ヌードデッサン実技がある美大の入試
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ヌードが描けないなら、美大はあきらめなさい。
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ハラリとガウンを落とすと、一瞬で私の一糸まとわぬ裸身が現れた。
少年は目を見張った──そして、下を向いてしまった。
ほんとにコンプレックスだわ。
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少年は高校3年。美大志望だという。
ところが、志望校の入学試験に「ヌードデッサン実技」があると知って驚いたという。
私は驚かなかった。
ヌードは美術表現の基本中の基本だから。美大の入学試験ともなれば、それくらいアリでしょ──といったコメントとなる。
でも、芸術とはいっても、初対面の女性がいきなり全裸になるわけで、
それを思うと、免疫のない男子高校生は、初めての生身の裸のショックで試験に失敗するのではという不安がよぎるのだった。
そこで、まじめな高校生は親に相談し、親は一計を案じモデル事務所を訪れた。
試験までに、裸に慣れさせるしかない。
そして、今日、模擬試験となったわけだ。
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ヌードになる前に、少年の真剣さを知りたくて、
両親もいるリビングで、着ていったワンピースのままでモデルになった。
ものの5分で仕上がったデッサン画──さすがに手慣れたもので、なるほど、これなら美大志望も頷ける。私も「一肌脱ごう」という気になれた。
いよいよ、少年の部屋に移り、二人だけで模擬試験──
入試要項は知らないが、ゼミ室でやっているここと大差ないだろう。
イーゼルを立てて待っている「ゼミ生」を「受験生」と置き換えるだけでいいはず。
私はいつものようにガウンだけ着て、教室に入るように少年の部屋のドアを開け、いつものようにガウンを脱いだ。
私にとっては、いつものこと。
少年にとっては、会ったばかりの女性の全裸を見ているという、信じられないこと。
「どんなポーズにしますか?」
あえて事務的に訊いてみた。
私は、裸になるのが仕事だから、裸を見られても恥ずかしくないから、
──なにより、芸術なんだから。
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下を向いた少年は何も答えない。
それならと、私から動いた。
少年に私の右の体側を見せるように、体の向きを変えた。
右足を前に、左足を後ろにずらし、お尻を隠すような位置で両手を組んだ。
乳房が美しく見えるように自分なりに計算して、上体を前に倒した。
伸びた脚、控え目なお尻、チャームポイントとしての乳房。
おとなしいが、女性の身体の線を美しく見せるポーズだと思う。
なによりも、視線が合わないから、少年の羞恥も薄らぐだろう。
それでも、うつむく少年のコンテ(鉛筆のようなもの)は動かない。
目の前のものが、「裸の女性」から「表現すべき美」へと認識が変わらないのだ。
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そのあと、座りポーズをいくつか見せたが無駄だった。一枚も描けないまま、契約の2時間は過ぎ去った。
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三日空けて、2回目のヌード。
ようやく、少年の目が裸の私を見た。
美大を志望する者のプライドだろう。
「今日はどんなポーズ?」。
やはり返事はなかった。
──それなら、寝ポーズでいこう。
それは、お尻丸見えのうつぶせで、片足を曲げるポーズ。
自慢のヒップラインよ。
ついに、思いきったように少年が口を開いた。
「ごめんなさい。なんとか見ることはできるんですけど、描けないんです」
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──寝ポーズのまま、カウンセリングした。
実は、少年には彼女がいた。
クラスは違うが同級生だというその娘とは、親公認の、清い交際だったということを。(キスはしたそうだが)
少年は語った。
裸体コンプレックスは、その少女の裸身を異常な形で見てしまったのが原因なのだという。
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高校2年の、夏祭りの花火大会。
家族公認の彼女は、少年の家で夕食をすませ、浴衣デートすることになっていた。
浴衣の着付けは少年の母がしてくれた。
閉めきった客間での身支度。
はしゃぐ声が漏れてくると思いきや、ふすまの向こう側は静まりかえった──
少年は、その静寂をとてつもなく不思議なことだと感じた。
ついに我慢できず、ふすまの隙間から覗いてしまった少年が一瞬だけ見たものは──素っ裸にされた少女の後ろ姿だった。
たちまち、気づいた少女は悲鳴をあげ──彼女は泣き出し、デートは中止。そのまま別れとなった。
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「ふーん」
本格的な着付けだったのね。
普通ならショーツまでは脱がずに、専用のスリップの上に浴衣だけど。
彼女も恋人にハダカ見られたぐらいで──どんな気持ちで付き合ってたんだろ。
とりあえず、そのことで女性の裸がトラウマになったか。
古き良き時代の少年漫画みたいだな。
もっと仲良くなって、彼女が笑顔でヌードになったところを、描きたかったんだろうな。
それでも、裸を見るぐらいはできるというなら、なんとかなりそうね。
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とりあえず、着付けのヌードシーンを再現した。
お尻丸出しの直立か──恥ずかしいな。
「描きなさいよ」
命令口調で言ってみる。
そして、思索してみる。
裸を見られて悲鳴をあげた少女ではあるが、
芸術を志す少年を恋人に選んだからには、ヌードの覚悟はできていたと思う。
それでも、いざ裸を見られて悲鳴をあげたのは、彼が覗くような人間だったという事実を受け止められなかったからに違いない。
彼が、もう少しうまく立ち回っていたら──もったいなくて仕方がない。
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ともあれ、この日ようやく最初のヌード画が描けた。
カウンセリングの効果だ。
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一枚描ければ、あとはラクだった
通算5回のレッスンで、少年は臆せずにヌードを描けるようになった。
(ポーズを変えるときにチラチラ見えてしまう秘部にも、すっかり慣れてしまっていたみたい)
作品も、もう合格間違いなしのレベルとなった。
私の役目も終わりらしい。
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合格のご褒美に家庭教師が体を開く──なんて設定はB級だと思うけど、私も前祝いをしたくなった。
最後は、オーソドックスな立ちポーズだった。
これでガウンを着て体を隠せば、仕事は終わり。
でも──
「30分延長」。
私は一方的に宣言して、脱いだガウンの下に隠していた純白コットンのショーツを穿き、彼のベッドに上がった。
ポーズは四つんばい──。
確か4日目に床の上でとったポーズだった。
その時はもちろん全裸だったが、少年は普通に私の秘部を見た。
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今、少年の手にコンテはない。
その左手は乳房を触り、右手はヒップラインを撫で回している。
私はされるがままに任せ、小さくあえいで、少年の行為に肯定のサインを送った。
「もう、脱がせて」
一線を越える瞬間だった。さんざん見られた全裸に戻るだけと言えばそれまでだが、
裸体コンプレックスを少年が克服できたことの証明となるのだ。
決心したのか、意外なほどスムーズにおろされたショーツ。
しかし、少年が息を飲む気配とともに白布の降下は止まった。
そこに女性器があることを「思い出した」らしい。
「いやっ」
本心から叫んだ。
私は、なかば無意識に自分でショーツを足から抜いた。
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秘裂をさらしたままで、処女ではないことを告知した。
初めての相手がそれでもいいのかと確認したのだ。
返事の代わりに、彼は服を脱ぎ始めた。
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「ああ、あっ、ああ、ああ」
私は四つんばいで待っていたが、全裸になった彼は、私の体勢を正常位に変えた。
胸から責めてくるのは男の本能か。自在に変形し、痛みと快感を受け入れる乳房。
「ああ、ああ、あー、……い、痛い……」
素早い反応で変わるソフトな愛撫に変わる。
ただし、右の丘を責める左手だけが残り──右手は下にあてがわれた。
「あん、ああん、いやっ」
数日前まで、裸体コンプレックスの純情少年だったというのが嘘としか思えない。
女性の裸の正しい使い方を思い出したかのように、完全に主導権を握っていた。
内部を指にかき回され、頭が真っ白になる。
できることは、あえぐことだけだった。
「う、う、う、あっ、あん、あん、ああー」
ついに、脚を掴まれ、開かれる時がきた。
男というものは、抱きあったままで挿入できないのか。
挿入のための形にされた瞬間、全裸であることに羞恥がよぎるのだ。
しかし、その羞恥はあっという間に快感に変貌するのだが。
「ああーー」
いきなり、深く入った。
ほんとに彼は初めてなの?
私、だまされてない?
──もう、どうでもよかった。
揺さぶられ、突き上げられ、全ての思考は塗りつぶされた。
「んん、あっ、あっ、あっ、ううん、うん、あん、あん、ああー」
……………
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後日談。
メールによれば、高校最後の夏休み前に、新しい彼女ができたそうだ。
浴衣デートでは、彼女の胸元に手を入れ、乳首をつまむこと快挙を達成したという。
さらに、海水浴に行き、岩影で彼女の赤いビキニを取り去り、裸身を鑑賞したという。
彼女の感想は「恥ずかしかったけど、ちょっと嬉しかった」
これは蛇足だ。
そんなことばかりして、入試の答案としてのヌード画に初々しさが感じられなくならなきゃいいけど。
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