IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第361話】
前書き
またまたお待たせた
目にはシャルの瞼を閉じ、俺にキスをする姿が……。
更に視界の端には鈴音が顔を真っ赤にし、俺とシャルに対して指を指していた。
シャルがゆっくりと唇を離す――互いの唇の端から唾液の糸が繋がり、惚けたシャルの表情も相まって凄くエロく見えてしまった。
唇から伝わっていた柔らかな感触が無くなった事に、内心はホッとしつつも残念に思う気持ちが交差しあい、複雑な気持ちが心を支配していく。
首筋に腕を回したまま、シャルは鈴音の方へと顔を向けるとゆっくり口を開く。
「何って……ヒルトとキスしてたんだよ?」
特に慌てる様子もなく淡々と告げるシャルに、鈴音は口をパクパクと開いていた――。
「き、きき、キスはわかってるわよ!? てか何でキスしてんのよ、アンタ達ッ!? ま、まさか付き合ってんじゃ――」
「……そうだと良いんだけどね? 残念だけど、まだ僕はヒルトと恋人同士じゃないんだ……」
そう言うシャルの瞳に、少し陰りが落ちるもそれを紛らわす為か更にギュッと抱きついたシャル。
「つ、付き合っても無いのに何でアンタ達はキスしてんのよッ!?」
「え? ……ヒルトの事が好きだからだよ? 好きな人とはキスしたくなるでしょ……?」
さも当たり前の様に呟くシャル――密着してる為か、互いの体温が更に上昇していくのがわかる。
少しは秋風で涼しくなったというのに、俺の下に着た肌着は上昇した体温によって流れ出る汗でピッタリと張り付いていた。
――と、シャルの言葉に鈴音が直ぐ様反応して――。
「な、なな何アンタはしれっとヒルトに告白してんのよッ!?」
「え? ……僕、もうだいぶ前にヒルトに大好きって告白したよ? ……同室の時に、僕最初にフランス語でヒルトに伝えたもん。 【Je t'aime.】……君が好きって……」
顔を真っ赤にしてそういうシャル――あのフランス語、そういう意味だったのか――と同時に、シャワー室での出来事を不意に思い出した俺。
急激に下半身に血液が集中すると一気に欲望の塊がバベルの塔を構築――制服のズボンにテントを張り、シャルの下腹部に当たるとびっくりした表情になるが、それも一瞬の事で軽く目を細めると跨がるように座っていたシャルは改めて座り直した――完全に対面座位の体勢だ。
内心ドキドキしつつも、鈴音の事も気になり、様子を伺うが顔が真っ赤のまま俺を見――。
「あ、アタシだって! アタシだってヒルトの事が好きなんだからねッ!? ――あっ!」
「え?」
思わず目を白黒させる俺を他所に、シャルは少しだが腰を軽く動かす。
端から見てもわからないぐらいの緩やかな動きで動く度、俺の欲望の塊に刺激が走り、シャルの口からは甘い吐息が漏れ出た。
「い、今のは口が滑ったっていうか何ていうか……その……――あぁもうッ! アタシはアンタが好きよ!! いつの間にか気付いたらアンタが気になってたのよッ! 何か文句ある!?」
そう言ってビシッと俺に向かって指差す鈴音――仁王立ちのその姿と、今現状シャルが行っている行為に――。
「べ、別に文句は無いが……」
声は変わらないが、何とか絞り出した言葉がこれしか出なかった。
シャル自身、鈴音の告白に表情は崩さなかった辺りはやっぱりある程度の予想はしていたのだろう――だがそれよりも、一瞬だけシャルが動かす腰を見るとチラリと見える水色のパンツ――勿論、鈴音からは見えないのだが明らかにこれは俺の理性への挑戦の様に思える。
またはただの悪戯心か、何にしても自分で手淫するのとは違ってその数倍は気持ちよく、下手するとこのまま俺のトランクスが不味い状況になるのでは無いのかと思った矢先、携帯の着信音が鳴り響いた――シャルの携帯だ。
制服のスカートのポケットから携帯を取り出すと、着信が誰かを確認してから取るとそのまま電話に出た。
「ラウラ? どうしたの? ――あ、うん、わかったよ。 直ぐに戻るからね?」
電話の相手はラウラだった様で、通話を切ると携帯をポケットに仕舞い、顔を寄せて耳打ちしてくる。
「……ヒルト、この続きは今度……ね?」
「……~~~~~~!?!?」
軽く耳打ちを終えたシャルの顔は真っ赤に染まっていた――心臓がバクバクと鼓動する、正直――このまま加速し過ぎてヤバイのでは無いのかと思うぐらいだった。
俺から降りると、直ぐ様少しシワになったスカートを直すシャル――と、俺の方へと視線を向けると。
「あ、そうだ。 ヒルト、待ち合わせはどうする?」
「へ? 待ち合わせって、アンタ達何処か出掛けるの?」
これまで指を弄んでいた鈴音がシャルの方へと顔を向けると、シャルは小さく頷いた。
「うん。 週末の日曜日に買い物に行こうって誘ってたの」
――と、シャルがそう言うと鈴音は……。
「あ、アタシもヒルトを誘いに来たんだけど……。 アタシも良い? そのさ、一夏の誕生日に何かあげるんでしょ? 一応アイツの幼なじみだしさ、そういった意味でも助言とか出来るかなーって思って誘いに来たら……あ、アンタ達二人が…………ぷしゅーっ」
言ってる途中で顔がゆでダコみたいに真っ赤に染まり、頭から湯気が出る鈴音。
その指摘に、さっきのキスを思い出してしまい俺も顔が熱くなるのを感じると手で扇いだ。
「僕は構わないよ? ――というより、そのつもりで鈴に言ったもん」
笑顔で言うシャルに、鈴音は驚いた表情を浮かべながらシャルの両手を包むように掴む。
そんな行動に、シャルは目をぱちくりさせていると――。
「あ、アンタ……良い子よね。 て、敵になる相手にも塩を贈るなんて……」
「あ、あはは……。 鈴が一夏からヒルトに気持ちが傾いていたの、僕は気付いてたからね? ……本音を言うと、恋のライバルが増えるのは歓迎できないけど……鈴にもヒルトの良さがわかってくれたって思えば嬉しいからね♪」
……現代女子とは思えない発言にびっくりする俺。
男の取り合いだと殺伐とした関係になるのが普通なのに……実際、篠ノ之と鈴音が一夏を取り合ってた時はそんな雰囲気が時折醸し出されていたし。
「――という訳でさ、僕は賛成だけどヒルトはどうかな?」
「俺は断る理由は無いからな。 一応時計って決めたが……鈴音に訊けば他にも色々な案が出るかもしれないしな」
「ふふん。 その点はアタシに任せてよね。 まあ、アイツの好みが何かは知らないけどさ、何だかんだでカッコつけてるからそういった意味でも力になれると思うわよ」
胸に手を当て無い胸を張る鈴音、自信たっぷりに告げるその表情は何処か誇らしげに感じた。
「じゃあこの三人で週末の日曜日、探しに行くか? 待ち合わせはどうする? 学園寮の駅集合にするか?」
「あ、んと……僕はレゾナンス駅前のモニュメントに十時でどうかなって思うんだけど――」
「アタシもそれで構わないわよ? 学園寮の駅でも悪くないけど、待ち合わせにモニュメント前ってのも良いしね?」
「……んじゃ、週末の日曜日、レゾナンス駅前のモニュメント前に十時集合っと……」
制服のポケットから手帳を取り出し、時間と場所をボールペンで記入していく。
シャルも同様にメモを取り、鈴音は携帯のスケジュール帳に記入していた。
「ん。 んじゃ、週末の日曜日だな」
「うん。 ――あ、そろそろ僕は戻るね? ……何だかラウラが大変らしいから」
眉根を寄せ、困ったような笑顔を見せたシャル。
スカートを翻し、部屋を出ようとするシャルを慌てて俺は――。
「あ、シャル?」
「え?」
「……食堂ではごめんな? ちょっと配慮不足で……」
俺の言葉に最初は何を言われてるのかがわからなかったシャルだったが、直ぐにわかったのか首を横に振ると――。
「ううん。 僕なら大丈夫だから。 じゃあヒルト、鈴、おやすみなさい」
「あぁ、また明日な? おやすみ」
「シャルロット、夜更かししちゃダメだからね?」
「あはは♪ 鈴こそ、あまり夜更かししちゃダメだよ?」
そう言って部屋を出ていくシャル――室内には俺と鈴音の二人だけが残り、俺と鈴音の間には変な空気が流れた。
――とはいえ、黙ってるのも変なので口を開く。
「「あ、あのさ」」
同じタイミングで口を開き、ハモると互いに驚いた表情を浮かべてから数秒後、二人して可笑しく、室内に笑い声が響き渡った。
「お、同じタイミングとかどれだけ波長が合ってんだよ、俺と鈴音」
「ふふっ。 ……えとさ、アタシは後で良いから先にアンタから話してくれる?」
「ん? あぁ、えっと……さっきの好きって……本当か?」
告白の真意を聞こうと思い、そう口にすると少し俯きながら小さく頷く鈴音。
「ぅ、ぅん……。 さ、最初はアタシも……アンタの事、特別意識してた訳じゃないわよ? 一夏の友達――ほら、学園祭に一夏と一緒に居たアイツ、覚えてる?」
「ん? ……あぁ、赤い長髪の確か五反田弾っていったかな?」
鈴音の言葉に、思い出しながら答える――軽く挨拶を交わした程度だからどんな人間かはよくわからないが、あの一夏と友達な辺りお人好しなのではないかと勝手な想像をする。
「うん。 その弾って奴とおんなじ感覚――んと、気軽に話せる男友達みたいな感じだと思ってたの、アンタの事……でもさ」
少し言葉を濁し、視線を逸らす鈴音、言葉を言いにくいのか唇を真一文字に結んでいたが――。
「で、でもさ……き、気付いたら……アンタの事も気になっちゃって……。 い、一夏の事も好きなのに……何でアンタの事も気になるのかなって……結構悩んだんだからね? あ、あんまり悩んでる様に見えなかったかもしれないけど……さ」
確かに普段の鈴音を見ていると、あまり悩みがなさそうに思えるほど元気一杯中華娘って印象しか受けないからな……。
でも、時折寂しそうに一夏を見ていたのは俺は気付いてた……当の本人は全く気付いてすらないという朴念人――ではなく、THE・バカ☆にしか見えなかったが。
「そ、それで……いつの間にか、アタシの中で一夏よりもアンタへの想いが心を支配していったの……。 せ、責任とんなさいよ……バカヒルト……」
言って恥ずかしいのか、ジト目気味に睨みつつ顔を赤く染めた鈴音。
「……責任って……付き合えって事か?」
「そ、そうしたい所だけど……し、正直……今アンタの答えを訊いてもフラれるのは目に見えてるわよ。 ……さ、さっきのシャルロットみたいに……あ、アタシにもキスしなさいよッ!!」
息も荒く吐くように言葉を言った鈴音――彼女の特徴であるツインテールも、肩で息をするかのように上下に動く度に小さく揺れた。
「き、キス!? な、何でそうなる――」
「だ、だって! ら、ラウラだけだと思ってたらさ、あ、アンタ……し、シャルロットともしてたじゃないッ! た、只でさえ皆より後にアンタが気になったのにこれじゃあ出遅れてるじゃない! せ、せめて他の……セシリアや未来の二人よりは先に……」
そう口にする鈴音――言えば荒れるから言わないが、既にセシリアと未来ともキスをしてる事実――更に言えば、美冬とも――妹ともキスをしたし、コアの雅ともしてる。
……とはいえ、しないとどうなるかわからないし、俺自身鈴音の事は嫌いじゃない。
想いに応えられるかはわからないが――。
「わ、わかったよ。 ……んしょ」
立ち上がると、俺は真っ直ぐと鈴音へと向かう。
ピクッと反応し、身体を硬直させたまま俺を見上げる鈴音――軽く頬を撫でる様に右手で触れて俺は口を開く。
「……緊張してるな?」
「あ、当たり前でしょ! バカ! き、緊張するに決まってるじゃない……」
口調はいつもの鈴音だが、頬に触れた右手を重ねる様に自分の手を重ねる。
瞳は僅かに潤み、更に紅潮していく頬――口から出る吐息が軽く右腕を撫でる様に吹き抜けていく。
「……目、閉じろよ……」
「ぅ……な、何カッコつけてんのよ……。 ……こ、これでいぃ……?」
瞼を閉じた鈴音を見て、左手で鈴音の上顎をくいっと上げる。
一つ一つの動作にびっくりしてるのか、小さく身震いする鈴音が何だかいつもより可愛く見える。
「……一応最終確認だけど、本当に俺で良いのか? ……今ならまだ間に合うぞ?」
ファーストキスは一生の物だ、俺はラウラに奪われたが今は特に気にしてない。
……だが、女の子にとっては男とは違ってファーストキスに重みもある。
――と、鈴音は左目だけを開くと。
「か、構わないわよ。 ……あ、アタシは……アンタが……いぃ……」
言ってから開いた左目の瞼を閉じる鈴音。
その言葉に俺も覚悟を決める――だが、こうやって俺が誰かとキスをすればそれだけ他の子を傷付ける結果になるんだよな。
――最近はキスのし過ぎで、前以上に躊躇しなくなった辺り、正直慣れというのが怖く感じる。
左手を鈴音の腰へと回し、抱き寄せるとまたもびくっと身震いした鈴音だが嫌がる素振りは見せず、身をそのまま預けてくる。
頬に触れたまま、そのまま俺は鈴音の唇へ自分の唇を重ね、キスをした――その瞬間、鈴音の身体から力が抜けるのを感じる。
まだ少し緊張しているのか、重ねた唇から震えが俺にも伝わる――だが、それも僅かな事で直ぐに震えが止まると、俺はさっきのシャルみたいに啄む様に短く何度も口付けを交わす。
「ん……むっ……ふ……ぅ……ひ、るとぉ……」
何度もキスを続け、合間合間に吐息と共に漏れ出る俺の名前に更に身体の芯から熱が上がるのを感じる俺――。
約三分程だろうか?
――気持ちとしては、三十分ぐらいキスを続けていた気もするが――名残惜しく感じるも、鈴音とのキスを止めると、さっきのシャルと同様に互いの唇の端から唾液の糸が繋がっていた。
「ば、バカァ……。 は、激しすぎるわよ……はぁっ……ん……」
息も絶え絶えにそう言う鈴音だったが、表情は凄く嬉しそうだった。
そんな鈴音が何故か凄く可愛く見え、また自然と唇をもう一度重ねる。
「んっ……!? ……ん……ふっ……」
拒否する事なく俺の唇を再度受け入れた鈴音――柔らかい唇の感触を何度も味わう様にキスをしてからゆっくり顔を離す。
「……ば、バカ……」
小さくそう呟くと、俺の胸に顔を埋めた鈴音。
そんな鈴音の頭を、俺は優しく撫でた……。
後書き
キス祭Σ(゜∀゜ノ)ノ
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