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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第107話】

――一年寮食堂――


ラウラを連れだって、食堂へとやって来た俺とラウラは現在、朝食中である。

目の前ある山の様にあるおにぎりをバクバク食べていると、その様子を見ていた隣のラウラは唖然としていた――。


「ひ、ヒルト……お前の朝はいつもこうなのか?」

「んむ?……んぐんぐ――そうだぞ?俺はエネルギーよく使うから食わないと持たん、朝食べずにいれば貧血起こすしな」


言い終わるや、またおにぎりに手を伸ばして食べていく――ラウラのメニューはパンとコーンスープとチキンサラダのみだ、まあ女の子ならこんなものだろう。

だが――何故人が食べているものが美味しそうに見えるのだろうか?

そんな俺の視線に気がついたラウラが――。


「ヒルト、わけてやろう……んっ」


そう言い、自分の口でパンをくわえ、差し出すように俺に向けた――。


「……ラウラ、くれるのはありがたいがその食べ方は遠慮させてもらう」

「ん……。何故だ?」

「ほとんど口移しと変わらんからだ、くれるのなら普通にくれ」

「だからほら、かじっていいぞ?……ん」


そう言い、またもや口移しで食べさせようとするラウラ――。


「あーーっ!?ラウラ、お兄ちゃんに何してるのよッ!?」

「む?見ての通り嫁に食べさせているのだが――」


朝食を持ち、現れたのは妹の美冬だった、その後ろには未来が――更に一夏と篠ノ之も居た。


「だ、ダメだよッ!?そんな食べさせ方、私が許さないもんッ!」


そう言った美冬は俺の正面に座り、未来はその隣に座った。


「ラウラ、流石にヒルトも困ってるからその食べさせ方は……」


そう言いつつも、何故か俺をジト目で見る未来。



「ふん、朝から騒々しいな……」


――と、篠ノ之が言う…別に騒ぎたい訳ではないんだがな。


「まあまあ箒、こういうのもたまには良いだろ?」

「む……うむ…」


――と、一夏が言えば箒は肯定する。

まさに一夏は篠ノ之ホイホイだな。


それはそうと、一夏は何を思ったのかラウラの隣に座った為、それを嫌がったラウラがあろうことか俺の膝に座ってきた――何故に?

そして周りからの突っ込みが無いのも何故だ?


「なあラウラ、そんなに嫌がることはないだろ?」

「……貴様と話す舌は持たん。わざわざ私の隣に座るな」


――と一蹴するかのように一夏に告げるラウラは、自分の朝食を俺の右隣へ移すと同時に俺の膝から降りて右隣に座った。

――と、美冬が口を開いて。


「こうやってお兄ちゃんとラウラが並んで食べてると兄妹みたいに見えるよね?妹の私より共通点多いもん」


そう言い、頬を膨らませる美冬――。


「そういやそうだな。互いに銀髪だし――っても俺は青みがかった銀髪だが、瞳の色も同じ赤だし――ラウラは左目が特殊だったな?」

「……うむ…前は左目を嫌っていたが、今はそうでもないのでな…」


確かISのハイパーセンサーを補助的に扱う特殊なナノマシンが注入されてるってラウラが話してくれたな……人体実験か…全く、いたいけない子供にそんなことするとは――まあ俺も下手したら今頃解剖されてたかもしれないからな……。


「何にしても結構共通点あるよな、ISも黒だし」

「う、うむ……私は、それが何より嬉しい」

「むぅ…」

「美冬、そんなに頬を膨らませるなよ。俺と美冬が双子という事実は変わらないんだから」


そんなことを言いながら朝食を食べていると突然慌てたような声が聞こえてきた――。


「わああっ!ち、遅刻っ……遅刻するっ……!」


声の主はシャルだ、時計を見ると確かに予鈴がなる十分前だった――そんなにゆっくりしてたか、俺たち?

ともかく、手近にある定食を手に取ったシャルを呼び寄せた――。


「シャル、こっちに来なよ?」

「あっ、ひ、ヒルト!?……おはよぅ……うぅ…」

「…?」


何故か俺の顔を見るなり真っ赤になるシャルに疑問を抱きつつ、手招きした。



「よぅ、シャルが遅いってのも珍しいな?寝坊か?」

「ぇ、ぇと……その、ヒルトの言う通り寝坊……」

「シャルが寝坊…?お兄ちゃんと一緒の部屋の時は大丈夫だったのに…珍しいね?」

「う、うん…うっかり二度寝しちゃって…後シャワーも浴びたから…」


そういやよく見ると、髪が艶々してるな…朝シャンって奴か。

――微妙に歯切れが悪いのは気のせいではないだろう、昨日までは普通にしていたが今日の朝は少しおかしい気がする。


「なあシャル、良いか?」

「う、うん?何かな?」

「歯切れが悪いが俺、何か気に障る事でもしたか?」


そう言うと、全力否定するように手を振りながら――。


「な、何でもないよッ!?ち、ちょっと今朝見た夢が……」



そう言ったシャルは、また顔を更に赤くし、俺から視線を逸らすと黙々と食べ始めた。

俺は既に食べ終えているからもう向かっても良いのだが…まあもうちょい待っても良いだろう。


見ると、美冬も未来も慌てて食べている――ハムエッグが上に乗った食パンを。

シャルを再度見ると、手際よく箸を使って食べていた。

――元々覚えがいいからか、直ぐに使えるようになって、今では俺より綺麗に使いこなす――日本人より使いこなすとは、やるなシャル。


そんな俺の視線に気付いたのか、シャルは――。


「ひ、ヒルト?僕の方を見てるけど…どこかおかしかった?そ、それとも髪型変かな?」

「ん?何処もおかしい所は無いぞ?制服も似合ってるしな」


見たままの感想を言うと、毎度ながら照れたように頬を赤く染めて――。


「に、似合ってる?」

「あぁ、そして可愛いぞ?もう見とれちゃうぐらいにな」


等と言うと、ラウラからは睨まれ、未来からジト目で再度見られ、美冬も此方を見てくる。

そして褒められたシャルは――。


「……バカ…。……うぅ…夢のこと思い出しちゃうよ…僕にあんな恥ずかしい事させて……」

「はい?恥ずかしい事ってなんだ?」


「わあぁっ!?何でもないよっ。本当に何でもないよっ!?」

「……?」


またもや全力否定、その否定っぷりに皆の注目を浴びてしまい若干小さくなりながらもシャルは食を進めていく――。


「さて、そろそろ行かないと遅刻だな……――と、ラウラ、此方を見てどうした?」

「……お前は私の嫁だろう。シャルロットだけじゃなく私の事も褒めるがいい」

「はあ?」

「ついでだからお兄ちゃん、私の事も褒めてよね?」

「べ、別に私の事は褒めなくていいんだからね……?」


――と、美冬も悪のりして褒めてほしいのか言い、未来はぷいっと顔を背けつつ実は褒められたいオーラを出していた。


「……言わなきゃダメか?」

「嫁なら言えるだろう?」

「お兄ちゃん、遠慮なく可愛い妹を褒めていいんだよ?」

「わ、私は別に……でも、ヒルトが褒めたいなら褒めればいいし…」


――と、このままだと予鈴が鳴るかもしれないのに全く――。


「ラウラ、銀髪似合ってるぞ。髪型変えてみたらもっと良くなったりしてな」

「む……この髪型は気に入らないのか?」

「いや、それはそれで構わないが髪を結ってみたり篠ノ之みたいなポニーテールとかも良いんじゃないか?」


――と、突然篠ノ之の名を出したからか思いっきり篠ノ之に睨まれた。


「む…考えておこう」

「あぁ――てかそろそろ行こうぜ?美冬も未来も褒めなくても良さは知ってるから良いだろ?」

「……たまには口に出して言ってもらいたいもん…でも遅れちゃまずいからお兄ちゃん、今度訊かせてね?」

「わ、私も……時間がある時でいいよ?」

「ん、なら今度な――一夏、篠ノ之、食べたなら行くぞ?シャルも無理そうなら今日は残せって、な?」

「う、うん…ごちそうさまでした」

「別に貴様らを待っていたわけではない、私は一夏と共に行こうと待っていただけだ、勘違いするなよ」


等と腕組みしながら言う篠ノ之は、一夏の手を引いてさっさと食堂を後にした――。


「ははっ、何だかあいつとは距離が縮まった気がしないな――ほら、行こうぜ?放課後の教室掃除はダルいからな」


そう告げ、各々が食器を返して行くと俺たちは一緒に教室へと向かった――遅刻はせず、ギリギリ間に合ったのは今日は運が良かったのかもしれない……。 
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