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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第667話】

 
前書き
お待たせしました 

 
 突如として降り注いだ極大の粒子攻撃、状況もわからぬまま降り注いだ粒子ビームによって消し炭になる一般人。


「何だ!? 直上からのビーム攻撃だと!?」


 観覧車内で叫ぶヒルトは、窓際から空を咄嗟に見るが、いまだ降り注ぐ粒子攻撃がただただ無慈悲にテーマパークを焼いていく。


「こ、こんなことって……」


 絶句するソフィーは口許を手で覆い、信じられないといった表情で見つめていた。


「ヒルトさん! このままここで見ていても埒があきませんわ! せめてわたくしたちで避難誘導を!」

「っ……わかった。 ソフィー、ここから脱出して避難誘導するぞ!」

「は、はいっ!」


 緊急展開し、ヒルトは観覧車のドアを吹き飛ばすとそこからソフィーを抱えて脱出、続けてセシリアも脱出して地上へと降り立つ。

 テーマパーク内は混乱していて、従業員による避難誘導も儘ならない状態だった。


「駐車場側は火の手が上がっていません! 従業員の指示に従って駐車場側に避難を!」


 ヒルトの叫びに、近くにいた従業員も呼応して避難誘導を開始した。

 火の手が上がった場所から逃げ出す人々、泣き叫び、煙を吸ったのか一部の人は激しく咳き込んでいた。

 降り注ぐ粒子ビームは一旦止むも、油断できない状況にヒルトは――。


『ナギ、雅! 直上で動きがあれば報告してくれ! どんな些細な情報でも構わない!』

『了解なのですよぉ(`皿´)』

『任せてくれ主君!』


 混乱が続く現場、セシリアは別の場所への避難誘導と救助の為に移動、残ったソフィーに対してヒルトは避難を促した。


「ソフィー、何処も危険だがここにいるよりは皆が避難してる場所に避難したほうがいい」

「う、ぅん……。 でも……あ、あたしだってIS学園生徒だし、セシリアみたいに代表候補生じゃないけど、避難誘導なら――」

「ああ、そうだな。 ならさ、逃げ遅れた人に対して避難誘導を頼めるか? そして自分の避難も行う。 ……俺は君にも無事でいてほしいから!」


 肩に手を置く俺に、決意の満ちた眼差しで見つめ返したソフィーは、力強く頷いた。


「……わかったよ! ヒルト、気をつけてね! あたしも気をつけるから!」


 そう言って近くで倒れていた人を介助しながらソフィーは混乱極まる人達に対して避難誘導を行い始めた。

 違う場所でも未来や楯無等の専用機持ち及び学園生徒も避難誘導を行い始める。

 燃え盛るアトラクション、ヒルトは直ぐ様センサーを稼働させて生存者が取り残されていないかを各所回り始めた。

 そして一ヶ所、ドッグパーク内に人ではない生体反応――つまり、犬たちが取り残されているのに気が付いた。

 すでにドッグパーク内では煙が充満していて、逃げようにもドアが開かず取り残された犬たちが混乱したようにうろうろしたり吠えたりしていた。


「キャンキャン!(出れないよ!)」

「わうぅぅ……」


 小型犬たちの必死の鳴き声、煙を吸って衰弱する中、大型犬であるドーベルマンのドーベンは――。


「ガウッ! ガウガウッ(落ち着け! 必ず助かる)」

「キャウゥ……(でも……逃げれないよぉ)」

「バウッ! ワンワンッ(ドーベンが助かるって言ってるんだ! 信じねぇでどうする!)」


 シベリアンハスキーのシベリアンが鼓舞する様に声を掛けるも、室内はどんどんと煙が充満していく。


「……わふっ(しかし、煙でやられてしまうかも)」


 ゴールデンレトリバーのゴル男はそう告げる、衰弱し始める小型犬が無数に現れ、ドーベンが瞼を閉じて死を覚悟した時だった――ドッグパークの壁が粉砕され、充満した煙が抜けていく。

 粉砕された壁から現れたのは――。


「やっぱり取り残されていたか、早く逃げるんだ!」

「ガウッ!?(ご主人!?)」

「バウッ!(ヒャッホー!)」

「ワンワンッ!(皆助かったぞ!)」


 崩れた壁から次々と外へ逃げ出す犬たち――衰弱した小型犬を口に咥わえ、大型犬達も続々と逃げ出す。

 ヒルトも残った小型犬を抱えてドッグパークを脱出した。

 そして――脱出して暫くするとドッグパークは火の海に飲まれた。


「悪い……最後まで皆の面倒を見れないけど、まだ取り残された人がいないか見ないといけないんだ」


 そうヒルトは告げると、ふわりと飛翔してその場を離れた。


「ガウッ……(ご主人、ありがとう……)」


 そんなドーベンの鳴き声は風にかき消されていった。

 一方でヒルトと離れたセシリアは泣いている小さな子を見つけた。


「パパ、ママ、どこ……? ……グスッ……うぇぇええん……」


 涙を流す少女に、自分の小さい頃の姿を重ねて見たセシリアは直ぐ様その子に駆け寄った。


「大丈夫、大丈夫ですわ。 貴女のパパとママも、きっと大丈夫」

「ほんとぅ……?」

「えぇ、わたくしを信じてくださいまし」


 慈しみに満ちた微笑みに、少女も涙を拭いて力強く頷いた――不安だった心が落ち着いたのだ。

 同時刻――ソフィーも避難誘導をしながら自分も避難していると――。


「真由ーっ! 何処にいるのー!?」

「真由ーッ!!」


 夫婦と見られる二人が子供の名前を必死の思いで叫んでいた。

 他の人も気づいてはいるが、いの一番に避難することを優先している。

 ソフィーは小さく頷くと夫婦に近付いて――。


「どうしました? あたしで良ければ力になりますよ!」

「あ、ああっ! ありがとうございます! 避難する途中で娘と離ればなれになってしまって――」


 夫婦から事情を聞き、娘の名前と写真を見せてもらうとソフィーは二人を安心させるように――。


「あたしもお手伝いします! 一人よりも二人、二人よりも三人ですよ!」

「ありがとうございます!」


 夫婦二人頭を下げて礼をするも、ソフィーは小さく頭を振り――。


「お礼は真由ちゃんが見つかってからですよ! 真由ちゃーんっ!」


 いの一番に迷子の名前を叫ぶソフィーに続き、夫婦二人も娘の名前を叫んだ。

 冷たい風が頬を撫でる――地上も上空もそれは変わらない。

 更にその上空――成層圏の向こう、エクスカリバーの開かれた砲口から淡い光を放ち始める。


「エクスカリバー、再度エネルギー充填を開始しています!」

「クソッ! これじゃあ無差別テロと変わらないじゃないか!」


 責任者である四十代の男は机を叩くと、書類が散乱した。

 未だ制御を離れたエクスカリバーに苛立ちを隠せない上に再度その砲口が地上に向けられているのだから仕方がないのかもしれない。


「エクスカリバー、エネルギー充填率十パーセ――!! エクスカリバーから光が!?」

「何だと!? 低出力での射撃!?」


 事態の読めない現場は混乱を極めた――そして、エクスカリバーの狙いはテーマパーク上空に居た有坂ヒルトだった。


「さぁて、此処等で退場してもらわないと~。 ね、銀髪……☆」


 テーマパーク上空、ナギ、雅両方から――。


『マスター!Σ(゜□゜;) 上空からビームが来るですよぉ!(・ω・;)(;・ω・)』

『狙いは主君の様だ! 直ぐに防御体勢を!!』


「!!??」


 直上、無意識に上空を見上げると僅かに見える光に――。


「チィッ! ナギ! シールドバリアー及び絶対防御を限定展開!! 直上の攻撃に備える! 雅はイザナミのシールドエネルギーをイザナギに譲渡、それと並行して各部可変スラスターを姿勢制御モードに移行!! 腕部展開装甲を防御モードに移行!!」

『任せるのだ、主君!!』


 言い終わるや、ヒルトはフルフェイスを展開――完全全身装甲《パーフェクト・フルスキン》となった天・伊邪那岐之神のデュアルアイに光が点り、ヒルトの瞳同様紅く輝きを放つ。

 その刹那、降り注ぐ粒子ビームはヒルトに直撃――だがシールドバリアー及び絶対防御の限定展開によって機体にはダメージを負わない。

 ――しかし。


『し、シールドエネルギーの消耗が激しいですよぉ!(><。)。。』

「クッ……! やっぱり学園仕様じゃ厳しいか……!?」

『主君、シールドバリアーが破られるぞ!!』

「チィッ! 絶対防御にエネルギー転換! 腕部エネルギーシールドも同時に! それも突破されたら電離分子結合殻装甲《プラズマシェルアーマー》で防ぐ!」


 シールドバリアーが突破され、絶対防御及び腕部エネルギーシールドで防ぐもビームの出力が凄まじく、姿勢制御用スラスターで体勢を維持しなければ簡単に防御体勢を崩される――しかしこの出力は初弾の十分の一程の威力。


『イザナギのエネルギーが無くなるのですよぉ!(ToT)』

『まだイザナミのエネルギーがある! ナギ、譲渡するぞ!』

『ありがとうなのですよぉ、雅ちゃん( ^_^)人(^_^ )』


 消耗したエネルギーが急激に回復するも、それらは直ぐに消耗していく――腕部エネルギーシールドへのエネルギーバイパスを絶ち、最後の砦である天・伊邪那岐之神の装甲で受けるヒルト――。


『装甲温度が急上昇なのですよぉ!(;_;)』

「装甲熔解までの時間は!?」

『イザナギ、イザナミ共に残り85.9カウント!!』

「残り一分二十秒かよ……!!」


 装甲温度と共に機体内部の温度も急上昇――噴き出す汗が額を濡らす。

 別の場所、IS学園の灯台では――。


「わわんっ(また光ってるわわんっ)」

「ホーホー(ラブリーな光フクロウよ)」

「わわんっ?(ラブリーわわんっ?)」

「ホー(そうフクロウ)」

「わんっ(ラブリーわんっ)」


 ――等と呑気に会話するいぬきちとフゥくんであった。

 場所は戻る、装甲熔解まで残り三十秒を切った所で粒子ビームの攻撃が止む――というより、大気による減圧と出力の低下によって届かなくなったといえば正しいのかもしれない。

 装甲が冬の寒空に晒され、白く周囲を染め上げた。

 各部装甲が開くと白煙を噴き出すと共に、緊急冷却によって内部温度を下げる。


「はぁっ、はぁっ! ……凌げたか……」


 フルフェイスのみを展開解除した俺は額の汗を拭う。


「……避難状況は? 火の手はまだ上がってるのか……けど、消防隊が来てくれたか」


 地表へと降り立つ――サイレンの音が周囲に鳴り響き、急いで消化活動を開始した隊員たちをすり抜ける。

 救急車も何台も到着していて、警察関係者もあわただしくテーマパークへと足を踏み入れた。

 テーマパークの中央へと向かうと、そこにはセシリアが居て小さな女の子をあやしていた。


「セシリア、どうやら無事のようだな」

「ヒルトさんこそ……。 あの攻撃の中よく御無事で。 ……安心しましたわ」


 ニコッと俺に微笑み、セシリアは女の子の方へと向くと――。


「ヒルトさん、この子が御両親とはぐれてしまったようですの……」


 そっと少女の髪を撫でるセシリア、僅かに涙目の少女だが撫でられるのは心地いいらしく瞼を閉じていた。


「そうか……。 君、名前は言えるか?」

「……真由っていうの……」

「真由ちゃん、お兄ちゃんに任せておけ。 君のパパとママはお兄ちゃんとこのお姉ちゃんが探すから」

「う、うん!」


 ニコッと微笑む少女――と。


「真由ー! 何処だぁー!」

「真由ー!! お母さんとお父さんはここよぉーっ!」

「真由ちゃーん!」


 そんな声が喧騒を掻い潜り聞こえてきた、その声を聞いた少女は――。


「あっ! パパとママの声だ!」


 たたっと駆けていき、夫婦の元へと走るとそのまま抱きつき、不安だった気持ちが込み上げたのかわんわんと大声をあげて母親に泣きついた。


「よかったぁ。 真由ちゃん見つかって良かったですね♪」

「ありがとう、君も手伝ってくれたおかげだよ」

「いぇ、あたしに出来る事ってこれぐらいですから……」


 そう言ってソフィーに頭を下げる夫に、ソフィーは小さく頭を振る。

 嫁も少女をあやしながら――。


「ありがとうございます、真由を探していただいて。 ありがとうございます、真由を保護していただいて。 私達、この子を失ったら生きていけません……」


 何度も何度も頭を下げる夫婦――セシリア、ソフィー共々に安心した表情を見せたその時だった。


「お嬢様、此方に居ましたか」

「えっ?」


 セシリアが振り返ると共に俺もソフィーも振り返ると其処にはセシリアのメイドであるチェルシー・ブランケットの姿が。


「え……チェルシー? なぜ此方に? イギリスで仕事を任せていた筈ですが……」


 狼狽するセシリアを他所に折り目正しく頭を垂れ、抑揚のない――無機質な、感情が込められていない声で告げた。


「御迎えに――いぇ、それは表現としてはおかしいですね。 セシリア・オルコット、イギリスで御待ちしています」


 そう告げた次の瞬間、チェルシーの周囲に粒子が集まり、光に包まれた。


「ISの粒子展開!? セシリア、チェルシーさんは専用機持ちだったのか!?」

「て、適性はありましたがチェルシー自身が断ったはずですわ!!」

「こ、こんなところでIS展開するなんて……」


 まだ周囲に人が居る中でのIS展開――チェルシーの身体に光が収束し、その身に纏っていたのはブルー・ティアーズ三号機である『ダイヴ・トゥ・ブルー』だった。


「セシリア・オルコット、イギリスで会いましょう。 それでは」

「いや、待てよチェルシーさん!」


 徐々に空間へと沈み行くチェルシーにそう声を上げた俺に――。


「……ヒルト様」


 何か訴えかける眼差しを向けたチェルシー――消え行く彼女の表情が何処か違和感を感じた俺は――。


「俺もイギリスに行く。 何故貴女がISを所持してるのか、何故俺に訴えかける眼差しを向けたかの理由、知りたいからな」

「…………」


 言葉を発することなく消えていったチェルシー。

 喧騒渦巻く中起きた一連の出来事――エクスカリバーが発端となる事件の幕開けだった。 
 

 
後書き
多分年末最後の更新

何度も文章が消えたりしてヤバかった 
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