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狂った私をお食べなさい

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狂気的な彼女

「ねぇっ!
もし、あたしが今
運転邪魔したらどうする?」

デートの帰りに
彼女が車の中で

運転する僕に
そう言ったんだ。

僕は
キョトンとした顔で
聞き返してみた。

「どんな風に?」

彼女は
う~ん…と唸りながら
考えた後に

相変わらず明るい表情で
こう言ったんだ。

「貴方は時々、
私の話を右から左へスルーするでしょ。
私は貴方の心を独り占めしたいのよ。
だから貴方が上の空になった瞬間に
運転してる貴方に

私が手を伸ばして

ハンドルをめちゃくちゃに捻ってしまえば
…まぁ死ぬまではいかなくても
二人で仲良く病院送りくらいにはなるかなって思ったの」

彼女は時々
こうゆう風に
おかしなことばかり言うんだ。

…だけど決して

暗い表情だとか
いかにも精神的な目つきで
こうゆう狂気的なことを言うわけではない。

すごく明るく


「貴方を焼き肉にして食べたい」


こうゆうことを
表情ひとつ変えずにサラッと言うのだ。

だからと言って

彼女は決して
ふざけてるわけでもないのだ。

彼女はいつでも
彼女なりに本気で正気なのだ。

なぜかというと
僕は以前

彼女が狂気的な発言をした時に

冗談と受け取って、

「食べていいよ」

と言ってしまったのだ。


そのときは
僕たちはセックスをしていて
僕は性的な意味で言ったのだ。

彼女は
その時も表情ひとつ変えずに
ほんとにいつも通りの顔だった

まぁ…ちょっぴり
やらしい目つきをしていたぐらいだ。

彼女が
ぼくの性器をそっと口に含んだ。
ぼくが快感で少しケツに力が
入ってしまったと同時くらいに

ぼくの期待とは裏腹に
ぼくの性器に激痛が走ったんだ。

ぼくは
あまりの痛さに思考を停止させた。

…五秒くらいで
ぼくは痛さの余りに
彼女を突き飛ばした。

小学生の時に
ドッジボールの玉が
股間に直撃した時の痛みだとか
女子にふざけて股間を蹴り飛ばされて
冷や汗がダラダラになった
あの時の痛みや怒りの1000倍ぐらいの痛みだった

おそらく
五秒も経っていなくて
二秒くらいだろう。

だけど、
本当に痛い時って
どうやらショックの余りに
一瞬、冷静になってしまうことが分かった。

彼女は唇から
血をダラダラ垂らしながら

笑っていた。


それは
やっぱり
ちっとも悪意のない顔で
僕を惑わすんだ。


その一件があってから、
僕は彼女とセックスをしていない。

怖くてセックスがしたくないとかじゃない、
したいんだけどさ…

僕の性器は
彼女に噛みちぎられて
もうないんだ。
彼女に食べられちゃったんだよ。


なんで別れないのかって?
なんで警察にいかないかって?

愛してるからだよ。
それに尽きる。

…だから僕は
今回の車の中での彼女の話を
決して冗談とは思えなくて

変なこと言えないし

とりあえずスルーした。


「ほら、そうやってスルーするから。
邪魔したくなるのよ。
一緒に死にたいな。」

そう言いながら
遠い目をする彼女。

「たまに君の気持ちがわからないよ。
僕は君と一緒に生きていきたいんだよ。」

「どうして?
私が変みたいな言い方しないでちょうだいよ。
失礼しちゃうわ」

「変だよ。どう考えても」

「あっそ
貴方こそ変だけどね」

「僕は普通だよ。
どこが変?」

「じゃあなんで私を監禁してんの?
どうして私の両足を切り落としたのか
教えてちょうだいよ。
どう考えても普通じゃないでしょ」

「それは愛してるからだろ」


そんな僕達は今日も仲良しこよし。 
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