IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第254話】
模擬戦の結果は言うまでもなく未来の完勝だった。
篠ノ之の機体に破損は無いものの、グラウンドには四月の一夏墜落の時以上のクレーターが出来上がっていて、その加速力の凄まじさを物語っていた。
その際に発生した衝撃波は、周囲に張られたバリアーによって守られていたので被害はほぼ皆無であり、周囲の建物にも被害は無かった。
「ふむ。 飯山の勝ちだな……。 ……まだ時間も少しあるようだし、もう一戦大丈夫そうだな」
クレーターを横目で見つつ、腕時計で時間を確認した織斑先生。
……もう一戦するのか、誰と誰がやるんだろうか。
――と、模擬戦を終えた未来が空から降り立ち、ISを解除すると光の粒子となって弾けとんだ。
「飯山、模擬戦ご苦労だった。 ……列に戻れ」
「あ、はい。 ……篠ノ之さんは?」
「あいつの事は気にするな。 ……少しは良い薬になるだろう。 ……たまには天狗の鼻をへし折るという事も必要だからな」
小声で話す二人の会話は此方まで届かず、皆が頭に疑問符を浮かべていた――と、クレーターから這い出てくる人影――。
「……ッ。 何故こうも簡単に――」
「篠ノ之、何をぶつくさ独り言を言ってる? 早く列に戻れ。 次の模擬戦後、開けた穴は埋めておけよ」
眼光鋭く見つめる織斑先生に、堪らず篠ノ之もビクッと身体を震わせて――。
「わ、わかり……ました……」
小さな声で返事をするが、苛立ちを隠さずに織斑先生の怒声が響き渡る。
「聞こえんぞ! 返事は大きくハキハキと返事をしろッ!!」
「は、はいッ!!」
背筋を正し、大きな声で返事をする辺りはやっぱり織斑先生の威厳に負けたからだろうか?
……やっぱり、彼女には叱ってくれる大人が必要な気がする。
足早に列に戻るや、篠ノ之の取り巻き連中の気遣いの声が聞こえてくる――が、それを見逃す織斑先生ではなく……。
「ほぅ? こそこそ喋る暇があるなら、お前たちには特別に私が直接指導してやろうか?」
「はぅっ。 え、遠慮しときます……」
「あ、あの扱きは堪えられませぇ~ん……」
「も、もぅ勝手に話したりしないので……」
流石に扱きを受けるのは嫌らしく、頭を下げた一同。
それを見て、ため息をつくと織斑先生は――。
「……もう夏休みは終わったのだ。 お前たち全員、気を引き締めろ、いいな?」
「「「は、はいッ!!」」」
二組分のソプラノ声が辺り一帯に響き渡ると、腕組みして――。
「では、誰か模擬戦に立候補する者は居るか? 自薦他薦は問わずだ。 言ってみろ」
流石に少しざわざわと騒ぎ始めるも、自薦も他薦も無いことにまたもため息をつく織斑先生。
「……織斑、前に出ろ」
「えっ、何だって千冬姉――いでぇっ!?」
ゴツンッ!という鈍い音と共に降り下ろされた拳骨が一夏の頭部に直撃、凄まじい衝撃だったのか頭を抱えて踞る一夏を――。
「『織斑先生』だ。 それと、私にそんなふざけた態度を取るものは例え弟だろうともれなく私の拳骨が貰えるということ、肝に命じろ」
「いてて……べ、別にわざとじゃ……」
抱えたまま見上げる一夏は、苦悶の表情を浮かべていた。
……てか実姉に対しても『え、何だって?』をやる辺りは勇者だな、勇者。
頭を擦りながら前に出る一夏は、早速ISを呼び出してその身に纏う。
【第二形態移行】したからか、見た目も大幅にかわり、更に機体も心なしか大きくなってる気がした。
「さて、織斑の相手は誰にするか……。 ――有坂、前に出ろ」
「え? えと……?」
「お、織斑先生? 私とお兄ちゃんのどっちが……?」
いきなりの指名だが、有坂だけだと俺か美冬かが全くわからないのが……。
「む、すまない。 ……妹の方だ。 有坂美冬、前に出ろ」
「わ、わかりました。 ……織斑君と模擬戦か……」
小さく呟くように言葉を発して前に出るや直ぐ様。
「村雲、来てッ!!」
腕のアームレットが光を放ち、大きく空に躍り出るとその身には村雲を纏った美冬の姿がそこにあった。
「美冬、模擬戦の相手よろしくな」
「ん。 ……此方こそよろしく。 でもそろそろいい加減下の名前で呼んでほしくないなぁ……」
「え? 何だって?」
「……織斑先生、彼を殴って良いですか?」
握り拳を作り、ピクピクとこめかみに怒りマークを見せる美冬に、一夏は――。
「……何で怒ってるんだ、あいつ……」
……と、明らかに原因はお前だよと皆の総ツッコミが聞こえた気がした。
「……殴るのは後にしろ。 二人とも、準備をしろ」
「了解です」
「あ、あぁ」
二人とも短く返事をし、さっきの試合同様に上空に急上昇――それと同時に投影型ディスプレイに二人が映し出された――。
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