IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第498話】
前書き
まだ体調悪いなか、暇だからアップしてみた
夜、ホテルテレシア。
取り調べ自体は戦闘内容とそれを口外しないための誓約書等のサインを書いたりだったのだが、俺は他のアリーナへの援護もあって取り調べ自体が長引いた。
……途中介入してきた二機のISに関しては、記載すらされていなかったので俺もシャルもラウラも余計な混乱を避けるため、言うことはなかった。
それはさておき、先に到着した俺は最上階行きへのエレベーターに乗り込む、中に居たのは仮面を着けた怪しい感じの男性が一人居た。
彼を気にせず、俺は最上階行きのボタンを押すとエレベーターが動き出す――と。
「……最上階のレストランに行くのか、君は?」
「え?」
突然声をかけられ、俺は驚きの声と共に振り向く。
「君は有坂ヒルト……だね。 活躍は拝見させてもらっているよ。 キャノンボール・ファストの接戦は流石だったよ、本来ならコースにあのような仕掛けは無いのだがね。 それはさておき……ここのレストランのドレスコードに、IS学園の制服は登録されていない。 由々しき事態だが」
「……そう、ですか」
以前母さんからその様な話を聞いていたが、やっぱり本当かもしれない、見ず知らずの人間にこうして忠告を送ってくるのだから。
……だがそうなると貸衣装借りるか買わないといけなくなるのだが。
「……着いてきたまえ、先に三階に行こう」
「え?」
答える間もなく三階のボタンを押す仮面の男、三階で止まると仮面をつけた白銀の髪の男は降りた、釣られる様に俺も降りると、僅かに微笑を溢す仮面の男。
……以前何処かであったか?
そんな考えが過る、だが会っていたら記憶にあるはずだが、その記憶は全くなかった。
知らない人に着いていくなというのは子供の頃からの教訓だが、俺の場合最悪IS起動して逃げれば問題ないと思い、仮面の男の後を追った。
「いらっしゃいま――こ、これはこれはウィステリア様、この様な所にまで……有り難うございます」
「いや、そんなに畏まらなくていい。 ……所で、彼に似合うスーツかタキシードを見繕ってくれないだろうか?」
突然の事に驚きを隠せない俺を他所に、仮面の男――ウィステリアと呼ばれた男と店員は続けた。
「えぇ、わかりました。 彼に似合うスーツを見立てますので、ウィステリア様も今後御贔屓に……」
「フッ、あまり期待はしないでくれ。 私も多忙の身故、今日此方に居たのも……いや、理由は気にしないでいただきたい」
「は、はぁ……。 ……ではお客様、此方へ」
「え、えと……?」
促されるまま流されるまま、俺は店内にあるスーツやタキシードを見繕われた。
凡そ二十分後、試着室から出た俺はビシッと黒いタキシードを着させられていた。
「ふむ。 中々悪くないものだな、こうして見ると」
まるで自分の事のように見てくるウィステリアさんに、ただただ俺は頬を掻くだけだった。
「……馬子にも衣装ってやつですよ」
「……フッ、それは君が着なれていないだけだからさ、これがな。 大丈夫さ、自信を持つといい」
「……はぁ」
気の抜けた返事をする俺、それはそうと高そうなこのタキシードの支払いをどうしようか考えているとそれを察したのかウィステリアさんは――。
「代金の事なら安心したまえ、ここのオーナーのご厚意で一着進呈だそうだ」
「え? と、唐突過ぎて話がついていけないんですが……」
「フフッ、簡単に言えば支払いはしなくてもいいという事だ。 ホテルテレシア、衣装類等は信頼しても問題はないのでな」
そう言いながら携帯を取り、電話に出るウィステリアさん。
「私だ。 ……成る程、【どしゃ降り女】が【彼】を連れて来店するのだな。 ……あぁ、今接触すれば問題になるのは明白だ、それに接触する時期はもう少し後だし、な。 ……わかった、では引き続き頼む」
そう言って通話を切ると、俺の方に振り向いて。
「すまないが私はこれから行くところが出来たのでこれで失礼する。 また縁があれば出会いたいものだな、有坂君」
「え、ち、ちょっと――」
声を掛けるも、スタスタと去っていくウィステリアさん、店内に残された俺はとりあえず代金の確認をするのだが――。
「代金は不要ですよ、私共のオーナーからのプレゼントという形ですので」
「で、ですがこんな高級なものを――」
そう言いかけるのだが、店員は新たに現れた来客の接客に慌ただしく向かった。
……本当に良かったのだろうか。
そんな考えが過るも、店員も支払いはしなくても大丈夫って言ってる上に当の本人は既に居ない。
考えても埒があかず、俺は申し訳ないと思いつつも店内を後にし、エレベーターホールへと向かった。
エレベーターホールに着くと、一番端にあるエレベーターがちょうど開き、それに乗り込んだ。
中に居たのは白銀の長髪を綺麗に纏めた女性だった、一瞬目が合うとニコッと笑顔を返してくれる。
紅い眼で、俺同様の青みがかった白銀、着ている服装は大胆にも背中の開いたセクシーなドレスだ。
……この人も、何処かで出会った気がする。
無論、気のせいかもしれないが。
最上階行きのボタンを押すと上昇していく――気のせいかチラチラと視線を感じた俺はチラッと見るとまたも笑顔でヒラヒラと手を振り替えしてくれる。
「……あの、何処かで会った事ありますか?」
「フフッ。 直接の対面は初めてじゃないかな? 君の事はよくテレビで見てるからね」
「……成る程」
キャノンボール・ファスト以降から露出も増えた為だろう。
あまり深く考えず、また正面を向く――と、六階に着くやエレベーターのドアが開き、同乗していた白銀の髪の女性は降りる、その際に――。
「またいつか、会いましょう。 ヒルト君」
「え?」
閉じるドアの向こう、ウインクして消えていく白銀の髪の女性――そして、エレベーターはそのまま最上階へと向かっていった。
最上階のレストラン、ヒルトに遅れること十分、ヒルトがウィステリア・ミストに三階のスーツショップに連れていってる間に未来は現れた。
周りにいる人皆が着飾ったドレスやスーツ姿で、自身が着ている学園の制服が変に目立って居心地が悪かった。
不安でいっぱいの未来だが、いつまでもここに居ても目立つ為、意を決して入店――そして現在、未来は着なれないドレスを着ていた。
色は淡く青みがかった白を基調としたドレスだが、大胆にも胸元が開く形のドレスの為、別の意味で恥ずかしかった。
着替え後案内された席はレストラン奥の端側の席、他の席からは目立たない場所なのが幸いしてか未来は特に目立つ事はなかった。
窓から夜景を見る――車のテールライトが流れていき、まるで光の川が流れてる様な錯覚に陥る。
「ふむん、セバスチャン、ここの料理の味はそこそこ美味だな」
「左様でございますか、お坊っちゃま」
ふと聞こえてきた会話に耳をやる未来、他意はなかったが聞こえてきたので聞いてると――。
「しかし、そろそろ僕のハニーも僕を恋しがる頃だと思うのだが……一向に連絡が無いのは何故だと思う、セバスチャン?」
「はぁ……、私ではわかりかねます、お坊っちゃま」
「フフンッ☆ 僕の考えでは僕のハニーことセシリーは僕との劇的な出会いを演出したいのだと思うのだよ☆」
「は、はぁ……」
困惑した声が聞こえてきた辺りで未来はその話に興味を無くし、視線を外へと向けた。
「……ヒルト、まだかな……」
不意にヒルトの名前を呟く未来の前に、ウェイターに案内されるヒルトの姿が見えて心臓が跳ね上がった。
普段見ているカジュアルな服装とは違うタキシード姿に、未来は目を奪われてしまった。
「未来、待たせたかな?」
「う、ううん。 ま、待つのは……平気だ、よ?」
平静を取り繕いながら喋る未来だが、若干たどたどしくなってしまい、顔から火が出そうになる未来。
昨日の襲撃事件から一日、大変な目にあったものの今だけはそれを忘れても許される――未来はそんな気がした。
ヒルトはウェイターに着席を促され、未来と対面する形で座るとウェイターが語り始めた。
「それでは、当店のスペシャル・ディナーにようこそ御越しくださいました」
お辞儀をするウェイターに、促される様にお辞儀を返すヒルトと未来、そしてウェイターはディナーの説明を続けた。
「コースの説明をさせていただきます。 ――とは言うものの、他のレストラン同様基本的にコースメニューで順番にお料理を出させていただきます。 尚、御二人様は未成年者という事もありましてアルコール類は出せません、代わりに此方のミネラル・ウォーターをボトルで提供させていただきます」
丁寧な説明に、前以て聞いていた情報とは違い面を食らうヒルト、一方の未来は緊張していて肩に力が入りすぎていた。
コースメニューの説明が終わり、ウェイターが席から離れると未来は深く息を吐いた。
「……や、やっぱり、緊張するね……。 何か、気圧される感じ……」
「まあな。 ……何にしても、後は俺達だけなんだし、未来も緊張しなくて良いんじゃないか? ここはあまり目立たない席なんだし」
「う、うん」
未来は小さく頷くと、改めてヒルトを見た。
小さな頃から見ていた幼なじみの男の子が、気付いたらこんなにも大人になっている。
ぽーっと見てると、視線に気付いたヒルトが。
「そういや未来もドレス姿だな」
「え? ……ぅ、ぅん。 ――どうせ似合わないって言うんでしょ? 馬子にも衣装って」
つい出た言葉に、未来は深く後悔した。
いつもヒルトが馬子にも衣装って言ってるせいもあるのだが、こんなときに素直になれない自分が酷く惨めで情けなく感じてしまう。
だが、ヒルトは特に気にする様子もなく――。
「馬子にも衣装だなんて言わないさ。 ドレスを着てる未来、凄く良いし可愛いよ」
「ぁ……ば、ばか……。 ほ、褒めても何にも出ないんだから……ね」
可愛いと言われた未来の胸は高鳴る、既に口付けを交わしたとはいえヒルトと一緒に居るとこうも心を掻き乱されるのは――。
手で顔を何度も仰ぐ未来に、ヒルトは微笑を溢す――と、ここで前菜が登場し、二人は食事を摂ることにした。
「……うん、料理に関しては特に問題はないな」
「う、うん。 …………」
思った以上に食事が喉を通らない未来、空腹な事には違いないのだがヒルトと一緒のせいなのと胸元が開く大胆なドレスというのが要因かもしれなかった。
グラスに入れられた水を一口飲む――特に変わった様な水ではなく、飲みやすい感じがした。
同様にヒルトも水を一口飲む――そして、あっという間に前菜を平らげた。
「まあ前菜だしこんなもんかな。 未来はあんまり食べないのか?」
「あ、た、食べるよ? た、ただ……なかなか喉が通らなくてね、あはは……」
「…………」
ヒルトは何かを考え始めたのか黙り始める、急に黙ったままのヒルトに、未来は不安を覚えた、もしかして楽しくないのかな――という思いにも駈られてしまった。
「未来、まだ緊張してるっぽいな。 無理に食べなくても良いぞ? 後でもっと気楽な場所で食べるのも有りなんだしな、これが」
「う、うん。 ……へへっ、ありがとうヒルト」
ヒルトが気遣ってくれるのが堪らなく嬉しい未来、不思議と食事も捗り、次にやって来たメインディッシュも寸なりと食べられた、来店した当初の緊張も何処へやら、ヒルトとの会話を楽しむまでの余裕が出てきた未来。
……だが、ここでレストラン内で怒声が響き渡る。
「だ、誰だ、このお客様にお酒を御出ししたのは!?」
それまで楽しく食事をしていた来客全てがその怒声の方へと視線が移る。
そして、問題のボトルを提供した若いウェイターが焦りながら現れ――。
「は、はい! 自分です!」
「またお前か! 運ぶテーブルを間違えるなと何度言ったらわかるんだ!」
お客の居る前で怒るウェイターに、近くにいた来客は席を立つ。
「ふむ、セバスチャン。 どうやらここのレストランは一流とは程遠い三流のレストランの様だね」
「左様でございますな」
「うむ、この店を出よう。 セシリーと共にと思っていただけに、このレストランの対応は残念だよ」
「そうでございますな、ゴードン坊っちゃま」
ちらほらと席を立つ来客、会計を支払うとそそくさと退店していった。
「……デザート残ってるが、俺達も出るか、未来」
「そぅ、だね……」
楽しかった全てが台無しにされた気分の未来、退店する前に問題の席を見ると未だに若いウェイターを叱るウェイター、そして、その席に居たのは酔い潰れた篠ノ之箒と織斑一夏の二人という事もあり、未来は頭が痛くなる思いだった。
後書き
そろそろ皆が忘れてそうなあのゴードン・ラッセルの突然のお出番にビビった人は挙手( ・ω・)ノ
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