IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第307話】
まだブーイングが鳴り止まぬ廊下を進み、二組へと入る俺と成樹。
「いらっしゃいませ~」
満面の笑顔と挨拶、手には御盆を持った鈴音がそこに居た。
「おっす。 約束通り食べに来たぜ、鈴音?」
「う、ぅん……。 ……? 後ろの人、ヒルトの連れ?」
そう言って後ろを覗き込む様に見る鈴音に、俺は――。
「あぁ、彼は笹川成樹。 俺の唯一無二の親友ってやつだな。 んで成樹、此方は一年二組クラス代表の凰鈴音。 俺は専ら『すずね』っていう日本読みで呼んでるんだ」
そう紹介すると、教室内に入る成樹――二組の店員の子も、思わず成樹を見て目をハートに輝かせていた。
「初めまして凰さん。 改めて自己紹介します、笹川成樹です」
「う、うん。 ……アタシは凰鈴音。 ヒルトには『すずね』って呼ばれてるけど、愛称は凰鈴音の鈴を取って皆からは『リン』って呼ばれてるの。 よろしくね」
そう笑顔で応える鈴音――相変わらずだが、鈴音の笑顔は何処かで元気付けられる気がする。
「……っと、いつまでもお客様を案内しないってのも悪いし、案内するね?」
促され、俺と成樹は鈴音の後を追う――。
二組の店員の子皆がチャイナ服を着てるのだが、やはり皆一枚布タイプでスリットから覗き出る生足が妙に色気を醸し出していた――特に、鈴音のルームメイトのティナのチャイナドレスの破壊力は凄まじい。
……いや、まあティナだけじゃなく皆可愛いんだけどね。
席へと案内され、着席すると鈴音は一旦一礼して奥に消えていく。
メニューを開いてると成樹が――。
「ふふっ。 彼女もヒルトに恋をしてるのかな?」
「ん? ……誰のことだ、成樹?」
「ふふっ」
笑ってはぐらかす成樹に、首を傾げていると奥に消えた鈴音が水を入れたコップ×2を持ってきた。
「はい、ヒルト。 笹川君も――」
「ありがとう、凰さん」
にこりと微笑む成樹に、またも二組店員の悦びの声が――まあ、わからなくもないがな。
「んで、注文は?」
「んと……。 プーアル茶と点心、成樹は?」
「僕は烏龍茶と点心をお願いするよ」
「うん。 じゃあ少し待っててね?」
そう言って奥にオーダーしにいく鈴音。
鈴音のフランクな物言いは、俺が居るからだろうな……多分。
「ハァイ、ヒルト君♪」
「おっすティナ。 八月以来だな?」
暇したのか、ティナが側にやって来た。
……接客は終えたし、いうほど人は居ないように見えるから問題は無いだろう。
「ティナ、此方は俺の唯一無二の親友、笹川成樹。 成樹、彼女はさっきの鈴音のルームメイト、ティナ・ハミルトン」
「は、初めまして。 笹川成樹です、よろしくねハミルトンさん」
少し緊張したのか、声に緊張の色が見えた。
「よろしくね笹川君」
にこりと微笑むティナ、彼女は特に緊張していないように見受けられる。
……しかし、近くで見れば見るほど青いチャイナドレスが似合ってる。
特に窮屈そうに押し込まれた乳房――その自己主張は凄まじく、正直カメラで写真に収めたかった。
「……ふふっ。 ヒルト君は相変わらずねぇ~」
悪戯っぽく微笑むと、両腕で挟むように乳房を強調するティナ――眼福です。
「あ、あはは……」
乾いた笑い声をあげるも、ティナ自身は嫌だとは思っていないのか暫く見せてくれるというサービスぶり――と。
「ちょ!? てぃ、ティナ! アンタ何やってんのよ!?」
目尻を吊り上げ、怒った表情のままプーアル茶&烏龍茶をお盆に乗せてやって来た鈴音。
「あら? 見つかっちゃった」
強調していた両腕をほどき、軽く舌を出すティナ――。
「ひ、ひ、ヒルトも! 何でティナの胸見てんのよ! てか笹川もヒルトを止めてよね!?」
「あはは……。 ヒルトも男の子何だから、仕方ないよ」
とばっちりを受ける成樹だが、柔らかな笑みを浮かべてそう鈴音に言った。
「~~~~っ」
「あらあら? 鈴ったら……ヤキモチかな?」
「~~~~!?」
ティナの指摘に、ボシュッと顔を真っ赤に染める鈴音――と、二組に入ってくる騒がしい声――。
「はいはーい、新聞部でーす。 二組の取材&写真撮影に来ましたー」
本日二度目の登場、黛薫子さん。
……てか、もしかしてついさっきまで一組に居たのだろうか?
「あ、有坂くん発見。 さっきはごめんねー、ジャーナリズム的には平等でも、記事の人気では織斑くんの方が話題性あるからねー。 ――ところで、そっちの彼、一枚写真良いかな?」
そう言ってデジカメを成樹に向ける黛さん。
「え、えと……。 ――良いですよ、一枚でしたら」
一瞬戸惑うも、爽やかにそういう成樹の姿に――。
「ど、どうしよう……。 お、織斑くんより断然に爽やかでカッコいい……」
「う、うん。 ……うぅ、有坂くん紹介してくれないかなぁ……」
――紹介しない、てかしても成樹が恋愛しない以上意味がない。
とりあえず周りの黄色い声を他所に、黛さんは一枚どころか連写で撮影をしていた――おいっ。
「ふふっ。 まさかここでこれだけのイケメンに出会えるとは思わなかったわ。 ……売れるわ」
キランッと眼鏡が光る黛さん――てか売るのかよ、本人に許可得ないと……。
「こほん。 それはそれとして、せっかくだし――一組と二組、クラス代表が揃ってるのだからツーショット写真撮ろうかしら?」
「……なっ!?」
黛さんの言葉に狼狽する鈴音――と。
「ふふっ。 黛先輩、せっかくですから私も彼とツーショット、良いかしら?」
そう言って俺の肩に触れるティナに、真っ先に鈴音が――。
「な、ななな何でティナがツーショットなのよッ!?」
「あら? 別に良いじゃない♪ まだヒルト君には彼女居ないんだし、ツーショットぐらい♪ それに……彼、可愛いじゃない?」
……何処に可愛い要素があるのかはわからないが……まあ、ツーショット自体は拒む事はないし――。
「うぅ……。 な、ならせめてアタシが先にヒルトとツーショットよッ!! ヒルト、文句ある!?」
「な、無いからそんな興奮するなよ……。 顔が真っ赤だぞ?」
「ぅ……」
指摘され、小さく声をあげると深呼吸し始める鈴音。
それをティナが微笑ましそうに見つつも、俺の肩から手を離し、手を後ろに組む。
……何にしても、二組でも写真撮影が開始された――。
「……何でそんなに離れてるんだ、鈴音?」
「う、うるさい!」
ツーショットなのに距離が離れてる鈴音――黛さんも苦笑を溢していた。
「……ほら、こっち来いよ」
若干強引だが鈴音の手を取ると――。
「ぁ……っ!?」
驚いた表情を見せ、みるみる内に真っ赤に染まる鈴音。
そのまま引き寄せると、抵抗する事なく俺の腕に収まった――。
「ば、バカ! な、何どさくさ紛れに抱きしめてんのよッ!?」
「わ、悪い、不可抗力ってやつ――」
そんな言い問答をしていると、黛さんは待ちきれずにシャッターを切った――。
「「あっ!!」」
俺も鈴音も、同時に声をあげて黛さんを見るともう一度シャッターを切られる――。
「うん♪ なかなか良い構図だったから撮らせてもらったよー。 ……まだまだ取材するクラスもあるんだし、これで我慢してねー」
「うぅ……。 ……い、いつまで抱きしめてんのよ……バカヒルト……」
目尻を吊り上げて訴えるも、僅かに瞳を潤ませる鈴音。
「悪い悪い。 ……ほら、これで良いだろ?」
「……ぁ……」
手を離し、解放すると小さく声をあげた鈴音――何だか名残惜しそうな声にも聞こえたが……。
「あらあら? 鈴はヒルト君に対してもツンデレかしら? 部屋ではいつもヒルト君の話を――」
「わぁーっ!? こ、この子ったら何を言ってるのかしらッ!?」
慌てた様にティナに詰め寄り、口を塞ごうとするもまるでからかうように器用に避けるその様は、仲の良い姉妹にも見受けられた。
「ふふっ。 ……さて、鈴をあまり弄りすぎちゃうと拗ねちゃうし、そろそろ私も彼とツーショット撮ってもらおうかしら?」
「うぅー……」
「あ、鈴? お客様みたいだから出迎えないと」
「あ、後で覚えておきなさいよ、ティナ……」
「あはは♪ ポテチ一袋で許してくれないかしら?」
「…………考えとく」
――安上がりだな、ポテチ一袋で済むって。
鈴音はそう言い、入ってきたお客様――というか、一夏と先ほど佇んでいた男と一緒にここにやって来た。
何やら騒がしくなり、鈴音が佇んでいた男の顔面目掛けてお盆を投げると、見事に顔にめり込んでいた。
「ほらほら、有坂くんも彼女も。 ツーショット撮るからもっと側に――」
「わかりました。 ……ヒルト君」
「う?」
名前を呼び、それに振り向くとニコッと微笑んで腕を絡ませるティナ――チャイナドレス越しから伝わる乳房の柔らかさは、セシリアやシャル、未来、美冬のそれとは違う柔らかさだった。
……世界の七不思議だな、この柔らかさは。
……何気に、鈴音の視線が気になるも、鈴音は一夏とその連れをテーブルに案内し――。
「ヒルト、こんな所でも写真か? ……ご苦労な事だな。 俺はさっきので疲れ――」
「こんなところで悪かったわね。 い・ち・か?」
ガツン――そんな鈍い音と共にシャッターの切られた音が鳴り響いた。
……あいつも、もう少し口調がどうにかならんのかなぁ……。
後書き
久々にティナが登場
モブを色々出しちゃう
ちょっと捏造しちゃう
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