IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【第八十八話】
――IS用ハンガー――
少しアリーナから離れた場所にあるIS用ハンガー。
現在俺とシャルル、そして母さんの三人がその場所に居た。
村雲・弍式の装着を解除し、何やら母さんが持ってきた機械で塗装するように分子結合殻の改良型を吹き付けていた。
「母さん、やりたかったことってそれなのか?」
「えぇそうよ?財団の許可ももらってるから何も心配いらないわよぉ」
「【F.L.A.G.】だったな。調べようとしてもセキュリティがあり得ないぐらいレベル高くてわからなかったんだが…」
閲覧不可とか余程凄い財団なのだろうか…。
【F.L.A.G.】って名称だからイギリスにも関係してるのかと思って四月に一度セシリアにも聞いたのだがセシリアも知らなかったらしい。
「まああまり詳しい内容は言えないけど、変な組織とかじゃないわよぉ?色々な事業を展開していたり、州警察や軍との繋がりもあったり――」
「てかそこまで言って問題ないのか母さん?」
「えぇ、この辺り【まで】なら何も問題ないわよぉ?――シャルルちゃん、装甲外すから手伝ってくれる?」
「は、はい。お母さん、手伝いますね?」
「うふふ、皆にお母さんって言われちゃうと皆私の子供みたいねぇ♪」
満更でもなく、そう呼ばれるのが好きなのか未来にも呼ばせていた。
装甲をはずしていくと、むらなく分子結合殻を吹き付けていく母さん。
吹き付けが終わるや直ぐ様村雲に装甲を着けていく。
「――てか俺、する事ないな…」
母さんとシャルルがてきぱきと動くせいか、俺のする事が力仕事以外何もない。
……俺一人でやると手引き書片手にしないといけないから時間がかかってしまう。
基本、日曜日の早朝に取りかかって終わるのが昼をまわるという燃費の悪さ。
因みに毎週してる訳ではない、本来なら毎週でも――というか毎日でもやらないといけないのだが、あいにくそちらに時間を回すと訓練が出来ず、程々休むことも出来ない。
整備科が二年からあるらしいが、何故一年で作らないのかがわからんが――。
誰か専属で整備してくれる子居ないかな…居ないだろうが。
一夏が言ったら多分女子の殆どが立候補するだろうしな。
――うーん、恐るべし、姉の七光りパワー。
そんな下らない考えをしている間にも、どんどんと装甲を分子結合殻で覆われていき――。
「はい、これでお仕舞い~。シャルルちゃん、お手伝いありがとうねぇ~」
「い、いえ。僕もヒルトやお母さんのお役に立てて嬉しいですから」
胸に手を当て微笑むシャルルに対して、母さんが取った行動は――。
「うふふ、シャルルちゃん可愛いわねぇ~」
「え?――わわっ」
言うや、ぎゅっとシャルルを抱き締めた母さん。
突然の事に驚いたシャルルだが、直ぐに目を閉じ、背中に腕をまわすと母さんを抱きしめ返した――。
「困った事があったら、私に相談して構わないからねぇ?……【女の子】なんだから、色々必要な物もあるでしょ…?」
「あ……は、はぃ……」
抱き合いながら母さんがシャルルに何かを言うと、真っ白な頬が一気に桜色へと変わりはじめた――。
言ってる内容は俺の方まで聞こえてこないが……多分、女の子特有の話なのかもしれない。
「うふふ、色々大変だけどシャルルちゃん?お母さんも味方になるからねぇ?もし何か処罰されるとかあればお母さんがフランス政府に掛け合うからぁ」
「………てか母さん、フランス政府関係の人に知り合い居ないだろ?」
その話だけは聞こえてきたので思わずツッコミを入れてしまった。
「そんな事ないわよぉ?世界中に茶飲み友達が居るのがお母さんの自慢ですもの♪」
ハグを止め、シャルルを解放した母さんはくるりと此方に振り返った。
その振り返った拍子に穿いていたロングスカートがふわりと舞った――。
「そうなのか?それは初耳だが…」
「うふふ、ヒルトは母さんの年賀状の多さを見てないからねぇ♪」
――いやいや、それは関係無い気がするが。
「――まあいいや、なあ母さん?シャルルが女の子ってバレたら色々大変な事になるんだが。――何か知恵無いかな?シャルルの牢屋送りを阻止する方法とか」
「うふふ、それはか・ん・た・ん・よ♪」
何故か楽しげに口を開く母さん、そしてその口から出た言葉が――。
「他の国籍の男の子と【結婚】して、その国に帰化すればいいのよぉ♪日本とか、日本とか、日本とか♪」
「日本しかねぇじゃねぇかっ!?」
――言った内容がまさかの国際結婚、確かにそれなら問題ないかもしれないが――。
「うふふ、ヒルト、シャルルちゃんに立候補しなさいよぉ♪」
「ふぇっ!?」
「ば、ばか言うなよっ!?第一、シャルルが俺なんかを選ぶとは思えないって!」
母さんの発言に、シャルルは先程よりも顔を赤くし、俺の方も頬が赤みを帯びるのを感じた。
「うふふ、でもシャルルちゃんは満更じゃないかも?」
「えっ!?そうなのか、シャルル?」
「ふえぇっ!?ふえぇっ!?」
――と、激しく狼狽し、両手で顔を覆うように隠すシャルル。
「――母さんが変な事言うからシャルル困ってるじゃないか…ったく」
「うふふ♪――…でも母さんね、ヒルトが選んだ子なら大賛成だからねぇ?未来ちゃんとか、セシリアちゃんとか、シャルルちゃんとか――後、美冬ちゃんも♪」
「――おい母さん、妹が混じってるじゃねぇか。――ったく、未来は他に好きな奴が居るらしいし、セシリアは許嫁が居るかもしれないだろ?シャルルだって国に想い人居るかもしれないのにさ」
「うふふ、居ないかもしれないでしょ?ね、シャルルちゃん♪」
シャルルの方へと振り向き、ウインクする母さん――そんな母さんに肯定するように頷くシャルル。
――て事はシャルルには国に想い人が居ないのか?
……まあ、その辺りは今度聞くかな。
「てか母さん、まだ作業あるしやろうぜ?ほら、【ランドホイール】を脚部にセットしないと」
「そうねぇ、じゃあヒルト、村雲装着してね」
そう言うと、量子化されたランドホイールを村雲の前に呼び出した。
何故俺が知ってたかと言うと、ハンガーに来る途中で説明されたからだったりする。
話は戻して母さん曰く、まだ試作段階の量子化技術らしく実用化はまだされていなく試作で母さんが扱っているとか――。
実用化されれば生活が一気に良くなるらしく、開発が進んでるとか――。
村雲を身に纏い、歩いてランドホイールの前まで歩くと、ランドホイールを脚部にセットするや、素早く母さんがセットアップしていく――。
いつもIS関連に携わっているのがよくわかるぐらい、鮮やかな手際の良さを見せていた。
「……うん、これで地上を高速滑走出来るわよぉ」
「ありがとう母さん、後は調整すれば大丈夫だな」
「そうね、調整もこのままお母さんが済ませちゃうわね?」
そういうと、空中投影ディスプレイを表示し、村雲のデータが表示されるや直ぐ様調整にかかった。
「……流石に母さんは速いな、調整するのが」
「うふふ、お母さんですからねぇ♪シャルルちゃん、こっちの調整任せても良いかしら?」
「わ、わかりました。じゃあ僕もヒルトの村雲、調整に入るね?」
「悪いなシャルル。てか本当に今回俺ほとんど何もしてないな…」
「ふふ、気にする事ないわよぉ?ヒルトは怪我無く無事に試合を終えるのが仕事なんだから、もちろんシャルルちゃんもね?」
またシャルルの方へと向くと、ウインクして笑顔になる母さん。
そんな母さんにシャルルは笑顔で返事をした。
「まあ怪我はしないさ、なんたって親父曰く、俺は不死身だからな」
「うふふ、ヒルトが小さい頃からお父さんそう言ってたものねぇ♪」
昔を懐かしむように目を細めると――。
「――でも、危なくなったら逃げなさいね?逃げることは恥なんかじゃない。何よりも大事なのはあなたの命なんだから……ね?」
いつになく真剣な表情に――そして視線は真っ直ぐ俺の目を見つめる母さんに対して俺は――。
「わかってるよ、母さんや美冬を――俺の友達を泣かせるような真似はしないさ」
「うふふ、なら大丈夫ねぇ」
――と、安心したのか普段の口調に戻った母さん。
シャルルも黙って聞いていたのだが、俺の言葉を聞いて安心したのか少し強張った表情が元に戻っていた。
「ん……。調整終了~。それじゃあ母さんは美冬ちゃんの試合を見に行くわね?」
「そういやそうだったな、一日の試合が終わるまで美冬とは会えないからなぁ…試合談合とか防止の為らしいから」
その為か、俺はまだ美冬のパートナーの【更識簪】に会えずにいた。
放課後会えない事もないのだが、いきなり親しくもない男が話し掛けて警戒されてもそれはそれで嫌だからなぁ。
二年の試合も気になるのだが、どうやら【更識楯無】さんも順当に勝ち進んでいるらしい。
三回戦勝てば準決勝、その次がAブロック決勝戦でその次がAブロック優勝ペアとBブロック優勝ペアの実質の最終決勝戦。
そして最終日がドリームマッチで各学年優勝ペアによる試合という日程――ドリームマッチに関しては、今日聞かされたから多分試合時間に余裕が出来たのだろう。
話は戻すとして、試合自体は見れるのだが美冬と簪ペアも相手を瞬殺しているためか、俺もシャルルやセシリアも全く間に合わないのが……。
「じゃあ母さん行くわね?お父さんに連絡しないと……お父さん?――」
携帯を片手にハンガーを去る母さん、それを見送った俺とシャルルは――。
「いよいよ第三回戦だな、シャルル」
「うん。勝とうね、ヒルト?」
「あぁ、セシリアとも約束したしな」
そう言うと、少し不機嫌そうな表情になったシャルルを不思議に思いながらもISを解除し、俺達二人もハンガーを後にした――。
後書き
次回は原作通りに進みます
ページ上へ戻る