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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第660話】

 
前書き
お早い更新 

 
 レゾナンスを歩いていると、休日に行われているヒーローショーの告知がアナウンスされた。


「まもなく、屋外展示場にて、ヒーローショー『アイアンガイvsマスターX』を開始いたします」


 告知が遠ざかり、ヒルトはそんなヒーローショーもやってるんだな位に思っていると簪の瞳がキラリと光った。


「ヒルト、行こう……!」

「行こうって……ヒーローショーにか?」

「うん」


 既にいく気満々の簪に、ヒルトは思わず楯無とのほほんさんを見る。


「こうなった簪ちゃんを止めることは出来ないわよ」

「うん~。 ヒーローショー好きだもんね~」

「そっか……。 んじゃ、ヒーローショー行きますか」

「……!! 行こう!」


 何はともあれヒーローショーを見ることになったヒルト達四人に待ち受ける運命とは――。

 レゾナンスの屋上にある遊戯場には特設ステージがあり、会場は子供達で溢れ返っていた。

 ヒーローショー以外にもアイドルとの握手会等も開かれてるらしく、そちらは午後の五時から始まるらしい。

 子供達、親御さん達が居る中、高校生がヒーローショーというのは目立つものであり、視線を感じてヒルトは顔が赤くなる。

 暫くして司会のお姉さんが現れると――。


「みんなー、元気かなー?」

「「「はーい!」」」


 返事をする子供達に交じって簪も大きな声を出し、返事をした。


「それじゃあ、早速君たち皆のヒーローを呼んでみよう! アイアンガーイ!」

「「「アイアンガーイ!」」」


 子供達の呼び掛けも、まだ足りないらしく司会のお姉さんが耳を傾けながら――。


「まだまだ足りないぞー? 親御さんも呼んでみよう!」

「ヒルト、お姉ちゃん、本音、叫んで」

「うぇっ!?」

「わ、私も?」

「あはは、楽しそう~」


 簪の気迫が凄まじく、たじたじになるヒルトは取り敢えず頷き――。


「じゃあいきますよー? せーの、アイアンガーイ!」

「あ、アイアンガーイッッッ!!!」


 恥ずかしさを殺し、ヒルトが叫ぶ――それに呼応する様に子供達ヒーロー・アイアンガイが会場から巻き上がる煙と共に颯爽と姿を現した。


「ハッハッハッ、チビッ子の皆、ごきげんよう! 俺がアイアンガイだ! 今日は元気な高校生もいるな!」


 そんな指摘にヒルトは更にかぁっと熱が上がった、因みに楯無ものほほんさんも叫んではいない。

 その一方でアイアンガイの登場に簪は興奮していた。


「今日こそ、拐われたい……!」


 ヒーローショー名物、拐われる観客に憧れを抱くのは簪。

 楯無は何が始まるのかわからず、戸惑いを見せてはいるが内心はノリノリだった。

 暫く場をわかせていると、会場に響き渡る不穏な声。


『ガッハッハッ! 相変わらずの人気だな、アイアンガイ!』


 暗い煙と共に会場のあらゆる場所から現れたのはアイアンガイと敵対関係にある悪の組織の戦闘員と一人の幹部。


「ムッ! 現れたな! 休日だと言うのにお前達は! 休みがないのか!!」

「ガッハッハッ! 悪の組織はブラック企業にも勝る労働環境だ。 我が戦闘員も一現場日当二万、労災も下りるが場所は多岐に渡るのでな!」

「ほざけ、マスターX! 貴様達の労働環境等! 今日も今日とて私は無給で無休だ! 倒してやる!」


 誰が脚本を書いたのかは知らないが、ヒーロー無給で戦闘員二万だと皆戦闘員行きそうな気がする。

 意気揚々にステージでは戦闘員のアクロバティックなアクションが繰り広げられ、中にはブレイクダンスして場をわかす者もいて注目を浴びていた。

 そして音楽がかわり、ステージ上の戦闘員が観客の子供達を拐い始めた。

 意気揚々と連れ去られる子、泣き出す子、拐われてからアイアンガイやマスターXと戯れる子に司会のお姉さんにまとわりつく子もいた。

 そんな最中、戦闘員がヒルト達の側までやって来た。


「さぁて、どの子を連れ去ってやろうかな~」


 物色を始めたその瞬間から放たれる簪のオーラ。

(拐って拐って拐って拐って拐って拐って拐って拐って拐って拐って!!)

 あまりの気迫に戦闘員はビビり、隣の楯無とジュースを飲んでいたのほほんさんに――。


「こ、こっちにこい! それとお前もだ! ……すみません、二人とも、お願いします」

「わ、私? ステージに上がれば良いのかしら……?」

「は~い」


 戦闘員に小声で促され、楯無とのほほんさんは拐われ、ステージ上へと移動した。


「また拐ってくれなかった……。 お姉ちゃんたち、ずるい……」

「いや、簪もあんなに睨む形になるよりは怯えた方が拐いやすい気がするが」


 ヒルトの最もな指摘に、簪はその手があったかと項垂れていた。


「ふはは、アイアンガイ! チビッ子や女の子の人質は我々の手の内だ! 洗脳して事務員及び我が組織のホワイト化に貢献させてやる! ヌハハハハッ!」

「おのれ、マスターX! 小さい子やいたいけな女の子を洗脳して組織のホワイト化を目指すなど、卑怯だぞ! 悪なら悪らしく、ブラックまっしぐらで行けばいいのだ!」

「黙れ黙れぇい! 悪の幹部とて悩みはつきないのだ! アイアンガイ! 騒ぐと人質がどうなるかわからないぞ……?」


 マスターXは剣を人質に向けると、子供達は騒ぎ出す。

 剣がカッコいいだの悪の組織も苦労してるだのの声が聞こえる中、わりとノリがよく楯無は――。


「こ、子供達に剣を向けないで! 向けるなら私に向けなさい!」

「ヌハハハハッ! 威勢がいいなぁ!」


 アドリブとはいえノリよく付き合うマスターX、そこに司会のお姉さんが――。


「こ、このままじゃいたいけな女の子達と子供達が――みんなー、ヒーローに力をあげて! 大きな声で呼んでみましょう!」


 司会のお姉さんもアドリブで進行する、ニコニコとのほほんさんは笑顔でヒルトに手を振っていた。


「せーのっ……」


 司会のお姉さんの掛け声と共にアイアンガイの名前が叫ばれそうになった時だった。


「ひーくんー、たすけて~!」

「ブハッ!?」


 突然のひーくん発言に吹くヒルト、のほほんさんは大きく両手を振って笑顔で助けを呼んだ。


「ひ、ひーくん? あ、あの、出来れば彼氏の名前じゃなく――」


 流石にアドリブで対応が出来なくなった司会のお姉さんは戸惑いを見せていた。

 観客席もざわつき、楯無は舞台上で目が点になり、簪に至っては――。


「この流れ……ヒルトが出ないと治まらない、かも」

「うぇっ!?」


 流石にひーくんと呼ばれた相手が、観客席に座っているヒルトだと察した司会のお姉さん。


「か、彼がひーくん……で良いのかしら?」

「うん~。 ひーくんは有坂ヒルトだよ~。 おりむーが有名だけど、強さじゃひーくんの方が上だから~」

「あ、有坂ヒルトって――あ、あの世界に三人しか居ない男性IS操縦者にして世界初の男性操縦者のあの有坂ヒルト!?」

「そだよ~。 テレビだとおりむーが世界初だけどー、ひーくんが初めてなんだから~」


 司会のお姉さんがなぜ詳しいのかはわからないものの、アイアンガイ及びマスターXはきょとんとしていた。

 だが刹那の一瞬、司会のお姉さんの一声が会場に響き渡る。


「さあ皆! アイアンガイと共に戦う新たなヒーローの名前を呼びましょう! 皆! お姉さんに続いて! 有坂ヒルト~!!」

「「ありさかひると~!!」」

「「有坂ヒルトーっ!!」」

「ヒルトくーん!」

「ひーくん~!!」


 ステージ上の子供達が、観客席にいる親御さんが、楯無が、のほほんさん皆がヒルトの名前を叫んだ。

 思わぬ展開だが、立ち上がらなければならなくなったヒルトは半ばヤケクソ気味に叫ぶ。


「皆の声、俺の耳に届いた! アイアンガイッ!! この俺、有坂ヒルトが共闘させてもらうぜ、これがなぁッ!!」


 椅子から立ち上がり、派手に中央通路を駆けるヒルト――ステージ上に跳び、着地と同時にアイアンガイのテーマ曲が流れ始めた。

 その音楽と共に戦闘員達がヒルトやアイアンガイを取り囲む、人質となってるチビッ子や楯無、のほほんさんは邪魔にならないようにステージの端へと移動した。

 なるようにしかならないと思いつつ、アイアンガイ、ヒルトは背中合わせに戦闘員に対峙する。


「お前、ダンスステップはわかるか?」

「え? か、簡単な内容なら……」

「アイアンガイの劇のリズムは1 2 3 4♪ このリズムで段取りしてる、最初は2バックステップ右ターン左キック、その後は――」


 簡単なレクチャーとともに、アイアンガイの劇が始まる。

 戦闘員一人の攻撃をバックステップで避け、新たな戦闘員の模造剣を右ターンで回避、三人目が来ると同時に左足でキックアウト――その一撃が三人目にクリーンヒットし、一気に戦闘員を薙ぎ倒す。

 それだけで拐われたチビッ子がわき上がり、楯無ものほほんさんもヒルトの動きに見とれてしまう。


「うぬぬっ……! アイアンガイの協力者! 先ずは貴様から片付けてやるわ!!」

「うぉっ!?」


 アイアンガイを相手するより先にマスターXがヒルトを狙う!

 次の動きの指示もわかっているヒルト、右、左と身体の一部を動かしてマスターXの突き、ジャブを避け、四テンポ目で高くジャンプ――そして、次のテンポでヒルトの一撃が炸裂した。


「ウォォオオッ!!」

「グハァッ!?」


 ヒルトのジャンプキックがマスターXに炸裂、それが合図になったのか戦闘員はアイアンガイを襲うのを止め――。


「き、今日の所はここで引き上げてやるぞ! アイアンガイ! それと……その協力者、有坂ヒルト!」


 舞台上で煙が立ち込め、戦闘員及びマスターXは舞台袖へと消えていく。


「みんなー! 悪の組織はアイアンガイと有坂ヒルトの手によって撃退されましたー! 皆も、助けてもらったお礼を言おうねー?」

「「「ありがとう、アイアンガーイ! ありがとう! ありさかひるとー!!」」」

「あ、いえ……てか今更ながらハズイ……」

「うふふ、ヒルトくんってば顔が真っ赤よ?」

「にひひ、でもかっこよかったよ~」


 楯無、のほほんさんと当然のようにヒルトの腕をとり、絡ませてくる。

 照れながらもヒルトは観客席に頭を下げた。

 そんなこんなで波乱に満ちたアイアンガイヒーローショーは終わりを告げた。


「私も参加したかった……くすん」 
 

 
後書き
原作ヒーローショーを改変しつつ、変にならないようにまとめてみた 
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