IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第256話】
午前中の実戦訓練も終わり、現在十二時を回った昼時。
模擬戦結果は、俺達兄妹と幼なじみの未来の勝利に終わったが、美冬と未来の相手が……まあ実力より機体性能で戦ってるからまず勝てないのが普通だな、これが。
そして現在、そんな専用機持ち全員がバラバラながらも学食の列に並んでいた。
「確か、トルファン風若鶏の唐揚げだったわよね?」
前に並んだ鈴音がツインテールを揺らし、顔だけを此方に向ける。
仄かに香るシャンプーの香りが、セシリアの使用しているのと同じ香りなのは彼女が借りたりしてるからだろう。
「あぁ。 それで良いぞ?」
「……あ、あんたの事だからてっきりもっと食べるかと思ったのに」
「ん? 勿論食べるぞ? ほら」
そう言って食券を鈴音に見せると、そこには炒飯Lセットに豚骨ラーメン(大盛バージョン)にポテトサラダLセット等々の食券がずらり――。
そんな食券を見ながら、ひきつった笑顔で――。
「あ、あんたどれだけ食うのよ……。 食べ過ぎじゃない?」
「……そうか? 食わなきゃカロリー消費しまくりだからな。 馬車馬並に食べるぜ」
そう言い、ニッと笑顔で応えると目を見開き、慌てて前に向く鈴音が――。
「ば、バカじゃないの? お腹壊しても、知らないからねッ」
「わははっ、腹なら壊さねぇさ。 これがな」
そんな会話をしつつ、列が動いたので食券を全部提出――。
「ふむ。 嫁よ、後で私にも一口炒飯をくれないか?」
「ん?」
先に並んでいたラウラが、仔牛のカツレツが盛られていた皿をトレイに乗せて運んでいた。
「……構わないが、等価交換な?」
「……良いだろう。 私の頼んだシュニッツェル、後程一切れ切り分けよう」
「流石は夫だな。 シュニッツェルか……」
美味そうな香りが鼻腔を擽り、お腹の音が鳴ると――。
「ふふっ。 ではシャルロットが先に席を取ってくれているのでそこで待つとしよう。 ――ふふっ♪」
実に楽しげに微笑むラウラ、余程俺のお腹の音が面白かったのだろうか?
――と、前に並んでいた鈴音がムスッとした表情で俺を見ていた。
「……? どうした?」
「な、何でもないわよッ! バカヒルト! フンッ!」
そう言って前に振り向き直す鈴音のスカートが軽く舞う。
――短いスカート何だからこの辺りは自重してもらいたいな。
その点セシリアとラウラはまず見えない。
ラウラの制服はスラックスタイプだし(とはいえ今も全裸でベッドに潜り込むから下着の色の把握はしてるのだが)、セシリアに至ってはふわりとした長いスカートだから俺が頭を突っ込まない限りは先ずは――。
「ヒルトさん? 列が進みましてよ?」
「うっ? わ、悪いなセシリア。 ちょっと考え事しててな」
既に料理を受け取っていたセシリアの指摘に、慌てて進む俺に――。
「うふふ。 何を考えてたのかしら?」
「……それは秘密だ」
流石に言えん、セシリアのスカートの中に頭を突っ込むとか考えていた事など。
そんな俺を、楽しそうな表情で見つめながら。
「うふふ。 ではわたくしも先に席に座ってますわね?」
「おぅ。 また後でな」
そう言ってセシリアは笑顔で応えると、ゆっくりとした足取りでシャルやラウラの座る席に移動した。
「ん。 アタシも先に座ってるからね? 唐揚げも運んであげるから」
「悪いな鈴音。 ……ありがとう」
「……~~~~っ」
何故かふいっと顔を背けられ、出された食事をトレイに乗せて運んでいく鈴音。
よくわからないな、最近のあいつ……。
受け取った量が量だけに、両手全てに器用に料理を乗せたトレイを持つ――。
「うわぁ……。 いつもながらお兄ちゃん、いっぱい食べるね?」
「でも、これだけあっても全部ぺろりだから作りがいはあるよね」
料理を受け取った美冬と未来がやって来て、互いに顔を見合わせながらそう言い、俺は――。
「仕方ないだろ。 食わなきゃもたないんだから。 全部エネルギーに変わるんだし」
そう言って器用に人を避けつつ、皆が座っている大きな円形テーブルへと向かうと――。
「わっ! ……ヒルトって、食いしん坊さんだね?」
「む? 別に食いしん坊って訳じゃないぞシャル?」
空いたスペースに料理を並べていきながら返答すると、シャルは――。
「も、もしかして……怒った?」
「へ? ……食いしん坊って言われたぐらいで怒る俺じゃないさ」
ニッといつもの笑顔で応えると、安心したように一息つくシャル。
遅れて美冬と未来も席に着席すると――。
「おっす。 俺と箒も同席していいか?」
「…………」
「ん? 一夏に篠ノ之か」
やって来た一夏と篠ノ之は、頼んだ料理をトレイに乗せたまま立っていた。
篠ノ之に関しては視線を明後日の方向に向けてるのが気になるものの――。
「おぅ。 構わないぞ? 別に断る理由も無いしな」
「だね。 皆は?」
美冬が代表して皆に聞くと――。
「わたくしは構いませんわよ?」
そう言ってセシリアは、料理を置けるスペースを空け始めた。
「アタシも良いわよ? てか一夏と食べるのって、何だか久しぶりな気がする」
何気無い鈴音の一言だが、何処か声に寂しさを感じたのは一夏が鈴音にあまり構わなかったのだろう。
「僕も構わないよ?」
シャルもいつもの笑顔で一夏に応えると、一夏もホッとした様な表情になる。
「……私の隣に来なければ、私も構わない」
瞼を閉じ、腕組みしながら言うラウラ。
一応一夏の誘拐された事件には納得したものの、ラウラ的には彼と反りが合わないのだろう。
「勿論、私もOKよ? 篠ノ之さんが嫌じゃなければね?」
最後に言ったのは未来だ。
模擬戦結果で篠ノ之は未来にこてんぱんにやられたからか、目すら合わせずに明後日を向いたままだった。
……因みに、グラウンドに出来たクレーターは俺も手伝った為どうにか昼休み前には終わったものの、特にお礼を言われたりもしなかった。
言われなくてもクラス代表な以上、手伝うのは当然の事だから良いのだが――せめてお疲れ様ぐらいは欲しかったと思うのは我が儘だろうか?
「ほら箒。 座って飯食おうぜ? 皆も良いって言ってるし」
「わ、私は……」
「いいから、座れよ箒」
「む……ぅむ」
若干強引に一夏が座らせると、渋々座る篠ノ之。
一応鈴音の隣に座ったのは、そこそこ彼女とは会話をしてるからだろう。
「んじゃ、飯食うか! いただきまーす」
そう言って一夏が食べだしたのを機に、皆も食べ始めた――。
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