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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第113話】

――レゾナンス二階女性用水着売り場――


突発的な出来事はあったとはいえ、シャルのお陰で俺は窮地を脱した。

さっきも思ったが、こうやって迷惑しかかけてないっていうのを改めて実感させられる。

――出来るだけ今日は彼女に楽しんでもらえるように心掛け様と、俺はそう思った。

と、突然携帯の音が鳴り響く――一夏のだ。


「鈴からだ。――わりぃヒルト、シャル。ちょっと電話に出てくる」

「あぁ、こっちは気にしなくていいからな」


そう言い、店内から外へと出ていく一夏――と、出たあとの外の看板近くで金髪と銀髪の髪が見えた気がした――それを見ているとシャルが。


「ヒルト、どうかした?」

「ん?いや……向こうに金髪と銀髪の髪が見えてな。……何となくセシリアとラウラじゃないかなって思ってな、これが」



まあ確証は無いがな、金髪=セシリアと思うのも間違いだし…。

そんな風に思いながら外の看板を眺めていると、シャルが慌てたように喋り始めた――。



「そ、それよりもっ。ぼ、僕の水着を選んでくれるかな?」

「ん?……あぁ、構わないぞ?その前に先に母さんに連絡していいか?」

「も、もちろんだよ」


慌てつつも笑顔で応えたシャル――携帯を取り出すと俺はその場で電話をかけた。

――店の外とも思ったが、要件が直ぐ済むと思ったためここでかける。


コール音が鳴り、暫くすると――。


『もしもし、お母さんですよぉ~』

「母さん?……今二階の女性用水着売り場に居るから――」

『うふふ、誰かと一緒に来てるの?』

「……あぁ、シャルの水着を選びにな。母さんは買ったのか?」

『ううん、これからよぉ?――じゃあ場所もわかったから直ぐにお父さんと向かうわねぇ?』

「あぁ、じゃあ母さん、また後で」

『うふふ、シャルちゃんに似合う水着、選んであげてねぇ?』


そんな風に言い、電話を切った母さん――一言余計に多いって。

携帯をポケットに入れるや、シャルにするりと腕を取られてそのままの勢いに引っ張られていく。

空いた手には何着かの水着を持った状態で――。



「シャル?どうした?」

「…………」


引っ張られてながらもシャルに問いかけるがシャルは何も言わず、微かに見える頬は赤くなっているように見えた――そして、勢いそのままシャルと試着室へと入って――。


「ちょ、ちょっとシャル…!?お、俺まで試着室に入る必要は無いだろ…!?」


そう店に迷惑がかからない程度に声をあげ、試着室を出ようとはするものの、物凄い力で腕を組んでいるため抜け出せず――そしてシャルは、その頬を更に真っ赤に染めながら視線を真っ直ぐ、俺を見つめながら言った。


「あの、ね?ほ、ほら、水着って実際に着てみないとわかんないし、ね?」

「そ、そりゃそうだが…だからって俺まで入る必要は無いだろ?」

「……うぅ…」


そうずばりと言うや、シャルは若干唸りつつも絡ませた腕だけは離さないつもりだった。

――さっき、ちらりと見たのだがここは女性の試着がOKらしい、一度試着された水着は店員が回収してクリーニングに出すそうな――まあ客商売だからこれぐらいは普通だろう、てかしないと店の信用に関わるだろうし。

――それはそうと、腕を組んでる為かシャルの胸が押し付けられてイヤでもそこに意識が向かってしまう。

――もちろん、俺としては嬉しい状況なのだがそれはそれ、このまま一緒に試着室に居る理由にはならない――と、シャルは。



「す、すぐ着替えるから待っててっ」


言うや、絡ませた腕を解放するシャル――それを見た俺は、外で待っててと勝手に理解し。


「ん、じゃあ外で待ってるからな?」


そう言い出ようとすると、慌てたシャルが勢いよく言った――。


「だ、ダメ!」


その言葉に思わずピタリと足が止まってしまい、シャルの方へと振り向くとシャルは――。


「だ、大丈夫。時間はかからないから」


そう言うや、いきなり上着を脱ぎ始めるシャル――。


「……なっ…!?」


俺が居るにも関わらず、上着に手をかけるシャル――腹部がちらりと見えると慌てて俺はシャルに背を向けるのだがこの試着室は両面鏡になっていたので慌てて目も閉じる。

目を閉じると聴覚に意識が集中するせいか、背中越しに聞こえる衣擦れの音が妙に大きく聞こえ、さっきからバクバクと心臓の鼓動が早くなっているがそれをさらに加速させ、口から心臓が出る勢いだった。

もちろん、こんな状況で理性を保てというのが無理な話で――。


「……シャル…?」

「な、なに…?」


そんな声が聞こえるが、結局俺は何も言えず、かといって襲うという事も出来ずに悶々とするだけだった。


「わ、悪い……何でもない…は、早く着替えてくれ……」

「ん……」



肯定するかのように返事をするとぱさり、と衣服の上に何か軽いものが置かれた様な音が聞こえた。

……多分下着だろう、脱ぎたての。

今目を開ければシャルの全裸を拝める――だがそれは、絶対にダメだと思い更にキュッと目を瞑る。

どうすることも出来ず、だからといって今から試着室を出るのはシャルの裸を人前に晒す結果になるため出ようにも出られない。

だから俺はこう思うことにした。


――これは欲望に負けない為の精神修行だと――。

――若干無理矢理な気もしないでもないが、こうでも思わないと俺は襲ってしまうだろうからだ――シャルが何を考えて一緒に試着室に入ったのかはわからないが、流石にこの状況で理性に負けて欲に忠実になると確実に嫌われるだろうし……。

そんな風に思っていると、背中越しからシャルの声が聞こえてきた。


「い、いいよ……?」

「う、うん……ふぅ…」


そう一拍呼吸を整え、覚悟を決めてくるりと振り返り、ゆっくりと瞳を開けると――。


「…………」


思わずその姿に俺の目を奪われた。

セパレートとワンピースの中間の様な水着が上下に分かれていて、背中を写してる鏡からはそれをクロスして繋げるという構造になっているのが確認出来た。

色は鮮やかなイエローで、正面のデザインはシャルの胸の谷間を強調するように出来ていて、待機形態の『リヴァイヴ』の十字マークのネックレス・トップが埋まりそうにも見えた。


何も言わずに黙ったままシャルの水着姿を見ていると、不安に思ったのかシャルが口を開き。


「に、似合わないかな……?え、えと、まだ何着か持ってきてるんだけど――」


そう言うや、屈んで水着を取ろうとするシャルを思わず視線で追うと、見てはいけないものを見てしまった――シャルが先ほど脱いだ下着だ。

思わずかぁーっと頬に熱を帯びるのを感じ、慌てて俺は言う。


「ま、待てって、それが似合ってるぞシャル?うんうん、似合うぞ?」


本心としてはちらりと見えたライムグリーンのビキニを非情に見たいと思ったのだが、既に状況が色々まずいので――でも。


「そ、そのライムグリーン色のビキニも良いと思うぞ?」


その言葉を聞いたシャルは、嬉しそうに――。


「じゃ、じゃあ、今着てるのと、このライムグリーンのビキニ――この二着、これにするねっ」

「あ、あぁ……じゃあ出てるからな?」

「あっ…」


そんなシャルの名残惜しそうな声が聞こえるが、流石にこれ以上はまずいので試着室のドアを開けて俺は外に出る――と。


「え?」

「あらぁ?」


そんな声が聞こえる、目の前に居たのは目をぱちくりさせた山田先生で、俺を見上げるように見ていた。

一方の向こう側から聞こえたのは母さんの声だった――。


そして、山田先生の後ろには織斑先生が居て、頭を押さえるや――。


「何をしている、有坂……」

「は、ははっ……」


乾いた笑いが出た次の瞬間、山田先生の悲鳴が店内を木霊した――遠くでは母さんが口許に手を当てて微笑ましく見ているのが見えた。 
 

 
後書き
このエピソードにせずに普通に水着を着替えてそれをヒルトに見せる――つもりで書いていたのですが何だか変になったので原作通りの話に

よりシャルがヒルトに自分の事を意識させるために行ったと思ってくれるとありがたいです 
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