの裾をぎゅっと握っていた。
「あ、の……」
「……?」
簪が何度も深呼吸をし始める、そして真っ赤になった顔をあげると突然大声で――。
「だっ……大好き……!」
そんな大声に、野次馬が集まるが如く部屋から様子を見に出てくる一年生生徒達。
「そ、それじゃ……!」
人が集まる前に、簪は慌ててその場を後にした。
残された俺は、頬を指で掻くと真っ先に出てきた女子が俺に聞いてきた。
「ヒルトくん、さっき大好きって聞こえてきたんだけど……更識さんに告白されたの?」
「え? ……違うんじゃないかな? 彼女が貸してくれた作品が大好きって意味だと思うんだが」
「そ、そうなんだ。 朝から聞こえちゃったからちょっとびっくりしちゃったよ、えへへ」
そうはにかむ彼女、続々女子生徒が集まる中、俺は走り去っていった簪の後ろ姿をただただ眺めるだけだった。
後書き
過労で仕事を二回休んだ
流石に熱が40度近く出て体の節々が痛くなり、目眩に頭痛に吐き気してたら流石にヤバいというか、過労死の危険サイン出すぎだし
仕事量が一人としてはあり得ないのもあるし、ほぼ毎日祖母の面会に行ってるから残業もキツい
後は息の臭いおっさんが……ってのもある
愚痴はまあこの辺りまでで、とりあえずまた早めには更新していきます( ´艸`)
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