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王道を走れば:幻想にて

作者:Duegion
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第四章、幕間:爛れた部屋 その2 ※エロ注意

 
前書き
 前半部にエロ描写があるので、注意願います。

プレイ一覧:膣内射精、松葉崩し、イマラチオ、咥内射精、後背位、肛姦、敷き小股 

 

 びくりびくりと陸に上がる魚の様にソ=ギィの汗ばんだ裸体が痙攣し、組み伏せられている慧卓の身体にしな垂れかかっていた。強烈な絶頂と興奮を立て続けに感じた結果、二度目の射精を受けて意識が焼け落ちるように失われたのだ。膣部に挿入された硬い陰茎との間から事後の残滓が溢れてきており、精嚢を伝いとしながらシーツへと落ちていた。 

「情けないなぁ。若いのになってないなどと言っておきながら、最初にやられてしまうとは」

 傍に居たアリッサがソ=ギィの身体を持ち上げる。亀頭がはみ出た途端に膣からは後を追うように精液がぼたぼたと毀れ出してきてしまう。一滴一滴が濃厚で、黄ばみすら見て取れる程の濃さだ。かなり多くの精子を注がれた事は間違いなさそうだ。ともすれば妊娠してしまうのではないかと勘繰ってしまう程に。
 寝台にソ=ギィの熟れた身体を横たえると、アリッサは慧卓の体を起こすのを助ける。一方的な情事のせいで息が大分切れており、行為を続けるためには暫しの休息が必要だった。一・二分か休憩を挟むだけで余裕を取り戻したのは、日々の弛まぬ鍛錬の御蔭どもいえよう。
 アリッサは眉に掛かったブラウンの髪を小指で払い潤んだ瞳を見せ、慧卓の頬に優しく接吻を落とした。意識を向けてきた彼の唇を何度か啄むと、相手の肩をそっと撫でながらアリッサは仰向けに寝転がる。凛とした均整の取れた身体が無防備に晒され、燭台の光によって身体が淡い興奮の色を帯びているのが露わとなる。一度注がれた精子が彼女の桃色の膣部から毀れていた。

「・・・ケイタク、私にもう一度くれ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・アリッサぁ・・・」

 連続した射精に理性の箍は完全に外れているようだ。慧卓はアリッサの腰元に身を落とすと、肉棒を掴んで遠慮無くアリッサの女陰の中へと押し進んだ。硬さと熱を全く失わぬそれに対してアリッサの肉体は大いに悦び、彼女の表情も淫蕩としたものとなっていく。

「んんんっ・・・まだ、全然硬いぞ・・・どうなっているんだ、ケイタク?」

 愛おしげに下腹部の俄かな膨らみを見遣っていると、アリッサの口元に慧卓の左手が運ばれてきた。熱帯びた柔らかな頬を撫でるそれをアリッサは右手で捕まえて、男らしさのある角ばった指先を口に含んで吸い、何よりの好物であるかのようにしゃぶる。淫猥な音が零れていく中、慧卓はアリッサの左脚を持つ、己の右肩へと伸ばすように抱え込んだ。

「ちゅる・・・ちゅぅ・・あっ、この体勢もいいな」

 所謂松葉崩しの体位であった。男女が足をV字に交差させる事により、より深く男根が膣内へと突き刺さるようになり、高い性感を得る事が出来る。反面肩に担ぐと女性の脚に負担を掛けるため、あくまで愉しむためならば太腿の上に置くのが理想である。互いの膣部が真っ直ぐにぶつかるよう腰を振れば、太腿の肉感も合わさって新しい効果を得られるだろう。
 そして、その効果は抽送時にこそ大きく発揮される。慧卓は我慢という言葉を忘れたか力強く腰を打ち付けていき、その瞬間にアリッサの両の眼は衝撃で見開かれる。亀頭が急所を抉り、更には子宮口に食い込んだのだ。その快楽たるや、正常位や騎乗位の比ではない。一突きを受ける度に全身の性感帯から刺激の波が走り、愛液が噎せるような勢いで溢れているのではと錯覚してしまう。
 また慧卓は、胸筋から肩にかけて感じる凛々しい女騎士の脚は何よりの馳走と心得ているのか、時折足首や脛の辺りに深い接吻を落としている。これがまたアリッサの壺を突いており、彼女の身体を扇情的な赤みで彩っていった。

「ああああっ、あああっ、深いの良いぃぃいいっ!!!これっ、絶対孕むぅううっ!!」

 近衛騎士としての姿は何処にもなく、またアリッサ=クウィスとしての理性も無い。一匹の雌としてつがいの雄に興奮を覚え、生まれ持った柔らかで繊細な肉体を揺らしている。女陰を深く抉っていく一方で、慧卓は涎だらけとなった左手を彼女の乳房へと運んで円を描くように揉み、掌や指で上品な形をした乳首を蹂躙する。口唇や性器とは違う第三の性感帯を弄られて、アリッサは先程以上の速さで追い詰められていく。鈴口が女体の最奥を叩いてくる動きが意識を猛烈に揺さぶり、アリッサを堪らなく興奮せしめていた。
 抑えようとも思わぬ喘ぎ声が何度も彼女の情欲をそそる口元から溢れ出し、正面で激しく自慰をするチャイ=ギィへと投げつけられる。目前で行為をする二人が羨ましいのか、瞳は切羽詰まったように潤い、淫汁が彼女の指をしとどに濡らしていた。びくりと、アリッサが痙攣して歓喜の声を上げる。腰元では慧卓の身体が落ち着いており、精嚢がびくびくと震えていた。あの奔騰のような射精を一番奥の所で受け止めているのだろう。

「ま、また出たぁぁ!!ケイタクっ、出してばっかりなのに、なんで濃いままなんだぁぁぁ!!!」

 言葉の抗議とは裏腹に表情は満ち足りんばかりの淫らな欲求で覆われていた。精液の熱さや濃厚さを受け止めたい。肉槍の硬さを膣全体で咥えこみたい。そんな思いが彼女の肉ヒダを無意識に蠢かせ、凄艶なる娼婦の技と同等の悦楽を慧卓に与えていた。まるで極細の鞭で陰茎を締め付けるようだが、その刺激こそ慧卓の勃起を助長するものに他ならなかった。
 射精をしているのに関わらず慧卓は再び腰を動かしていく。膣が引っ込むか押し込むかという状況に関係なく、尿道から鈴口へと精液が駆け巡って射出される。水飛沫でも掛け合っているのかといわんばかりの水音が両者の陰部から漏れて、それを上回るように肉がぶつかり合う音が響く。互いに筋肉質という事もあって音はよく響き、聴覚を伝って部屋に居る者達の心を掻き乱していく。

「あああっ、硬いよぉぉおお・・・駄目・・・もうやめてぇぇっ!!死んじゃうっ、死んじゃうから駄目ぇぇぇっ!!!」

 嬌声のような悲鳴のような声が漏れるが慧卓は耳を傾けず、精子を出していく。枯れるという言葉がトリップ状態の彼には全く通じていなかった。彼は眼下で喘ぐ女の情感の篭った表情を見るのに飽きず、脚にキスマークを施しながら腰を振っていった。
 無限の如く続くかと思われた強烈な抽送は、突如、慧卓が我に返ったように躍動を止めた事で、漸く中止された。両者は荒げに荒げた息を出す。膣内全ての空間を埋め尽くさんとばかりに精子が出された状態での終焉であった。

「あっ・・・ああっ・・・死ぬ・・・もう、駄目」

 力尽きたようにアリッサは呟く。慧卓が彼女の脚を離した途端、アリッサの身体が横へと崩れ落ちてしまった。陰茎が膣から抜かれると、どっとばかりに精液が溢れ出た。屁でもこくような音を立てながら女陰より青臭く白い液体が溢れていく。真っ赤に染まった彼女の身体には汗が何粒も伝っており、これ以上の行為は危険だと思わせる程であった。
 慧卓は水差しから直接水を含むと、ぐったりとしたアリッサを起こし、口伝いに直接飲ませていく。ほとんど為すが儘に彼女はそれをごくりごくりと飲むと、息を吐きながら再び寝台に横たわった。精力剤を嗅いだとはいえ、激しき生殖に身体が持たなかったようだ。
 だが、薬を服用してしまった者同士の場合はどうなるのか。それを証明するかのように、慧卓は水分を補給した後にチャイ=ギィを見据える。彼女は膣部を掻き乱しながら慧卓を今か今かと待ち構えていた。

「け、ケイタク様・・・早くっ、早くっ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・チャイ・・・」
「はいっ・・・」
「今からっ、手加減抜きで犯すぞ・・・いいな!?」
「はいっ!犯して下さい!!!」

 二人は言葉と共に互いに抱き合い、乱暴に唇を交わした。普段から外気に触れる事が多いのかチャイ=ギィの唇はかさつき気味であるが、舌による好意の表現の仕方は特筆に値する。その絡め方は無邪気といって過言ではなく、犬の交尾を彷彿とさせた。蕩けるような火照った息が鼻面に吹きかかるため、慧卓は横を向いて接吻を止めざるを得なくなる。しかしチャイ=ギィは唇で応じられなくともいいとばかりに、慧卓の頬や項に求愛の印を付けようとしていく。

「んんっ、じゅるっ!!んむっっ!!」

 薬によって散々に気を高められながらも焦らされ続けた結果、今のチャイ=ギィは正に性欲に飢えた獣といっていいくらいであった。自らのやりたいと思う事を平然とやってのける姿は淫蕩であり、ある意味では女性としての欲求に非常に素直である。
 アリッサより僅かに身体の起伏が無い身体ではあったが、修羅場を潜り抜けてきた御蔭か身体つきは引き締まっており、可憐というよりも美しいといって差支えが無い。その無駄が削がれた純朴で一糸纏わぬ身体を、慧卓は欲求のままに寝台に押し倒す。己に近付いてくる彼の姿を見て、チャイ=ギィは再び口唇同士の愛撫をするのだと邪推し、高々と叫ぶ。

「け、ケイタク様っ!!キスはいいですからっ、おまんこに精子をいっぱいくださっ、んむっ!?!?」

 刹那、彼女の口腔へ滾った一物が奥まで入れられる。精液と愛液が混じった臭いは、口腔伝いに鼻孔へと伝わっていき、一瞬チャイ=ギィは己の身体を支配する性欲を忘れかけてしまった。そしてそれが帰来してきた同時に理解する。慧卓の男根が喉の奥まで入り込んでいると。怒りではなく、興奮による激情のようなものが湧き、彼女の愛液が更に出て行く要因となった。
 慧卓はチャイ=ギィの頭を優しく掴むと、自分の腰を抽送するように振っていく。女性器は上にもあるといわんばかりに彼は欲求を発散しようとし、チャイ=ギィの口を犯していく。

「んむっ!んんっ、んんんん!!」

 初めは戸惑っていたチャイ=ギィであったが、挿しこみを受けていく内に要領を掴んでいく。陰茎の裏筋を舌の腹を使ってなぞる。浮き出た血管によって複雑な舌触りが味わえており、また陰部全体に渡って付着している性行為の残滓を、チャイ=ギィは陰茎の味だと誤解してしまった。噎せるようなきつくどろっとした舌触り、咳を催したくなるような酸味。だがそれが好いとばかりにチャイ=ギィは男根を奉仕していく。

(男の人の、凄い固くてっ、なんでなの・・・美味しいよぉ!!)

 その熱はまるで鋳溶かしたばかりの鉄。更には硬さも相俟って一振りの剣を想起させる。女の花園を散らすだけの剣と書けばなんと虚しい事かと思われるかもしれないが、それによって生じる衝撃や快楽を鑑みるに、剣の存在価値は女性にとって天然の宝玉にも値するものであった。生娘ゆえに性技に長けぬチャイ=ギィでも、身体を支配されるという状況は彼女の淫欲の才能を開花させるものであった。
 陰茎を吸い込む動作が徐々に露骨なものとなっていく。気持ち良さげに口を開く慧卓を見上げながら、卑猥な音を立てて陰茎を啜る。丁度肉棒が引っ込む時に吸い込むと、舌がカリに引っ掛かって慧卓はびくりと頬をひくつかせた。彼が喜んでくれる場所を心得たチャイ=ギィは、慧卓の精嚢を手で摩りながら愛を求める。上手くなっていく奉仕に慧卓は我慢出来ず、喉の奥へと肉棒を叩き付けて思い切り射精する。

「んんっ!?!?!?」

 性欲の発奮を口腔の奥で受け止める。意識が明滅しかけるような強烈なものであったが、チャイ=ギィはそれらを全て受け止めて、精液を次々に嚥下していく。膣内ほど快楽を得られなかったのか精液がそれほど出なかったのがチャイ=ギィにとって幸運な事であった。それでも噎せ返る程の量である事に変わりはなかったのだが。
 白い糸を引きながら陰茎が引き抜かれチャイ=ギィは新鮮な空気を得ると共に、ふわふわと湧き起る熱い情念を感じた。

「はぁ・・・はぁ・・・嗚呼、脳味噌まで溶けそう・・・」

 チャイ=ギィは欲に駆られた瞳で慧卓を見遣る。げっそりしているいるとかそういった印象は見受けられないし、まして肉棒が衰えているような様子も見られない。薬のせいで刺激にはかなり敏感になってしまい暴発し易くなる一方で、精子を産出する機能は通常のそれを凌駕するまでに無理矢理高められているのだ。今の彼は自分の体力が続く限り只管精液を出すだけの人間となっているのだ。まさに種馬である。
 艶っぽく蕩けかけた瞳をしながら、慧卓はチャイ=ギィを押し倒してうつ伏せにさせた。桃の如き印象を受ける尻の間にある小皺が寄った菊座を一瞬見詰めた後、慧卓はその更にある綺麗な割れ目を見遣った。愛液が涎の様に毀れたそれは既に受け入れの準備を完了している。慧卓はぎんぎんと滾った陰茎の先端をそこへ合わせた。

「はぁ・・・はぁっ!もう、入れるからな!!」
「い、言ってる傍から入れてるっ・・・あ、ああ・・・」

 焼けた鉄の様に熱く硬い存在が、膣裂の中へ割って入っていく。生娘にとってはおぞましき外観を持ったそれが徐々に姿を無くしていき、チャイ=ギィの身体の中へと肉を埋めていく。臀部を掴まれながら挿入を受け入れていたチャイ=ギィは、膣の中で陰茎の先端が何か柔らかく薄いものに当たるを感じた。処女の証である膜にまで慧卓の肉棒が入り込んだのだ。
 慧卓は愛おしげにチャイ=ギィの張りのある尻を撫でて彼女の汗を掌で感じた後、腰を掴み取り、一息に己の身体を打ち付けた。膜が強引に裂けられ、痛烈な感覚がチャイ=ギィの身体に走った。

「アアアアああああああああっ!!!!!!!」

 絶叫が室内に木霊する。寝具に倒れ込んでいたアリッサはちらりと二人を見遣った後、『遂にやったか』と言わんばかりに瞳を閉じて再び頭を垂らした。慧卓の猛々しい陰茎が付け根の部分までチャイ=ギィの健康的で艶やかな身体の中へと埋まっていた。陰部が密接し合う部分からは愛液が零れているが、時間が経つにつれて破瓜(はか)の証である赤い雫が見えてくるようになった。不幸にもチャイ=ギィの初体験は痛みを伴うもののようだ。
 常人ならば処女喪失のショックと痛みで涙一粒出してもいいのに、彼女の瞳は蕩けたままであった。薬の影響下における彼女にとって、痛覚の刺激はそのまま性感帯への刺激に直結するのであろう。興奮の度合いを増しているかのように頬はまた一層の赤みを増し、彼女の手はシーツをぎゅっと握りしめて震えていた。
 
「け、ケイタク様ぁ・・・私の中が熱いですっ・・・これは一体・・・・」
「はぁっ、ああっ、凄いぞ・・・すごく良い・・・!!」
「んんあああっ、う、動くと、またいっちゃぁっ・・・!!」

 慧卓は言葉通り、己の陰茎を相手に突き刺していく。抽送を繰り返すうちに、何と素晴らしい肉感であるかと慧卓は深い感慨を覚えていく。一突きする度に強烈といわんばかりの締め付けが陰茎を襲い、引き抜く時にはそれ以上の締め付けを肉ヒダの全方位から受けるのだ。まるで獲物を捉えて離さぬ狩人の如き執拗さである。修羅場を潜り抜けると膣の具合さえ良いものとなるのだろうか。肉ヒダの動きが締め付け以外に何も無いのが残念ではあるが、しかし余りに直情的なこの求めは、チャイ=ギィの中に秘められていた女性としての性的欲求を顕著に示す一例といえた。
 膣から得る快楽は相当なものであると同時に、眺めもまた良い。鍛錬の御蔭で鍛えられた背筋や腕の筋肉は、私兵団の頭首として相応しい程に引き締まっている。軍人として完成された肉体美であり、その穢れの無い肌に紅が差し、汗が湧いて流れていく様は優艶といっても過言ではなかった。身も心も曝け出して此方の動きに合わせて身体を動かし、より深い抽送を求める彼女に慧卓はますますち気を良くして、躍動のスピードを上げていく。亀頭は無論、彼女の子宮口を叩き続けていた。

「凄いぃっ、深くまで刺さってえぇぇ!!子宮、突き刺さってるぅぅっ!!」

 雄々しき男根に貫かれる感覚に酔い痴れて、チャイ=ギィは心のままに媚態を蠢かす。小さくても品の良い乳房も動きに合わせて俄かに揺れ、それ以上に全身の筋肉が劣情を抱かせるような盛り上がりを見せて慧卓の精力を熱いものとさせていた。先走りの汁が早くも鈴口から溢れて愛液と混じり、膣部からは淫汁が止め処なく弾けて倒錯的な音を出していく。
 蹂躙を受け入れる彼女を見て調子に乗ったのか、慧卓は彼女の尻を叩く。『ぱんっ』という小気味良い音が響くと同時に膣肉の収縮が一段と強くなった。思いもよらぬ快楽を覚えて慧卓は再び尻を叩く。丁度子宮口に亀頭が達した時に叩きが来た事もあって、強く握ってくるような締め付けは強烈であり、油断すれば精液が暴発してしまうかと思う程であった。どうやらチャイ=ギィは尻に対する性感に敏感なようだと確信した慧卓は、抽送をしながら彼女の尻を何度か叩く。丸みのある肌に紅葉模様が浮かび上がり、叩くと同時に彼女の口からは荒げた息が漏れていった。
 やがて慧卓は切羽詰まったように息を呑みこんで、腰の動きをより一層激しくさせた。言わずもがな、射精の予兆を感じ取ったのだ。膣内で膨れ上がる存在に昂揚しながらチャイ=ギィは問う。

「んんっ、出るんですかぁ!?膣の中にぃぃっ、いっぱい、射精をっ・・・ああんん!!」
「だ、出すぞっ!孕ましてやる!!!」

 チャイ=ギィの引き締まった腰を抱きながら、慧卓は呻き声を挙げながら尿道を精子が駆け巡る快感を感じた。恍惚とした表情をしながらチャイ=ギィは膣内に温かな液体が迸っていくのを感じ取る。これが精液であると知るには一秒も掛からなかった。

「きたぁぁっ!!精子っ、いっぱいきてる・・・!!」

 女を孕ます胤。雌を拘束する白濁とした液体。膣内を埋め尽くしていくその感覚に彼女の身体は震え、乳首がびんと立った。チャイ=ギィは朧のように薄れそうになる意識の中、それを何とか現世に引き止めながら理解する。この全身を駆け巡る雷のような悦楽が、絶頂というのだろうと。 
 慧卓の陰茎が引き抜かれて、精子が裂け目より溢れていく。横倒しとなった彼女は体内に残る男の穢れによって大きな幸福を感じていたが、臀部よりビリっと走る新たな快楽の波に驚いた。慧卓の指が彼女の肛門を撫でているのだ。膣を弄られるのと同程度の悦楽にチャイ=ギィはしどろもどろとし足を閉めようとするも、その前に慧卓が彼女の脚を掴んで開かせた。精液が膣部より溢れるのを傍目に、彼は己の滾った肉槍を相手の肛門へと摩らせる。チャイ=ギィは不安と期待が混じった声を上げる。

「そ、そこに入れるの?そんな・・・汚いのに・・・あっ、あああっ・・・!!」

 菊門の皺が消える。陰茎が入っていく事によって肌が引っ張られているのだ。老廃物よりも大きく熱い異物が、よりにもよって身体の仕組みに逆らって侵入してくる。にも関わらずチャイ=ギィは得も言われぬ悦楽を感じて為すが儘となり、陰茎の挿入を全て受け入れてしまった。
 筆舌にし難い快感が彼女を襲い、同時に慧卓にも襲い掛かる。もしかしたら、これは膣以上のものになるかもしれない。そう思わせる程彼女の腸内は素晴らしく、性的な行為に従順であったのだ。

「かっはっ・・・やぁ、これぇぇっ、駄目ぇぇっ!病み付きになるっ!!御尻っ、気持ち良すぎぃぃぃっ!!」

 まだ動いてもないのに彼女はそう叫ぶ。生来の資質に依拠するものであるが、道徳に反する肛門姦という行為自体に非常に大きな興奮を抱いているようだった。膣を穿られる時は天にも昇るような気持ちとなったのだが、肛門を抉られる際に感じる快楽はまるで別だ。
 肉質のある衝撃が臀部を駆け巡る度に、腸内を独特の圧迫感が埋め尽くしていき、チャイ=ギィの意識を寝台の上へと引き摺り落としてくるのである。それまでの性に対する価値観や貞淑さなどを根底から引っ繰り返すような行為は、頭ではやってはいけないと理解しつつも実際には止められない。寧ろこの抽送が愛おしくて堪らない。二律背反する情念が彼女の心を卑猥な桃色で染め上げていく。

「あっはぁっ!!ケイタク様っ、ケイタク様っ!!好きですっ!ケイタクさまも、ちんぽも好きぃぃっ!!」

 寝台にうつ伏せで横たわり足を大きく開かされながら、チャイ=ギィの臀部を陰茎が掘削していく。愛液とは違った発情した雌の汁が溢れていき、陰茎に絡みついていく。普段追い立てるべき獲物の如き醜態で男の良い様に嬲られる、しかも今日だけで二度もだ。これがチャイ=ギィにとって倒錯した悦楽を与える事は言うまでもなかった。
 臀部に押し付けられる慧卓の腰部。背筋から肩甲骨に至るまで感じられる男らしい肉体。そして首と耳元を叩いていく荒々しい呼吸。それら全てがチャイ=ギィにとって至福の責めのように感じられた。

「いいぃっ、いいよぉっ!最高過ぎっ!!あああっ、んああっ!!御尻で受精するぅぅっ!!!」

 感情が極まっていく。身体が寝台に押し付けられる事でクリトリスや乳首がシーツに擦れてまた別の快楽を与えてくれる。指では絶対に届かないであろう所まで尻を掘削されていく。最早膣を犯されているのか肛門を犯されているのか、チャイ=ギィには区別が付かなくなっていた。躰に男の情熱が向けられるただ一事にのみ関心が注がれて、心がどんどんと高まっていく。

「すっごい!!いくっ、イクイクイクっ!!ちんぽでいくぅぅっ!!!」

 尻を震わしながらチャイ=ギィの砂色の瞳がぎゅっと瞑られ、癖の無い髪が艶やかにびくりと揺れた。同時に慧卓も一際強い呻き声を漏らして腰元を痙攣させる。膣内で感じたそれと同様の粘着質で熱っぽい液体が、淫らな液を分泌している腸内へと注がれていく。何とも溜らぬ幸福感が彼女の心を掴み取り、処女であった彼女の身体に決して落とせぬ穢れを植え付けていった。

「精子が・・・御尻の中ぁ・・・いっぱい・・・」

 恍惚として母譲りの妖艶な声がチャイ=ギィの口から漏れた。彼女に覆い被さっていた慧卓が横へ崩れ落ち、肉棒がぬめっと引き抜かれる。上下二つの穴から精液が溢れていくのが勿体無く感じて、チャイ=ギィは括約筋を締めて菊門に皺を寄せた。精液の流出を最小限に留める事に成功して、彼女は体内で何時までも精液の熱を感じようとしていた。
 散々に行われた行為の数々によって慧卓の象徴は卑猥な光沢を放っているが、漸く萎えかけているようで海綿体の張りが俄かに弱まっているように見える。両者の腰部や太腿は汗やら飛び散った愛液やらでかなり濡れており、まるで水難の後処理をしている最中のような光景であった。チャイ=ギィはまだまだ性欲で爛々としている瞳を慧卓に向けた。たかが二度の射精程度では、彼女の欲求は満たされないのである。

「はぁ・・・はぁ・・・凄い、満たされるぅ・・・。ねぇケイタク様・・・もっとしましょう?」
「・・・もう、死ぬ・・・・・・うげ・・・」
「・・・え?ケイタク様?ちょっと、ケイタク様っ!?」

 呆気の無い声を最後に慧卓の声は無くなり、事後の荒い呼吸だけが室内に残された。チャイ=ギィが不満げに彼を叩くが全く応答は無い。ぐるりと彼を仰向けにして彼女は事態を理解した。度重なる行為の疲労で、慧卓は失神してしまったのだ。
 白目を剥いて気絶する彼を忘我の境地でチャイ=ギィは見下ろす。身体に宿る情念の火も、相手がいなくなればただ燻るしか出来なくなる。慧卓以外の男に抱かれる気が更々無い彼女が出来る事は、今日の行為を中断する事のみであった。隠し様の無い欲求不満を抱えながら、チャイ=ギィは慧卓を睨むように彼の肉棒を咥えた。表面や尿道に残る精液を全て啜りつつも、彼女の瞳から剣呑さが消える事は無かった。
 かくして慧卓とその他数名による、数時間の狂態は此処で一先ず幕を下ろすのであった。盗賊団を討伐してから二日目の夜の事であった。


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 さて、慧卓が意識を取り戻したのは行為が終わった次の日の昼頃であった。薬の効果は完全に消え去ったが、体力不足が祟って全身に倦怠感が残ってしまい、一日静養の命令をソ=ギィから受けてしまったのだ。あれだけの求愛を受けながらギィ母娘とアリッサに疲労は見られない。受ける側と出す側における消耗の違いが、此処に現れているといえよう。
 余談ではあるが、慧卓らが摂取した粉末状の精力剤は、あくまでも服用した個体の精力を一時的に向上させるだけであり、絶対多岐な体力が突然備わるというわけではない。生殖時にはその者本来の体力や耐久性は変わらず、故に精子を出し過ぎて死ぬ可能性というのも有り得ない話ではなかった。慧卓の場合については全てを出し切る前に気絶したため、魂まで放出する羽目にならずに済んだ。

「気分はどうだ、ケイタク?」
「・・・だるいです。凄く」

 頭に乗せられる冷えた手拭はまるで氷のようであり、慧卓は心底安らかになったかのように顔を和らげる。水の冷たさを帯びたアリッサの手が熱ぼったい彼の頬を撫でる。心配そうに見遣ってくる彼女はゆったりとしたエルフの衣服に身を包んでおり、今がプライベートの時間であると言外に伝えてくれた。
 呆れ混じりの口調で彼女は問うてくる。

「都合何発出したんだ・・・?七か?八か?」
「そんなの・・・数えたくないです。疲れすぎて」
「精豪でなくてよかったな。あれ以上やっていたら死ぬ所だったんだぞ。汗も掻き過ぎていたし、おまけに脈も全く治まらなかった。本当に冷や冷やしたんだからな!
 ・・・体調が回復したら覚悟しておけよ。行為を中断させられたチャイ=ギィ殿が御冠だ。気持ちが分かるからな、私には彼女を止める事など出来ん」
「マジですか・・・怖いなぁ。また身体が枯れそうだ」
「ついでに言っておくがっ、私との行為も暫くは駄目だ!あ、あんな激しく責められるのはっ、私の趣味ではない!!余裕を持ってからやるべきだ!!」
「は、はぁ・・・次回は頑張ります」

 懲りるという事を知らぬ無駄に意地っ張りな男の欲望を垣間見た気がして、アリッサはほとほと呆れたように首を振り、慧卓の額に乗せていた手拭を取ると水桶で洗い直す。

「では起きた事だし、身体の汗を拭こうか。ほら、起き上がれ」
「て、手伝ってもらわなくてもいいのに・・・」
「いいから起きろ。風邪を引くぞ」

 反論を寄せ付けずアリッサは慧卓を起こして、寝間着の上の部分だけ脱がせて肌に浮いた寝汗を拭いていく。慧卓の身体は騎士としては甘さが見えるのだが、しかし若さの割には筋肉質となっている。初めて逢った時を思い起こしてみても随分と印象が違う。自分の立場を自覚して心身を鍛えようとしているのが窺えた。

「・・・前より」「?」
「前より、随分と男らしい身体になったな、ケイタク」
「・・・アリッサさんも綺麗ですよ、凄く」
「世辞はいらん」

 身体を拭き終えたアリッサは寝間着を掛け直させると、再び慧卓を寝台に寝かせた。態勢のため彼の瞳は俄かに上目遣いとなっており、不思議とアリッサはその視線に釘付けとなってしまう。訳もなく彼女の喉元に言葉が出掛ってしまうが、それは無意味な息となって虚空へと消えて行った。
 しかし何を言わんとしてしまったのかは理解していた。無意識のうちに込み上げてきたのだ、例え自制したとしても将来ふとした切欠で口走ってしまうだろう。しかしだからといって人前で聞かれるには恥ずかしい台詞である。アリッサの脳裏に、『二人きりの今こそ言ってしまおう』という考えが過ぎり、それを行動に移したのはその直後の事であった。

「ケイタク」「はい?」
「・・・いや、やっぱりやめる」
「・・・何でですか。気になりますよ」
「だが、これを認めたら自分の心をどう整理したらよいか・・・何より、これが本物の思いなのかも分からないのに、まだ告げるのは性急な感じがーーー」
「うじうじするくらいなら、言っちゃった方が楽になりますよ。・・・騎士が迷いを抱えては駄目ですって」
「・・・分かった。言って、しまうぞ・・・すぅー、はぁ・・・」

 喉にその言葉を構える。意識すればするほど動悸が激しくなると思っていたのに、心は冷静なままだ。まるで乗馬のやり方を教えるかのような至極落ち着いた口調でアリッサは宣告する。その瞬間、彼女の瞼の裏には慧卓と接吻する情景ではなく、王都で待っている淡白な蒼い髪をした少女の姿が映った。

「ケイタク。好きだ」

 騎士と騎士、上司と新人。それらの壁を越えた、男女としての意識から出た言葉であるのは明白であった。慧卓の瞳が一瞬見開かれ、そしてすぐに元の大きさへと戻った。重大な事を言われたにも関わらず動揺を覚えている様子は無く、寧ろ『やっぱりそうか』と言わんばかりに目を窄めていた。どうもアリッサが長らく感じていた胸中の煩いは慧卓には筒抜けだったようだ。
 両者の間に静かな時間が流れた。続きの言葉があるとばかり構えていた慧卓は拍子抜けしたような思いを持つが、しかし不審に思う所もあった。対面するアリッサの美顔には、諦観すら感じられる影がひっそりと差していたのだ。手元から離れていくような予感がして、慧卓はつい声を掛けてしまった。

「・・・アリッサさん、俺ーーー」
「言ってみただけだ。返事はしなくてもいい。・・・お前にはコーデリア様がいるんだから。お前は王都で、コーデリア様と・・・」

 深い碧の瞳が無表情となり、ついと慧卓から逸らされる。そしてそのままアリッサは席を立ちあがろうとするが、手首をがっしりと掴まれて硬直する。とても先程まで疲弊して眠っていた者とは思えぬほどの強い力に彼女は微かに瞳を開き、胸の鼓動が大きく弾けるのを感じた。

「っ、どうした?」

 瞳を向けて、アリッサは意識を奪われた。一振りの剣のように凛とした彼の表情がそうさせた。耳元で心拍のばくばくとした音が聞こえ、それを掻き分けるように慧卓の言葉が彼女の心を貫いた。

「アリッサさん。俺の事を、軽薄な奴だと、分別の付かぬ猿だと思ってくれて構いません。でも言っておかなきゃいけない気がしたんです。だから言いますね」

 ーーーアリッサ、好きだ。
 
 その言葉を聞き、アリッサは暫く閉口する事が出来なかった。言葉が現実のものであると理解するのに幾秒か費やされ、そして胸の内に落とし込まれた瞬間、アリッサは喜びとも悲しみともつかぬ複雑な顔付きとなる。

「・・・どうして、言ってしまうんだ。聞きたくなかった。言葉にするから意識してしまうのに」
「・・・聞かせたかったんだ。俺の心を」
「そうであっても言うべきじゃないっ!お前には、コーデリア様がいるのに・・・なんで、私まで好きになるんだ・・・馬鹿じゃないの、ほんとに。大馬鹿よ・・・」

 ぽつりと零される言葉に慧卓は何も言えず彼女を見詰めるだけであった。アリッサは大きく心を揺さぶられたのだろう、騎士としての仮面は剥がされ歳相応の柔らかな言葉遣いが露見していた。飾り立てる必要の無い素直な物言いこそ、彼女の生来の姿なのだろう。
 アリッサは繊細さを窺わせるように目を細め、慧卓を見返して言う。

「どうして私の事を?」
「・・・一緒に居て、好きになったからな」
「ぷっ。理由になっていないわよ」
「っ・・・好きになるのに、理由なんてあるかよ・・・」
「子供みたいな言い草ね。誰にだって好意を寄せてしまうような感じ。そのうち、キーラも好きになるんじゃない?あの子の純真さに惹かれてね・・・きっとそうなるわよ」
「・・・節操が無くてごめん」
「もう知っているわよ。いやというほど。・・・理由もなしに人を好きになるというのは、分からないでもないけどね」
「・・・そうか」
「・・・私がケイタクの事を好きになった理由なんて、私自身もよく分かってないもの。何か切欠が無いかって探して、それらしいのを記憶から探してみたんだけど、結局駄目だった。あなたが誰かと仲良くしているのを見ていると、何時の間にか胸が苦しくなって・・・今思うと、これって他の女性への嫉妬だったのかなぁ、なんて。・・・馬鹿な女で、ごめんね」
「だったら俺はそれ以上の馬鹿だよ。コーデリア様に待っててくれだなんて言って、地方で別の女性と仲良くしたんだから」
「そうね。馬鹿二人が並び立てば、一緒に馬鹿をするのは自然な道理みたいなものよね」

 二人は寝台の傍で手を交わす。背徳を犯した者同士の弱弱しい握手であり、自らがやらかした事の重大さを確かめ合うように湿った指先を絡めている。二人が犯したのは、間違える余地もない犯罪行為であったのだ。姦淫の罪は王国では重罪であり、男子は死刑か去勢、女子は流刑か監禁が常である。

「・・・事実を言ったらコーデリア、悲しむだろうな」
「・・・裏切り者だね、私達」
「ああ。許されない事を犯してしまったな、本当に」

 深く自嘲するように言う慧卓の横に、アリッサは身体を預ける。頬を身動ぎさせれば唇が触れ合う距離であるが、今の二人にそのような真似をする気は無かった。心中に蟠るのは王都に渦巻く為政者の怒りではなく、心より慕う少女の悲愴な表情である。碧と黒の瞳が、それぞれ交わる事無く、何も映らぬ天井を見詰めていた。
 幾分かの沈黙を挟んで、再び静かに囁きが交わされる。 

「ねぇ。約束して。王都に着いたら、コーデリア様にこの事を正直に打ち明けて」
「・・・いいのか?」
「うん。あの人の目が届かない場所で裏切ってしまったんだから、それなりの罰を受けなくちゃ。・・・ごめん、ケイタクが一番重たい罪を受けるのを承知で頼んじゃって。自分勝手な事を押し付けているのは分かっているけど」
「俺の事なんて気にするな。もとはといえば俺が原因なんだから、俺は同罪だ。法の精神に則って、罰を受けなくちゃならない。俺等は騎士だからな」
「・・・背徳の騎士が、二人揃って罰を受ける。きっと王都を賑やかすわね」
「まぁ、そうだろうな」

 一度は自分を温かく迎え入れてしまった人々の期待を、このような形で裏切るとはなんとも恩知らずな事か。どんなに都合のいい解釈を取ったとしても好意的な結末を想像できない。都の人々のみならず、仲間や友人達、そして他の何よりの恩人の期待をたかが一度の行為で無碍にする。胸中に生まれた考えが、重たく彼の心に伸し掛かる。
 しかしそれであっても、自分はこれからも罪を犯してしまうだろうと慧卓は予感していた。この八方美人な性格が他者の思いを無視できるとは思えないのだ。流し流され、結局は行為に耽る。況や悲惨な最期が待っていると知ってしまえば、それを我慢するような理性は、慧卓にはまだ備わっていないのだ。

「・・・あはは。この数日でどれだけあの人を裏切ったんだろう・・・」
 
 隣に倒れるアリッサの覇気の無い声が虚空へと消えた。絡み合う指に篭る力も、ともすればあっさりと屈してしまうかと思う程のもの。互いに抱える懊悩の対象を一つとしてもその傷を舐め合う気力の起きない二人は、そのまま惰性のままに眠りへと導かれていく。現実を受け入れるには一度の覚醒だけに足りず二度の覚醒が必要なのだと、慧卓は心の隅でそう感じていた。


 
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