IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第364話】
――1025室内――
コンコンッ――不意に室内に響くノックの音。
今日の模擬戦の反省点をノートに書き写していたが、ボールペンを置いて椅子から立ち上がると俺は玄関のドアへと歩き、開けると――。
「ヒルト、報告に来たよ」
「おぅ、美春か」
学園指定の制服に身を包んだ美春がドアの前に立っていた。
確か模擬戦の報告に来るって言ってたからな、昨日も今日も。
夕食は皆別々にとったためわからないが、多分美春の今の様子だと篠ノ之相手に勝利したって事だろう。
「ここで聞くのも何だし、部屋に上がれよ」
「うん。 じゃあ入るね?」
遠慮せず室内に入った美春、俺はドアを閉めるとその後ろ姿を追って奥まで移動すると美春は机の上にあるノートに目をやった。
「あれ? もしかして忙しかった? そうなら一旦部屋に戻るよ?」
「ん? 大丈夫だ、ノートに書き写してたのは今日の模擬戦での反省点だからな。 後で写せるし、気にするなよ」
「そっか。 ……んと、まあ今日の私と篠ノ之箒の模擬戦の結果は私の圧勝って感じかな? ……まあ、当たり前だけどね」
そう言う美春の表情は少しつまらなさそうだった――戦いを楽しむ訳では無いようだが、果たし合いと訊いて意気揚々と行った結果、期待外れって所だったのだろう。
「んと、良かったら一応模擬戦の話するけどどうする?」
「そうだな。 聞かせてくれるか?」
そう言うと小さく頷いた美春、ベッドに腰掛け、結ったポニーテールをほどくと艶やかな黒髪が下ろされた。
ポニーテールも良かったが、下ろしたロングヘアーも美春には似合ってるな。
そう思いつつ、部屋に備え付けられた椅子に腰を掛け、美春の言葉に耳を傾けた――。
――第二アリーナ中央――
「ふっ、逃げずに良く来たな有坂」
既に戦闘体勢になっていた篠ノ之箒を見て、飛翔し、アリーナ中央へとやって来た美春が口を開く。
「一応果たし合いだもんね? 別に逃げるつもりないもん、私」
「ふっ……その意気込みは良し。 だが……その自信、私相手に何処まで通用するかな」
切っ先を美春に向けてそう言い放つ篠ノ之箒の表情は自信に満ち溢れていた。
軽く溜め息を溢す美春は、向けられた刀の切っ先に視線をやり、次は機体の全身隈無く視界に捉えた。
二人のハイパーセンサーにシグナルが点り、美春は天狼を呼び出すと前日宣言した通り、逆刃に変えて峰で構えると。
「……くっ、負けた時の言い訳を残すとは――」
「別に言い訳するために峰打ちにする訳じゃないよ。 言葉には責任が伴う、だから昨日言った通り峰打ちで相手するだけだよ、私は」
そう言って静かに構えると同時に、周囲に浮かぶ八式・天乃御柱も部分展開の応用で収納した。
シグナルが緑に点灯――先に動いたのは美春で、一旦地表へと急降下する。
それを見た篠ノ之箒は直ぐ様二刀の刀を振り抜き、エネルギー粒子弾による無差別攻撃を行う。
その攻撃を、脚部ランドホイールを起動した高速滑走で避けていくと同時に、空に浮かぶ篠ノ之箒の真下を取ると一気に急上昇――攻撃範囲外から一気に眼前に迫り、驚く篠ノ之箒に対して急上昇しながら峰打ちによる一撃を叩き込むとそのまま上を取った。
「クッ……だがこの程度で紅椿はやられないッ!」
空裂による横一閃、更に返し刃での二連撃で帯状に広がる粒子エネルギーが二本、真っ直ぐ美春へと突き進む。
攻撃自体は単調故か、その攻撃の上を抜け、篠ノ之箒の頭上を取ると共に急降下――加速した峰打ちによる一撃が紅椿にクリーンヒットし、更にシールドエネルギーを削る。
「ッ……! ちょこまかと……! これでもくらえぇッ!!」
二刀流によるエネルギー粒子弾による波状攻撃、左右に連続クイック・ブーストで機体を大きく揺らして回避。
当たらなかった粒子弾は、アリーナ地表の土を激しく抉りとり、まるで爆撃の後の様に小さなクレーターを作り上げていた。
「くっ……ならばこの攻撃で包囲してくれるッ!!」
二基の自律機動兵器を射出、更にエネルギー粒子による斬撃と粒子弾による苛烈な攻撃は更に続いていた。
村雲の装甲表面温度が徐々に上昇――ダメージを受けたからではなく、回避して常にスラスターを酷使した結果からくる状況で、それに気を配りながら自律機動兵器の包囲攻撃を避け、粒子弾をクロス・グリッド・ターンで避けつつ、背後をとると更に一撃を浴びせる。
咄嗟に対応の出来ない篠ノ之箒に対して、美春は篠ノ之箒の挙動確認後、振るった隙を確実に見逃さず、一撃一撃を叩き込む。
そんな篠ノ之箒も、なすがままにされず、回避しようとアリーナ中を動き回るが、その動きを簡単に予測され、回り込まれては美春に対して射撃攻撃を行う。
だがそれも簡単に詠まれ、余裕を持って回避しつつも擦れ違い様に天狼の峰打ちによる一撃を浴びせて、そのままクロス・グリッド・ターンで追撃――。
「クッ……何故こうも簡単になすがままにやられるのだ、私は……!」
一人ごちりながらも、縦横無尽に全方位からの攻撃が篠ノ之箒に襲い掛かる。
武装を天狼のみで戦うその様は、さながら第一回大会モンド・グロッソでブリュンヒルデ――織斑千冬の戦い方に酷似していた。
だがその事実に気付くものはいない、戦ってる美春自身、ただ無心に峰打ちによる一撃を叩き込んでいるだけであり、篠ノ之箒自身も、その攻撃を避ける事に必死だから――。
「クゥッ……! まだだ! 絢爛舞――」
「させないよッ! ――っていうか、今の貴女に絢爛舞踏は発動出来ないよ!」
「なっ――アァッ!?」
右腕、腹部、頭部、左足と連続で一撃を叩き込むとシールドエネルギーがゼロになった為、試合終了のブザーが鳴り響いた。
「くっ……! 何故私が負けるのだ! 私だって努力はしてるのに……機体だって負けていないのに……ッ!」
悔しさ隠さず、地面を叩く篠ノ之箒を、美春は悲しそうに見つめると。
「……答えは自分で探すものだよ。 ただ私が言える事は、このままだと……紅椿が可哀想だって事かな」
「………………」
美春の言葉に反応せず、ただただ地面を叩く篠ノ之箒。
言葉が届いてないと判断した美春は、これ以上言葉をかけることなくピットへと戻っていった――。
――1025室内――
「――って感じかな? 被弾はしなかったけどエネルギー消費はしたから……やっぱりバリア無効化が無いと、何度も何度も打ち込まないといけないのが少しキツいかも」
「……成る程。 とりあえず訊いててわかった事は、美春ってやっぱりコアだから強いんだなって感じだな」
具体的に説明はされたものの、あまりイメージがわかなかったが美春自身の強さは断片的にだがわかった気がする。
「ふふっ、そんなこと無いよ? 伸びしろならヒルトや他の皆の方があるもん。 勿論、織斑一夏や篠ノ之箒にもね? ちゃんとした人に教えを請えば確実に今よりはましになるよ、性格的にも」
……それはまた難易度の高い内容だなと思いつつ、誰かに教えを請うために頭を下げる一夏の想像が出来なかった。
篠ノ之に関しては、一応教師に頭を下げたり、楯無さんに教えてもらった時にも頭を下げたとかは訊いた気がするが……。
とはいえ、性格的にと言うなら篠ノ之は確かにもう少しあの性格をどうにかしてほしいものだと思う。
見た目ハイスペック、中身は最悪だから俗に言う性格ブスという奴だ。
……とはいえ、誰が指摘するかにも依るのだが、一夏には期待できないし、かといって俺が言えば煩いだしなぁ。
軽く溜め息を溢す俺は、とりあえずその話をその辺りに捨て置き、美春を見る。
「美春、少しは学園に慣れたか? 後、生活とか」
「……色々大変だけど、見るもの触るもの全てが新鮮って感じかな? お風呂とか使い方わからなかったから大変だったんだよ? 美冬に教えてもらったけどおっぱい揉まれちゃうし……」
そう言ってたわわに実った自身の乳房を両手で持ち上げる様に触る美春。
思わず目を逸らす俺に気付いた美春は、軽く頭に疑問符を浮かべつつも口を開く。
「……? 何にしても、こうやって見るもの触るもの、全てが私にとって初体験だから楽しいよ♪」
「な、なら良かったよ。 食事とかも問題無いか?」
「うん。 どれも美味しくてシールドエネルギーが直ぐに回復しちゃうぐらいだし♪ 試合しながら食事すればエネルギー回復出来るかも、一石二鳥って奴だね♪」
――試合しながら食事って、かなり行儀が悪い気がしなくも無いのだがあまり突っ込まない方がいいのかもしれない。
何にせよ、少しは慣れたと感じ始めてるのならそれは喜ばしい事だろう。
「あ、そろそろ私戻るね? とりあえず今日の報告はこんな感じかな? ……んと、ヒルト、時間があったら一度私と模擬戦しない? あ、後福音の事もあるけど――そ、そっちは二人っきりの時にでいいかな?」
「……? 勿論構わないが……二人っきりのが都合良いのか?」
「う、うん。 二人っきりじゃないと……ね? 模擬戦は時間があったらで構わないからね? じゃあ、おやすみなさい♪」
手をヒラヒラ振ると、足音を響かせて部屋を後にする美春。
まるで嵐が去った様な慌ただしさに、クスッと笑みを溢すと俺は再度机に向かい、今日の模擬戦での反省点をノートに書き写していった……。
後書き
今日職業訓練でした
覚える事がありすぎて頭のキャパシティ超えた\(◎o◎)/
とりあえず火曜日、木曜日、土曜日の週三日いきますぜ('◇')ゞ
後、模擬戦のリクエストとか、あの子とのイチャコラみたいぜコノヤローとか、何かリクエストあれば感想かメッセージ辺りに書いてくだされ。
無ければ飛んで週末の原作に戻ります
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