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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第142話】

 
前書き
色々場面が変わります

疲れた 

 
――風花の間――


「状況はどうだ?」


そう静かに、副担任の山田真弥に状況を聞くのは織斑千冬。

その表情は険しく、既に有坂緋琉人からの報告を受け、ストレッチャーの手配をし、既に旅館花月荘前に準備していた。


「有坂君、まだ健在です。被弾率は35.78%、シールドエネルギー残り368です。堅牢な装甲のおかげでまだ戦闘可能です」

「……そうか。オルコット達専用機の準備はどうだ?」

「はい……。後十五分程で完了と榊原先生から連絡が有りました――ですが、今にも飛び出して行きそうな勢いを抑えるのに手一杯だと言ってます」

「……そうか。インストール終了まで、絶対に行かせるなと――榊原先生に」

「わ、わかりました」


そう告げると、直ぐ様山田真弥は、大広間に居る榊原菜月へと連絡を取り、織斑千冬からの指示を伝えた。



――大広間――


場所は変わり、花月荘内大広間。

今、榊原菜月が必死に専用機持ちの三人を抑えていた。

そこに凰鈴音の姿は無く、彼女は織斑一夏の状態を聞き、顔面蒼白のまま旅館花月荘前に待機していた。


「何故行っては行けませんの!榊原先生!?」

「こ、このままじゃ…ヒルトもやられちゃうよ…!!僕やだよ…ヒルトが大怪我するの……!」

「えぇい離せ!嫁のピンチに夫である私が駆け付けなくてどうする!!」

「パッケージインストールが完了するまではダメです!織斑先生からの指示ですから聞いてください!」


そんな感じで一人、孤軍奮闘しながら抑え込む榊原菜月――。

心の中では、誰か増援をと思う――榊原菜月だった。



――福音との交戦空域――


「――らあぁぁああっ!!」

「――――」


突きによる一撃をひらりと避け、避けた先にスターライトmkⅢによる射撃による追撃。

それすらも驚異的な加速力で回避する福音。


「ちっ!――篠ノ之はまだ到着しないのかよ……」


ハイパーセンサーで篠ノ之の現在位置を確認――残り半分といった感じだった。

大きく右に回り込むように福音は動きつつ、翼から光弾を無数発射する。


「くっ…!?」


急上昇し、螺旋状に降下――勢いそのまま海上で急停止――弾丸を引き寄せてから一気に海上を加速して進むと海面に着弾――大きな水柱をたてると共に、放たれた光弾は連鎖し、爆発していく。


「チィッ…!いつまでも持たないぞ……!」


腰に備えられたアサルトライフルを取り、直ぐ様射撃を行う。

炸裂音が響くが、波の音にかき消されていく――だがその弾丸は、福音の脚部に当たると少しダメージを与えていた――。


――花月荘内――


「はぁっ…はぁっ!」


息を切らし、私はお母さんを探していた。

――お兄ちゃんからの報告を、風花の間で訊いた私の頭の中は真っ白になった。

お兄ちゃんが単独で……それも、織斑君と篠ノ之さん二人を逃がすために残ると――。

探すために、急ぎぎみで旅館内を駆け巡る――でも、お母さんが見つからない。


「はぁっ……はぁっ……。お母さん…どこ…?」


呟いても誰も答えない――こうしてる間にも、お兄ちゃんが怪我するかもしれない――下手すると、死んじゃうかもしれない…。

考えが悪い方、悪い方へと考えてしまう。

涙が溢れ出そうになるのを堪え、私はもう一度冷静に考えた。


「……そうだ、まだ外のトラックに行ってなかった!」


直ぐに思い立ち、私は勢いそのままに、花月荘隣の駐車場へと走って向かった。


――風花の間――


「お、織斑先生!」

「どうした?有坂がやられたのか?」


その表情は落ち着いていたが、有坂までやられるとなるとそこへの救助をどうするか、織斑千冬は直ぐに考えるのだが――。


「い、いいえ、違います!――ここ、旅館花月荘隣から高エネルギー反応…!」

「何?――どういう事だ、真弥?」


突然の高エネルギー反応――それも、自分達が居る花月荘隣からだからか、織斑千冬も山田真弥を下の名前で呼んでいた。


「わ、わかりません。――ですが、このエネルギー反応……!!」


空中投影ディスプレイに映し出されるエネルギー反応は、徐々に、徐々にと大きくなっていく。

だが、エネルギー反応だけで他には何の反応も示さない。

そこに引っ掛かった織斑千冬は直ぐに指示を出すも――。


「……真弥、花月荘隣の映像、映し出せるか?」

「だ、ダメです!特殊なジャミング波による影響で映像出せません!エネルギー反応はこのディスプレイでも映し出せますが、映像だけはダメです!」

「他の映像もダメなのか?」

「はい!この辺り周囲一体の映像は全てジャミング波の影響で何も映し出されません!」


慌てたように告げる山田真弥、織斑千冬は落ち着きながらも次の指示を伝える。


「なら衛星から――」

「そちらもダメです!花月荘周辺凡そ100キロ圏内全て、ダミーの映像が流されています!」

「……どういう事だ」

この場を離れられない――だからといって、他の者に様子を見に行かせようとも、その人材が出払っている――。

歯痒い思いで、ディスプレイを眺めていると――。

「エネルギー反応に動き有り――これは……このコース、有坂君が戦っている交戦空域に真っ直ぐ向かっています!」

「……!真弥!有坂に通信を繋げろ!」



少し慌てた感じで指示を出す織斑千冬を見て、山田真弥も驚きの表情を浮かべるが、直ぐ様有坂緋琉人にプライベート・チャネルを繋げようと行動した。


――花月荘駐車場――


「キャッ…!?」


突然の突風に、慌てて飛ばされないように花月荘にもたれ掛かる。
――制服だと、今頃慌ててスカートを抑えていたかもしれない……ISスーツでよかった…。

でも……今の突風…?

何だか、ISが飛翔するときの衝撃にも似ていた様な……。

考えても答えは出ず、トラックの元へと向かう――。

駐車場に着くと、そこには電話をかけている母親――有坂真理亜の姿があった。

「はい……はい…。すみません…私の我が儘で無理を言いまして……。うふふ、相変わらずお世辞がお上手ですねぇ――えぇ、また後日、お茶しましょうねぇ~♪」


誰かと電話で話してる様子をただ眺めるだけしか出来ない――そんな美冬に気づいた真理亜は、電話が切れると共に声をかけた。


「あら?美冬ちゃん」

「お、お母さん……ここにいたんだぁ…」

「あらあら?泣きそうな顔しちゃって……」

「だ、だって……お兄ちゃんが…お兄ちゃんがっ!」


そう言い、堪えきれずに母親に抱きつく美冬。

止めどなく溢れ出る涙を堪える事が出来ず、真理亜の胸元を涙で濡らした。


「あらあら、美冬ちゃん…どうしたの?」

「……ひっく…だって……お兄ちゃんが怪我するかもしれない……っ。…死んじゃうかもしれない……っ…」

「…大丈夫よ、あの子なら死なないわよ」


そんな感じに我が子をあやす様に頭を優しく撫でる真理亜は――。


「……美冬、力が無いのが悔しい…?」

「……ぅん…」


小さく、消え入りそうな声で頷く美冬を見た真理亜は。


「うふふ。此方にいらっしゃい――【村雲・改】も【天照】も、既に準備が出来てるから。その前に、未来ちゃんにも連絡を入れなきゃね?」



――同時刻、花月荘ロビー――


「…………」


ついさっき、織斑君がストレッチャーに乗せられ、空いた旅館の一室に運ばれていった。

……篠ノ之さんの様子も、意気消沈していてさっきまでの浮わついた感じではなく、どうしてこうなった……そんなぼそぼそとした声で呟きながらストレッチャーの後をゆっくりと追っていった。

ロビーを出て、海側へと視線を移す。

二キロ先という事で、辛うじて目視が出来る――。

ヒルトが居る交戦空域――常に動き続ける二つの機影。

時折、光が放たれたと思うと、遅れて爆発音がここにまで聴こえてくる。

その度に、私の胸はドキッと跳ね、不安で押し潰されそうになる。

――と、手に持っていた携帯の音楽が辺りに鳴り響いた。


自然な流れ出電話の通話ボタンを押し、電話に出ると――。


『未来ちゃん?有坂真理亜です。――急いで花月荘隣の駐車場に来てほしいんだけど…?』

「え?……わかりました」

『うふふ、急にごめんねぇ?――美冬ちゃんも待ってるからねぇ~』



プツリ――通話の音が切れると共に、不安な気持ちを抱えたまま、私は向かった――駐車場へと。


――トラックコンテナ内――


私と美冬ちゃんは、促されるようにトラックコンテナ内へと足を踏み入れるとそこにあったのは――美冬ちゃん専用機の【村雲・改】と、私用に用意された専用機【天照】が前面装甲を開いたまま、私達を受け入れるのを待っているかのように佇んでいた。


「……あの、お母さん…?」

「うん?未来ちゃん、どうしたのかな?」

「……何で、天照と村雲がここに…?」

「……今の貴女達に必要な【力】……でしょ?」


そう笑顔で言う真理亜さんに、私は――。


「で、でも……一度受け取らない――まだ時期尚早ってみんなの前で言ったのに――受け取るわけには……」

「……私も、力は欲しいけど…一度言ったことを直ぐに覆す何て出来ないよ、お母さん……」


美冬ちゃんも私と同じ様な気持ちか、そう弱くか細い声で喋った。


「……そうねぇ。確かにみんなの前で言った手前、貴女たちがおいそれと受け取らないのはわかるわよ?――でもね」


柔らかな笑顔から一転、いつもの有坂真理亜とは違い、真剣な眼差しで二人を見つめる。

いつもと違う有坂真理亜の表情に、二人の心臓は跳ね上がる思いだった。


「そう言って、何もせずに居ると後悔する事になる。――泣いても事態は解決しない。無事を祈っても、それは気持ちしか届かない。――ううん、あの子に気持ちも届いていないかもしれない。だって、人は想いを言葉に乗せる事が出来るのだから――だから、離れた場所からでは心配する気持ちも、今戦っているあの子には届いてないと、私は思うの――今なら、ヒルトに怪我をさせずに助けられる――その為の力だと思って、受け取りなさい――何て、少し偉そうにし過ぎたわねぇ。反省反省」


最後はおどけた感じで笑顔になる有坂真理亜に、二人は目をぱちくりさせ。



「難しく考えないで、このISで誰かを助ける【力】だと思って、受け取りなさいな♪――他の子が何を言っても、貴女たちはちゃんと努力して手に入れたのだから。――だから私は貴女たちに専用機を贈る。――後ろめたい事何て、何もないんだから、ね?」


その言葉を聞き、二人はまだ少し迷いがあった――が、それを払拭するかの様に頷いた。


「で、でも今からIS装備して向こうに向かっても間に合わないんじゃ……」


そんな疑問を、悪戯っ子みたいな笑みを浮かべ、真理亜は答えた。


「大丈夫よぉ♪あの人が援護に向かったから♪」

「「え?」」


真理亜の言った意味が解らず、二人は互いの顔を見合わせて疑問符を浮かべるだけだった――。


――福音との交戦空域――



弾装を装填していると、プライベート・チャネルの回線が開いた。


『あ、有坂君!』

『何です!?交戦中ですからデートのお誘いは後にしてください!』


装填完了し、回避行動を取りつつヴェントとスターライトmkⅢによる斉射を行う――その射撃も、細かく右左とゆらゆら動き、一気に加速したかと思えば光弾による一斉射――。

流石に精神的に参りつつも、当たるわけにはいかないから緩急つけた急上昇、急降下、時には海へ潜ってその光弾を逃れ、上がると同時にヴェントによる射撃を続ける。

――耐水加工がされているから撃てるが、されていなかったらもう使い物にならないだろう。


――と、まだ繋がっていたプライベート・チャネルから――。


『有坂君、冗談を言っている場合じゃありません!――その空域へ向かう高エネルギー反応があります、気をつけてください!』

『……高エネルギー反応?それって粒子ビームとかですか?』

『違います!此方でも確認を取っていますが、有坂君、気をつけてください!』

『……了解』



通信が切れると共に思うことは、どうやって気を付けろというのだ――。


「―――――!」


そんな一瞬の考えの隙をついてか辺り四方八方に光の粒子が集束し――弾丸へと形成されていく。


「クッ…!?包囲攻撃かよ!」


既に避ける場所も無く、退路には福音が待ち構える様に翼を迫り出す。

頭上に抜け穴があるが、光弾の速度と爆発範囲を考えても間に合わず、だからといって既に逃げるには遅すぎる。

――頭に過るのは、さっきの一夏の姿だった。

それと同時に、急に恐怖心が沸き上がるのを感じた。

そして、最初に集束した光弾が迫り、眩い閃光が視界を覆った――。

その時、上空から飛来する高エネルギー反応を村雲がキャッチ――と、共に、その高エネルギー反応を出しているであろう物体が俺と光弾の間に入るように立ちふさがり――そして。


「プラズマフィールド、展開!!」



その物体は腕を突き出すと共に、周囲に特殊なプラズマフィールドを形成――それは俺とその【物体】を守るように形成された瞬間――次々と光弾がそのバリアに着弾――だが爆発までは此方に届かず、そのプラズマフィールドが遮っているようだった。



――風花の間――


「……!ジャミング波、解除されました。望遠ですが映像が出ます!」


そう言い、最大望遠で交戦空域を映し出すとそこに映っていたのは――。


「……IS…ですか、あれは…?」

「……………」


織斑千冬は答えなかった。

――否、答えられなかったのだろう。

その姿は一見、フルスキン型のISに見えるのだが――全体的にISより巨体なのだ。

前に現れた無人機よりも大きなそれは、有坂緋琉人の村雲と対比すると凡そ二メートル半程あった。

突如現れたそれは、まるで有坂緋琉人を守るように周囲にバリアらしきものを形成しているのが映っていた――。


――福音との交戦空域――


目の前に現れた何かを俺は見上げていた。

背部には飛行ユニットらしきものが付き、その飛行ユニット上部にはガトリング砲が、下部にはミサイル――それも戦闘機が使うタイプのミサイルを二基――。


――と、突如オープン・チャネルが開いた。


『よう!ヒルト、無事か!?』


そんな何処かで聞き覚えのある声が辺り一帯に響き渡る。



「………親父?」


恐る恐る訊いてみると、その物体が此方に向き直す――。

完全なフルスキン――否、まるでフルアーマーの様な全身装甲で、生身を一切さらけ出していない。

フェイス部分もISとは違うフルフェイス装甲――それも赤いツインアイでまるで先鋭的な――リアルロボットによくあるタイプの頭部に見えた。


――と、俺の問いに答えるように、オープン・チャネルのまま返事が来た。


『おぅっ!こんな成をしてるが紛れもなくお前の父親、有坂陽人だぜ。ワッハッハッ!』


突然の出来事に、俺の頭の整理が追い付かず、混乱するだけだった。

でも――そこに居るのは間違いなく親父だというのは……直感的だが、それだけは何と無く信用が出来た――。 
 

 
後書き
またまた遅れるかもですm(__)m 
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