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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第313話】

 セシリアが待つ場所へと急ぐと、セシリアは時計を見ながらそわそわとした雰囲気で待っていた。


「わ、悪い、少し遅れた」

「うふふ。 ……待つのもデートの醍醐味ですわよ? ……お時間が少ないのが少々不満ではありますが、また機会があればわたくしとデートしてくださいまし」

「あ、あぁ。 ……とはいえ、セシリアの好きそうな内容がよくわからないが……」

「うふふ。 二人きりの時にお教えしますわ。 ……その時は、またわたくしと重ねてくれますか……?」


 言ってから軽く自身の唇に触れるセシリア――それが物語るのは、やっぱりキスしてという事で……。


「ば、バカ……な、何回も出来ないだろ……」

「うふふ、良いではありませんか♪ ……貴方と重ねれば重ねるほど、わたくしは幸せになりますもの♪」


 頬を染めるセシリア――可愛いのだが、何だか俺自身も流され過ぎな気がする……。

 ――と、携帯の着信音が鳴り響く。


「あ、少々お待ちくださいな。 …………」


 携帯を取りだし、着信相手を見るセシリアだが複雑そうな表情を浮かべて、着信を切るとスカートのポケットへと携帯を押し込んだ。


「……たまにセシリア、電話が鳴っても出ないよな? ……相手って、誰なんだ?」

「……そうですわね。 ……ヒルトさんには言っておかなければと思いますし……」


 若干言いにくそうにするセシリアだが、意を決したのか真っ直ぐ俺を見つめながら。


「実は……いつか言ったかと思いますが、わたくしには親同士が決めた許嫁が居ますの……」

「……あ、確かに言ってたな」


 ……てか、確かセシリアと初めてキスした時に訊いたような……?


「……この間から掛かってくる電話は、全てその許嫁の方からですの。 ……一時帰国した折に、向こう側のご両親に正式に辞退をしたのですが……。 あ、向こう側のご両親には納得されましたのよ? 残念がっては居ましたが……」

「……成る程」


 ……普通なら、絶縁とかされるかもしれないのだがその許嫁の両親はセシリアを可愛がってたのかな……それだけに、残念って思ったのかも。


「……ですが、相手の方は納得していなく、ずっと携帯に連絡をしてくるのです。 ……ちゃんと本人にもお断りしたのですが」

「……ふむ。 だからといって着信拒否は出来ないもんな」

「えぇ。 ですから……少し対応に困ってますの……」


 本当に困ってるらしく、溜め息を吐くと共に頬に手を当てるセシリア。


「……俺が話してみようか?」

「え? ……いいえ、やはりこれはわたくしの問題ですから……。 ……ですが、もしかしたらヒルトさんのお力を借りるかもしれませんので、その時はよろしくお願いしますわね?」

「……そっか。 ……いつでも力になるから言えよ? 俺だけじゃなく、美冬だって未来だって、他の子だって力になってくるるさ、これがな」

「そうですわね。 ……うふふ。 わたくし、この学園に入れたのを感謝しますわ。 ……ヒルトさんに出会えたのもそうですが、良き友人達とも出会えたのが――あ、そろそろ行きませんか? 時は金なりと言うではありませんか。 せっかくのデートですもの」


 そう言って俺の右腕を取ると絡ませるセシリア。


「……だな。 行きますか」

「えぇ♪」


 ニコッと微笑むセシリアと共に、俺は廊下を歩いて進んでいく。

 途中、他愛ない話からセシリアの音楽の話に変わり――。


「ふむふむ、セシリアってバイオリン弾けるんだ?」

「えぇ。 他にもピアノを少々たしなむ程度にはやってますのよ?」

「成る程。 ……音楽は基本、俺自身歌うだけだからな。 何か楽器が出来れば良かったかもしれないが、残念ながらタンバリンとかカスタネットぐらいしか出来ないからな」

「そ、それでしたら……」


 絡ませた腕を引っ張り、指差す先にあったのは『吹奏楽部の楽器体験コーナー』と書かれた教室があった。


「今からでも遅くはありませんからやってみてはいかがかしら? よ、良ければ、わたくしが教えて差し上げますわよ?」

「ふむ。 ……まあ年くってからでも楽器を演奏する人も居るしな。 親父みたいにハーモニカぐらいは吹いてみたいが。 他だとトランペットとか?」

「うふふ♪ 挑戦するのは悪いことではありませんわよ? ヒルトさんは楽譜は読めますの?」

「ん? 一応読めるが――」

「なら大丈夫ですわよ♪ そこに愛があれば音楽を楽しめますわ♪」

「……成る程? よくわからないが、とりあえず入ってみるか」

「えぇ。 では参りましょう」


 そう言ってセシリアが扉を開ける。

 中には吹奏楽部部長らしき人が部屋の真ん中でボーッと楽器の手入れをしていた。

 見る限り、あまり人が来た形跡が内容に見える――だが、並べられた各種楽器の品質が高く、有名な物などもあるのは流石というか税金の無駄というか――。

 とはいえ、流石にストラディバリウスみたいな物は無さそうだが。

 それはそうと、俺達が入ったのも気付かず、グリスを指しては具合を確かめるようにバルブを押していた。


「んと、すいませーん」


 いつまでも眺めていても埒があかないので、俺は声をかける。

 すると、流石に気づいたのか部長さんが顔を上げると嬉しそうな表情を浮かべながら――。


「おお! おお! やっと六人目のお客さんだ! さあさあ此方へどうぞ! ……って、よく見たら有坂くんじゃん! そしてそっちはイギリス代表候補生のオルコットさん!」

「ど、どうも」


 少し照れながらセシリアは頭を下げた。

 ……てか、俺とセシリア入れて六人って少なすぎだな。


「部長さん、ビラとかは配ってないのですか?」

「……ビラは配ってないのよね~。 その前に刷ってすらないんだけど――それはさておき、ようこそ吹奏楽部の楽器体験コーナーへ!」


 ちょっとテンションが高めの部長さん――余程人が来なかったのだろう……目から汗が流れそうだ。

 ――と、ここでセシリアが。


「あの……此方では、どの楽器を体験させてもらえますの?」

「ん? 今あるやつならどれでも! 因みに私のオススメはホルンよ。 ホルンって形が素晴らしいわよね。 うにうにしてて」


 そう部長が語るホルンを見ると、確かに言う通りうにうにした形をしてるのだが――うにうにしてるから気に入ってるのだろうか。

 他にもバイオリンにフルート、トランペットもあれば何やら見たことが無いような楽器も見えるのだが――。


「折角だし、有坂くん。 早速どうぞ!」


 そう言ってさっきまで手入れ――チューニングしていたホルンにマウスピースを差して渡してくる部長さん。

 受け取ると、ずしりと見た目よりも重い印象を受けた。


「……持ち方ってどうやればいいのです?」

「んとねー。 右手はまずここに指かけて、親指は奥のほう。 で、此方の出口あるじゃない? そっちに左手を突っ込んでみて」

「成る程。 ……こんな感じですか?」


 若干持ちにくい体勢なのだが、多分ホルンを吹く人皆この体勢なのだろう。

 ……そう思うことにした。


「じゃー、勢いよく吹いてみようー。 さんはいっ」


 促され、言われた通りに息を吐いてみる。


「ふー! ふーっ!! フーッ!!! フーッ!!! ……三半規管が強化されますよ、これ」


 幾ら吹いても音が鳴らず、このまま息を吐いても肺活量がアップするしか思えなかった。


「あー、えっとね、実は思いっきり吹くんじゃなく、まずはマウスピースにこう口を当ててみて?」


 自分の唇の両端を押さえて見せる部長さん――てか、何で思いっきり吹かせたんだろうか?

 ……まあ、気にしても仕方ないので言われた通りに口を着ける。


「こんな感じですか?」

「うん。 それで、真ん中から一定で息を吐く様にするの」

「了解です」


 言われた通りに一定の息の量で吹いてみるが鳴らず、再度強めに一定量で吹いてみると少しだが音が出た。


「……出たことは出ましたが、ホルンって大変ですね」

「そうだねー。 まあ入部して毎日吹いてたら大丈夫よ。 ついでだから有坂くん、入部してみる? うちは基本有坂くんが男だからって無茶な事はさせないし、ナンセンスだもん」

「俺ですか? ……流石に勝手に決められる立場じゃないですからね。 代わりにセシリアとかどうでしょうか?」


 そう言ってセシリアを紹介すると、流石のセシリアも驚きを隠せず。


「わ、わたくしですか!?」

「あぁ。 バイオリン弾けるって言ってたし、管楽器も出来ると思うんだが」

「や、やったことがあるのは弦楽器だけですわ。 ……管楽器は、見たことはありますが、やろうと思った事は一度も――」

「そうなのか? 案外似合いそうなんだけどな……フルートとかさ、セシリアに似合うんじゃないか? 何て言うか……深窓の令嬢ってやつかな?」

「……深窓の……令嬢ですか?」

「うん。 ……まあ何にしてもさ、愛があるならやってみなよ。 まずはホルンで!」


 そう言ってさっきまで持っていたホルンを手渡すと、慌てて受けとるセシリア。


「そ、そうですわね! 愛をもって管楽器を吹いてみせますわ!」


 意気込みはよく、マウスピースに口をつけようとするセシリア――だが。


「あ、マウスピース交換するよ。 はい、どうぞ」

「えっ? ……あっ……」


 何故か取られたマウスピースを眺めるセシリア、それを気にせず、新たなマウスピースを差す部長。

 ……心なしか、さっきのマウスピースがよかったようにも見受けられるが――。


「……まあ良いですわ。 ……今さら間接キスなんかよりは、重ねる方が良いですもの」

「??」


 部長さんは言ってる意味がわからず、疑問符を浮かべるのだが俺には意味が理解でき、全身の血液が沸騰する思いだった。

 その後、セシリアもホルンの音を出すことに成功する辺り、俺なんかよりも彼女の方が才能があるだろうと再認識後、吹奏楽部を後にする。


「さて、セシリアとはここまでだな」

「そうですわね……。 名残惜しいですが、仕方ありませんわ。 ……このあとは美冬さんに未来さんも待っていますもの。 我慢致します」

「悪いなセシリア。 ……さっきの話だが、いつでも力になるから言ってくれよな?」

「えぇ。 ではヒルトさん、また後程……」


 笑顔で見送るセシリアをその場に残し、俺は正面玄関へと向かった。 
 

 
後書き
ある程度セシリアの許嫁問題のプロットも出来つつあるが、多分別枠で書くかもφ(..) 
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