IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第八十九話】
前書き
この話から原作通りに話が流れます――THE駄文です
――第三アリーナ中央――
あれから昼を回り、昼食を終えた俺とシャルルは第三回戦の開始をアリーナ中央で待っていた。
既にアリーナ中央で待っていたラウラと未来ペアと対峙する形で試合開始を待つ状況――すると、ラウラが口を開く。
「ふん。貴様らが勝ち残るとは余程人材不足なのだな。――まあいい、早めに当たったのだ。待つ手間が省けたというものだ」
人材不足という言葉にムッとするシャルルと未来。
未来も日本人だから怪訝な表情に変わったのだろう。
だが俺は――。
「ふーん、俺としては決勝戦まで待ってても良かったんだがな。メインディッシュは後まで取っとくだろ?」
余裕たっぷりで答えた。
それを聞いたラウラは、鼻で笑うように――。
「ふん。ISランクEの雑魚が良く吠える…」
――と、言ったので俺もある【言葉】を引用した。
「ははっ、知ってるか?――『お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ』――ってね」
「…っ!?――貴様…貴様何かが!織斑教官の言葉をっ!?」
「ふっ…、良くわかったなラウラ。別に織斑先生をバカにしてる訳じゃない。言葉を引用しただけさ、これがな」
「だからといって――貴様何かが…貴様何かが口にしていい言葉等ではないっ!!」
「ふっ…熱くなるなよラウラ。『ニカッと笑顔』だ」
「っ…!?ハルト教官の言葉まで……!!何故貴様がその言葉を喋る!?答えろっ!!」
「ははっ、勝てたら答えてもいいぜ?その代わり、お前が負けたら美冬やセシリア、鈴音にしたことを謝れよ」
「ふん。勝つのは私だ、そんな約束など無意――」
「無意味何かじゃねぇよ…俺とシャルルは負けない。特に俺はセシリアと約束した、勝つってな」
そう言い終えると同時にアナウンスが流れ始める――。
『おっ待たせ致しましたーーーっ!!ただいまより!Aブロック第三回戦第一試合を始めます!!――の前に、選手紹介ーっ!!』
――えらいハイテンションアナウンサーだな、しかも選手紹介付きとは――。
『地球上初の男子IS操縦者にして本大会のダークホース!ISランクはEなのにここまでの快進撃は実力かぁっ!?いやいや、パートナーの力だぁ!!その名は有坂緋琉人選手ーっ!!!』
――どんな紹介の仕方だよ、てかダークホースだったんだ、俺。
『フランスからやって来た貴公子!その微笑みに何人の女の子が虜になったのか全くわからないっ!?本大会屈指のIS男子操縦者、シャルル・デュノア選手ーっ!!』
――変な紹介をされて恥ずかしいのか、その頬を真っ赤に染め上げたシャルル。
『ドイツから来た冷酷な軍人!!他者を一切寄せ付けないその瞳で見つめる先にあるのは尊敬する織斑千冬先生!ラウラ・ボーデヴィッヒ選手ーっ!!』
――この紹介も何だかなぁ……と思ったら満更でもなさそうなドヤ顔を見せたラウラ。
――わからん。
『華も恥じらう女子高生、幼馴染みを追って私立高校からIS学園へやって来た日本の代表候補生!彼女の想いは有坂緋琉人に届くのか!?飯山未来選手ーっ!!』
「ちょ、ちょっと止めてよっ!?べ、別にヒルトの事何か追っかけてないんだからっ!!仕方なく面倒も見てあげようと思ってるだけなんだからねっ!?」
――顔を真っ赤にして否定するように叫ぶ未来。
……まあこの紹介だと否定したくなるわな。
「ひ、ヒルト!?今のは嘘だからねっ!?別に追っかけて来た訳じゃないんだから!」
「わかってるってば、だからそんなに必死になるなよ。逆に怪しまれるぞ?」
「うぅ――もぅっ!ヒルトのバカ!」
――またバカと呼ばれてしまった。
まあ気にしないがな、俺は。
『では改めましてーっ!試合開始の秒読みを開始しますーっ!!』
――てかアナウンサー、今の紹介を反省しろよ。
……と、試合が始まるから集中しないと…。
『五秒前!四!三!二!一!――試合開始ーっ!!』
「叩きのめす」
「悪いがそう簡単に叩きのめされるわけにはいかないさ、これがなぁっ!!」
ラウラの言葉に対して、簡単に叩きのめされるわけにはいかないと叫ぶ俺。
試合開始と同じく新装備の脚部ランドホイール及び背部ブースター及び肩部スラスターノズル全開による疑似瞬時加速を行った。
「悪いがいかせてもらうっ!!」
「ふん……」
軽く鼻で笑うラウラは前面に右手を突き出し、AICを発動する構えを取った。
だが俺もバカじゃない――。
――回想中――
『AIC?なんだそれ?』
学園中の女の子に追われていた一夏が保健室へと戻ると、ラウラ・ボーデヴィッヒの第三世代型兵器の考察を美冬、セシリア、鈴音から受けた。
『シュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵器よ。アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略。慣性停止能力』
『ふーん』
『おいおい、当たるかもしれない相手の情報だぞ?もうちょいちゃんと聞けないのかよ一夏?』
『いや、ちゃんと聞いてるぜ?』
『いやいや、ふーんしか言わないと興味ないみたいじゃないか。美冬もセシリアも鈴音も教えてくれるんだ、もっと真摯に受け止めろよな』
――そんな軽い言い争いをしているとセシリアが軽く咳払いをし、話を戻した。
『こほん――因みにヒルトさん、織斑さん、PICはご存じですわよね?』
そう言ったセシリアに対して言った一夏の言葉が――。
『……知らん』
まさかの知らない発言、普段から【俺は勤勉なんだぜ?】発言は何処へやら、お前本当に勉強してるのかよと小一時間問い詰めたくなる。
『ったく、お前は馬鹿かよ?PIC何て教科書の最初の方に載ってる基本中の基本だろ?どのISにもPIC――パッシブ・イナーシャル・キャンセラーが備わっていてそれによってISは浮遊、加速及び停止を行っているんだ』
『流石お兄ちゃん!毎日目に穴が空くぐらい読んでるもんねぇ♪』
俺に肯定するように頷く美冬、まあ同室で専門用語を初日から少しずつ教えてくれたのが美冬だからな。
『馬鹿じゃねぇって――てか何処かで聞いたことがあると思ったらそれか』
その一夏の発言に、皆が呆れていると再度セシリアが咳払いを行い話を戻した。
『こほんこほん。ヒルトさん、対策を考えますわよ?――正直わたくしも実物を見るのは初めてでしたが、彼処までの完成度を誇っているとは思ってもみませんでした…』
『あー、それはあたしも同意見。あそこまで衝撃砲と相性が悪いとはね……』
『うん。梃子でも動かせないぐらい動きを完封されちゃったし…』
そう三人が言い終えると一夏が口を開く。
『ところで、理屈としては衝撃砲と同じなのか?エネルギーで空間に作用を与えるっていう』
『ああ、そうね。大体同じだと思うわ。でも…厳密には違うんでしょうけど、空間圧作用兵器と似たようなエネルギーで制御しているはずよ』
思わず成る程と思う。
流石は代表候補生だと改めて鈴音を見直した瞬間だった。
――これで中国人じゃなければなぁ…中国だと未だに抗日ドラマがやられてるらしいし…日本人が旅行に行けば未だに知らない中国人に殴られる事件もあるのだからなぁ…。
まあだから俺は【リンイン】という呼び方ではなく【すずね】という和名に直して呼ぶことにしている。
実際鈴音も文句を言ったりしないのだから許容されているのだろう。
『っていう事は、零落白夜なら切り裂けるわけだな?』
『理屈の上ではそうですが…織斑さん、当てることが出来ますの?』
『それに関しては自信がある。一度見たんだ、それで充分さ』
『えらく大きく出たな一夏?でもそんなビッグマウスはちゃんと実行出来ないとただの恥ずかしい痛い奴になるんだぜ?』
『ならヒルトなら当てることが出来るってのかよ?』
『さあな、確信は持てないさ』
『ならヒルトは俺の事悪く言えないだろ』
『ん?少なくともお前の動きは単調だから案外読みやすいんだぞ?俺がラウラなら零落白夜に触れずに直接腕だけを止めるがな』
『直接ってヒルト……腕だぞ?しかもあんなに速く動いているのに、ピンポイントにそんな事が出来るのか?』
『だから今言ったろ?お前の動きは単調で読みやすいって』
『ぐっ……』
ぐぅの音すら出させない様に論破する俺。
事実、一夏の動きは基本的に単調――瞬時加速で速く近接戦闘に持ち込み、零落白夜での一撃で決めるスタイルだが――正直危ないからやめてほしい。
『ヒルトの言う通り、あんたはぶっちゃけ動きが読みやすいのよ、特に腕の動きって線にしかならないじゃない?途中曲げたりすれば腕の筋肉とか、腕自体がヤバい事になるんだし――だから、こう、縦か横かにラインが動くわけでしょう?だから――』
『交差するようにAICのエネルギー波を同じく線で投げれば、簡単に引っかけられるということですわね』
『なるほどなぁ。じゃあどうすればいい?』
『織斑君、何でも人に聞けば答えが出るって訳じゃないんだよ?残念だけど、それを考えるのが対戦相手になるお兄ちゃんや織斑君の役目なんだから』
『……ごもっとも』
『ヒルトさんは何か思い付きまして?』
『……後何度か受けてみないと何とも言えないな…。何しろデータが少ない、まあデータがあってもあのチート能力の攻略は骨が折れそうだがな。それよりも三人とも怪我の具合が良くなって――』
――第三アリーナ――
AICを止める手段が思い付かなかった訳ではないが、二つとも確実性にかけるからぶっつけ本番で試すのには少しばかりリスクが大きく感じる。
一つ目が二人での時間差攻撃。
一人に集中してAICを使用している隙にもう一人が攻撃だが、この場合早急に未来を戦闘不能にするという無理難題に近いことをしなければいけない。
二つ目は――これは確証が持てないのだが、ある【一定量の力】を加える事によって強制解除が可能では無いのかと思い付いたのだが……これも正直、リスクが高い…第一に解除が出来なければ集中攻撃を受けて早々にやられてしまうからだ。
とりあえず現状出来る戦闘内容は、意外性にかけるしか無いという戦略も何もあったものではない先制攻撃なのだが、もちろん俺もただの【突撃バカ】ではない――。
勝ち誇った様にAICを前面に張り巡らすラウラ――わざわざ相手が網にかかってくれるのだから、内心では笑いが止まらないのだろう……だが――。
「はっ!」
「っ…何だと!?」
前面に展開されたAICの前に急停止、直後に上空へと跳躍する。
完全に油断していたのか、その表情は驚きに満ちていて、俺の行動に対してのテンポを遅らせる羽目になった。
一定位置まで達すると再度背部ブースターのみを点火させ急降下加速、一気に間合いを詰めると天狼による一撃を胴から腹部へと決め、そのまま背後を取った。
「もう一撃、食らいなぁっ!!」
「調子に……乗るなぁっ!?」
身体をひねると同時に横一閃に振るうが、それよりも早くラウラのAICが俺の腕を捉えた。
引いてみるがもちろん動かず、押してみても動かない。
まさに格好の的になった形になった。
ただ、ラウラの計算違いは俺を突撃バカだと思った事だろう、その油断が自身に一撃を与える結果となった訳だ。
これは俺とシャルルにとっての大きなアドバンテージになると思う――。
「開幕直後の突撃による先制攻撃だと思ったが、貴様も無い知恵を絞って考えたのだな。だがこの私にとっては今の一撃等些末な問題だ」
「あぁ、だがお前が思っている以上に俺は知恵がない訳じゃないぜ?」
「ほう…。ならばこの一撃をどう対処するものか、見物だな」
言うや、アリーナに響く巨大リボルバーの回転音、肩の大型レールカノンの砲口が此方を捉えるや、ハイパーセンサーが警告を発し、頭の中をアラームが鳴り響く。
「ふっ…わざわざ俺がこの状況を対処しなくても何の問題も無いだろ、ラウラ・ボーデヴィッヒ?」
「ふん。ならば貴様の妹みたく一方的に痛めつけてやろう」
「ははっ、慌てるなよ。この場に居るのは俺【一人】じゃないんだぜ?」
その言葉に、ハッと表情が変わるラウラ。
「悪いけど――させないよ」
連続クイックブーストによる接近――同時に六一口径アサルトカノン《ガルム》による爆破弾の射撃をラウラに浴びせたシャルル。
「ちっ……!体勢が崩れようとも貴様に一撃を…っ!」
「残念だなぁっ!そうは簡単には行かないのが世の中って奴さ、これがっ!!!」
体勢を崩しつつも、肩の大型カノンによる射撃を此方に向け発砲するが、その砲弾は俺に届く事はない。
御柱によるレーザー一斉迎撃により、その砲弾は塵となり消えていった。
そして畳み掛けるようにシャルルは攻撃を行い、ラウラは急後退をして間合いを取った。
「逃がさない!」
ガルムを空へと投げ捨て、光の粒子となり弾けた――だが、既に手にアサルトライフルを構えその銃身を正面に突き出した突撃体勢へと移っていた。
――シャルルが持つ得意技能『高速切替《ラピッド・スイッチ》』だ。
事前呼び出しを必要とせず、戦闘と平行して行えるリアルタイムの武装呼び出し。
これはシャルルの器用さと瞬時の判断力があるからこそ行える技能――だが、もう一人、この技能を易々と行える人物を知っている。
「ごめんね、まだラウラをやらせるわけにはいかないんだっ!」
ラウラへの追撃を遮るように打鉄《大型実体シールドパッケージ仕様》を纏った未来が立ち塞がるや、両手に構えたアサルトライフルによる射撃によって的確にシャルルのアサルトライフルの弾丸【のみ】を同じくアサルトライフルの弾丸で撃ち落としていく――。
どんな能力だよ、あり得なさすぎる――と言いたいが、あり得ない事はあり得ないが世の中の真理、現実として受け止めなければいけない。
「なら俺も…シャルルをやらせるわけにはいかないさ!」
AICが解除され、自由がきくようになった俺は直ぐ様ランドホイールを起動、地上を滑走してシャルルの隣へ移動する――それを見た未来も、左手のアサルトライフルを投げ捨て、粒子となり弾けとぶと左手に近接刀を構えて瞬時加速でシャルルに迫った。
それを防ごうと、ライフルによる牽制射撃を行うシャルルだが、未来にはそれを看破されていて牽制射撃をものともせず接近、左手の刀を振るう――!
「未来!まだシャルルをやらせないっ!!」
近接刀とシャルルの間に割り込み、腕部装甲で刀を受け止めると小さく火花を散らせた。
「ヒルト、流石ね!」
「幼なじみのする事、わからなくてどうするんだよ?」
刀を受け止めたまま旋回、その拍子に未来は体勢を崩した――旋回する勢いそのまま、天狼を振るうが体勢を崩した未来はそれを利用して一撃を回避――そのまま体勢を持ち直すとサマーソルトキックを繰り出す。
流石に避ける事が出来なかった俺はその衝撃に耐える体勢を咄嗟にとって耐えた。
「あの体勢から格闘術かよ――流石だな、未来」
「ほ、誉めたって何も出ないよっ!?」
何故か頬を赤く染め上げた未来、だが次の瞬間――直ぐ様近接刀を振るう。
「…!?」
自然と身体が反応し、天狼で受け流すと俺も天狼で攻撃――それを更に受け止める未来、右手に持ったアサルトライフルは使わずに俺と何度も刀で斬り結び、その刃同士が当たると金属音を鳴り響かせつつ、その度に激しい火花を散らせていた――。
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