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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第499話】

 ホテルテレシア一階。

 ドレスを返し、制服へと着替え終えた未来と、タキシードを紙袋に畳んでいれて制服に着替えたヒルト。

 時計を見ると夜の十時半を回っていた事もあり、外泊許可をとっていない二人は学園へと帰ることにした――のだが、その前にヒルトはトイレに行きたくなり、未来に一言謝るとトイレへと向かった。

 そのトイレへと向かう途中、柱の影から紫のドレスを着た女性がヒルトを見てる事に気付いた未来。

 まるで監視してるようなその視線に違和感を感じたのだが、ヒルトがトイレの中へと消えていくと、そのままエレベーターホールへと移動し、乗り込んでそのまま上層階へと行った。

 不思議に思う未来だったが、気にせずにヒルトを待っていると――。


「悪いな未来、それじゃあ学園に戻ろう」

「うん、そうだね」


 未来は小さく頷くと、自然とヒルトの隣に寄り添うように歩みを進めた。

 秋風が吹く夜道、行き交う車のライトが二人を照らす。

 言葉を交わすことはなかったが、未来は特に気まずいという気持ちもなく、寧ろ心地好さを感じていた。


「……未来、少し寄り道しても平気か?」

「え? うん、じゃあ何処に行く?」

「ん、すぐそこの公園」

「え?」


 指差した先にあった公園、ライトアップされたお洒落なデザインの時計がモニュメントとしてあり、周囲の花壇には色とりどりの花が植えられていた。

 ヒルトに促されるように未来は着いていき、公園へと入る、特に誰かが居るという感じがなく、ヒルトと二人っきりというのを意識させるには充分だった。

 ヒルトがベンチに腰掛けると、未来はその隣に腰掛ける、寄り添うほど近くに座ると、自身の鼓動がヒルトに伝わりそうな気がして今一歩進めなかった。

 夜風が頬を撫でる中、ヒルトは――。


「……未来、いつもありがとうな」

「え? ……き、急にどうしたの?」

「いや、ちゃんとした礼をまだ未来に言ってなかった気がしてな」


 ヒルトがそう言うと、未来は小さく首を横に振った。


「そんなことないよ? ……ていうか、多分お礼を言わなきゃいけないのは私達の方かも。 なんだかんだでヒルトにいつも助けてもらってるから、さ」


 事実だった、自分がヒルトの力になるよりも、自分がヒルトに助けられる事の方が多いからだ、IS適性がいくら最高値のSを叩き出しても、ヒルトに遠く及ばない気がする未来。

 機体もセカンド・シフトしたものの、未来自身が本当に強くなったのかはわからなかった。

 そんな未来の気持ちを察したのか、ヒルトは軽くポンポンと頭を撫でる。


「俺自身、未来や皆が居てくれるから助かってるんだよ」

「……うん、そう言ってくれると気持ちが軽くなるよ、ヒルト」


 偽りはなかった、ヒルトの掛ける言葉一つで軽くなっていく――不思議な気持ちだった、それに伴ってかまた鼓動が高鳴る。

 だが、学園行きの終電も迫っていたので未来はヒルトに言った。


「ヒルト、学園に戻ろう?」

「……だな、無断外泊は織斑先生の特別コースを受けなきゃいけないらしいしな」


 苦笑を溢しつつ、ヒルトと未来はベンチから離れて一路駅へと向かう。

 未来自身、実は外泊届けを出していたというのはヒルトには黙ったまま着いていった。

 終電までには全然間に合い、ヒルト達はモノレールに乗り込むと席に座った、学園行きの為かお客はヒルト達を除いて誰もいなかった。

 二人きり……改めてそう思うとまたヒルトを意識してしまう、学園でも二人っきりになれる機会も少ない、周りが女子というのもあるのだが、徐々にだがヒルトに対して明確な好意を持つ女性が現れてるからだ。

 モノレールが動き出す、無意識にヒルトの手を握る未来に、ヒルトは一瞬驚いたものの振りほどく事はなかった。


「未来、どうしたんだ?」

「……二人っきりだなって、思ってね」

「……そっか、確かに……俺達しかいないもんな」


 ヒルトはそう言うと、僅かに顔を赤らめる。

 心地好い時間が流れる、学園までは直ぐだというのに未来にとってはずっとこのまま続けばという欲も出てきた。

 だが無情にも駅に到着するモノレール、手は繋いだまま二人はモノレールを降りて寮へと歩みを進めた。

 寮まではそれほど長い距離ではなく、そろそろヒルトと離れる――そう思うと、未来はまだヒルトを独り占めしたくなった。


「……ヒルト」

「ん? どうした?」

「……もう少しだけ、一緒に居たい……」


 未来はそう言って身を委ね、ヒルトの制服の裾を掴んだ。

 未来のそんな言葉に驚くヒルトだが――。


「ん、わかった。 ……じゃあ俺の部屋で少し話してから解散しようか?」

「ヒルトの、部屋……」


 不思議と胸が高鳴る、無論これまでも何度も訪れたヒルトの部屋だが、未来の気持ちとしては何かあるのではという淡い想いが駆け巡る。

 未来自身も年頃の女性で性への興味もある、だがやはり交際を経てからそういう事になるんだという考えもあったのだが、以前モデルをしたその日にヒルトに身体を触られてからは、もっとヒルトに触れてもらいたいという想いが日に日に高まっていくのを感じていた。

 そんな期待通りにはいかないかもしれない――だけど、未来は否定せず、小さく頷いた。


「じゃあ決まりだな、それじゃあ俺の部屋で話しよう」

「ぅ、ぅん」


 未来はそう答えるとヒルトの後を着いていった。

――1025室内――


 幸い誰にもみられる事なくヒルトの部屋に入った未来。

 高鳴る胸の鼓動に押し潰されそうになるものの、落ち着かせる様に何度か深呼吸し、ベッドに腰掛けた。


「そういや、こんな遅くに俺の部屋って初めてだな」

「そ、そうだね。 り、寮の規定もあるしね」

「だな。 ……てか見つかったら未来の評価が下がりそうだが、大丈夫か?」

「だ、大丈夫大丈夫。 ……ひ、ヒルトともっと一緒に居たかった……から……」


 消え入りそうな声で呟き、俯く未来。

 ヒルトは未来のそんな言葉を聞いて必死に自身の理性と戦っていた。

 だが、そんな理性の壁の崩壊も、次の未来の言葉で崩れ去る事になる。


「……今日は、ずっとヒルトと一緒に……居たい、な……。 なんて、ね」


 未来のそんな言葉に、ヒルトの理性は吹き飛ぶ。

 隣に居た未来を勢いそのまま押し倒したヒルト、未来は真っ赤になりながらも――。


「……ぃぃよ? ヒルト……未来に、触れて……?」

「……っ。 そんな事言われたら、止まらなくなるぞ?」

「……ぅん……止まらなくて、ぃぃよ……? ……今だけ、今だけは……私を――私だけ見て……?」


 高鳴る鼓動、だけど今は素直にヒルトに気持ちを伝えられた。

 これからされる事を思うと、未来は小さく身を捩る――恋人同士になってから行うと思っていた夜の営み、未来自身もそう決めていたのだが最近の皆のヒルトへの好意が加速してるのを肌に感じ、内心では焦りを生じていた。

 皆よりも一歩先――我が儘で醜い独占欲かもしれない、それでも未来はヒルトに一歩先へと踏み込んで欲しかった。


「~~~~っ。 ……そんな可愛い事言って……どうなっても知らないからな?」


 ヒルトの言葉に、小さく頷いた未来――だが。


「……さ、先にシャワー浴びても、いいかな……?」


 そこはやはり若き十代の女の子、好きな男性の前では身も心も綺麗にしないとという思いで少しだけ待ったをかけた。

 ヒルトは頷くと、未来から離れる。


「じ、じゃあ先にシャワー浴びるから、ね……? へ、部屋の電気……消してね?」


 未来はそう告げると、そそくさとヒルトの部屋にある脱衣場へと向かった。


「……てか、良いのかな……冷静に考えてこのまましても」


 ヒルトはそう呟く、未来が部屋に戻らなければ問題になるのかもしれないという不安が過る。

 それとはまた別に自身の欲望の塊は自己主張するかの如く、塔を構築していた。


「……考えても埒があかない、か……」


 ヒルトはおもむろに立ち上がると、未来の入った脱衣場へと入っていった。 
 

 
後書き
実はこの話、前の話をアップした次の日には書き上げてたりする

それはさておき、次回はどうするか……まあその前に仕事また探さないといけないが

パワハラってやだねー、これまで居た会社の上司はまずパワハラしなかったからな、人が出来てた方なのかもと思う

まあ何にしても、何かしら人にすれば天罰は下るもんだから、いつかは下るかもね

ちょい感想の返事遅れるかもっす 
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