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☆レッドジャスパー☆

作者:さりな
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~永久蝶~

目を覚ませば、ベッドの上で縛られていたの。

白い白い糸で。

身動きがまったくとれないの。

「…なにっ…これ……しかも…誰」

大の字に縛られている私
苦しくて、仕方がない…


目の前にいる、悪魔のような男。

白いタキシードに身を包んだ、男…

胸元につけた黒いバラにゾクッとする。

「お目覚めのようだね」

そう言い、ニコリと微笑む男に寒気がする。

「……ッ!」

声を発そうとしたが、出せない。
あ、の声も……


「……ふっ…は…」

吐息と思考だけはある。

辛うじて。

「苦しいだろう?お嬢さん」

「……っ!あ…ふ…」

答えたくても答えられない。
とにかく苦しいのだ……

「声が出なくて…ふふ」

あざ笑うかのような言い方で腹が立つ。
それにしても…なんで私は捕らわれたのかな。

「……ふぁっ…」

もう口だけしか開かない、吐息だけだ……

「声、出させてあげるね」

パチンと指をならした目の前の男。

「あっ…ああ…」

声が出た。

「君をどうして捕らえたか、知りたい?」

「うん…教えて。
 昨日までは平凡な生活だったのに…」 

はやく帰りたい
この男に縛られたくない。


「…それはね……
君が……“永久蝶”だからさ…」


永久蝶……?


何かしらそれ………?


「え…?」

「君の体自体、蝶なんだよ」

私の体すべてが蝶だという事におどろかされる。
不安に駆られる。


「やっ……何それ…」

「君は永久蝶という千年に一匹の蝶
もうじき君は蝶となる……」

……っ!

「嘘でしょう?嫌よ!」

「嫌といっても変わらない」

男は縛られている私の上に乗って、首に噛みついてきた。

「いたっ…」

「…君が逃げないための印。つまりキスマーク
ぼく特製のバラのキスマークを君に…」

……痛くてジリジリする。

キスマークが刻まれた瞬間、無数の針で刺されたような痛みが
首に伝わった。

「バラにはトゲがあるからさ…無数の痛みは仕方がない」

首をおさえたくてもできない。

「まぁそのうち、痛みは止まるよ…
亜優、ぼくの(えいきゅうちょう)でいてね……」

謎の男は去っていった。


私はこの空間でひとりぼっち。

窓しかないこの部屋で──────…


「くるしい…くるしい…」

無数の針の痛みは未だにおさまろうとしなくて

この痛みは脱皮を促しているのだろうか…?

でも…あぁ…

いたい…冷たい鋭利な針が私の首をつつく…

「誰か…助けて欲しい」

少し涙がこぼれ落ちた。

「私は…蝶になんてなりたくない…
普通に生きていたい…千年に一匹の蝶なんて
なりたくもないよ……」

拘束なんてしないで
早く離してほしいよ─────…

「誰か助けて!!」

この叫びをどうか…お願い。


「…はぁ。なかなかうるさいな、お前」


誰かが入ってきた。


「……えっ?」


「それはお前の運命なんだ。受け入れろよ」

さっきの男とは違う、オレ様な男。

「…なぁ、亜優さん」

悪魔な笑みをこちらに向ける。

「……」

苦いような表情を浮かべるしかなかった。

「その運命を受け入れろよ…」

「……いやです」

いやです、しか言えない。

「…そのうち、受け入れたくなってくるはずだ
口で嫌々言っててもな。ははは…じゃあな」

男はこの白い空間から出ていった。


「うん…めい…」


突然拘束され、永久蝶と言われて────…
私はどうしろと言うの?

これを運命って取ることなんて到底出来ない!

この世界はおかしすぎる!

「…こんなのやだ…もう寝返りをうつことすら
出来ないし…何もかもやだ…」

現実に戻して欲しい…

もう目を開けたくないな…

私はふっと目を閉じた──────…


 
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